御覧のページは本家サイトと同一の管理人によって運営されるミラーサイトです。

タキオンがあれば過去に情報を送れる

しかしその条件は厳しいのだ。

[前の記事へ]  [相対性理論の目次へ]  [次の記事へ]


理論

 もし光より速い粒子があれば、過去に情報が送れてしまうのである。  そんなことが実現できれば世の中は一体どうなってしまうのか、そんなところまでは分からない。  とにかく理論的には可能だということを説明しよう。

 過去への通信を実行するには、一人だけでは無理である。  協力者が必要だ。  協力者にはロケットに乗ってもらって、一定速度で自分から離れて行く旅に出てもらう。  これを図にすると、こうなる。

 時間は図の中で下から上へ向かって流れているとする。  左右が距離を表している。  斜め 45°の直線(赤色)が光の速度を表している。  協力者のロケットは当然光よりは遅いので、その軌跡は 45°より上を向いた直線(緑色)として描かれる。

 ここに協力者にとっての「同時刻」線(水色)を書き入れてみよう。

 ローレンツ変換の結果を図示するとこうなるのである。  協力者の軌跡(緑色)と同時刻線(水色)は 45°の線を挟んで対称になっている。  協力者の速度が速いほど、これらの線は 45°に近くなる。

 自分にとっての同時刻は真横に引いた直線なのだが、協力者にとっての同時刻はそれに対して傾いているわけだ。

 ここでタキオン登場。  自分から協力者に向かってタキオンを使った信号を送る。  光より速いのでその軌跡は 45°線より浅い角度の直線として描かれるはずだ。  速ければ速いほど、その傾きは水平に近くなる。

 そこで一つ条件があるのだが、この通信に使うタキオンはある程度より速くないといけない。  協力者にとっての同時刻線(水色)より浅い角度になるくらいでないといけないのである。  それがなぜなのかは、次の図を見れば分かってもらえるに違いない。  タキオンの軌跡(紫色)を書き入れたのが次の図だ。

 余計な線は取っ払ってしまった。  その方が分り易いだろう。

 タキオンは時刻 t に発射したことになっている。  しかし協力者にとって点 A こそが時刻 t と同じ時刻だと解釈しているはずなのに、 このタキオン通信はそれ以前の時刻である点 B の時点で突如として届くのである!  まるでメッセージが未来から届いたようなものだ。  しかしこの時点ではそれは「協力者にとってはそう解釈できる」というくらいの話に過ぎない。

 念のため言っておこう。  もしタキオンがあまり速くなければ点 A よりも上側に到着することになる。  その場合には協力者はこの信号を未来から届いたものだとは解釈しない。  単なる「光より幾分か速く到着する信号」程度のものになってしまって、過去への通信には使えないのである。

 さあ、タキオン通信の仕掛けのメインはこの後だ。  協力者には、この受信したタキオン信号と同じ内容を即座にタキオンを使って送り返してもらう。  結局、立場が変わるだけで同じことが起こるわけだが、 それを図に描くと次のようになる。

 協力者の同時線(水色の破線)よりは上を向いているので、 協力者にとってはこの信号は未来に向けて普通に飛んで行っていることが読み取れる。  しかしそれは我々にとっては、最初に信号を発した時刻 t よりも過去に向かっているのである。

 これが大雑把な説明だ。  数式を使った説明は、まぁ、興味があれば各自でチャレンジしてみてほしい。

 協力者の速度や、行きと帰りのタキオンの速度、お互いの距離など、 どういう条件でどれくらい過去にさかのぼって信号を送れるのか、図を頼りにローレンツ変換を使って計算できるはずだ。


具体的にはどうしようか

 今の説明で分かってもらえるだろうが、 協力者にはよっぽど速く飛んでもらわないと遠い過去には情報を送れない。

 タキオンもなるべく速いものを使った方が良い。  ある程度より遅いと無意味になる。  また、協力者との距離が遠くなるほど有利に働くが、逆に信号が弱くなって通信には不利になる。

 この通信のために誰かに犠牲になってもらって光速近い速度で太陽系を離れてもらうのは切なすぎる。  しかし協力者は必ずしも人間である必要はない。  信号を受け取ったらそのまま返す自動機械を積んでおけばいいのだ。  それでも、どんどん遠くへ行ってしまうものだから、使い捨てのようになるだろう。

 それが嫌なら、返信装置を月面上にでも置いて、高速で同じ所を回転させるようにしたらどうだろう。  タキオン発生装置と受信装置を将来どれだけ小型化できるかは分からないが、仮に小指ほどの大きさにまで軽量化できたとする。  それでもそんなに大きなものを光速近い速さでぶん回すのは無理だろう。  我々が光速近くまで加速できるものと言ったら、まだせいぜい原子くらいの質量のものだけである。  それ以前に、回転の際の恐るべき遠心力に装置が耐えられるかどうかがまず問題になるはずだ。

 このようなわけで、 もしタキオンが発見されたとしても、過去に情報を送るのは技術的に相当難しくなりそうである。

 他に何かいい方法、誰か思い付くかしら?


[前の記事へ]  [相対性理論の目次へ]  [次の記事へ]