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外積について

最近まで意味も考えず形式的に使っているだけだった。

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内積の復習

 外積の前に内積を説明しておいた方が簡単かもしれない。  内積は高校でも学ぶので詳しく説明する必要はないだろうと思うが 外積と比較したいのだ。  二つのベクトル の内積は と表現することになっていて、 それぞれのベクトルの大きさを と表せば、

と計算してやることができる。  ここで は二つのベクトルが作る角である。  これはどういう意味かと言えば、一つのベクトル の大きさと、 もう一つのベクトル と同じ向きの成分の大きさを 掛け合わせたものである。

 つまり、同じ向きの成分同士を掛け合わせたい時に使うのである。  だから物体に力を加えた時の仕事を計算する時に 「力の方向」と「力の方向に進んだ距離」をかけるのに使える。  もちろん立場を入れ替えて、ベクトル の大きさと、 ベクトル と同じ向きの成分の大きさを 掛け合わせたものである、と言っても同じことである。

 これをベクトルの成分で計算してやることもできて、 それぞれの成分を と書けば、

と表せる。  説明は必要だろうか?  先ほど言ったように、同じ方向の成分同士を掛け合わせるという考えを そのまま実行しただけである。  とは言うものの、納得するくらいまで証明しようとするとめんどくさいんだよなぁ。


外積のイメージ

 次に外積について説明するが、まず表面上の知識を伝えることから始めよう。  二つのベクトル の外積は と表現することになっているが、 内積の場合と違って結果はベクトルになる。  だから外積のことを「ベクトル積」と呼ぶこともある。  それに対して内積は「スカラー積」と呼ばれたりする。  なぜベクトルになるのかは後で説明しよう。

 ベクトルと言うからには方向がある。  それは先に書いた方のベクトル の指す方向から 後に書いた方のベクトル の指す方向に向かって回転した時、 その回転面に垂直な方向である。  回転面に垂直な方向と言っても 2 つあるが、その内の、 右ねじを回したときにねじが進むのと同じ方向がそれである。  このことから、外積はかける順序によって答えが違ってくるということが分かるだろう。   を逆にするとベクトルの方向が正反対を向いてしまうわけだ。  数値的にはプラスマイナスが逆転することになる。

 このベクトルの大きさは、 それぞれのベクトルの大きさを と表せば、

と計算してやることができる。  ただし は二つのベクトルが作る角である。

 内積で を使ったから 今度は を使うべきだろうというような 単純な類推で外積の概念が出来上がったのではない。  しかしまあ、見方によってはそうと言えなくもないか。  もう少しあとで説明する。

 このベクトルの大きさはちょうど二つのベクトルが作る平行四辺形の面積になっているが、 それは結果であってあまり外積そのものの理解の助けにはならない。  しかし知っていて損ではない。  計算をするときにそういう知識が役立つことがあるのを知っている。

 以上が外積の図形的イメージである。  普通の教科書にはこれくらいの説明しか載ってないので外積がやたら難しいものに思えるのである。  次にこのような概念を作り出すに至った思想を説明することにしよう。


外積を導入するに至った理由

 外積は内積に比べて格段に複雑な気がするが、思想自体は似たようなものである。  内積が「同じ方向の成分」をかけ合わせたいとの要求によって作られたのに対して、 外積は「違う方向の成分」・・・すなわち互いに直角方向の成分同士をかけ合わせた値を求めたいという 要求によって生まれたのである。  例えば、ローレンツ力は電荷の進行方向と直角方向成分の磁場のみが意味を持つ。  そのような関係は物理ではよく出てくるのだ。

 外積は内積のように簡単に計算できるはずであった。  二つのベクトルの大きさの積に をかけてやれば、 一方のベクトル の大きさに、 もう一つのベクトル に対して直角の成分を かけ合せた大きさになる!

 ところがここで問題が起こる。  一つのベクトルに対して直角方向の成分と言っても、それは無数に存在するのだ!  例えば 方向のベクトルを考えてみよう。  このベクトルに対して垂直な方向は 面上のあらゆる方向である。  仕方ないので 方向と 方向の 2 方向で代表させることにしよう。  つまり、 方向を向いた初めのベクトルの大きさに別のベクトルの 方向成分を かけたものと、 方向成分をかけたものの二つを作る事にしたのだ。  もはやこの時点でこの計算結果を 1 成分で表すことはあきらめた方が良い。

 この他に、 軸に対して垂直な方向として 軸と 軸をとり、 軸に対して垂直な方向として 軸と 軸をとってやる。  こうして出来た多数の組み合わせの結果をうまく並べてスマートに表現してやる 必要が出てきてしまった。  外積の結果がベクトル表現になるのはこういう必然があるのである。

 ここでうまいこと考えたもので、1 つのベクトルの 軸の成分とそれに対して垂直な もう一方のベクトルの 軸成分をかけたものを 軸成分として配置することにした。  こうしておけば 軸と 軸の一方を特別扱いすることなく対称な配置が可能になるわけだ。  同じように 軸と 軸をかけたものは 成分に配置、といった具合になる。  図形的には先ほど説明した右回りの方向のベクトルを導入したことに相当する。

 この考えを使ってそれぞれの成分で計算する時の式を作ってみよう。  二つのベクトルの成分をそれぞれ と表すとする。  外積の結果の 成分はベクトル 成分とベクトル 成分を 掛け合わせたものになるので、 、・・・といった具合に埋めていくと、 となるが、 まだベクトル 軸とベクトル 軸をかけた などを忘れている。  これはどこに入れたらいいだろうか?  ベクトルの立場を交換して考えればこれは 軸と 軸の順にかけたものであって、 すでに 成分に入っている と同じ意味を持つものである。  よってこれも 成分として入る権利がある。  しかし図形的に考えて、外積ではベクトルの立場を交換すると符号が逆になるのであった。  そこでこれらは、 のように入るべきである。  まとめれば次のようになる。

 このように計算すれば初めに図形的に考えた外積のベクトルを それぞれの成分を使って表せるのである。

 今この結果を求めた考え方が全てだというわけではない。  この考え方はどうもしっくり来ないな、という人は、 2 次元グラフ上に二つのベクトルを描いてやればこれが 平面を表すことになるので、 この一方のベクトルともう一方の直角方向成分をかけたらどうなるかというのを 幾何学的に求めてやればいい。  この答えが外積の 成分の となることが分かるだろう。


これくらい覚えろ!

 計算がめんどくさいって?  本当に覚えなくちゃいけないのかって?  物理学者たるもの、これくらいはいつでも書き下せるようでなくてはならない。

 しかし丸暗記するのではなくて、ほら、ちょっと規則性をつかめば簡単だろう?  そのためにわざわざ分かり易いように を使って書いておいたのだ。  なんて親切だろう。  これ以上は過保護になるから自分で考えるように。


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