御覧のページは本家サイトと同一の管理人によって運営されるミラーサイトです。

電磁波は周波数を持たない

また挑発的な見出しを付けてみた。

[前の記事へ]  [電磁気学の目次へ]  [次の記事へ]


 今回は、多くの人が疑問にも思わないで 何となく受け入れてしまっていることについて話題にしたい。

 私は、電子がどんな運動をしたときに、どのような電磁波が出るのだろうということが ずっと気になっていて、その点を調べてきた。  その結果として書かれたのが第 2 部の 「点電荷から発する電磁波」という記事である。

 ところが期待に反して、 電子からどのような周波数の電磁波が どの程度出て行くのか、ということについては 数式には現れて来なかった。  要するに、電子の加速具合によって、 電磁波の強度が決まることが分かっただけだ。  そのような原理によって任意の波形の電磁波を作ることが出来て、 それが電子から放たれるというわけだ。

 波形というのは、どんな複雑な形をしていようとも、 きれいな形の正弦波の重ね合わせとして表す事が出来る。  そのような数学的テクニックをフーリエ解析と呼ぶわけだが、 これによってその波形の中にどの周波数成分が どの程度含まれているかを調べる事が出来るのである。

 そしてそれぞれの成分について、 周波数ごとに名前を付けて分類してやり、 長波、中波、短波、超短波、極超短波、ミリ波、サブミリ波、赤外線、 可視光線、紫外線、X 線、γ 線 などと呼ぶ。  光も電磁波の一種であり、周波数が違うだけである。  電波を効率よく受信しようとする時に、波長とアンテナの長さは非常に関係が深いので、 電波として利用されている周波数帯の電磁波は波長を基にした命名となっている。

 このようにして、 それぞれの周波数の電磁波があたかも 互いに別々の存在であるかのようなイメージが 人為的に形作られることになっている。  また同時に、それぞれの「波」が 独立して空間を伝わってくるものであるかのような 印象も作られている。  もちろん、そう考えても論理的に間違いではない。

 教科書には良く、互いに直交した電場と磁場が 正弦波を描きながら進行するような図が描かれているが、 私がここまでにそのような図を描かないできたのは、 次のような主張があるからだ。

 「電磁波はきれいな正弦波なんかじゃない!!」

 そう、電磁波とは任意の波形が伝わる現象なのであるから、 本質的に周波数を持つような存在ではないのだ。

 しかし無線の送信機のアンテナから、 特定の周波数の電磁波が連続して出ているのを思い浮かべて、 電磁波が周波数を持たないなんて書くのは暴論だと反発するかも知れない。  しかしそれは、アンテナの中にきれいに単振動する電子の動きをうまく作り出した結果である。  電気回路の工夫によって特定の周波数の振動を発生させるのに成功しただけのことだ。

 また、無線の受信機側においては、 アンテナに入った波のうち、 特定の周波数の成分だけを取り出して増幅する技術を使っている。  それは電気回路の組み合わせで共鳴現象を起こす仕組みを作ってやることで実現させているのである。

 「特定の周波数を持った電磁波」が 「他の周波数の電磁波」と独立して存在するかのようなイメージは、 工学的応用の中で作り出されたものではないだろうか。  人間のいない自然の中には、 電磁波の周波数などという概念は存在しない。  電磁波は実際には周波数ごとに分かれてなどいない。

 念のため言っておくが、 私の主張は、自然の中に正弦波は自然発生しないという意味ではないので、 その点は誤解しないでもらいたい。  自然の中には、共鳴によって特定の周波数の単振動が増幅して大きく現れる現象が沢山ある。


 いや、それでもまだ、私の主張は受け入れ難いと言う人がいるかも知れない。

 例えば、電磁波は物質中においては、 周波数ごとに異なった振る舞いを示すものである。  物質中での電磁波の速度は周波数ごとに異なるので、屈折率に違いが出る。  それで分散と言う現象を起こす。  プリズムによって光が色の成分ごとに分かれるのが良い例だ。

 しかしこれらも、 周波数ごとに分けて考えると、 この現象に分かり易い説明を与えることが出来る というだけの話である。  人間が現象を解析するのに都合がいいので、 周波数ごとに分けて考えるのである。

 人間には、数学的な計算の途中で現れた概念を、 あたかも実在であるかのように勘違いしてしまう癖がある。  数学や論理によって世の中を見ているためだ。  論理の選び方によって、 実在のように見えていた概念は消え失せることがある。

 ところで、光というのは、周波数 にプランク定数 を 掛けた、 というエネルギーを持った粒として 存在するのではないか、と考えて、 私に反論しようとしている読者もまだいることだろう。  つまり、光はやはり周波数ごとに独立した存在なのではないか、と。

 結果だけを手軽に教えてくれる啓蒙書の説明を鵜呑みにしていると、 得意気にそのような反論をしたくなるものだ。

 それについてはここでは説明しない。  量子力学のページやそれ以降で、 そのような「よくある誤解」を解きたいと思っている。  電磁波も光も、本当は粒なんかじゃない。

 あたかも粒であるかのように解釈ができる現象が、 この世の中には存在しているというだけのことだ。  量子力学が持つ特別な仕組みが、 我々に、世界をそのように見せているのである。  それで、もはや光が単純な「波」だとも言い切れないという現実もある。


[前の記事へ]  [電磁気学の目次へ]  [次の記事へ]