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実在の哲学

よく来てくれた。 君のような若者が来るのを待っていたよ。

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 なるべく簡単に説明するというのが私の方針であるが、 ここでは、皆さんを混乱させる議論をしてしまうかも知れない。  力学は「どう動くのか」ということをまとめた学問であるが、 「なぜ動くのか」ということについては何も説明していない。  私はそれを知りたいのだ・・・・・。

 この世に力なんて物はホントにあるのだろうか?

 力というのは、結局、運動量を変化させる現象を見て、 「力が働いていると考えよう」として決めた概念である。  力というものを取り出して君に見せることは出来ない。  「見えなくても確かにある」と言うかも知れない。 それを感じることは出来るから。  それは否定しない。  しかし、それをなぜ感じるかと言えば、もっと深い理由がある。

 例えば、風は実在するだろうか?  君は風を肌に感じることが出来る。  しかし、風の正体は空気である。  「風」が「在る」のではなくて、 空気が移動している現象を「風」と名付けたのである。  「風」は結果である。

 人間は実在しないものに、ある名前を付けて、 あたかもそれが存在するかのように議論することができる。 それを象徴と呼ぶ。  人間は象徴によって、より高度なことを理解できるのである。  象徴がなければ何も理解できない。  「母」という言葉も、「空」という言葉も。  「植物」という言葉も。  言葉自体が象徴なのである。

 それらは存在しない象徴なのである。  君は自分の「母」を連れてきて、「これが母だ」と言うことが出来るかも知れない。  しかし、見せられたものは一個人であって、母そのものではない。  君は「これが植物だ」と何かを見せることが出来るかも知れない。  しかし、それは植物に分類されるものの一つでしかない。

 少々脱線してしまったようだ。  話を戻そう。  では、この宇宙に真に存在するものは何だろうか?  物理の基礎である力学に出てくるものはおおよそ、 「運動量」「質量」「力」「時間」「位置」「エネルギー」 「加速度」「速度」などが挙げられる。  このうち、本当に意味のあるもの、存在するものは何だろうという事を考える。  ところが、それぞれが他のものから定義されていて、 どれを基準にしたらいいのか、分からないのである。  先ほど、力というのは人間が勝手に決めた概念でそこでは運動量の変化が 起こっているだけだと書いたが、その運動量でさえ物体の質量と速さをかけて 人工的に作り出した概念なのである。  その元になっている速さという概念も、一定の時間でどれくらいの距離を移動するかで決めた、人間の作ったものである。  ただ、身近で理解しやすいというだけだ。  速さの基準となる時間というものでさえ、「在る」のかよく分からない。  「時間」でさえ、結果かも知れない。  もし、全世界の物体が静止していたら、君はその世界に「時間」があるのか 決められるだろうか? 時間は運動の結果だと言えないだろうか?

 私の力学の説明では、質量と速度を基準にして運動量を定義したが、 それはそれらがなじみのあるもので疑いを持つ機会が少ないからである。 そして、そこから「力」を定義した。

 しかし、人によっては、他のものを基準にして議論をすすめる。  中学では、いきなり「力」を元にして話を始める。  直感的で分かりやすいからだ。  正当な理由である。  物理は色んな説明が出来るのである。

 相対論では、基準を光の速度に求めた。

 ある視点に立って、物事を前よりはるかに見渡せるならば それが物理の成果なのである。   より便利な概念を使うのみである。

 熱力学では、熱量という概念を使う。  熱というものは本来、分子の運動なのだが、 あたかもそれが独立した存在であるかのように扱う。  便利だからである。  物体の衝突も、普通は運動量保存則とエネルギー保存則で計算するが、 ソリトンという波の概念を使って説明することも出来る。  光は粒子であるという概念も、便利だから使っているのであって、 文字通りの粒子であるとは考えにくい。  それについては量子力学のところで説明することにしよう。

 何を基準にするかは、好みの問題であるように思われる。  しかし、それによってより便利にならなくては意味がない。  より遠くを見渡せなくては意味がない。

 私は、何か基準となるもの、本当に実在する何かを求めているのだ。  それさえあれば、他の全てが説明できてしまうような一つのものを。  それが本当にあれば、それを見つけることが出来れば嬉しく思うが、 これは一元論という考えに分類される一つの考え方であって、 この考え方さえ間違っているかも知れない。


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