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力は本当に運動量の交換か?

動いてないのに力を感じるのは変じゃないか。

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 初めの方で「力とは運動量を交換する現象である」と書いたが、 本当にそう言い切れるだろうかと気になり始めたのでこれを書くことにした。  違うのではないかと思わせる現象が日常に多く見られる。  もしこれらを説明できなければ、残念ながら以前に書いた文章を撤回せねばならない。

 例えば、磁石はどうだろう。  磁石の同じ極同士を近づけると「力」を感じる。  それは反発させる力だ。  磁石をぐっと近づけて動かないように手で固定したとしよう。  依然として力を感じる。  しかし、動かしていないのだから運動量は変化していないはずだ。  どうして運動量が変化していないのに力を感じるのだろう。

 バネも同じだ。  バネをぐっと押し縮めて動かないようにしておくために力が要る。  しかし何も動いてはいないのだから 運動量は変化していないのではないだろうか?  風船に空気を詰めてグッと押しつぶした場合も同じだ。  バネと同じように元に戻ろうとする弾力を感じる。

 これらをどう説明したらよいだろうか?  これを書いている今、私は非常に困っているのであるが・・・それでも ・・・風船の場合なら割と簡単に説明出来そうではある。


ゴム風船の弾力

 風船をつぶした時、中に押し込められた空気は前より激しい分子運動をする。  風船のゴム膜に何度もぶつかって元の位置まで広がろうとする。  この空気の分子がゴム膜にぶつかって跳ね返される時、分子の運動量が変化している。  もちろん、ぶつかられた風船のゴム膜はその分の運動量を受けている。  しかし、風船の反対側でも同じような反対向きの運動量を受けているわけだから 風船の全体の運動量は打ち消しあって、風船は全体として動き始めることが無いのである。

 風船を押した時に手に感じる弾力はこの空気の分子が衝突した時の運動量を 風船のゴム膜を通して感じているのであろう。  風船をつぶす時、君はこの空気の分子の弾丸を知らず知らず押し返しているわけだ。

 両手で左右から風船をつぶす時、右手と左手に反対向きの運動量が与えられるから、 君が運動量をもらったからと言って動き始めることは無い。  しかし丈夫なでかい風船に体当たりすれば、君はボヨヨンと跳ね返されることだろう。 これは空気の分子から運動量を受けた結果だ。

 さらに、空気のクッションの上に寝転がった場合について考えてみよう。  君はクッションの上で運動量を受けることなくじっとしていられるように思える。  しかしこの場合も運動量の交換は常に行われている。  君は地球から運動量を受けていつも下に落ちようとしている。  それをクッションの中の空気の分子の無数の弾丸が、そうはさせるかと君を下から狙い打っている。  その反動で君はクッションの上に浮いていられるのである。  あまりにも微妙なバランスで、しかもそれが高速で行われているので、 君は止まっているように感じていられるわけだ。  しかし、君の下では激しい運動量の交換合戦が行われているのである。  空気の分子はクッションの下側でも地球に運動量を与える戦いをしているので 地球は君に与えた運動量をそこできっちり返してもらっている。


ゴムひもとバネの弾力

 さて、ゴムひもの弾力というのも実はゴムの分子の運動の結果であって、 同じように説明できる。  ゴムの弾力の正体についてここでは詳しく述べないが、 熱力学や統計力学の分野の教科書を読んでもらえれば載っているのではないかと思う。

 では、バネの弾力についてはどうであろうか?  これは風船とは少し違う。  バネの弾力は金属の分子が変形に対して元に戻ろうとする力で、 その原因は元を正せばお互いの分子間位置を保とうとする分子の間に働く電磁力である。  詳しくは自分で勉強してもらいたい。  私も詳しくないのだ。  金属の場合には原子どうしの金属結合について考えればいいのだろうが、 最近はバネにしてもプラスチック、セラミック、ゴムのようなものにいたるまで 色々違いがあって、同じバネでも力の原因がどこまで共通していてどこが違うのかというところが 説明しきれない。  詳しく言えば全く違うのだが、磁石の場合と状況が似ていないこともない。


磁石から受ける力

 それで、最も説明が難しいと感じていた磁石の場合についてだが、 風船の説明を色々したお陰で説明が楽に出来るようになった。  要するに、磁石同士も常に運動量を交換しているのだ。  これは素粒子論の考え方なのだが、磁力というのは運動量を持った光を 互いに交換することによって生じている。  当然互いを近づければそれだけ交換する量が増えて、強い力を感じるようになる。  もし手で支えていなければ、互いに反発する向きに運動量を受けて動き始めることになる。  それを動かないように止めておくためには、手で磁石に運動量を与えてやる必要がある。  磁石を押さえる手はじっとして動かないように見えるけれども、 微妙なバランスで磁石に運動量を与えているのである。  これが力を感じる原因である。

 このように、止まっているように見えても運動量が交換されていることは他にいくらでもある。  机の上に箱が置かれているような日常の光景の中でも 箱は重力によって地球から運動量を常にもらっているし、 机と箱の接する面ではお互いの分子がお互いを蹴飛ばしあって運動量を交換して 箱が机にめり込まないように抵抗している。  これが中学校で習うところの「垂直抗力」である。

 力というのはやはり、運動量の交換のことであると言って良さそうだ。  力とは単位時間に移動する運動量のことであると説明してきたが、 力がつりあっているというのは、微小時間内に与えられた運動量の合計が 打ち消しあっている状態のことを言うのである。


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