1 TMO 2014/12/14 (日) 17:16:10 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
超新星爆発のメカニズムを考えます。

もちろん、ネット上にはそのメカニズムが解説されています。たとえば、
ウィキペディア「超新星」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E6%96%B0%E6%98%9F
「Ia型超新星」の発生メカニズムを以下のように説明しています。
> 連星系をなしている白色矮星が相手の恒星から降り積もったガスにより
> チャンドラセカール限界まで質量を増加させ、ついには、自らの重力による収縮を
> 支えきれなくなる。この収縮によって、炭素と酸素からなる中心核で、
> 炭素の核融合反応が暴走し、大爆発を起こす。
よく「重力崩壊」などと言われていますが、それがなぜ爆発につながるのか、
この説明に従えばなぜそれが「炭素の核融合反応の暴走」を引き起こすのか、
いまいち分かりません。

ここで「Ia型」とは超新星爆発の分類であり、前述のウィキペディアの記事では
> そのスペクトルに水素の吸収線が見られないI型
> I型の中でも珪素の吸収線が見られるものをIa型と呼ぶ。
とされています。とりあえずはこのIa型超新星爆発のメカニズムを考えます。
その理由は二つ、
○その明るさが一定であるとされ、天体までの距離を決める指標として重要である
○本サイトの記事「チャンドラセカール限界」と関連が深い
からです。

というわけで、本記事の読み手には上記の記事「チャンドラセカール限界」
http://homepage2.nifty.com/eman/relativity/chandra.html
を読んでその内容を理解・把握していることを前提とさせてもらいます。
2 TMO 2014/12/14 (日) 17:17:19 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
上記の記事では「チャンドラセカール限界」を導出するために「フェルミ縮退」
という概念を導入していますが、私はむしろこちらのほうに強い興味を感じます。
ごく狭い空間領域に多くのフェルミ粒子;電子を閉じ込めたため、パウリの排他律に
よってそれらのフェルミ粒子は運動量空間上で異なる領域を占めなくてはならない。
となると、運動量空間の原点付近を占める低エネルギーの粒子はむしろ少数派で、
大半の粒子はエネルギーの高い運動量空間の領域にあることになります。

古典統計に基づく統計力学では、1億度だろうが100億度だろうがどんなに高温であっても
最低エネルギーを占める粒子が最も多くなります。
それに対して上記の状態は、いわゆる「反転分布」であると言えます。
「反転分布」としてはレーザー光を発振する媒質が有名ですが、
どちらも量子力学に特有の性質のために古典論が適用できない例だと言えるでしょう。

「フェルミ縮退状態の温度はうまく定義できない」ことは分かりました。
が、もう一つ、直観的に考えられない特性があります。それは”圧力”です。
古典的な気体や液体、あるいはプラズマといった流体の圧力は
それらの構成粒子の平均運動量によって決まります。
ある仮想的な平面を単位時間に通過する構成粒子の運動量(の垂直成分)の合計が
その平面にかかる力となり、単位面積にかかるその力がその流体の圧力となります。

が、同じ発想はフェルミ縮退流体には適用できません。もしそれをするならば、
反転分布状態にあるフェルミ縮退流体の圧力は非常に大きな値となってしまうでしょう。
 ;粒子あたりの平均運動量もさることながら、粒子密度の寄与が絶大
一方で、星の中心部の圧力はその星を構成する全質量のみによって決まります。
星の状態が安定している限り、中心部の圧力はその値を超えられないはずです。
あるいは逆に、
星の中心部では全質量の重力を上回る凄まじい圧力が実現されているとするならば、
星はその圧力を自らの重力によって維持することができなくなってしまいます。
3 TMO 2014/12/14 (日) 17:18:21 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
フェルミ縮退状態にある流体の構成粒子は、互いに衝突することができません。
なぜならば、”衝突”は粒子同士の運動量の交換を引き起こすからです。
フェルミ縮退状態では運動量空間に”空席”がないため、
各々の粒子はそのときの運動量を常に維持し続けることになります。
ゆえに、運動量の変化をもたらす粒子同士の衝突を起こすことができません。

この状況は、超流動・超伝導状態にある原子・電子の状況とよく似ています。それらは
エネルギーギャップを越えるのに必要な”まとまったエネルギー”がないために
 互いに衝突できない
という事情の違いこそあれ、もたらされる結果は同じです。

となると、「衝突を起こさない粒子の運動量は圧力にカウントされない」
と考えることができそうです。
事実、たとえば気体分子とニュートリノを一定の閉空間に閉じ込めたとしても、
両者は互いに(ごく稀にしか)衝突できないため、内部の気体は
ニュートリノの持つ運動量とは関係のない圧力をとることができます。
そして、上のように考えれば、全質量のみで星の中心部の圧力が決まってしまっても
それとは独立したフェルミ縮退状態が星の中心部に実現し得ることになります。

ちなみに、フェルミ縮退状態にある水素原子の集合体を特に「金属水素」と呼ぶようです。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%87%91%E5%B1%9E%E6%B0%B4%E7%B4%A0
 ;2行目の「縮退物質」からリンクが「フェルミ縮退」に飛ぶ
4 TMO 2014/12/14 (日) 17:19:29 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
さて、ここで超新星爆発のメカニズムの話に戻ります。
記事「チャンドラセカール限界」によれば、星の全質量がこの限界質量を越えない限り
星内部のフェルミ縮退状態は一意に決まる安定な状態をとり、
この限界質量を越えるとフェルミ縮退状態は安定な状態でいられなくなります。

最も圧力の高い星の中心部でこのフェルミ縮退状態の不安定化が生じ、
そこで比較的大きな局所的収縮が生じたとします。
するとその周囲では電子プラズマが収縮の生じた領域に押しやられ、
その密度の低下が生じます。
実空間における密度の低下は運動量空間における低運動領域の”空席”を生み出し、
粒子同士の衝突が許されるようになります。
そして、粒子同士の衝突は圧力となり、星そのものを膨張させるように働きます。
星が膨張すればその内部の密度の低下が生じ…、(以下略)。

こうして、先に書いた
> 星の中心部では全質量の重力を上回る凄まじい圧力が実現されているとするならば、
> 星はその圧力を自らの重力によって維持することができなくなってしまいます。
という状況が現実になってしまいます。
これは外から見れば「星の大爆発」そのものです。

こうして、超新星爆発発生のメカニズムを理論的に説明することができました。
これは、一般によく言われる「重力崩壊」という言葉が示唆するイメージとは
やや異なっているところが面白い点です。
5 TMO 2014/12/14 (日) 17:20:35 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
もちろん、以上に書いたメカニズムはIa型超新星爆発発生までのあらすじであり、
これが爆発現象の全てではありません。
しかしながら、その後の推移についても確かなことがもう少しだけ推測できます。
超新星爆発ではもう一つ、「残光強度の時間変化」が観測されます。
それは爆発後に尾を引く発光のエネルギー源を特定させ、
ひいては爆発時に何が起きているかを推測する手がかりを与えてくれます。

http://www.cfca.nao.ac.jp/~takhshhr/plasma_file/20131129Suzuki.pdf
↑この資料にその話があり、12枚目にあるように
○Ia型超新星爆発の残光強度の時間変化は56Coのβ+崩壊のそれとよく一致する
○この56Coは、その前段階である56Niがβ+崩壊することで生じる
ということが観測結果から分かるようです。
ここで、Niの原子番号は28なので、
56Niは陽子と中性子が同数である不安定な原子である
ことが分かります。

原子番号28は原子番号14のSi二つを組み合わせて作ることができ、また
原子番号14は原子番号6のC(炭素)と8のO(酸素)を組み合わせて作ることができます。
そして重要なことは次の二つ、これらSi、C、Oとも
○Ia型超新星爆発を引き起こす白色矮星の主要な構成元素と考えられている点
○(最安定な同位体で)陽子と中性子が同数である点
です。

これらの事実を組み合わせれば、
Ia型超新星爆発において、Si、C、Oが核融合反応を起こして56Niが生成される
という帰結が得られます。
6 TMO 2014/12/14 (日) 17:21:37 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
ところで、記事「チャンドラセカール限界」にもある
「陽子が電子を吸って中性子に変わる反応」(;陽子の電子捕獲反応)
についてはどうでしょうか?

まあ、高エネルギーの電子と陽子が高密度に存在していれば
そういう反応も生じないということはないでしょう。
それに実際問題として、このような反応以外のプロセスで「中性子星」は誕生し得ない
ように思われます。

しかしながら、この反応は少なくとも超新星爆発の”主役”にはなり得ません。
なぜならばこの反応は結構大きな”吸熱反応”だからです。
超新星爆発は現象論的に言ってあくまで”爆発”、
すなわち膨大なエネルギーの短時間での解放です。
ゆえに、その主役は解放されるエネルギーを生み出す反応、
もしくは爆発的なそれを引き起こすトリガーとなる反応であるべきです。
そして、上に書いた「フェルミ縮退の解放」「Si、C、Oの核融合反応」ともに
大きな発熱反応であり、これらがIa型超新星爆発の主役である
と言ってよいでしょう。
7 takoyaki 2014/12/16 (火) 19:23:41 ID:24fsL7VI/w [修正] [削除]
TMOさん、はじめまして。

SMESという装置をご存知でしょうか?
超伝導コイルを液体ヘリウムの入った魔法瓶の中にいれ、電気を磁気エネルギーの形態として貯める装置です。
停電が起きたときなどの補助電源として研究開発されています。
私は、この装置の冷却装置が故障して、温度が臨界点を超えてしまったとき何が起きるのだろうか?
と考えたことがあります。
専門家じゃないし、研究開発している人は自分からそんな話をするはずがないし、結局わからずじまいなのですが・・・
予測として、高温により超伝導状態が維持できなくなった瞬間に磁気エネルギーがジュール熱に変換されて爆発を起こすのではないでしょうか?

もしそうだとすれば、なんだか超新星爆発に似ているのでは?と思った次第です。
まるで筋違いの意見でしたらごめんなさい。
8 TMO 2014/12/17 (水) 21:39:42 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
私は学生時代理学部で物理(物性方面)をやっていましたが、
今は民間企業に勤めています。
ただ、少し超伝導に関わる立場にいて、こんな話を振られてドキドキしています。

超伝導というと「臨界温度」ばかりが有名ですが、
それ以外にも「臨界電流」というものがあり、それを上回ると急激に発熱します。
これが深刻・危険で、その克服が重要なテーマになっています。

以前は発電所からの電力をGJのオーダーで貯蔵しようというSMESの話もありましたが、
残念ながら今はそのユーザーである電力会社の懐事情がこの有様なので、
その実用化・導入は当面はなさそうです。
9 takoyaki 2014/12/17 (水) 22:04:19 ID:24fsL7VI/w [修正] [削除]
>>8

そうだったのですか。
超伝導に関わる現場にいる方の話を聞けるなんてとても光栄です。

私なんか文学部の中退者で、物理学もまだろくに勉強していない素人です。
だから、自分で方程式を立てて考えるなんてことはできません。
専門家の方の話を聞いて、色々と妄想して楽しんでいるだけの人です。

>それ以外にも「臨界電流」というものがあり、それを上回ると急激に発熱します。
初めて知りました。

理論上は可能な装置でも、いざビジネスにしようとすると色々な苦労があるのでしょうね。
すごいなあ。

物理学の面白いところは、中性子星のような特異な天体についても、構造を予測したり、天文学のデータで検証したりできるところですね。
私はカニ星雲の原因になった超新星爆発の記録と思われる記述が、中国の『宗史』や藤原定家の『明月記』に残されていて、物理学の計算と一致しているという話が大好きです。
初めてそれを知ったときには感動しました。
10 takoyaki 2014/12/22 (月) 01:49:10 ID:24fsL7VI/w [修正] [削除]
TMOさん、こんにちは。

私のスレッドにも書き込みをして下さりありがとうございました。
あちらでは少し投げやりな返答をしてしまったのではないかと反省しております。
今後ももし機会があれば色々と教えて頂けると嬉しいです。
よろしくお願いします。
11 TMO 2015/01/11 (日) 11:31:40 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
後編では、II型超新星爆発のメカニズムを論じます。

ウィキペディア「超新星」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E8%B6%85%E6%96%B0%E6%98%9F
によれば、II型の超新星爆発とは、
> 水素の吸収線が見られるものをII型と分類する。
とありますが、注目すべきはそれが「赤色超巨星の最後」だという点です。
まもなく超新星爆発を起こすのでは?と言われているベテルギウスが
それにあたります。
 ;ウィキペディア「ベテルギウス」の頁にはその大きさが実感できる写真がある。
  これを見れば誰もがそのヤバさを想わずにはいられないだろう。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%86%E3%83%AB%E3%82%AE%E3%82%A6%E3%82%B9
というわけで、”その時”が来る前にこの記事を書き上げなくてはなりません。

ウィキペディアの同じ頁ではそのメカニズムを
> …最後に鉄の中心核ができる。鉄の中心核は重力収縮しながら温度を上げていき、
> 約10^10 Kに達すると黒体放射により生じた高エネルギーのガンマ線を吸収して
> ヘリウムと中性子に分解してしまう(鉄の光分解)。
> これによってやはり中心核が一気に重力崩壊を起こす。この爆縮的崩壊の反動
> による衝撃波で外層部は猛烈な核融合反応を起こし、II型の超新星となる。

これは明らかにおかしい、あるいは多少譲っても意味不明です。
まず、核融合反応において鉄は燃えカスであり、
それが”光分解”を起こしたところでいくらのエネルギーの利得もありません。
また、ここではそれが「一気に重力崩壊を起こす」としていますが、
そのメカニズムはまったく不明、実際起こりそうにありません。
 ;まだ爆発していないベテルギウスの質量は
  チャンドラセカール限界質量をはるかに上回っている。
さらに、仮に重力崩壊が起きたとしてもそれで解放されるエネルギーはせいぜい
崩壊した質量を元の位置(高さ)に戻せる程度でしかなく、
それが「外層部に猛烈な核融合反応を起こす」とは考えられません。
 ;爆発前でも赤色超巨星の内部は猛烈な環境なのであり、
  そこですら核融合反応は比較的ゆっくりとしか進行していないのだから。
12 TMO 2015/01/11 (日) 11:33:10 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
II型の超新星爆発を考えるには、
恒星内部で生じる各種の核融合反応を押さえておかなければなりません。

まず、私たちの太陽の中心部で生じている反応(の大部分)は、
○(p^+) + (e^-) → n + νe
○2p +2n → 4He
という核反応の組み合わせで表現できます。
ウィキペディアではこの組み合わせを「陽子-陽子連鎖反応」と呼称しています。
前段は0.8MeVもの大きな吸熱反応で、簡単には生じない一方、
後段はそれを補って余りある発熱反応で、大きなエネルギー放出を伴います。
地上で同じ反応を起こすには1億度以上の高温環境が必要になるとされ、
水素爆弾は燃料内部にあらかじめ中性子を含んでいて前段の吸熱反応を省略させることで
瞬間的に爆発させる仕組みになっています。
また、太陽中心部のような高圧・高密度の環境では後段の発熱を前段の吸熱反応に
”前借り”することができるようで、そこでは1千万度程度の比較的低い温度でも
このp-p連鎖反応が実現できているとされています。

この他に、より効率の高い核反応の組み合わせとして「CNOサイクル」があります。
これは炭素原子が一つずつ水素原子を吸収しながら成長し、
4つ目の水素原子を吸収したと同時にヘリウム原子を吐き出して炭素に戻る
という循環反応です。
サイクルを構成する全ての要素反応が発熱反応であるため、
大きな吸熱反応を伴うp-p連鎖反応よりも高効率で進行できます。
ただし各々の水素原子の吸収の際にポテンシャル障壁を越えなければならないため、
低温環境ではそれがネックになってサイクルが途切れてしまいます。
 ;「窒素原子の水素原子吸収反応」が一番のボトルネックらしい。
また、”主役”(;実質は触媒)となる炭素原子の濃度が低くても反応は低調となります。

私たちの太陽のように若い星では炭素原子の濃度が低いため、
このCNOサイクルはほとんど生じていないようです。
一方、年老いて炭素原子を豊富に含む星ではこのCNOサイクルが
重要な役割を担うことになるでしょう。
 ;ちなみに炭素原子は3つのヘリウム原子が融合して生じるという。

もちろんこれ以外にも様々な核反応およびその組み合わせが存在していますが、
とりあえずこの二つの組み合わせを主軸として話を進めます。
13 TMO 2015/01/11 (日) 11:34:26 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
今そのメカニズムを探ろうとしているII型超新星爆発は主に赤色超巨星が起こすもの
であるため、まずは「赤色超巨星」が何たるかを考えなければなりません。
ところが、そのメカニズム等の詳細を論じる資料は多くありません。
一般的に「年老いた星がその寿命の最後に巨大化し、赤く光る」などと言われますが、
なぜ年老いた星が巨大化するのでしょうか?

関連しそうな現象として、「セファイド変光星」があります。
数日〜数十日の周期で星の明るさが周期的に変化するというもので、
その周期から地球からの距離が特定できるため天文学において重要な存在です。
この明るさの変化は星自身の大きさの変化によるものとされており、
「年老いた星の巨大化」とメカニズム的に通じるものがありそうです。
にもかかわらず、やはりこの「セファイド変光星の大きさ変化のメカニズム」
に関する詳細を記した資料は(ネット上では)見つかりません。

セファイド変光星の変光のメカニズムとしては、
1. 核融合反応が活発化し、星内部の温度・圧力ともに上昇する。
2. 圧力の上昇により星全体が膨張する。
3. 断熱膨張の原理により星内部の温度が低下、その結果核融合反応が沈静化する。
4. 星内部の圧力も低下し、膨張した体積が収縮して元に戻る。
5. 断熱圧縮の原理により星内部の温度が上昇 → 1へ
のように説明されることがあります。
が、これでは不十分です。なぜならこれだけでは安定した振動が継続しないからです。
たとえば、プロセス2で星全体の膨張が安定な状態を行き過ぎなければ
プロセス全体の振動は継続できません。
しかし星全体が十分に大きく温度等の変化はゆっくりと進行するため、
明確な要因がない限り「安定な状態を行き過ぎる状況」を
安易に想定することはできません。
実際同じような状況は私たちの太陽においても成り立っているはずですが、
私たちの太陽は周期的な振動を起こしてはいません。

一定の周期を維持しながら”定常的に”振動する状況が実現されるには、
それを作り出す何らかの特殊なメカニズムもしくは条件が必要になるのです。
14 TMO 2015/01/11 (日) 11:35:30 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
ここで、二つ前の※で考えた「CNOサイクル」を持ち出します。
私たちの太陽のように若い恒星では炭素原子の濃度が低く、
内部で生じる核反応の大半がp-p連鎖反応である一方、
齢を重ねた恒星では炭素原子濃度が高くなり、CNOサイクルが生じ始めます。

CNOサイクルはウィキペディアの項↓に
http://ja.wikipedia.org/wiki/CNO%E3%82%B5%E3%82%A4%E3%82%AF%E3%83%AB
> CNOサイクルは温度に非常に敏感な反応である。
> CNOサイクルのエネルギー生成率は温度の15乗に比例する。
とあるように、系が一定温度に達すると爆発的に進行してしまいます。
p-p連鎖反応は温度の上昇と原子核密度の低下が互いに打ち消し合うように
反応速度に影響するため反応速度は安定な状態に落ち着きますが、
このような激しい影響は原子核密度の低下では打ち消すことができません。
系が熱平衡に至るよりも速く、
温度上昇と体積の膨張が中心部から周辺部へと広がっていきます。

けれども、その波及には限界があります。
星内部の安定な圧力はその位置よりも上部に存在する質量のみで決まります。
 ;実際には重力場分布も影響してくるが、ここではとりあえず無視する。
(安定な)圧力は必ず星の中心部で最も高く、外へ行くほど低くなります。
ゆえに、CNOサイクルを回すのに十分な温度を達する原子核密度が
外へ行くほど低下し、ついには十分な炭素原子密度が得られなくなって
爆発的な反応はそこで止まります。
しかし(反応領域の波及が速かったために)圧力過剰による膨張はその後も続き、
断熱膨張の原理で周囲の温度は低下していきます。
 ;このとき中心側の重力場も低下し、それは中心方面での反応を沈静化させる
  ように影響する。
またこの膨張は星の表面積を増大させ、輻射による放熱を促進します。

…このようなプロセスが数日〜数十日という比較的短い期間で生じれば、
セファイド変光星の安定した周期的変光現象が説明できそうです。

星全体での相対的な炭素原子濃度がさらに増大してくれば
星が膨張した際のCNOサイクルの沈静化は軽微なものとなり、
徐々に膨張/収縮の振幅が小さくなっていくでしょう。
そしてついには、内側:膨張状態で安定、外側:収縮状態で安定
という定常状態に落ち着きそうです。
実際、セファイド変光星はやがて赤色巨星に進化するとされています。
15 TMO 2015/01/11 (日) 11:36:49 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
このとき、赤色巨星の内部は高温・膨張状態にあります。
しばしば言われるような「鉄原子からなる高密度の中心核」はあり得ません。
なぜならば、そこは高温であるためエントロピー項の寄与が大きく、
原子核の組成はよく混ざった状態に落ち着くはずだからです。
仮に中心部で鉄など特定の原子核が集中的に合成されたとしても、
それらはそこに集積されることなく周辺部へと拡散していくはずです。
また、体積が膨張して巨星化しても中心部の圧力は全質量のみで決まるため
若かりし頃と変わらず、高温であればその分密度は低くなってしまいます。

温度が数億度まで上昇すると電子プラズマには亜光速に達するものが含まれだし、
特殊相対論的な効果が出てきます。
それは(圧力に対して)温度を上げにくくする効果をもたらしますが、
逆に言うと温度上昇がより激しく原子核密度を低下させることになります。
こうして”核反応の中心”はより外側へとシフトしていき、
星はさらに膨張して巨大化を進めることになります。そしてその行き着く先は、
中はスカスカで超高温、外側に比較的低温で密度の高い”外殻”を持つ
という構造、これが「赤色超巨星」と呼ばれるものの実態です。

その大きさは地球の公転軌道を飲み込むほどといわれ、
言うなればこれは天然の「ダイソン天球」です。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%BD%E3%83%B3%E7%90%83
その内部がハビタブル(居住可能)か超高エネルギー環境か
という些細な違いがあるにせよ。

これほどまでに膨張すると表面積が莫大な大きさになってしまい、
いくら内部(”外殻”のすぐ内側あたり)で活発に核反応を起こしていても
そこで生まれる熱はすぐに外殻を伝わって外部に放射されてしまいます。
CNOサイクルは前述の通り高温環境でしか能率よく進行しないため、
外殻がある程度まで薄くなると星の膨張はそれ以上進まなくなるでしょう。
16 TMO 2015/01/11 (日) 11:37:59 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
ところが、まだこれで終わりではありません。
内部の温度が数億度に達すると、今度はp-p連鎖反応が活発化してきます。

私たちの太陽のような比較的低温の環境では、
p-p連鎖反応の前段階である中性子の生成反応は前述したように
後段の核融合反応から生成エネルギーを前借りして生じています。
このような特殊な反応が(たとえ高密度であっても)細々としか生じないため、
CNOサイクルが活発化してくるとp-p連鎖反応はその陰に隠れてしまっていました。
しかし高温環境では吸熱反応である中性子の生成反応が単独で生じるようになり、
炭素原子密度の低下で低調にあえぐCNOサイクルを上回る勢いで
p-p連鎖反応が進行するようになります。

高温環境にある内側で生じた高エネルギー中性子は
15分程度という比較的長い寿命を持っており、
スカスカな内部を突き抜けて外殻まで飛んでくるでしょう。
 ;太陽‐地球間の距離が光速で8分程度
外殻の内側は内部からのこのような中性子リッチな高温のジェットにさらされ、
それはその領域での活発な核融合反応をもたらします。
その結果外殻は内側から侵食されていき、さらにその厚さを失っていきます。
 ;外からはただ星全体が膨張しているようにしか見えないだろうが。

しかしそれでもまだ赤色超巨星の表面は爆発も沸騰もせず、案外穏やかなままです。
なぜなら、その外側には見えないながらも中性原子の重い外套を纏っているからです。
星の”表面”よりも内側は基本的に電離したプラズマからなっており、
それは内側からの電磁波をほぼ完全に吸収し尽くします。
このときに激しく加速されますが、
その外側にただよう中性原子との衝突によって運動エネルギーを失い、
その多くは星の重力井戸から抜け出すことはできません。
 ;運よく抜け出せた少数のプラズマが「太陽風」と呼ばれる。
一方中性原子は内部からの電磁波をほとんど吸収せず、
表面プラズマよりもさらに低い温度で重力井戸の内部に停滞しています。

ここまでの文章からイメージされるように、
赤色超巨星は内部に大爆発するポテンシャルを抱えた爆弾のようなものです。
爆発を押しとどめているのは比較的低温かつ高密度のプラズマからなる外殻であり、
さらにその外側にある中性原子の外套、ということになるでしょう。
17 TMO 2015/01/11 (日) 11:39:23 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
とはいえ、この静かな状態も永遠には続きません。
星の内側ではいよいよ高温になってp-p連鎖反応が活発化し、
その結果少しずつではあっても着実に”外殻”の内側からの侵食が進行するからです。
それは星の表面温度の上昇をもたらし、
外からもスペクトルの変化として見ることができるはずです。

広い宇宙には青っぽいスペクトルで光る星があります。
シリウスやリゲルがその例で、私たちの太陽の表面温度がおよそ6千度とされている
のに対してそれらの星の表面温度は1万度程度です。
しかしせいぜいがその程度であり、
通常の星の表面温度が数万度を超えることはありません。
なぜならば、表面温度がそれよりも高くなると表面のプラズマがその外側の中性原子を
電離させてしまい、太陽風として星の重力井戸から吹き飛ばしてしまうからです。
徐々に加熱される鍋の中の水がついには沸騰・蒸発するようなものです。
では、赤色超巨星でそのようなことが起きたとしたら?
もはや星内部の高エネルギーを押しとどめるものが何もありません!

星のエネルギー収支を家計に例えるなら、
その表面からのエネルギー放出は”支出(消費)”に、
核融合反応によるエネルギー生成は”収入(所得)”に例えられます。
そして、その内部のエネルギーは”貯蓄”に例えられるでしょう。
収入はそれほどでもないが莫大な貯金を持つ資産家が
何かの拍子で歯止めが外れて全財産を一気に使い切ってしまおうと思い立つ。
赤色超巨星の超新星爆発は、言うなればそういう現象だと考えられます。

それだけではありません。
赤色超巨星は表面温度こそ低いとはいえその内部は超高温であり、
そこでは通常あり得ないような核融合反応が生じています。
大きなエネルギー吸収を伴う、鉄よりも重い原子核の合成です。
私たちの身近にある銅や金などの安定な原子核のほか、
ウランやセシウムなどの不安定な原子核も同じように合成されます。
それらは合成された端から分裂・崩壊していきますが、
絶え間なく合成され続けるため星の内部には一定量存在しています。
超新星爆発によってこれらの不安定原子核も吹き飛ばされ、
吹き飛ばされながら分裂・崩壊によってさらにエネルギーを放出します。
 ;未臨界の崩壊ではなく、原子爆弾の爆発と同じ強制的な核分裂反応
これは家計の例えで言うと、貴金属や美術品などのキャッシュ以外の貯蓄でしょうか。
18 TMO 2015/01/11 (日) 11:41:22 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
最後にこれまでの話をまとめます。まずはIa型超新星爆発の場合)

☆爆発前の星の状態について
Ia型超新星爆発には水素の吸収線が見られず、
ゆえに水素を燃やし尽くした白色矮星がその爆発前の形態である。

☆エネルギーの蓄積と、それを押しとどめているものについて
白色矮星の内部は比較的低温に冷えており、そこでは電子プラズマが
低温・超高圧状態で実現されるフェルミ縮退状態にある。
このとき電子プラズマは膨大な運動量を蓄積しており、
星の自重による圧力がそれを(うまく制御する形で)押しとどめている。

☆爆発のトリガーについて
フェルミ縮退状態は電子プラズマに特殊相対論的効果が出てくる段階で
圧縮されやすくなり、それにより圧力が電子プラズマの運動量をうまく制御
できなくなる(チャンドラセカール限界)。これが爆発のトリガーとなる。

☆解放されるエネルギーについて
蓄積されていた電子プラズマの運動量(運動エネルギー)に加えて、
それにより再開される炭素、酸素、ケイ素等の核融合反応、
さらにそれで形成される56Co、56Niのβ+崩壊で生じるエネルギーが解放される。
19 TMO 2015/01/11 (日) 11:42:43 ID:s8BM.pqBMU [修正] [削除]
続いてII型超新星爆発の場合)

☆爆発前の星の状態について
まだ水素を十分残している赤色超巨星がその爆発前の形態である。

☆エネルギーの蓄積と、それを押しとどめているものについて
赤色超巨星は内部が超高温・低密度であり、フェルミ縮退状態はあり得ない。
素直に超高温状態にある内部のプラズマがエネルギーを蓄積している。
その内部エネルギーは”外殻”として存在する表層の高密度プラズマと
その”外套”として存在する中性原子の大気の層によって押しとどめられている。

☆爆発のトリガーについて
”外殻”である表層の高密度プラズマが内部から侵食され尽くし、
”外套”である中性原子の大気が沸騰・蒸発したとき、
その内部エネルギーを押しとどめるものがなくなって爆発に至る。

☆解放されるエネルギーについて
素直に超高温状態にある内部のエネルギーが解放される。
さらに内部で合成されていた不安定原子核の強制的核分裂によっても
エネルギーが解放される。


こうして見ると、表面が赤くていまだに脈動的な増減光を続けているという
ベテルギウスはまだまだ爆発の直前段階には至っていないように思えます。
それよりも、ウィキペディア「黄色極超巨星」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%84%E8%89%B2%E6%A5%B5%E8%B6%85%E5%B7%A8%E6%98%9F
> 黄色極超巨星は、赤色超巨星の段階が終わり、青色方向に遷移する途中の段階である。
こちらのほうが本当にヤバイ状態にあると言えそうです。

最後に一言。
ここに記した内容は多くが私個人の見解であり、調べてもらえば分かるように
現在の世の”定説”とはかなり異なっています。初学者に対して話す場合は
「超新星爆発のメカニズム詳細はいまだ解明されていない」
としておくほうが無難です。





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