EMANの物理学 過去ログ No.11770 〜

 ● カップリングした2準位系における時間発展演算子の固有ベクトル

  投稿者:teru - 2011/12/06(Tue) 02:11  No.11770 
はじめまして。量子力学に関して質問が4点あり、書き込みさせていただきました。

ヒルベルト空間における時間発展演算子の固有値、固有ベクトルについてです。

Time evolution operator
<tex>U(t, t _{0} )=exp[- \frac{1}{ \hbar } H \left(t-t _{0} \right) ]</tex>   ・・・(1)

We shall calculate the time evolution operator of a coupled two-level system (<tex>|\phi_{a}></tex> and <tex>|\phi_{b}></tex>, with energies <tex>\varepsilon_{a}</tex> and <tex>\varepsilon_{b}</tex>, and a coupling <tex>V_{ab}</tex>, represented by the Hamiltonian

<tex>H = (\begin{array}{cc}\varepsilon_{a} & V_{ab} \\[4pt]V_{ba} & \varepsilon_{b} \\[4pt]\end{array})</tex>   ・・・(2)

<tex>V_{ab}=V ^{*}  _{ba}=|V _{ab} |exp \left(-i \chi \right) </tex>     <tex>0 <  \chi  < 2 \pi </tex>   ・・・(3)

Where <tex>|V _{ab}|</tex> is the modulus of <tex>V _{ab}</tex> and <tex>\chi</tex> is its phase.

質問1.ここでハミルトニアンの固有値と固有ベクトルを導出するのですが、固有ベクトルを以下のように導出する過程がわかりません。式の形的に、回転させたのかと思い、ギブンス回転でやっていたのですがどうにもうまく行きません・・・。

<tex>| \Psi  _{+} >= \cos  \theta exp \left(-i \chi /2\right) | \phi  _{a} >+\sin \theta exp \left(i \chi /2\right) | \phi  _{b}></tex>   ・・・(4)

<tex>| \Psi  _{-} >= -exp \left(-i \chi /2\right) \sin  \theta | \phi  _{a} >+ exp \left(i \chi /2\right) \cos \theta | \phi  _{b}></tex>   ・・・(5)

where is a transformation angle defined by
<tex> \tan 2 \theta = \frac{2|V _{ab} |}{ \varepsilon  _{a} - \varepsilon  _{b} } </tex>     <tex>0 <  \theta  < 2 \pi </tex>   ・・・(6)

質問2.
<tex>(4) = (\begin{array}{c}\cos  \theta exp \left(-i \chi /2\right)\\[4pt]\sin \theta exp \left(i \chi /2\right)\\[4pt]\end{array})</tex>

<tex>(5) = (\begin{array}{c}-exp \left(-i \chi /2\right) \sin  \theta\\[4pt]exp \left(i \chi /2\right) \cos \theta\\[4pt]\end{array})</tex>

<tex>  \Psi = (\begin{array}{cc}\cos  \theta exp \left(-i \chi /2\right) & exp \left(i \chi /2\right) \cos \theta \\[4pt]-exp \left(-i \chi /2\right) \sin  \theta & \sin \theta exp \left(i \chi /2\right) \\[4pt]\end{array})</tex>

このように理解しているのですが、正しいのでしょうか?またブラケットのような文字式よりも行列の方が直感的で見やすいと思うのですが、(4)式などをこのように表記しないのはなぜですか?

質問3.
この状態関数の行列はカップリングした2準位という制約における式をあらわしているはずですが、これはどういう状況をイメージすればよいのでしょうか?

質問4.
このあたりの学習に向いている量子力学の教科書を教えていただけませんか?リウビユ空間での密度演算子の時間発展も冬休み中に勉強したいと思っています。当方、化学科の学生なのですがこのあたりの話をできれば和書で勉強したいと思っています。数学、物理の教科書でこの辺に関連する、またはみなさんがこの辺の勉強で使用した教科書があればご教授ください。


【修正】
あもんさんにご指摘された箇所を修正いたしました。
このようなミスを見落としてしまい申し訳ございません。

  投稿者:あもん - 2011/12/06(Tue) 16:02  No.11772  <Home>
teruさん:
http://www.geocities.jp/amon009tm/memo/teru.png

  投稿者:teru - 2011/12/06(Tue) 18:31  No.11774 
あもんさん、非常に分かりやすい説明をありがとうございます。改めて自分の不勉強を実感し、もっと厳密に勉強したいと思いました。

1箇所分からないところがあったので、再度質問させていただきます。

<tex>\lambda = \varepsilon  _{+}</tex>の場合の固有ベクトルを
<tex>\Psi_{+} = (\begin{array}{c}\cos  \theta exp \left(-i \chi /2\right)\\[4pt]\sin \theta exp \left(i \chi /2\right)\\[4pt]\end{array})</tex>

とすると、(*)の位相部分は自動的に成立し

<tex> \left( \varepsilon  _{a} - \varepsilon  _{+} \right)  \cos  \theta +V \sin  \theta =0</tex>

となっていますが、

質問5.「位相部分が自動的に成立する」とはどういうことなのでしょうか?

質問6. <tex> \left( \varepsilon  _{a} - \varepsilon  _{+} \right)  \cos  \theta +V \sin  \theta =0</tex>はどのようにして導き出されたのでしょうか?

もしよろしければ質問4について、この辺のレベルの勉強で使用された教科書などをご教授いただけませんか?


  投稿者:あもん - 2011/12/06(Tue) 21:07  No.11776  <Home>
teruさん:

失礼。説明が不十分だったようです。

質問6ですが、 $\Psi_+$  の式を(*)に代入しています。それで  $(\varepsilon_a - \varepsilon_+)\cos\theta +V\sin\theta =0$  が出ます。質問5ですが、 $\Psi_+$  の式において"あらかじめ"上成分の位相を  $-i\chi/2$ , 下成分の位相を  $i\chi/2$  と設定して(*)に代入したとき位相部分が成り立つようにしているという意味です。

質問4ですが、私が一通り読んだ教科書は小出昭一郎著「量子力学」裳華房です。しかしこれは密度演算子についてはほとんど触れていません。ランダウ=リフシッツも多少読みましたがあまりお勧めできません。J.J.サクライは部分的に熟読しました。なかなか良い教科書です。密度演算子について触れていたかどうかはちょっと記憶にありませんが、確か触れていたと思います。ディラックはあまり読んでいません。私は素粒子論をやっていたので、すぐに場の量子論に進んでしまいました。量子力学は場の量子論の勉強の中でちゃんと知っていった印象です。ちなみに、最近の、特に入門書は酷い印象を受けるものが多いです。昔の教科書の方が良いものが多かったように思います。

化学専攻ということであれば、あまり深入りするのもどうかと思います。量子論は底なし沼のような側面があって、きっちり知ろうとするとかなり"深い"です。今回の件だけで考えても、ケットベクトルの本当の意味をちゃんと説明すれば、私のノートを読んでくださいとしか言いようがない。EMAN さんと違って、私のノートは初学者に不親切です。(^^; そして密度行列と関連して観測の問題、多体系を論じるなら場の量子論、そこに現れる紫外発散の問題、くりこみ理論。ゲージ場ともなれば特異系の処理とBRS処方など。経路積分に非摂動論。どこまでも続きます。現実的なことを言えば、どこで切り上げるかが1つのポイントになります。どこまでも切り上げない人が素粒子論をやっているわけです。

私のノートは家のマークをクリックすれば見ることができます。

  投稿者:teru - 2011/12/07(Wed) 00:00  No.11777 
あもんさんありがとうございます。

ブラケットに関連して再度質問があります。

質問7.以下の認識で正しいのでしょうか?
<tex>< \phi _{a} |H| \phi _{a} >= \varepsilon _{a}</tex>
↑状態<tex>| \phi _{a} ></tex>(式中のケットベクトル)に物理量H(この場合はエネルギー)を測定する操作が作用したときに観測される、状態<tex>| \phi _{a} ></tex>(式中のブラベクトル)の物理量Hの期待値(実測される値?)

<tex>< \phi _{b} |H| \phi _{b} >= \varepsilon _{b}</tex>
↑状態<tex>| \phi _{b} ></tex>における物理量Hの期待値


質問8.以下の2つはどういう意味なのでしょうか?
<tex>< \phi _{a} |H| \phi _{b} >= V _{ab}</tex>

<tex>< \phi _{b} |H| \phi _{a} >= V _{ba}</tex>
↑状態<tex>| \phi _{a} ></tex>に物理量Hを測定する操作が作用したときに観測される、状態<tex>| \phi _{b} ></tex>の物理量Hの期待値?
  →状態<tex>| \phi _{a} ></tex>で観測されるカップリングした状態<tex>| \phi _{b} ></tex>のエネルギーの期待値?



授業で年内にtime ordered expansion、グリーン関数までやって年明けからリウビユ空間での密度演算子に入るようです。その後は量子電磁力学になっています。このままの状況で行くと単位落とす気がします。ディラックとフォン・ノイマンの教科書は勉強しておくように言われてますが手を出せていません…量子力学の基礎を学ぶのにこれらの教科書は必須なのでしょうか?深入りする気はないのですが、基礎が分からず授業にもついていくのも難しい状況なので、せめて単位を取れるくらいの勉強は冬休みの内にしておきたいと思っています。

J.J.サクライは人気ありますね。今後の勉強で必要そうなのでやってみます。あもんさんのWebサイトは最初のレスを頂いたときにお気に入りに登録済みです。本当に助かります!

  投稿者:あもん - 2011/12/07(Wed) 01:51  No.11778  <Home>
質問7ですが、あえて物理的な意味をいえば、そういう意味になります。質問8ですが、あえて物理的な意味をいえば、 $\hat H|\phi_a \!>$  という状態において  $\phi_b$  が観測される確率振幅(大きさ自乗が確率となるもの)です。しかしこれらのことはまったく重要ではありません。 $|\phi_a \!>$  と  $|\phi_b \!>$  を2次元複素ベクトル空間の基底ベクトルだと考えた時、ハミルトニアンという抽象的な線形演算子がこの基底のもとで行列として表示できるということをいっているだけなのです。

慣性モーメント  $I$  とか応力  $T$  などの"テンソル"をご存知でしょうか? もしご存知なら、例えば  $I$  を成分表示するときにどうするでしょう? 基底ベクトルを  $\vec e_i$  として、

<tex>I_{ij} = \vec e_i \cdot ( I \cdot \vec e_j )</tex>

とするでしょう? これと同じことをやっているのです。

<tex>H_{mn} = <\! m| H | n \!></tex>

基底ベクトルが  $|1\!>$  と  $|2\!>$  なら  $H_{mn}$  は  $2 \times 2$  の行列です。でも  $H$  自体は行列ではなく演算子やらテンソルなわけです。この違いを明確にしましょうというわけです。明確にしないと、基底が変わったとき混同しやすいのと、場の量子論においては本質的に成分表示をすることが無意味になるからです(表示を作っても汎関数微分方程式のような化物のような数学にしかならないので)。

なるほど、深入りしたいんじゃなくて、卒業という現実的な目的のためですか。余計な心配でした。どうやら大学のレベルが高いようですね。確かに化学専攻でも量子電磁気学は何らかの形で通じてなければいけないことは何となくわかります。しかし量子電磁気学はまともにやったらかなり難しいと思います。大学によってはかなりゆる〜くお茶を濁すようにやってくれると思うんですが、担当講師次第ですね。化学の場合、他に覚えたり勉強することが沢山ありそうなので気の毒すぎる…。どうも困った話ですね。(^^;