EMANの物理学 過去ログ No.11450 〜

 ● 相対論的等密度球の重力エネルギー

  投稿者:cqf02343 - 2011/11/07(Mon) 10:15  No.11450 
今日は。

高密度星のエントロピーに関心があるんですが、それに関連して
質量M,半径R,の等密度球の重力エネルギーUについて、相対論
的な値を知りたいのです。

ニュートン力学では U=−(3/5)GM^2/R  で与えられるこ
とは少し有名かと思います。

では、一般相対論的な場合はどうなるんでしょうか?
導出過程はさておき、取りあえずは結果のみでいいです。
(もしかすると学問的にも難問だったのかも知れませんが。)

  投稿者:あもん - 2011/11/07(Mon) 23:21  No.11458  <Home>
cqf02343 さん

ニュートン力学と一般相対論では物質と重力場のエネルギーの分配の定義が異なります。ニュートン力学では星の重力場のエネルギーは、おっしゃるように負になるんですが、一般相対論では正になります。一般相対論では、ニュートン力学のいう重力場のエネルギーが物質の方にくりこまれている関係になっています。

シュワルツシルトの内部解(密度一定球)の、物質のエネルギー  $E_m$  は以下のように計算されます。

<tex>E_m = \frac{2\pi\rho R^3}{3} \left\{ \frac{9(1-x)}{2x} \left( \frac{\arcsin\sqrt{x}}{\sqrt{x(1-x)}}-1 \right) -1 \right\}, \qquad x=\frac{8\pi G\rho R^2}{3}</tex>

{…}の部分は  $x=0 \sim 8/9$  において  $2$  から  $0.641$  に単調減少します。 $x=8/9$  は臨界密度に相当し、このとき星の中心部の圧力が無限大になるので、 $x$  はそれ未満です。
一方、これに重力場のエネルギー  $E_g$  を加えたもの、すなわち系全体のエネルギーは、

<tex>E_m + E_g = \frac{4\pi\rho R^3}{3}</tex>

になるということは、ある定理(全エネルギー=遠方で推察される星の重力質量)によってわかるので、重力場のエネルギーは上2つの式の差になります。それは正の値になります。シュワルツシルト内部解と"ある定理"に関しては私の一般相対論のノートを参考にして下さい。

http://www.geocities.jp/amon009tm/

  投稿者:cqf02343 - 2011/11/08(Tue) 02:18  No.11460 
あもんさん

うわっ、ズバリそのもの!
c=1の単位系ですね。
石頭なので、これからよく咀嚼してから再度御礼にきます。
まず取りあえずは有難うございました。

  ※ホームページ瞥見。何か"簡潔美の結晶"という感じですね。(^^)
   今後学ぶ身にはとても参考になりそうです。

  投稿者:あもん - 2011/11/08(Tue) 06:07  No.11461  <Home>
はい、 $c=1$  の単位系です。書き忘れました。

ところで、先ほどの  $E_m$  は  $g$  を時空計量の行列式として  $E_m = \int d^3x \sqrt{-g}\rho$  で計算した、一般相対論でいう物質のエネルギーなんですが、定常的な場合、空間計量の行列式を  $\gamma$  として、 $E'_m = \int d^3x \sqrt{\gamma} \rho$  というエネルギーも考えられます。これは重力ポテンシャルによる寄与を含まない物理的な物質のエネルギーというイメージになります。要するにエネルギー密度×体積なわけですから。これを計算して全エネルギー  $M=(4/3)\pi\rho R^3$  から引くと、重力エネルギーとして、

<tex>  E'_g = M \left\{ 1 - \frac{3\sqrt{1-x}}{2x} \left( \frac{\arcsin\sqrt{x}}{\sqrt{x(1-x)}} -1 \right) \right\}, \quad x = \frac{8\pi G\rho R^2}{3}=\frac{2GM}{R}</tex>

を得ます。これがおそらく cqf02343 さんの求めているものでしょうね。非相対論的極限  $x \sim 0$  で、 $E'_g \sim -3GM^2 / 5R$  になります。つまり負であるニュートンの重力エネルギーの相対論版になってるわけです。極限の計算はちょっと難しいです。

<tex>  \arcsin(x) = x + \frac{1}{6} \ x^3 + \frac{3}{40} \ x^5 + \cdots</tex>

<tex>  \frac{1}{\sqrt{1-x}} = 1 + \frac{1}{2} \ x + \frac{3}{8} \ x^2 +\cdots</tex>

に注意してください。積分はそんなに難しくはないと思われます。

  投稿者:cqf02343 - 2011/11/08(Tue) 23:17  No.11473 
《今流行のつぶやき》

x=シバルツシルド半径/R の無次元量らしい。

球を等密度を保ちながらジワジワと圧縮していく(xを大きくしていく)と、
物質エネルギーEmが減少(ニュートン力学でいう物質エネルギーとニュート
ン力学でいう重力エネルギーの和)した分だけ一般相対論的な重力エネルギー
Egが増加するようだ。つまり物質エネルギーの一部が一般相対論的な重力
エネルギー(正値)に転化したと解釈できそうだ。
 x=8/9(ブラックホールになる直前)まで球が圧縮されると中心圧力が無限
大に漸近するとならばその中心部から自発的にブラックホールに転化していく
らしい。

 x≒0で展開するのはできますが積分の方が?です。
御都合がつき次第、お手数ですが∫ρ・γ^1/2dvの計算を教えて下さい。

  投稿者:あもん - 2011/11/09(Wed) 02:08  No.11475  <Home>
<tex>E'_m = \rho \int_{星内部} dr d\theta d\phi\ \frac{r^2 \sin\theta}{\sqrt{1-(8/3)\pi G \rho r^2}}= 4\pi\rho \int^R_0 dr\ \frac{r^2}{\sqrt{1-(8/3)\pi G \rho r^2}}</tex>
<tex>= \frac{4\pi\rho}{k\sqrt{k}} \int^{\sqrt{k}R}_0ds \ \frac{s^2}{\sqrt{1-s^2}}= \frac{4\pi\rho}{k\sqrt{k}} \int^{\arcsin(\sqrt{k}R)}_0d\theta \ \sin^2 \theta</tex>
<tex>= \frac{2\pi\rho}{k\sqrt{k}}\ \left( \arcsin(\sqrt{k}R) - \sqrt{k}R \sqrt{1-kR^2} \right)= \frac{2\pi\rho R \sqrt{1-kR^2}}{k}\left( \frac{\arcsin(\sqrt{k}R)}{\sqrt{k}R\sqrt{1-kR^2}} -1 \right)</tex>

途中、 $k=(8/3)\pi G\rho$  とおいて、 $\sqrt{k}r=s$ ,  $s=\sin\theta$  という変数変換をしています。

<tex>\int^a_0 d\theta \ \sin^2 \theta=\frac{1}{2} \left( a - \sin a \cos a \right)</tex>

は半角公式を使って導かれます。

一般相対論的な物質のエネルギー  $E_m$  は  $\sqrt{g_{00}}$  の因子が掛けられていて、重力ポテンシャルの中にいることが考慮されているエネルギーなんです。重力の底の方にいる物質はエネルギーが少ないとみなされます。そのおつりが重力場のエネルギー(正の値)になっています。これがニュートン力学と分配が違うと言ったことです。もうおわかりのようです。

今のように定常的な問題の場合は、 $E'_m = \int d^3x \sqrt{\gamma} \rho$  を考えることでニュートン理論でいう物質のエネルギーを作れますが、非定常的な場合は空間計量が構成できないので、これは不可能になります。

ちなみにシュワルツシルト半径  $a$  のブラックホールのエネルギーは $M=a/2G$  ですが、このエネルギーは地平面外部の重力場が全部担っています。地平面内部は関係ない(0と評価してよい)という結果になります。(10年前くらい、ここにいる甘泉法師さんと二人で検討しました。)

  投稿者:cqf02343 - 2011/11/09(Wed) 05:53  No.11476 
>一般相対論的な物質のエネルギーEmは√(g00)の因子が掛けられていて、重力ポテンシャルの中にいることが考慮されているエネルギーなんです。重力の底の方にいる物質はエネルギーが少ないとみなされます。そのおつりが重力場のエネルギー(正の値)になっています。これがニュートン力学と分配が違うと言ったことです。

了解です。

>今のように定常的な問題の場合は、Em=∫√(g00) ・γ・dv を考えることでニュートン理論でいう物質のエネルギーを作れますが、非定常的な場合は空間計量が構成できないので、これは不可能になります。

漠然と了解です。
一般相対論は事情で1年後に正面から取り組みます。


>ちなみにシュワルツシルト半径aのブラックホールのエネルギーはM=a/2Gですが、このエネルギーは地平面外部の重力場が全部担っています。地平面内部は関係ない(0と評価してよい)という結果になります。(10年前くらい、ここにいる甘泉法師さんと二人で検討しました。)

成るほど。
帯電した金属球内の電場はゼロで、球外にのみ電場エネルギーが存在するの
と偶然でしょうがソックリですね!



いろいろ教えていただき有難うございました。
(またいつかお世話になるかとも・・)