EMANの物理学 過去ログ No.11356 〜

 ● 化学ポテンシャル

  投稿者:あもん - 2011/10/24(Mon) 15:58  No.11356  <Home>
EMANさんの「統計力学」の記事、
http://homepage2.nifty.com/eman/statistic/fermion.html
の終わりの方、ちょっと斜め読みしただけなんですが…

>しかしとにかく、フェルミオンの化学ポテンシャルは
>かなり大きな正の値であることだけは確かだ。

これはどうなんでしょうか?高温や粒子数密度が低い場合、
フェルミオンの化学ポテンシャル(−基底状態のエネルギー)
も負になるはずなんですが、何か読み間違ってますでしょうか?


  投稿者:EMAN - 2011/10/25(Tue) 00:36  No.11357 
あまり周辺事情を知らないものですから近視眼的に書いてます。
教えていただけると助かります。

  投稿者:あもん - 2011/10/25(Tue) 00:58  No.11358  <Home>
例えば理想気体なんかは各状態に稀にしか粒子が入ってないので、
 $f(\epsilon)$  は基底状態においてもほとんど  $0$  に近いです。
つまり $\mu < \epsilon_0$  が実現されています。ボルツマン統計の
近似ができるということは  $\mu < \epsilon_0$  が必要です。
フェルミオンの基底状態付近で  $f(\epsilon)$  が  $1$  に近いとしたら、
それは"縮退が強い"と、普通は呼ばれます。

最近、統計力学のまとめノートを書いていたので、EMANさんは
どのように書いているのだろうと、少し読ませていただきました。
理想気体とボルツマン統計(分布)については、私の統計力学のノート
にあるので、良かったら参考にして下さい。

http://www.geocities.jp/amon009tm/


  投稿者:ASA - 2011/10/25(Tue) 06:19  No.11359 
あもん さん No.11358
>基底状態においてもほとんど0に近いです。
これ間違いでしょう。
 非常に希薄な場合つまり粒子数1である大きな領域にとじこめられた場合を考えます。
すると絶対零度では、基底状態に落ち込んでいますから、f(ε)=1です。

 論理的には、<ε> >> μ>1 であれば、ボルツマン統計への近似が正当化できます(β→0にて)。
 "ε0 > μ"がその必須要件ではありません。
 逆に基底状態に落ち込んでいる平均数は n0=1/(exp(β(ε0-μ))+1)ですから絶対零度β→∞で n0=1を満たすためには、2ε0>μ>ε0が必要になります(εi=(i+1)*ε0のケース,励起エネルギーと化学ポテンシャルの単純な関係が示される:普通、化学ポテンシャルはε0=0を基準にとられるが)。
 濃度を十分下げたという極限でこのような結果になります。濃度に応じてある程度温度が高くないとボルツマン統計への近似は正当化できません。
(テキストには、その条件が(V/N)>>(h/√(3mkT))^3と示されてます)

>フェルミオンの化学ポテンシャル(−基底状態のエネルギー)
も負になるはずなんですが、
 これも間違いですね。どの温度でも適用できるという条件でのμを調整するという要件では、ε0> μ>0なので化学ポテンシャルが負となる必然性がありません。(基底エネルギーε0を0にとるケースでは、化学ポテンシャルが負となるケースもありえます、ボルツマン統計によるμ=-kT(∂lnZ/∂N)_{V,T}との関係の整合性をとる場合など、しかし、先に示したように量子統計的には、μ>ε0>0です。)
 量子統計的観点からは、EMANさんの記述で問題ないです。(基底エネルギーε0>0であるため、μ>ε0>0でありε0より大きい。)
あもんさんの疑問は、古典近似した場合の化学ポテンシャルと量子統計的化学ポテンシャルをよく切り分けてないからだと思います。
 ちなみに、N個(N>>1)の粒子系で馬i=Nの条件でεi=(i+1)*ε0のとき、ε0>>kTの温度領域で近似計算をすると、μ=ε0+kT*ln(N)>0が得られます。
 ようするに、温度領域の問題ですね。基底状態は、低温領域なのでμが負になることはありえません。

  投稿者:あもん - 2011/10/25(Tue) 08:09  No.11360  <Home>
ASAさん:

国語的な誤解ですね。
EMANさんの記事を読みましたか?

>温度が上がったときにはμの値は上がるのか、それとも下がるのか。 
>それは今持っている条件だけでは何とも言えない。 (1) 式のNが
>一定になるように振舞うのは確かだが、それはこのグラフの積分値が
>一定になるという意味とは違うからだ。各エネルギー準位がどのように
>分布しているかによって決まるだろう。
>しかしとにかく、フェルミオンの化学ポテンシャルμはかなり大きな
>正の値であることだけは確かだ。

温度変化を語った後に「しかしとにかく」に続いてのこの文章だと、
「フェルミオンの化学ポテンシャルは"いつも"正の値である」
かのように聞こえるから、そういう主張をしていませんか?
と疑問を投げかけたのです。特別な場合にμが正になるのは当たり前です。

そういう主張ではないとEMANさんがおっしゃってくれるなら、
「それだとちょっとこの文章は語弊があるかもね」と返事する予定でした。
せっかく初学者にもわかりやすい良い記事なので、より良いものにして
欲しいと思うからです。

  投稿者:ASA - 2011/10/25(Tue) 10:11  No.11361 
あもんさん

>国語的な誤解ですね。
それにしては書き方が悪いですよ。
前のコメントを修正しましたが、温度領域の話ですよね。

>>フェルミオンの化学ポテンシャルμはかなり大きな
>>正の値であることだけは確かだ。
この前に
> この急落の度合いは温度によって大きく変化し、Tが 0 近くになると、次にあるグラフのように、あるところまでは 1 で、それ以上のエネルギーにある粒子数は 0 だという具合に境目がはっきりしてくる。
 と
EMANさんのもT=0近辺の低温領域をベースにして議論をしてます。
先に示したように
>>ちなみに、N個(N>>1)の粒子系で馬i=Nの条件でεi=(i+1)*ε0のとき、ε0>>kTの温度領域で近似計算をすると、μ=ε0+kT*ln(N)>0が得られます。
と励起エネルギーに満たないような低温領域(刄テ>>kT)では、増加する関係が得られます。
kTは平均励起エネルギーに等しくて、それにln(N)と大きな数がかかっているから、EMANさんの「μはかなり大きな正の値」という記述は妥当です。
 (古典近似領域では、負になることもありますよ。この場合は、EMANさんの図が成立していないケースです。はなからf(ε)<<1で、境目なんかはっきりしてません。)

>温度変化を語った後に「しかしとにかく」に続いてのこの文章だと、
>「フェルミオンの化学ポテンシャルは"いつも"正の値である」
>かのように聞こえるから、そういう主張をしていませんか?
>と疑問を投げかけたのです。
 なので普通そのようには読み取りません。

  投稿者:ASA - 2011/10/26(Wed) 05:48  No.11362 
 量子系の化学ポテンシャルμの計算で気づいたことを述べます。
E=0,εの2つしかとりえない2準位系(3つ目の準位が非常に高すぎる場合なども近似的に相当)で1つの粒子が存在するケースを考えます。
 絶対0度T=0でフェルミ面をイメージし、化学ポテンシャル=フェルミ準位と考えるとμ=0となりますが、馬i=Nの条件に入れてちゃんと計算すると、μ=ε/2と温度Tに関係なく常に準位の中間値になります。また、T=∞でn0=n1と2つの準位に存在する割合が等しくなり<E>=ε/2とμと一致します。系のエネルギーに応じて状態の数が大きくならない系は、こんなことになります(負の温度とか)。

  投稿者:甘泉法師 - 2011/10/26(Wed) 20:11  No.11364 
こんにちは。

これまで強い縮退の近くしか考えていなかったのであもんさんのご指摘新鮮です。

たしかにフェルミオンのf(ε)の表式から化学ポテシャルとはf=1/2となるエネルギーεとみなせるので、高温でどんどんエネルギーの高い状態が占められ基底状態であってもf<1/2のような場合には化学ポテンシャルは正ではありえないと納得しました。

化学ポテンシャルが負になることの陽の説明を見つけました。
http://www.physics.umd.edu/courses/Phys603/kelly/Notes/IdealQuantumGases.pdf
P18 理想フェルミ気体の化学ポテンシャル、占拠数の温度変化のグラフ

ありがとうございます。

=甘泉法師=

  投稿者:ASA - 2011/10/26(Wed) 21:19  No.11365 
甘泉法師 さん No.11364

 あもんさんにも指摘しましたが、
>高温でどんどんエネルギーの高い状態が占められ基底状態であってもf<1/2のような場合
「 基底状態(きていじょうたい、ground state)とは、系の固有状態の内で最低のエネルギーの状態をいう。」
 なので、基底状態でエネルギーの高い状態が占められる(励起状態にある)ということは論理的に(用語の定義からして)ありえません。
 基底エネルギー準位の平均占有数が1/2以下になることはありますけど。

>高温でどんどんエネルギーの高い状態が占められ基底状態であってもf<1/2のような場合には化学ポテンシャルは正ではありえないと納得しました。
 先のコメントで2準位系に1粒子があるケースを示しましたけど、この系ではT→∞であっても化学ポテンシャルの値は常に正です(ちなみにT=∞で基底エネルギー準位の平均占有数が1/2になります)。
 また、f(ε)=1/2となる仮想的なエネルギーεを量子的制約により取れないケースもあります。

 EMANさんの解説のように量子統計的には、N=<ni>から化学ポテンシャルμを決めるしかありません。これは、系がどのような準位をとりえるかによるので、どんな系でも化学ポテンシャルが必ず負になるとはいえません。しかし、T=0近辺では、化学ポテンシャルが必ず正であることが言えます。
 (理想気体で高温低密度という特別なケースでは、古典近似による方法で化学ポテンシャルμの変化を見定めることができます)

  投稿者:ASA - 2011/10/27(Thu) 13:33  No.11366 
 もうすこし、まともな近似計算をしたら、εi=i*ε(等間隔のエネルギー準位:i=0,1,2...)の場合のμは、
 μ=(N-1/2)ε-(kT/2)*exp(-Nε/kT)
となりました。
 N>>1では、系内に存在する粒子数Nに比例します(直感で得た値が正しかった)。温度の依存性は、負となる模様です(指数部にNがあるので実質無視できる)。
ちなみに1粒子の場合としてN=1を代入する(温度依存性が最も顕著になる例を調べます)と
μ=(1/2)ε-(kT/2)*exp(-ε/kT)
 2準位系での値μ=(1/2)εを再現してます。
kT=(1/2)ε{フェルミエネルギー相当温度}のとき
μ=(ε/2)(1-exp(-2)/2)=(ε/2)*0.93
さらに倍のkT=εのときで
μ=(ε/2)(1-exp(-1)/2)=(ε/2)*0.82
準位間隔程度の温度では、あまり変わりません。
1eV=11604Kですから。数eVのエネルギー準位間隔だと温度が数万Kでもケミカルポテンシャルは、1〜2割程度しか減らないということがいえます。
 このように、古典近似した理想気体とかなり挙動が異なります。古典近似では、準位を連続近似していることの影響もおおきいですね。

追伸;数値計算では、
kT=(1/2)ε
μ=0.875457325*kT=0.875457325*(1/2)εと先の近似計算の結果と近いです。
しかし、
kT=ε だと
μ=0.05672574*kT=0.113451481*(1/2)ε
と急激に減少し、近似式が使えない範囲です。
ちなみにε/kT=0.949432887でμ=0になりました。
N=10だと、kT=Nεのときμ=0.4916kT
kT=Nεの温度でも、Nが大きいほど、近似式の値に近づきます。
N>>1 kT=Nε付近では
 μ=(N-1/2)ε+kT*ln(1-exp(-Nε/kT))
がより正確な近似式として使えます。

  投稿者:EMAN - 2011/10/30(Sun) 20:33  No.11385 
本当はこっちのことを先に考えないといけないのに、
GPSの話題でスイッチが入っちゃって
そっちのけになっちゃってます。 すみません。
もう少ししたら手をつけます。

  投稿者:あもん - 2011/10/30(Sun) 21:11  No.11387  <Home>
EMAN さん、了解です。

フェルミオンでも例えば気体だと化学ポテンシャルは負(基底状態のエネルギー未満)になり得るので、フェルミ分布の一般論のような項目で「正であるのは確か」と書くのは語弊があるんじゃない?と言ってるだけです。この一文を消すか、項目全体を縮退が強い場合に限った話にすれば良いと思いますが、個人的にはその一文を消せば良いと思います。

一方、負になることが不思議だと思っていて、ちゃんと理解したいということであれば、時間をかけて納得することは大事なことだと思います。

  投稿者:ASA - 2011/10/31(Mon) 05:18  No.11391 
あもん さん No.11387
>フェルミオンでも例えば気体だと化学ポテンシャルは負(基底状態のエネルギー未満)になり得るので
 さきに述べたように温度領域の話です。気体でもフェルミエネルギー程度の温度なら、必ず化学ポテンシャルは正です(理想気体ならどんな温度でも液体にすらならない)。

>個人的にはその一文を消せば良いと思います。
 個人的には、文脈から低温領域(フェルミエネルギー以下)の話とわかりました(フェルミ分布の一般論のような項目と受け取りません)。誤読する人がいるので、具体的なフェルミエネルギーを示して解説をつけたほうがよろしいかもしれません。