EMANの物理学 過去ログ No.10018 〜

 ● ニュートリノの質量

  投稿者:長尾晴景 - 2010/10/16(Sat) 10:08  No.10018 
皆様、大変High Levelの議論をされていて、感服致しております。

小生、疑問に感じている事がありまして、ご教示をお願いしたいと考えております。

例えば下のURLをご覧になって頂いても良いと思うのですが、ニュートリノ振動という現象があって、これは複数の種類のニュートリノの間で、質量の差が無いと起こらない現象だそうです。

http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/kogi/shimane-class09/shimanelec6_nuosci.pdf

しかし、物理学における重要な法則にエネルギー保存則と運動量保存則があると思います。
皆様ご存知の通り、光速度c=1の単位系では、粒子の質量m、運動量p、エネルギーEの間には次式のような関係があります。

m^2=E^2−P^2

エネルギーと運動量が一定に保たれるのであれば、質量は一定でなければならないと思います。

小生としては、ニュートリノ振動が起きるのだとすれば、それはむしろ複数のニュートリノの質量が厳密に同じである事を示しているような気がします。

上記URL他、小生なりに調べてみましたが、ニュートリノ振動と運動量保存則、エネルギー保存則の関係について言及しているものを見つける事が出来ませんでした。

ご教示をお願い出来ればと思います。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/10/16(Sat) 23:15  No.10020 
こんにちは。

太陽ニュートリノ問題
http://www.google.co.jp/url?sa=t&source=web&cd=2&ved=0CBkQFjAB&url=http%3A%2F%2Fwww.icepp.s.u-tokyo.ac.jp%2F~kaneda%2Fsannsya%2Ftransparencies%2Fshirai%2F%2591%25BE%2597z%2583j%2583%2585%2581%255B%2583g%2583%258A%2583m%2596%25E2%2591%25E8060728.ppt&ei=0rC5TOuKAoHsuAO7rbzQAw&usg=AFQjCNGJsjRweUM-_ME2QxwxHb1S2adozA&sig2=WrA_ebg790hCoSyT0cjIoQ

のPPTの15ページ

ニュートリノ振動は量子力学的効果。本質は不確定性原理。
静止したπ→μν崩壊でμの運動量pを超精密に測るとニュートリノ振動は見えなくなる!
発生点の不確定性が振動距離の程度よりも長くなり

はどうでしょう。
(あまりに長いので Google でニュートリノ 運動量 でご自分で検索してみつけたほうがいいかも)

=甘泉法師=

  投稿者:長尾晴景 - 2010/10/17(Sun) 08:08  No.10022 
甘泉法師 様

ご教示有難うございます。

理解するのに時間がかかりそうですが、Tryしてみます。


  投稿者:hirota - 2010/10/19(Tue) 11:13  No.10025 
エネルギーや運動量は合計が一定に保たれれば良いので、質量の違うニュートリノが混ざっててもかまわない。
発生した時点で1種類のフレーバーのニュートリノであっても、これには質量の異なるニュートリノが混ざってる。
複数の質量のニュートリノが飛んでると、質量差が速度差になって分離するが、1つの質量のニュートリノには、これまた複数のフレーバーのニュートリノ混ざってる。(観測されるニュートリノは1種類のフレーバー)

  投稿者:甘泉法師 - 2010/10/19(Tue) 21:27  No.10027 
こんにちは。

hirotaさん
>エネルギーや運動量は合計が一定に保たれれば良いので、質量の違うニュートリノが混ざっててもかまわない。

長尾さん
>m^2=E^2−P^2
>エネルギーと運動量が一定に保たれるのであれば、質量は一定でなければならないと思います。

EとPの同時固有状態については長尾さんに一票。

=甘泉法師=

  投稿者:hirota - 2010/10/21(Thu) 13:29  No.10030 
論理的帰結として、個々の粒子はEとPの同時固有状態じゃないことになります。(弱い相互作用で発生するニュートリノはフレーバーの固有状態だから質量の固有状態ではありえない)

なお、質量の違う複数粒子の合計の場合 m^2=E^2−P^2 は成立しない。
(例として 3^2=5^2−4^2 と 5^2=13^2−12^2 の合計なら (3+5)^2=64≠(5+13)^2−(4+12)^2=68 となる)

  投稿者:甘泉法師 - 2010/10/21(Thu) 21:27  No.10031 

こんにちは。Webでみつけた

http://jnusrv01.kek.jp/public/t2k/thesis/hiraide.pdf

の序論がわかりやすかったです。

=甘泉法師=

  投稿者:甘泉法師 - 2010/10/22(Fri) 08:03  No.10033 
こんにちは。 以下のように理解をまとめてみました。

前置装置でフレーバーの固有状態(エネルギーはE)が観測されたとして  |νe、E>

それは3つの質量固有状態(エネルギーはE)の重ねあわせであらわされる。|ν1、E>、|ν2、E>、|ν3、E>

それぞれは異なる運動量の固有状態でもある。
|ν1、E、p1>、|ν2、E、p2>、|ν3、E、p3>
 p1^2=E^2−m1^2
 p2^2=E^2−m2^2
 p3^2=E^2−m3^2

時間がたっても系のエネルギーはEのままだし、運動量のとりうる3つの値についての確率も変化しない。

3つを区別できるくらい精密に運動量を測定すれば系は質量固有状態となり、フレーバーの振動はなくなる。

=甘泉法師=

  投稿者:hirota - 2010/10/22(Fri) 10:58  No.10034 
ニュートリノの観測はフレーバー別なので、質量固有状態の観測は不可能。
質量固有状態の情報はニュートリノ振動の観測でしか得られない。

  投稿者:野次郎兵衛 - 2010/10/22(Fri) 21:52  No.10035 
>の序論がわかりやすかったです。
混合パラメーターって何や?

  投稿者:長尾晴景 - 2010/10/23(Sat) 00:37  No.10036 
ご教示有難うございます。

お蔭様で、ニュートリノ振動に関する小生の理解は格段に深まったと感謝致しております。

「ニュートリノのフレーバーの固有状態は、異なる質量の固有状態の混合である。」とのモデルが正しい、という仮定の下で、hirotaさんの主張に同意出来そうな気がします。

しかし、小生の疑問は「ニュートリノのフレーバーの固有状態は、異なる質量の固有状態の混合である。」とのモデルがそもそも正しいのか、という所にありまして、小生の疑問をもう少し具体的に申し上げたいと思います。

(1) エネルギー保存則と運動量保存則が正しいのとの仮定の下で、例えばhirotaさんの仰る(5+13)と(4+12)は一定に保たれる事になります。この場合、√{(5+13)^2-(4+12)^2}=√68も一定に保たれる事になります。この値は通常質量と解釈される量と思います。
この事から、ニュートリノが質量の混合状態であろうとなかろうと、エネルギー保存則と運動量保存則を認める限り、通常質量と解釈される量は一定に保たれる事になると思います。
この事から、フレーバーが変化したにせよ、エネルギー保存則と運動量保存則を認める限り、その粒子の質量は一定であると解釈するのが自然のように思います。

(2) 1粒子状態がエネルギーと運動量の同時固有状態でない(もしくは、ありえない)、というのは小生の理解の想定外でした。これを認めると上記(1)の主張は吹き飛んでしまうのかもしれません。しかし、1粒子状態がエネルギーと運動量の同時固有状態でないという事は、運動量保存則とエネルギー保存則と整合しないような気がします。
粒子の生成、検出の過程を考えたときに、生成された粒子のエネルギーと運動量(生成に関わる他の粒子のエネルギーと運動量から推定可能)と、検出された粒子のエネルギーと運動量(検出に関わる他の粒子のエネルギーと運動量から推定可能)を比較した時に、エネルギーか運動量の片方もしくは両方が、必ずしも一致しないという事にならないのでしょうか?

(甘泉法師さんより、「本質は不確定性原理」との記事もご紹介頂きましたが、保存則が破れているように見えるけど、不確定性原理の範囲内だからOK、という事なのでしょうか?)

(3) ニュートリノのヘリシティーが-1/2で、反ニュートリノのヘリシティーが1/2だという事から、やはりニュートリノの質量はゼロと考えるのが自然のように思います。

その道の人に取っては、「何を今更。」という事なのかもしれませんが、ご意見を伺えればと思います。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/10/24(Sun) 00:35  No.10038 
こんにちは。

>しかし、1粒子状態がエネルギーと運動量の同時固有状態でないという事は、運動量保存則とエネルギー保存則と整合し>ないような気がします。

ポテンシャルエネルギーがある場合にエネルギー固有状態が運動量固有状態ではない状態がある(例 調和振動子)。
ポテンシャルエネルギーのない自由空間でエネルギー固有状態でも運動量固有状態でもない状態がある(例 ガウス型の波動関数とそれから拡散している波動関数)。
ポテンシャルエネルギーのない自由空間でエネルギー固有状態が同時に運動量固有状態である状態がある(例 平面波)。
ポテンシャルエネルギーのない自由空間でエネルギー固有状態であるが運動量固有状態でない状態がある(例 球面波)。

崩壊前のエネルギー、運動量が正確に計測されていたとする。崩壊後の娘粒子のエネルギーと運動量が精密に測定されれば
ニュートリノのエネルギーと運動量はきっちりその差での固有状態でしょうが、娘粒子のエネルギーと運動量がゆるい測定の状態ならニュートリノもゆるい量子力学的状態にある、と考えます。

>(3) ニュートリノのヘリシティーが-1/2で、反ニュートリノのヘリシティーが1/2だという事から、

ニュートリノが質量を持てば速度は光速より遅いのできまったヘリシティーをもつことはないのでは...と考えます。


日々是勉強、間違いを正していただければ幸いです。

=甘泉法師=

  投稿者:長尾晴景 - 2010/10/24(Sun) 11:08  No.10040 
ご教示有難うございます。

随分正確に書いた積もりでしたが、説明が不適切だったようです。
こうしたやり取りでの意思疎通というのは難しいですね。

>1粒子状態がエネルギーと運動量の同時固有状態でないという事は、運動量保存則とエネルギー保存則と整合しないような気がします。

この文面の「1粒子状態」は「ニュートリノのフレーバーの固有状態であるところの1粒子状態」と書くべきだったかもしれません。

ただ、甘泉法師さんのご指摘、

>3つを区別できるくらい精密に運動量を測定すれば系は質量固有状態となり、フレーバーの振動はなくなる。

で、小生の疑問への回答は尽きているような気がして来ました。
(理解に時間がかかって申し訳ありません。)

もう少し小生のほうで考察してみたいと思います。

有難うございます。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/10/24(Sun) 18:01  No.10041 
こんにちは。
情報共有が有益かもしれないと思い勉強したWeb記事を紹介します。
------------------------------------------------------------------
東北大ニュートリノ科学研究センター
http://www2.awa.tohoku.ac.jp/rcns/?p=2146
カムランドでの原子炉反ニュートリノを用いた3世代振動パラメータ解析による θ13 に対する新しい制限

研究者とその卵の方へ 原子炉ニュートリノ振動
http://www.awa.tohoku.ac.jp/~suekane/KASKA/homepage/For_Physicists.pdf から

「この状態方程式は、外部磁場と電子のスピンの磁気モーメントの相互作用による電子の波動関数の変化の方程式...と全く同じ形をしている」
「電子のスピンの議論と全く同じプロセスで理解することができる。(ニュートリノ振動は、x 軸を中心としたスピンの歳差運動に対応する。)」
「この意味で、ニュートリノ質量の直接測定とニュートリノ振動の測定は相補的な意味を持つ。」
「クォークもニュートリノと全く同様に振動していると考えることもできる。」
「なお、2つの振動は同じ原理だが、ニュートリノ振動は、振動がゆっくりで、振動が直接見えるような系での測定、クォークの振動は、振動が早すぎて測定できない系での測定に対応する。」
「πが静止している場合、ニュートリノの運動量は...のように完全に決定される。これはmν を含むので、ニュートリノの質量が異なれば、運動量は実際には異なることを表す。しかしπが静止しているということは、不確定性原理により、その位置が決まらないということであり、どこで崩壊したかを知ることができず、ベースラインの長さが決まらないため、ニュートリノ振動を測定することは原理的にできない。ニュートリノ振動を測定するためには、ベースラインを知ることが必要。不確定性原理より、ベースラインをδL の精度で知ることができる系では、πの運動量を...より良い精度で知ることは原理的に出来ない。したがって、それから崩壊したニュートリノの運動量にもそれに対応した原理的な不定性があることになる。ニュートリノ振動が原理的に測定できる系では、ニュートリノの質量の違いにより生じる運動量の違いよりこの不確定性が大きくなるので、その不確定性の範囲内で、p1 = p2になる場合も含まれる。不確定性による広がりの範囲内で、運動量の違いを問題にしても意味がないので、最初から二つの運動量が同じであると見なしても、最終的に得られる物理現象には、不確定性以上の違いは生じない‥‥、ということで正当化することはできる。」
「運動量でなく、エネルギーが同じとして定式化する場合もある。Dirac 方程式のを解く時に良く示されてい
るように波動関数は、... のように普通運動量... をパラメータとして、エネルギーは、E^2=p 2 + m2 のように、運動量と質量により定義される。そのため後の「=完全な取り扱い=」の中でみられるように、ν e、ν μ を一つの状態と考えて取り扱う時は、運動量が同じとして取り扱うことが便利である。」


「不確定性の問題は、次のように考えることもできる。今の場合崩壊は2体崩壊なので、陽電子の運動量を正確に測定できれば、ニュートリノの質量を区別することができ、その崩壊がν1に崩壊したのか、ν 2に崩壊したのかを区別するこ
とができる。この場合は、ν1は、ν1のままで、ν 2はν 2のままで変化しないので、陽電子の測定で、もしν1に崩壊したと分かった場合、そのニュートリノがν μ である確率はどこで計ってもsin2θ だし、ν 2の中でν μ の確率はcos2θ になる。したがって振動パターンは観測できない。」

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=甘泉法師=

  投稿者:野次郎兵衛 - 2010/10/25(Mon) 16:50  No.10043 
パラメーターの範囲を広くすれば信頼度が上がるのは
当たり前。
実験屋さんはSF小説理論と相互作用しないほうがよい。

  投稿者:長尾晴景 - 2010/10/25(Mon) 22:56  No.10044 
甘泉法師 様

大変詳細な資料をご紹介頂き、有難うございます。

ニュートリノの質量差を区別できる程に、精密に運動量を測定できれば、フレーバーの振動は観測されなくなる、という事で、小生の疑問は「ほぼ」解決したように思います。

最初に、「本質は不確定性原理」とご教示頂いた通りでした。
理解に時間がかかり、お恥ずかしい限りです。

さて、聞くは一時の恥という事で、「ほぼ」の部分も解決したく、恐れ入りますがもう一点お願い致します。

ご紹介頂いた、

http://www.awa.tohoku.ac.jp/~suekane/KASKA/homepage/For_Physicists.pdf

の中に

<tex> \pi  ^{+}  \Rightarrow e ^{+} + \nu  _{e} </tex>

なる反応が例に挙げられています。
この反応で、π中間子と陽電子の運動量を精密に測定すると、ニュートリノは質量固有状態になる旨の記載があると思います。

ここで、質量の固有状態はフレーバーの混合状態になると思います。
陽電子の方はフレーバーの固有状態なのに、ニュートリノの方がフレーバーの混合状態になるのは、ワインバーグ・サラム理論からは許容されないと思います。ワインバーグ・サラム理論では、ゲージ場と結合するカレントが世代毎に定義されているからです。

この点は如何考えたら良いでしょうか?

ニュートリノ振動はワインバーグ・サラム理論では説明出来ない現象なので、この辺はまだ理論が確立していない、という事になるのでしょうか?

ご意見を伺えればと思います。

  投稿者:hirota - 2010/10/26(Tue) 10:15  No.10046 
質量固有状態は運動量だけでなくエネルギーも精密測定が必要です。
中間子のような寿命のある粒子にエネルギー固有状態はありません。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/10/27(Wed) 12:25  No.10047 
 こんにちは。

>ニュートリノ振動はワインバーグ・サラム理論では説明出来ない現象なので、この辺はまだ理論が確立していない、という事になるのでしょうか?

>ご意見を伺えればと思います。

 私にはわかりません。今の勉強の具合では、ニュートリノが質量をもつのでフレーバーは実は保存量でない、と検討をつけていますが...。

=甘泉法師=

  投稿者:長尾晴景 - 2010/10/28(Thu) 05:24  No.10049 
甘泉法師 様、 hirota 様、

ご意見を頂き、有難うございます。

また、種々ご教示有難うございます。

大変勉強になりました。

小生の方でも、自分なりに考察してみたいと思います。