EMANの物理学 過去ログ No.9567 〜

 ● 慣性乗積が表すベクトルって?

  投稿者:学部二年生 - 2010/06/09(Wed) 23:07  No.9567 
慣性テンソルのページについてなのですが、
http://homepage2.nifty.com/eman/dynamics/mom_tensor.html
における慣性乗積の説明として、

>これを「慣性乗積」と呼ぶ。 第 2 項のベクトルの内、角速度ベクトルと同じ方向のベクトル成分を取り去ったものであり、
また、
>慣性乗積というのは、 位置ベクトル方向を向いたベクトルの内、角速度ベクトル方向成分を取り去ったものであると言えよう。

とありますが、具体的には何を指して「慣性乗積が表すベクトル」だと言っているのでしょうか。
慣性テンソルの対角成分を0にしたもの(つまり慣性乗積しか入っていない行列)を角速度ベクトルにかけたものでしょうか。
と、聞いておいて、それは角速度ベクトルと直交しないのですが。

理解力が足りなくてすいません。
どなたか教えてくれると助かります。

  投稿者:EMAN - 2010/06/10(Thu) 14:33  No.9569 
 こんにちは。
 えーっと、確かに、今読み返すと私にも分かりにくくなってますね。
 こりゃこまった。

 これを書いた頃は式番号を入れるのが技術的にかなり面倒だったこともありまして・・・。

> 第 2 項のベクトルの内、角速度ベクトルと同じ方向のベクトル成分を取り去ったものであり、
 
という部分について考えるときには、かなりさかのぼって、

<tex>\Vec{L} \ =\ mr^2 \Vec{\omega} \ -\ m(r\cdot\omega)\Vec{r}</tex>

という式を見ながら考えないといけないようです。
 直前の行列で書かれた式を見てるとワケが分からなくなりますね。

 これだけで解決するかな?
 あまり自信ないけど、とりあえず。

  投稿者:yuya - 2010/06/10(Thu) 16:32  No.9571  <Home>
学部二年生さん、はじめまして。

たぶんあの記事を一番読み倒している読者は私だと思いますが(ホンマかいな)、
私も疑問がいっぱい生じて、徹底考察したことがあります。
http://www.geocities.jp/abreverse/emanphys/moment/index.html
の前半部と、そこからリンクされているドキュメントに目を通していただければ、
疑問のいくつかは解決するかもしれません。

ただ、私の書いていることがすべて正しい保証はどこにもないので、
分かりにくい点があったらぜひご指摘ください。

  投稿者:学部二年生 - 2010/06/11(Fri) 00:56  No.9574 
色々と回答ありがとうございます。
僕の最初の疑問点については、EMANさんには申し訳ないのですが、
やはり「もともとの記述がおかしい」ということになるのだと思います。
その他、yuyaさんの提示されたページを見て、
自分なりに必死で考えてみたので、思ったことや疑問点を書いてみます。
間違っていたら指摘をお願いします。

まず、円運動をしているということは、外力が働いているということですよね?
この時点で角運動量の保存を考える事自体が無意味になります。
よって、この点についてもEMANさんの議論はおかしいような気がします
(yuyaさんの提示されたページに同様の話がある)。
角運動量が保存するのは、惑星の運動みたいな、回転面上に中心力が乗る場合の話ではないでしょうか。

yuyaさんの方についてなのですが、よくわからなかったのは「角速度ベクトルが変化することについて」の部分です。
慣性系で回転している物体は、同じ角速度を持つ回転系では向心力と遠心力が釣り合ってトルクが0だ、という記述がその前にあるにもかかわらず、この章では「回転系で遠心力から得たトルクが云々」という話が出てくるのが疑問です。
向心力をかけない場合の話をしてるのかとも思いましたが、その場合、慣性系においては静止または等速直線運動になるので、みそすり(歳差)運動などしないと思います。
この章はどういう状況を指しているのでしょうか。

そして結局、慣性乗積というものがなんなのかがさっぱりわかりません。


非常に参考にさせてもらっておいて、「これおかしくない?」などと突っ込みまくるのは結構気が引けたりするのですが、どうかよろしくお願いします。
その代わり(?)こちらも突っ込みは大歓迎です。

  投稿者:大学生 - 2010/06/11(Fri) 09:01  No.9576 
>慣性系においては静止または等速直線運動になるので、
>みそすり(歳差)運動などしないと思います。

私も昔はそう思ってました。w
慣性系でも、角速度ベクトルが慣性主軸からズレていれば、
普通に歳差運動すると思います。

  投稿者:のま - 2010/06/11(Fri) 12:28  No.9577 
例えば軸対称な物体があるとき、それを無重力空間で放り投げると、一般に歳差運動します。この辺をゴールに決めて勉強してみるのも良いかと。

  投稿者:学部二年生 - 2010/06/11(Fri) 14:33  No.9579 
ちょっと僕の書き方が悪かったように思います。
のまさんの言うとおり、例えば、軸対称な剛体が初期条件として慣性主軸以外の方向に角速度を持つならば、外力を与えずとも、その物体は慣性系において歳差運動をする、というのは納得しています。
しかし、yuyaさんの提示されたページにおける「角速度ベクトルが変化することについて」では、とにかく質点がある軸の周りを運動することを仮定しているようなので、その為には外力を掛ける必要がある気がして、説明として何か腑に落ちない物があります。
その章にある図では質点が慣性系において円運動を行うような図が書いてありますが、これを行うためには外力が必要では?ということです。
で、その様な力をかけると仮定するならば、ある瞬間の回転系におけるトルクと言うのは遠心力ではなく外力由来のものではないでしょうか?

なんか元の話からずれてきているような気がします。すいません。

  投稿者:のま - 2010/06/11(Fri) 16:35  No.9580 
その点はちゃんと理解しているということで。了解です。

  投稿者:TOSHI - 2010/06/13(Sun) 03:09  No.9583 
 どもTOSHIと申します。

>学部二年生さん

 地球の自転は別に太陽などの引力なくても半永久的でとまりません。等速直線運動してる物体は外力加えないと止まらないのと同様,等速回転しているものは外力がないとトルクはゼロなので止まりません。

 大きさのない質点なら回転自由度考える必要ないですが,大きさあるもの対象だと重心運動のほかに最低でも回転と振動くらいは考慮する必要あります。

                     TOSHI

  投稿者:ASA - 2010/06/13(Sun) 16:12  No.9586 
学部二年生さん

TOSHIさんのコメントは、学部二年生さんの問題意識とずれているようなのでコメントしておきます。

>とにかく質点がある軸の周りを運動することを仮定しているようなので、その為には外力を掛ける必要がある気がして、説明として何か腑に落ちない物があります。

 剛体ですから、複数の質点から構成され、かつ、各質点間の距離が変わらないという条件が付いてます。つまり、質点間距離一定という拘束力が働いているわけですね。よくある説明では、この拘束力によって何らかの軸の周りを運動することを仮定してますね。
ちなみに拘束力は内的力であって、外力とは普通区別されるものです。

  投稿者:yuya - 2010/06/19(Sat) 13:59  No.9613  <Home>
学部二回生さん、返信が遅くなってすみません。

外力が掛かっていなくとも、剛体はみそすり運動し得る、という点はよく理解されているのですね。
ただし、この場合は剛体の重心は等速直線運動(静止を含む)するはずです。

ところが、記事中の質点 m だけを考える限り、剛体の重心の位置とは、とりもなおざず m の位置のことですから、
これが円運動するには外力が必要なはずで、角運動量が保存される状況の議論に使えないのではないか?という疑問ですよね。

まったく、おっしゃるとおりだと思います。

私も自分で考察記事を書いていて、結局のところ「そもそも、あの図は何を表しているのか?」が分かってないことに気づきました。

さんざん悩んだ末、最終的にはhirotaさんの[6210]の投稿で納得しました。
http://eman.hobby-site.com/bbs/past/log06129.html
>EMANさんの図でマズイのは、質点が1つしかない所です。質点が2つなら偶力になりますから、

つまり、たとえば原点を挟んで m の反対側にもう一つ同じものを考えて、
「両端だけ質量がある、非常に細い鉄アレイ」という剛体を考えます。
http://www.geocities.jp/abreverse/moment.jpg
これを一定の回転軸ωの周りに回転し続けさせたければ、
両質点は各々青矢印のような力を受けなければなりません。
この二つの青い矢印は逆向きで等しいため、全く力が掛かっていないのと同じかというとそうではなく、
剛体の場合には「偶力」となって、重心は加速されないにもかかわらずトルクだけが付与され、
角運動量は変化します。この例では $\D L / \D t$ は画面手前方向です。

実際には両質点はつながっていますから、互いに及ぼしあう力(剛体全体で見れば内力)が生じ、
青矢印の力の全てをそのまま外から加えることにはならないでしょう。
しかし、内力は(全体として見た)剛体にトルクを付与することはできませんから(これは数理的に導かれます)、
加えるべきトルクに関しては外力が全て面倒を見てやらないといけません。

かくして、 $\omega$ を一定に保ちたければ、外からトルクを与える必要があり、
結果として角運動量ベクトル $L$ が $\omega$ のまわりを回ることになります。
いま、外からトルクを与えるのをやめてしまえば、
今度は $\omega$ のほうが倒れこんで、 $L$ のまわりを回る(みそすり)ことになるわけです。

「 $\omega$ を一定に保つためにはこういうトルクを与えないといけないから、
もし与えなければ $\omega$ はこうなる」という推測は、私の記事でもあくまで直感的なものです。

その直感的な考察は、慣性系で考えるよりも回転系で考えたほうが分かりやすい人もいることでしょう。

この件に関しては私はいくらでも議論に付き合いたいと思っていますので、
疑問に思う点、分かりにくい点は再度指摘いただければ幸いです。

  投稿者:学部二年生 - 2010/06/21(Mon) 23:48  No.9649 
皆さん回答ありがとうございます。
(特にyuyaさんに宛てて)
現在別の方面から調べている(しかも教授の協力を得て!)最中で、
放棄したわけではない、ということを一応明記しておきます。
今週中にはまた何か書けると思います。

  投稿者:学部二年生 - 2010/06/28(Mon) 01:24  No.9705 
さて、遅くなったのですが。
まだこのスレッドを見ている人はいるのでしょうか。


>yuyaさん
その説明でいいと思います。
ただし、色々と考えた結果、回転系における角運動量に対して大きな誤解があると思ったので記しておきます。

そもそも剛体の運動の解析において、「回転系における角運動量」というものは出現しません。
あるのは、「慣性系における角運動量を回転系における座標成分で表したもの」です。←ここが重要
回転系における角運動量は常に0であって(回転系が物体に固定してあるのだから当然)、これを解析する意味はありません。
角速度も同様です。「回転系における角速度」は0です。よく考えれば当たり前です。あるのは、「慣性系における角速度を回転系における座標成分で表したもの」です。
つまり、この話の中にしょっちゅう出てくる「ωの周りを回っている角運動量L」というのは、角速度にしても角運動量にしても慣性系のものであって、回転系のものではないということです。



・・・多分、という保険をかけておきます。



さて、ここで話を変えて、そもそもの疑問であった慣性テンソル、慣性乗積の意味は?という話に戻ります。
式の形(-Σmxyとか)に対する考察を無視すれば、とりあえず、「慣性乗積が0であればその慣性主軸周りのみの角速度は一定」という物理的意味がえられます。
もうちょっと進めて、式の形から定性的に考えます。-Σmxyというのは、特にΣxyという部分に着目すれば、xy平面に対する質量の「非対称性の大きさ」みたいなのをを表すわけで、つまりここの対称性が完璧(つまり-Σmxy=0)ならば、x方向の角速度はy方向の角運動量に、y方向の角速度はx方向の角運動量に影響を及ぼさない、ということです(そして僕は場合によってはこの解釈で終了してもいいのではないかとすら思っています)。
で、これがそもそもどこから出てきたのかといえば、ベクトル三重積からなわけです。
つまり、慣性テンソル、慣性乗積の形式の意味を本当に理解しようとするならば、ベクトル三重積(の公式)を直感的に理解することが必要なのではないでしょうか、と思った次第です。



非常に長くなりました。読点が多いですね。
もしまだ見ている人がいたら、考察の協力をお願いします。

  投稿者:サンマヤ - 2010/07/20(Tue) 12:08  No.9733 
えと、前も同じようなレスがついていたと思うのですが、消えてしまったようなので。
>角速度にしても角運動量にしても慣性系のものであって、回転系のものではないということです。
変換 $R$ を慣性系 $K$ から回転系 $K'$ への変換の回転部分としますと、
角速度ベクトル $\omega$ 、角運動量ベクトル $L$ ともに
<tex>\omega ' = R \omega</tex>
<tex>L' = R L</tex>
と変換されて0にはならないと思います。
座標変換によって剛体の各点の座標は変わらなくなりますが、
それによって回転運動そのものが消えてしまうわけではないでしょう。
これは回転運動が加速度運動であることに起因しています。

>特にΣxyという部分に着目すれば、xy平面に対する質量の「非対称性の大きさ」みたいなのをを表すわけで(中略)
>ベクトル三重積(の公式)を直感的に理解することが必要なのではないでしょうか
慣性乗項の部分を、内積がスカラであることに注意して変形すると(質量の項は省略)
(結果は当然EMANさんの記事の内容と同じですが)
<tex>(r \cdot \omega)r = (r^T \omega) r = r(r^T \omega) = (r r^T) \omega= \begin{pmatrix}x^2 & xy & xz \\xy & y^2 & yz \\zx & zy & z^2\end{pmatrix} \omega</tex>
となります。この $r r^T$ の部分は質量の重みをつけて和(あるいは積分)すれば、
多変量解析でいうところの分散・共分散行列で、
おっしゃるように、非対角成分は座標間の質量分布の相関度を表しています。
よって慣性乗項は、「質量分布の偏りによって生じる、角運動量ベクトルの角速度ベクトルからのズレ」ということができるのではないでしょうか。
ただし、物体が広がりをもっていれば対角成分は0にはなりません。
この部分は、たとえば、 $x$ 方向の角運動量に $x$ の分散は関係ない( $r^2$ から引く)よ、ということです。
対角成分は「関係ないから引く」、非対角成分は「偏りが影響する」と二つの意味を含んでいます。
慣性乗項は慣性テンソルを導き出すための計算で出てきますが、その物理的意味は慣性テンソルの各成分の意味を検討するのと同じことになりますので、
結局、2つの項を合わせて一つのものとしてみるか、行列形の慣性テンソルについて考えた方がすっきりするようにも思います。