EMANの物理学 過去ログ No.9312 〜

 ● εδ論法の疑問

  投稿者:EMAN - 2010/05/12(Wed) 16:16  No.9312 
 εδ論法について、前から気になっていて、
いつか解決するだろうと放置していたけれど、
結局分からないでいる疑問があります。

 連続や収束の定義でε近傍を考えるとき、閉近傍じゃだめなのか?

 精一杯短い言葉にしてみましたが、
用語の使い方からして間違ってるかも知れません。

 閉近傍でもいいけど必要じゃないから開近傍なのか、
それとも何か問題があるから使わないのか?
 どうなんでしょう?

 本を読む時、いつもこの点を書いてないか注意してるのですが、
見当たらなくて、気になってしまうんです。

  投稿者:hirota - 2010/05/12(Wed) 16:31  No.9313 
一般的な近傍の定義では「開近傍を含む集合」は全て近傍です。
つまり、開近傍の閉包だって近傍です。
だけど、最小限で済ますと「開近傍」で充分となります。
一般的な近傍で収束を定義する本もありましたから、最小限で済ましたがるのは美的感覚でしょう。

>正準変換
正準変換て、問題を簡単にして解析的に解くためにしか使ったことないな〜。
(数値計算でも便利だろうけど)

  投稿者:EMAN - 2010/05/12(Wed) 18:29  No.9315 
> hirota さん、

 良く分からなかったんで今、近傍の定義を見直したら、
たしかに、そうなってますね。
 そして、「一般的な近傍で収束を定義する本」ってやつに
私が出会ったことがないか、気付いてないかということですね。

 まぁとにかく、問題ないってことが分かって一安心です。

 数学をやってると、自分の推論をあざわらうような
抜け穴が絶対にあるに違いないという不安で自信をもてなくなります。

  投稿者:hirota - 2010/05/13(Thu) 10:27  No.9318 
>一般的な近傍で収束を定義
これは距離を定義されてない位相空間を近傍系から始める流儀です。
(距離空間の場合はやっぱり開近傍から始めるのが主流だから、物理関係で見ることないだろ〜な)

位相の定義は開集合から始めたり閉包から始めたりと色々な流儀がありますが、
開集合から始める場合は、「x を含む開集合」が x の開近傍で、「開近傍を含む集合」が一般の近傍という順序になるので、やはり簡単な開近傍が人気です。

近傍系から始める場合は、近傍の性質として「x の近傍は x を含む」と「近傍を含む集合も近傍」の 2 つを要請し、開集合は「その集合の全要素の近傍となってる集合」と定義されます。
この場合は一般の近傍定義が先に存在しますから、他の定義もこれでやることになります。

例えば、x の近傍系 (近傍全部の集合) を V(x) として「f : X → Y が x ∈ X で連続」の定義を書くと、
「任意の v ∈ V(f(x)) に対して u ∈ V(x) が存在して、f(u) ⊂ v となる」
∀ v ∈ V(f(x)) ∃ u ∈ V(x) [ f(u) ⊂ v ]
(ただし、f(u) = { f(x) | x ∈ u } とする)
ですけど、ε δ が距離を使わない v u に置き換わってますね。

でもこれは ε δ 形式と合わせただけで、もっと簡単に
「近傍の逆像は近傍」 $\forall v\in V(f(x))[f^{-1}(v)\in V(x)]$ 
(ただし、 $f^{-1}(v)=\{x\in X|f(x)\in v\}$ とする)
と書けます。(開集合流儀だと「開集合の逆像は開集合」になる)

おっと、収束じゃなく連続の定義を書いちゃったけど、数列の収束なら項番号の集合で無限大番号の近傍系を定義すれば連続に含まれます。

  投稿者:murak - 2010/05/13(Thu) 15:48  No.9320 
多分、EMANさんの尋ねたかった事とは少しずれているような気がする。

必ずしも距離の定義されていない空間で、関数の連続性や点列の収束を論じるためにはその空間に遠近の概念(これを一般的な意味での「位相」と呼ぶ)が定義されていなければならない。集合に位相を定義するにはhirotaさんが#9318で述べているように、
(1)近傍系の公理
(2)開集合の公理
(3)閉集合の公理
(4)開核(作用素)の公理
(5)閉包(作用素)の公理
のいずれかの方法(公理)に基づいて、集合に近傍系、開集合系、閉集合系、開核作用素、閉包作用素のいずれかを定義してやる必要がある。これらのうち、どれか一つの概念を公理として導入しておけば、他の概念は自動的にそれから導かれる。従って位相空間と言えば一般に上の全ての概念が定義済みのものと考えて良い。

以上は一般論であるが、近傍系の公理、あるいは位相空間における或る点の近傍系というものには多少冗長なところがある。実際、ある点Pにおいて、その点の近傍のどれか一つを(部分集合として)含むような集合を考えれば、そのような集合はどの様なものでも点Pの近傍である(それが開集合であっても閉集合であっても、またそのいずれでもなくても)。なので、ある点の近傍系として、もう少しその要素を絞って、出来るだけ小さめの集合族で近傍系を定義しようとする際に出てくるのが「基本近傍系」である(hirotaさんが#9313で述べている事)。

で、問題は、この基本近傍系としてどのようなもの(集合族)を考えれば良いのか、という事で、その際、距離が定義されていないような一般の位相空間では、その点を含む開集合の全体をとれば、それが基本近傍系をつくるし、また距離空間の場合はいわゆるε近傍系というものを考えれば良い事になっている。

EMANさんの質問は、この基本近傍系を考える際に、開集合の替わりに閉集合を考えてはいけないのか?というものだと思う。ただ、一般の位相空間の基本近傍系の場合に、開集合の替わりに閉集合を考えると、それが(基本)近傍系の性質を満たさない事はすぐわかる。従って、問題はむしろ距離空間の基本近傍系の場合で、その際ε近傍として、一般にはある点を中心とした半径εの開球をとる事になっているが、それを閉球にしてはいけないのか?というのがEMANさんの元々の質問の意味だと思う。
(多分、完備距離空間の場合は、どっちを考えても大差ないと思うが、いわゆるεδ論法とかの関連で言えば、普通は(等号のつかない)不等式を使った議論をしている筈で、その意味では開球を考える方が対応が自然ではある。また半径零の球はどうするのという事で悩む必要もない(悩まないか)。)

(読み間違えの際はご容赦)

  投稿者:Stromdorf - 2010/05/13(Thu) 22:55  No.9327  <Home>
EMANさんの疑問は、あまり一般の位相空間の話ではなくて、距離空間で定義された関数 f : X → Y が、点 a∈X で連続であるということの定義として

(1) ∀ε>0 ∃δ>0 ∀x∈X [ d(x,a)<δ ⇒ d(f(x),f(a))<ε ]
(2) ∀ε>0 ∃δ>0 ∀x∈X [ d(x,a)≦δ ⇒ d(f(x),f(a))<ε ]
(3) ∀ε>0 ∃δ>0 ∀x∈X [ d(x,a)<δ ⇒ d(f(x),f(a))≦ε ]
(4) ∀ε>0 ∃δ>0 ∀x∈X [ d(x,a)≦δ ⇒ d(f(x),f(a))≦ε ]

のいずれを採用してもすべて同値になることを確認したい、ということなんじゃないでしょうか?(違ってたらごめんなさい。)
(2) ⇒ (1) ⇒ (3) と (2) ⇒ (4) ⇒ (3) は明らかなので、(3) から (2) が導かれることを確かめればよいわけですよね。実際 (3) は

(3)' ∀ε>0 ∃δ>0 ∀x∈X [ d(x,a)<2δ ⇒ d(f(x),f(a))≦ε/2 ]

とも書けることに注意すれば、(3)'⇒ (2) は明らかですね。

  投稿者:EMAN - 2010/05/14(Fri) 00:49  No.9329 
 みなさん、ありがとうございます。

 Stromdorfさんの説明について納得しました。
 この点は感覚としては受け入れていたのですが、
それが疑いなく説明されて理解できたので収穫でした。

 実際、私の疑問もStormdorfさんの推測された通りに
「あまり一般の位相空間の話ではなくて、距離空間」での話のつもりだったのですが、
この疑問を持ち始めるようになったのは
位相の教科書を読んでいる最中のことだったので、
murakさんとhirotaさんの話もハズレではないと感じております。

 ただ、murakさんとhirotaさんの説明については
言葉の上っ面を何とか飲み込めた程度で、只今さらに深く解読中です。
 二方の説明の方向の違いさえ良く分かっていないかも・・・。

 説明を聞いた今なら、疑問のありかをこう表現できるかも知れません。
「開近傍と閉近傍とどちらがより基本的か?」
 質問する前には「より基本的」という考えさえ意識に上っていませんでした。
 (どちらが基本か?というのは流儀の違いによるのだろうという感覚。)

 「出来るだけ小さめの集合族で近傍系を定義しようとする」なら、
必然的に開近傍がおもてに出てくるという理解でいいでしょうか?
 (なんか当たり前のことを言ってる気もしてきた。)

 これが解決したら、理解を試すために
再び位相の教科書にチャレンジできそうです。

  投稿者:hirota - 2010/05/14(Fri) 10:48  No.9345 
>二方の説明の方向の違い
僕の方は「一般的な近傍で収束を定義する本に出会ったことがない」理由を説明 (最初の3行で終わってる) したら位相空間の流儀の話になっただけで、位相空間自体の話は murak さんと同じです。(僕が直感的イメージで処理する派だから大雑把になってるけど)
ついでに流儀の違いによる表現例を書いたので、話が散漫になってます。

>出来るだけ小さめ・・・開近傍
その通りです。

  投稿者:murak - 2010/05/14(Fri) 12:29  No.9352 
Stromdorfさんの説明は、私が#9320の最後の方に(多少いい加減に)書いた

(完備)距離空間の場合は、どっちを考えても大差ない

という部分をちゃんと書いたものになっています。(「完備」は余計だったけれど)

元々EMANさんの疑問はそっちだと思ってましたが、hirotaさんが書いた事との間を埋めようとして多少一般的に書いて、あのようになったという事です。(hirotaさんが書いたこともこの先必要になると思うし。)

  投稿者:kafuka - 2010/06/12(Sat) 19:25  No.9582 
今ごろになって恐縮ですが、
僕も位相を勉強してます。「なっとくする集合・位相」という本で ^^;

関数の連続性に関しては、開集合によっても閉集合によっても 同じようです。
定理1.関数f:R→Rが連続である必要十分条件は、Rの任意の開集合Uに対して、
f-1(U)が開集合となる ことである
定理2.関数f:R→Rが連続である必要十分条件は、Rの任意の閉集合Uに対して、
f-1(U)が閉集合となる ことである

f-1になっていることに注意
落とし穴:
関数f:R→Rをf(x)=x^3−3x とする。
例えば開区間[-1.5、1.5] の像は、閉区間[-2、2] となる

「落とし穴」が面白いと思ったので書きました。