EMANの物理学 過去ログ No.9153 〜

 ● しゅてるんゲルラッハの実験

  投稿者:fnbo - 2010/05/06(Thu) 13:39  No.9153 
こんにちは(計算のできない素人物理屋です。)
しゅてるんゲルラッハの実験の一般的な説明において「1/2,-1/2二つの状態しかとれない」事が主体的に述べられるのですがここがよくわからないのです。
たとえばマクロレベルのコマの歳差運動を考えますと、その傾きは、回転の度合いにより様々な状態をとれます。
しかしその歳差軸は地面に対して垂直な軸で一通りです。
逆さからみれば、合わせて二通りです。
銀原子ビームが二つに分かれるのは
「ミクロの世界には自転しているようなものが存在する」というのが理由では
不十分なのでしょうか?

  投稿者:hirota - 2010/05/06(Thu) 14:04  No.9154 
マクロのコマだと「止まってる」もある。
1/2 から 1 しか変化できなければ、 0 にはなれず、-1/2 にしかなれない。

  投稿者:kafuka - 2010/05/06(Thu) 14:36  No.9155 
>fnbo さん
僕にとって、Just Timeな質問です。
ちょうど、JJ桜井「現代の量子力学」の 1.1「シュテルンゲルラッハの実験」
を読んでいたところでした。
シュテルンゲルラッハの実験はp2〜p6に書いてあります。
概要は、
> 
炉の中の原子の向きはランダムであり、磁気モーメントが特定の向きになる
ということはない。したがって、
もし、自転している古典的な物体なら、磁気モーメントは、上向きから下向きまでの、
すべての値をとるはずである
そうであれば、装置から出てきたものは、磁気モーメントが
ある1つの値を中心とした正規分布となる。

しかし、実験すると、中心が2つある分布になります。
何故、そうなるか?
これが、量子力学の醍醐味(の1つ)です。

どうしましょう、続けましょうか?
ただし、量子力学は誤っているとか、新理論を提示されるとかなら、やめます。

  投稿者:fnbo - 2010/05/06(Thu) 15:12  No.9156 
kafuka さん
>どうしましょう、続けましょうか?
待たせてすいませんちょっと出ていました。
hirotaさん
ええ。止まらないのを前提で書いたのですが「ミクロの世界には自転し続けるようなものが存在する」と記述すればよかったです。
しかしhirotaさんのおっしゃるとおり
つまるところ0という値をとらない事を証明する実験だったということですね。
お二人様簡潔なご回答ありがとうございました。




  投稿者:kafuka - 2010/05/06(Thu) 16:28  No.9158 
うーん。
> 自転
あまり「マクロな世界」との対応物に、こだわらない方が、いいと思いますよ。
(対応物の持つ ミクロにない属性についての先入観に、理解が邪魔される恐れがありますから)

尚、この実験は、もっと強い意味があります。
電子の磁気モーメントは、
±9.284770×10-24
という2つの値しかもてないのです。これを「量子化されている」といいます。
詳しくは、EMANさんの
スピンとは何か http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/spin.html
を見て下さい。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/05/06(Thu) 16:48  No.9159 
こんにちは。
いい機会なのでシュテルンゲルラッハの実験について初歩的な質問をさせてください。

準備:
磁気モーメント、

N-----S  両磁荷の間の距離はd

磁場が均一でなく勾配があれば
←←大 →小 
N-----S  両磁荷の間の距離はd

となり力が働き加速される。

質問:
電子のスピンも、わずかにずれた位置の磁場を感知するためのdの「厚み」を持つのでしょうか。
電子の大きさが理想的質点ならば、どのようにして磁場勾配に反応するのでしょうか。

=甘泉法師=


  投稿者:hirota - 2010/05/06(Thu) 17:03  No.9160 
>磁荷の間の距離

これは磁荷が存在するとして磁気モーメントを説明してる訳ですね。
しかし、電子には磁荷など存在しません。磁気モーメントだけ持ってます。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/05/06(Thu) 18:25  No.9161 
こんにちは。

わずかに異なる2点のB(r1)、B(r2)をそれぞれの磁荷が感じて力が

B(r2)Q−B(r1)Q = B(r2)−B(r1) / r2−r1 * Q (r2-r1)
 = grad B Qd

となることはわかりやすい。 大きさを持たない点である電子は微分できないのに自分のいるところの grad B をどうやって知ることができるのだろうか。
Bでなく grad B が場の基礎量で Bのほうがgrad Bの積分で与えられるものなのかと屁理屈をひねくってみた次第です。

ありがとうございました。


ホストのEMANさんによるシュテルンゲルラッハの実験の説明
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/spin.html


=甘泉法師=

  投稿者:のま - 2010/05/06(Thu) 23:05  No.9162  <Home>
甘泉法師さん

磁荷を考えるのは色々問題を生じます。マックスウェル方程式に存在してないものなので。
考えるなら円電流モデルがいいでしょう。小さな円に電流が流れていると想像する。
円の面積を a = πr^2, 電流を I とすると、磁気モーメントは M = Ia となります。
もし円が電荷 q を帯びていて角速度 ω で回転しているなら、M = qωr^2 /2.
rω は回転の速さで、これは光速を超えられないから、M < qrc/2 を得ます。
r→0 の極限において有限の磁気モーメントが存在するためには、電荷量 q が無限大で
なければなりません。場の量子論(QED)では電子の裸の電荷は無限大とみなされている
ため、一応、整合しています。

あと、甘泉法師さんの図だと磁場が B=(0,0,f(z)) みたいなイメージを受けるけどこれは
<tex> \partial_i B_i =0 </tex> を満たしません。考えるなら B=(0,0,f(x)) みたいな磁場がいいでしょう。
このときz方向を向いた磁荷双極子は磁場から力は受けませんが、円電流モデルだと力を受けます。
実際、磁荷双極子の受ける力は <tex> F_i = M_j \partial_j B_i </tex> なのに対し、円電流モデルでは
<tex> F_i = M_j \partial_i B_j </tex> です。

  投稿者:hirota - 2010/05/06(Thu) 23:14  No.9163 
磁荷双極子か円電流モデルか、で磁場から受ける力が違うというのは面白い!
実験でモデルが判定できれば更に面白いけど、どうなんだろ?

  投稿者:のま - 2010/05/06(Thu) 23:59  No.9165  <Home>
hirota さん

エネルギーが <tex> - M_i B_i </tex> となるのは円電流モデルの方です。
QEDの非相対論的近似で出てくるのはこの形のポテンシャルですから、
電子の磁気モーメントの性質は円電流モデルに似ているといえるでしょう。

  投稿者:hirota - 2010/05/07(Fri) 00:26  No.9166 
なるほど、すでに驚異的な実験との一致を誇るという QED から出てくるわけですか。
これでは、「スピンは回転ではない」という言葉が、ますます説得力ありませんね。

  投稿者:kafuka - 2010/05/07(Fri) 10:00  No.9170 
「スピンは回転である」ということになりますか。
おもしろいですね。
何かの回転なら、g因子が1になると思います。
古典的な対応物があるように、思ってはいけないですね。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/05/08(Sat) 09:44  No.9185 
こんにちは。
シュテルンゲルラッハの実験が話題のいい機会なので教えてください。

背景:過去ログ 磁場は仕事をするか から
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投稿者:甘泉法師 - 2009/12/06(Sun) 19:52 No.8046
こんにちは。甘泉法師 - 2009/12/06(Sun) 14:48 No.8038の問題意識を別に言い換えてみます。
シュテルン=ゲルラッハの実験(1922)を見る。説明は、たとえば http://www.kagakudojin.co.jp/special/ryoshi/index05.html

図2のように銀原子のビームは磁場でふたつに分けられる。
銀原子は中性なので qvXB =0。 分かれた後の銀原子の速度は前と同じか違うか? 加速/減速していれば、磁場が銀原子に仕事をすることがわかるのではないか。

=甘泉法師=
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質問:
磁場(そのgrad含め)と銀原子のスピンは相互作用します。銀原子の運動エネルギーは相互作用によって増減しているのでしょうか。それとも運動エネルギーは同じで向きがかわっただけでしょうか。

=甘泉法師=

  投稿者:hirota - 2010/05/08(Sat) 11:25  No.9187 
磁石が磁石を引きつけるように、一般的には磁場は磁石に仕事をしますが、この実験のように運動方向と垂直な力が働く場合は、方向変化だけで運動エネルギーは変わりません。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/05/08(Sat) 13:15  No.9189 

こんにちは。

>磁石が磁石を引きつけるように、一般的には磁場は磁石に仕事をしますが、

ありがとうございます。 ローレンツ力 qvXBは仕事をしないので
磁石=磁石間の力は ローレンツ力に還元できない力ですね。

=甘泉法師=

  投稿者:甘泉法師 - 2010/05/08(Sat) 17:05  No.9198 
こんにちは。

○○○○○○○○○○○○○
●●●●●○○○○○環○○
●●●N●○○○○○●○○
●●●N●○○○○S●N○ →Z方向
●●●N●○○○○○●○○
●●●●●○○○○○○○○
○○○○○○○○○○○○○

左 磁石N極
右 電子のスピン磁気モーメントを模して環に電流を流したもの

環は磁石から−z方向の力を受け加速接近しますが、ローレンツ力ではどう考えればよかったんでしょう。復習させてください。

=甘泉法師=

  投稿者:甘泉法師 - 2010/05/09(Sun) 18:46  No.9246 
こんにちは。図を少し精緻にします。

permanent magnet

●●● N●○○○○○
●●● N●○○○○○circle current equivalent to electron spin magnetic momentum
●●● N●○○○○○●○
●●● N●○○○○S ●N○→Z direction
●●● N●○○○○○●○↓X direction  画面下から上 Y direction 
●●● N●○○○○○電流はZ軸のまわり反時計まわり
●●● N●○○○○○

hirotaさんの発言(とりさげられました)では磁石から出る磁束の広がりがあるからローレンツ力に引力成分が生まれるということです。

動き始めはいいのですが、
電荷の速度=回転速度+接近速度 としたとき
−y方向の接近速度からのローレンツ力は回転を強めるように働きます。別の観方だと環内部磁束の変化による誘導起電力です。

でも電子のスピンは誘導起電力で早まらない(ですよね。)
どう整合させて考えたらよいのでしょう。

=甘泉法師=


  投稿者:fnbo - 2010/05/09(Sun) 18:52  No.9247 
>甘泉法師さん
大きな磁石と小さな磁石の距離が変わらない条件で実際に実験してみたのですが、
上下(+、−)をX軸、真ん中あたりを原点と仮定し、
環を+、−方向へ動かしますと、N極(の磁場)とS極が向かい合うところまで回転しました。

束縛を解くと(見えないのですが)おそらく磁場に沿って引かれていきました。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/05/09(Sun) 20:57  No.9250 
 こんにちは。

fnboさん - 2010/05/09(Sun) 18:52 No.9247
実験お疲れ様でした。 仮説どおりですね。

hirotaさん - 2010/05/09(Sun) 19:46 No.9249
>誘導電流は変化に抵抗するように働くから、逆ですね。

 そうでした。電流を弱める方向ですね。訂正します。

> 1 個の電子スピンが変化しなくても、外部磁場で多数の電子が同じ方向を向けば、全体の環電流が増えるのと同じですが。


 電子のスピンによる磁気モーメントや、原子内の電子の軌道角運動量に働くローレンツ力を考えるとき 
 v= v_xy 回転速度 + v_z 接近速度

 F=q(vXB)= q( v_xy X B) + q( v_z X B)

>電子のスピンが加速しなくてマズイことがあるんですか?
>本当の環電流 (電子の軌道運動) だって量子化されてて加速しないでしょう。

 量子力学をhirotaさんに従い考えると、第2項が消えてマズイことはなく、

 F=q( v_xy X B)  よって dW = F・v=F・v_z ≠0

 ローレンツ力は電子に仕事をすることができる、スピンは減速しえないから。

 こうして磁場がスピンを持つ粒子に仕事をすることを導きました。

 あっていますでしょうか。

> 1 個の電子スピンが変化しなくても、外部磁場で多数の電子が同じ方向を向けば、全体の環電流が増えるのと同じですが。

 ....それとも、「スピンの減速」は、スピン反転成分の増、あるいはスピン集団なら統計的な反転スピンの期待値の増として顕現し、安易に「第2項が消えてマズイことはない」とはいえなくなるんでしょうか?

 =甘泉法師=

  投稿者:fnbo - 2010/05/09(Sun) 21:13  No.9252 
甘泉法師さん
>実験お疲れ様でした。 仮説どおりですね。
どうもーです!
実は一つ前の質問に参考になればと返信したのですが、偶然 甘泉法師さんが
新たな質問を先になさっていたので、意味不明だったんじゃないでしょーか。
(返信不要)

  投稿者:甘泉法師 - 2010/05/09(Sun) 22:51  No.9261 
こんにちは。 

これまでの流れを復習すると
hirota さん
>磁石に働く力を環電流に働く力と見れば、ローレンツ力に還元することもできます。
甘泉法師
>hirotaさんの発言(とりさげられました)では磁石から出る磁束の広がりがあるからローレンツ力に引力成分が生まれるということです。
hirotaさん
>元々、磁石を環電流で置き換えるというのはマクロでの話ですから、磁力線方向が場所によって違うとは考えられない原子サイズの現象に使うのは無理があります。
というわけで放棄。

からすると

甘泉法師 - 2010/05/08(Sat) 13:15 No.9189
> 磁石=磁石間の力は ローレンツ力に還元できない力ですね。

が暫定的な私的結論です。

=甘泉法師=


  投稿者:甘泉法師 - 2010/05/11(Tue) 09:39  No.9283 
こんにちは。

理解をまとめます。
------------------
相互作用エネルギーUは電子のスピンによる磁気モーメントベクトルmと磁場ベクトルBを用いて、
  U=−m・B
電子に働く力は
 −∇U=∇(m・B)
------------------
上記は、ローレンツ力で説明するなどこれ以上掘り下げた議論のできない基礎。ローレンツ力でないので F・v=0、”仕事しない呪縛”から解き放たれている。
------------------
量子化された電子の原子内軌道運動による磁気モーメンベクトルと磁場の相互作用もローレンツ力で説明できないもの、と考えてよさそうだ。
------------------
こうしてスピンや軌道運動など、磁性物性にかかわる力は仕事をすることが理解できた。

ref.
hirotaさん - 2010/05/08(Sat) 11:25 No.9187
>磁石が磁石を引きつけるように、一般的には磁場は磁石に仕事をします

ありがとうございました。
=甘泉法師=

  投稿者:のま - 2010/05/11(Tue) 10:27  No.9285  <Home>
甘泉法師さん

素粒子のスピンはローレンツ力では説明できないとの理解、正しいと思います。もちろん、軌道電子の永続的な運動も、ローレンツ力では説明できない。よく説明されているように、古典電磁気学ではローレンツ摩擦力(遅延効果による自己場によるローレンツ力)によりすぐに原子核に落ちてしまいます。これと同じように、もし素粒子が小さな光速近くで回転する荷電球だとすると、これはローレンツ摩擦力によりじきに停止してしまいます(電磁放射をしながら)。環電流モデルという、よく知られた磁気モーメントのモデルは、あくまでスピンの古典的アナロジーです。

追記:ただし電子(一般に荷電粒子)の裸の質量は −∞ なので、ローレンツ摩擦などで逆に回転が加速し、光速近くを維持し続ける?なんてことも考えてしまいます。まあ古典的アナロジーをいくら追求してもあまり意味はないけど、変に整合するところもあるわけです。

  投稿者:fnbo - 2010/05/12(Wed) 09:32  No.9304 
>尚、この実験は、もっと強い意味があります。
電子の磁気モーメントは、
±9.284770×10-24
という2つの値しかもてないのです。これを「量子化されている」といいます。
                 kafukaさん(No.9158)より

この議論は結局、ここ(量子化)に落ち着くようですね。
よくわかりました。(みなさんにとっては再確認にすぎませんでしたが。)