EMANの物理学 過去ログ No.8963 〜

 ● 定義域外状態の観測

  投稿者:hirota - 2010/04/26(Mon) 12:29  No.8963 
ASA さん No.8954
作用素の定義域外状態が存在しうるのか考えてみましたが、微分作用素の定義域外である不連続関数も位置作用素の定義域外である電柱関数も、現実には存在しそうもないですね。
ホントに実例が存在しないのかどうか分かりませんが、実在状態の極限である以上はヒルベルト空間に入ってるし、観測した場合も同じ扱いでないとマズいでしょう。
(No.8761 は離散スペクトルの場合しか考えてませんが)
作用素の定義域外であっても観測の定義域外じゃないですから、問題ないと思います。

  投稿者:murak - 2010/04/26(Mon) 13:07  No.8964 
実は#8770に一度書いているのだが、誰も気付いていないようなので、念のためにもう一度書いておくと、作用素の定義域に入っていない状態は物理的に実現可能(あるいはその物理量が観測可能)な状態とは考えないのが普通だと思う。

(ヒルベルト空間内の)状態が、実現可能な状態の極限として表されたとしても、(それが定義域に入っていなければ)非有界作用素の作用は、それらの極限としては書けない。そしてその作用素が表す物理量の期待値をその状態に対して計算することは出来ない。

  投稿者:hirota - 2010/04/26(Mon) 16:23  No.8965 
状態ベクトル $f\in L^2(X)$ が作用素 $T$ の固有ベクトル $T u_n=\lambda_n u_n$ で $f=\sum c_n u_n$ と展開されてるとして、
 $f$ が $T$ の定義域に入ってない場合は $|T f|^2=|\sum c_n T u_n|^2=\sum|c_n\lambda_n|^2$ が発散しますが、
物理量の期待値 $<f,T f>=\sum |c_n|^2\lambda_n$ が計算出来ないとまでは言えないのでは?
(たとえば $c_n\propto\frac{1}{n^2},\,\lambda_n\propto n^2$ )

  投稿者:murak - 2010/04/26(Mon) 17:04  No.8966 
失礼、確かにそれは言い過ぎ。とりあえず $Tf$ が定義できないのは確か。

  投稿者:ASA - 2010/04/26(Mon) 17:34  No.8967 
 hriotaさん
>現実には存在しそうもないですね。
そうです。だから、電子系などでは、そういうものは除外して考えるのが慣わしです(murak さんNo.8964の見解と同様 )。
 清水さんのテキストだと、"有限自由度系のヒルベルト空間は、交換する物理量の完全集合の同時固有ベクトルの,ノルムが有限になるような線形結合の全体よりなる空間(にとるのが慣習)である."としてます。
 普通、物理状態と可観測量との関係は、自己完結的に定めるのですが、そうでない定め方でうまくいくものが存在するのか疑問に思ってます。

 元の質問に立ち返ると、こうした質問自体が量子力学的には無意味なので、あさんの回答が適切であると思いました。hriotaさん回答だと、質問者は余計混乱してしまうのではないかと危惧したので敢えてコメントしました(ある程度量子力学の枠組みを理解していれば、あのような質問はなされないはずです)。

 あとは、もし存在したらどうかという仮定の話ですから、好きに考えればいいと思います(期待値が発散とか0とかその他諸々)。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/04/26(Mon) 21:32  No.8971 
こんにちは。

hirota さん No.8761
>作用素の定義域に入ってない関数 (状態) であっても、作用素の固有ベクトルで正確に展開できる。

murakさん
>作用素の定義域に入っていない状態は物理的に実現可能(あるいはその物理量が観測可能)な状態とは考えないのが普通だと思う。


どちらでも、作用素の固有ベクトルですべての物理的状態が展開できること(作用素がオブザーバブルであること)になり安心しています。


murakさんの「作用素の定義域に入っていない状態」が個々の作用素によらない普遍なものでないと、たとえばXの作用素の定義域とPの作用素の定義域がぴったり重ならないとこまってしまいます。

1)Xの作用素の定義域にあるが、Pの作用素の定義域にない状態は存在するか、
するなら、
2)それは物理的状態かそうでないか。
3)Xの作用素の定義域にありかつPの作用素の定義域にありQの..(ありとあらゆる作用素の)定義域にある状態が物理的状態で、それらは全ヒルベルト空間の津々浦々にくまなく存在しているのか。 

=甘泉法師=




  投稿者: - 2010/04/26(Mon) 23:03  No.8974 
教科書レベルの話です。
面倒なので、わかりやすいが厳密でない記法を使いますが、
厳密に同様の議論ができます。
興味がある方は自力でお願いします。

演算子 $H$ の完全性関係式が、

 $1= \sum_n | \lambda_n \rangle \langle \lambda_n |$ 

で与えられるとします。ただし、

 $H | \lambda_n \rangle=\lambda | \lambda_n \rangle$ 

とします。
これは、

 $H= \sum_n \lambda_n | \lambda_n \rangle \langle \lambda_n |$ 

を意味します。
 $| \psi \rangle$ について $H$ を測定したとします。
このとき、確率

 $|\langle \lambda_n| \psi \rangle|^2$ 

で、波動関数は

 $| \lambda_n \rangle$ 

に変化します。このとき、 $\lambda_n$ の固有値を得たといいます。

*************************

したがって、

 $\langle \lambda \rangle = \sum_n \lambda_n|\langle \lambda_n| \psi \rangle|^2$ 
  $=\langle \psi| \sum_n \lambda_n |\lambda_n\rangle\langle \lambda_n| \psi \rangle$ 
  $=\langle \psi |H|\psi\rangle$ 

が得られる。


*****************より上までに付いて、
作用素の定義域に入っていない状態について適応できると考えるか
どうかが問題になりそうです。

  投稿者:murak - 2010/04/26(Mon) 23:35  No.8976 
個々の具体的な作用素に言及する事は避けるが、一般論として言えば、物理系が幾つかの物理量(自己共役作用素)の組で記述されるとき、系の(実現可能な)状態はそれら個々の作用素の定義域の共通部分に入っていると考えてよい。この共通部分はそれでも普通はヒルベルト空間の中で稠密になっていると考えられる(つまりヒルベルト空間の津々浦々に存在している)。そして、夫々の物理量に対応する個々の自己共役作用素から決まる単位の分解は、夫々にヒルベルト空間の任意の元を表現する(量子力学の言葉でいえばあらゆる状態が固有ベクトル展開可能である)。この意味でこれらの個々の(自己共役)作用素は全て観測可能量である。(しかし、実現可能なある状態から出発した系がヒルベルト空間内の全ての状態を隈なくわたりながら時間発展しなければならないとする必然性は無い。)

  投稿者:凡人 - 2010/04/27(Tue) 00:00  No.8977 
こんなものがネット上にありましたが、いかがでしょうか?
http://www5d.biglobe.ne.jp/~pomath/study/spectrumresolution2.pdf

  投稿者:hirota - 2010/04/27(Tue) 00:04  No.8978 
定義域の共通部分から出発したら、そこから出ない。
という事が証明されてるなら言う事ないですね。

と思ったら、孤立した矩形波 (微分を含んだ作用素の定義域外) を初期状態として時間発展で滑らかな波形になった所から逆行させれば、定義域内から定義域外に出る例が作れてしまうのに気がついた。

  投稿者:ASA - 2010/04/27(Tue) 06:34  No.8979 
hirotaさん
>時間発展
 時間発展は、ハミルトニアンHで決められますから、どんなハミルトニアンを考えるかですね(時間に依存しないHでU=e^(-iHt),dA/dt=i[H,A]等)。

>定義域内から定義域外に出る例が作れてしまうのに気がついた。
 位置xの固有関数δ(x)が時間発展で拡散していく例だと、運動量p期待値<p>は、発散してますね。
やはり、大概のケースで発散している(物理的意味を持ち得ない)のでは?

 

  投稿者:ASA - 2010/04/27(Tue) 07:37  No.8980 
>運動量p期待値<p>は、発散してますね。
 間違い。0(意味の無い観測、観測できないと等価)に訂正。
>大概のケースで発散している(物理的意味を持ち得ない)のでは?
 発散とか0で(物理的意味を持ち得ない)のでは?

  投稿者:ASA - 2010/04/27(Tue) 18:36  No.8991 
No.8980 への補足
 発散するのは、分散冪=√(<p^2>-<p>^2)
 仮に期待値としてある値を得られる場合があったとしても、分散が発散するようなら、物理量の観測に対応するとの定式化に疑問を感じます。


  投稿者:kafuka - 2010/04/27(Tue) 21:50  No.8996 
ASAさん:No.8991

>分散が発散するようなら、、、、
p一定の自由粒子の場合、位置xの分散は、∞ ですが、
位置xは、このψ(x)においては物理量と思います
もちろん、完全な自由粒子はあり得ませんから、波束での近似になりますが、
位置xの分散は、いくらでも大きくできます。

と思ったのは、自由粒子の場合でも、教科書では∫ψ*(x)ψ(x)dx=1 としているからで、
=1 が本当に言えるか疑問になってきました。
ψ(p)=δ(p-p0)
∫ψ*(p)ψ(p)dp=∫δ(p-p0)δ(p-p0)dp=∫δ(p0-p0)dp=1
∴ ψ(p) ∈ L2空間
でも超関数の積は、未定義では?
それは置いて、
ψ(p)=δ(p-p0) を逆フーリエ変換すると、
ψ(x)=exp(-ik0x)      k0=p0/h'
∫ψ*(x)ψ(x)dx=∫1dx=∞
なのですね。
完全な自由粒子の場合、位置xは物理量ではなくなるようです。
分散が発散する=∞の範囲に散らばる=観測不能になる ということがわかりました。
失礼しました。

もう一つ、
2次分散(<p^2>-<p>^2)=σ^2 が、発散したらマズイなら、
高次分散(<p^n>-<p>^n)が、あるn以上で発散するのもマズイと
言えると思います。
線引きの根拠がないですから。

  投稿者:kafuka - 2010/04/28(Wed) 00:36  No.9001 
>あさん

「高次分散が発散するのは問題ない」とのことですが、
高次分散(<p^n>-<p>^n)が、あるn以上で発散するということは、
高次モーメント<p^n> が、あるn以上で発散することと思います。
で、2次モーメントなら <p^2> 
1次モーメントでは <p> つまり、平均
「問題ない」というnの線引きに興味があります。
極論すれば「平均が発散するのも問題ない」ということになりますので、、、
笑止千万とは思いますが、
お時間があれば、お教え頂ければ幸いです。

ひょっとしたら、「観測できない」というのも立派な「物理状態」で、
数学上からは、何とも言えない ということでしょうか?

  投稿者: - 2010/04/28(Wed) 02:39  No.9004 
kafukaさん。
自己共役拡大を議論する際、
 $n=1$ で発散しない領域がHilbert空間の稠密な部分空間であれ、
ということを要求します。

つまり、状態が悪ければ、 $n=1$ でも発散します。
いわゆる、非有界作用素というやつがそれに該当します。

そんな気持ち悪い作用素を使うなよといわれるかもしれませんが、
応用上重要な演算子はことごとく非有界作用素です。

cf:調和振動子、自由粒子、水素原子。

おのおの、発散する状態を考えてみてください。
なお、こういった、発散する状態に物理的意義があるかは、
実験で出くわしてから議論すべきでしょう。
われわれは、まだ出会っていません。

  投稿者:ASA - 2010/04/28(Wed) 07:26  No.9006 
時間発展に関してですが、hirota さん No.8978の時間逆転は、数式上ありえますが、時間の方向性があるとの日常的事例から、物理的でないとの理由で排除されますよね。
 方程式は、ih(d/dt)|>=H|>で、t→-tすると違いますね。虚数単位iが曲者で、複素共役をとっても-符号違うことになります。時間反転を-tして複素共役(*)をとると定義すると同じくなってます。
 単に*を取ると定義域の問題が有るので、時間tの範囲が(-∞,∞)だと自己共役、つまり等号が成立します。
 すると特定時刻t0でδ(x)のようなものは、存在せず(t=0では有限幅を持ち,立ち上がりは有限)、t=-∞,∞の極限としてならありえるということで、微分演算子定義域外の状態はt=-∞,∞に押しやられ、有限時刻内に実質存在しないことになってると考えます。

kafuka さん No.8996
>分散が発散する=∞の範囲に散らばる=観測不能になる ということがわかりました。
>失礼しました。
 例として、無理やり自由粒子(平面波)の観測と結びつけると、時刻t=-∞〜∞まで間断なく常にその位置を測定値として記録して、その最後に平均することになります(∞時間の平均)。しかし、これは有限時間で完了する測定器による実測とは完全に相反してます。

  投稿者:kafuka - 2010/04/28(Wed) 10:33  No.9008 
>あさん
お教え頂き、ありがとうございました。
調和振動子でさえ発散するのですか。
目から鱗です。

>ASAさん
例を掲げて頂き、ありがとうございました。

>甘泉法師さん
座標表示<->運動量表示が、フーリエ変換になる関係って、
今のケースような、微妙な場合でも、無条件に適用していいのでしょうか?
参考までに、座標表示<->運動量表示がフーリエ変換になる証明を載せます。
http://blogs.yahoo.co.jp/kafukanoochan/61738048.html
僕は、このどこかに穴があると思うのですが、、、