EMANの物理学 過去ログ No.8200 〜

 ● 摂動計算の仮定

  投稿者:じーつー - 2010/01/23(Sat) 15:18  No.8200 
非常に初歩的なところなのですが、摂動計算のとき、ハミルトニアンの非摂動部分に関するシュレーディンガー方程式
<tex>\hat{H}=\hat{H}_0 + \lambda \hat{H}' &&(1)\\\hat{H}_0 \psi_n = E_n \psi_n  &&(2)\\</tex>

の解<tex>\psi_n</tex>は互いに規格直交している、つまり
<tex>\left< \psi_n | \psi_m \right> = \delta_{nm} </tex>
であることが仮定されています。
規格化は良いのですが、直交している理由がわかりません。
どなたか解説していただけるでしょうか。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/01/23(Sat) 21:59  No.8203 
こんにちは。

異なる固有値En,Em En≠Em の固有ベクトルψnとψmは直交します。

説明
<En|H0|Em>=<En|Em|Em>  ブラに着目して
-) <En|H0|Em>=<En|En|Em>  ケットに着目して
------------------------------
0 = ( Em - En )<En|Em>     辺辺引いて
Em - En ≠0なので  <En|Em>=0

=甘泉法師=


  投稿者:じーつー - 2010/01/24(Sun) 00:26  No.8204 
お早い回答どうもありがとうございます。
続けて質問なのですが、
まず1点目。計算の過程なのですが
<tex>\left< \psi_n \right| \hat{H}_0 \left| \psi_m \right> &= \left< \psi_n \right| E_m \left| \psi_m \right> \\&=E_m \left< \psi_n \right. \left| \psi_m \right> &&(3)</tex>

<tex>\left< \psi_m \right| \hat{H}_0 \left| \psi_n \right> &= \left< \psi_m \right| E_n \left| \psi_n \right> \\&=E_n \left< \psi_m \right. \left| \psi_n \right> &&(4)</tex>

<tex>\left< \psi_n \right| \hat{H}_0 \left| \psi_m \right>^* = \left< \psi_m \right| \hat{H}_0 \left| \psi_n \right> &&(5)</tex>

(3)の両辺の複素共役をとって、(5)を使うと

<tex>\left< \psi_m \right| \hat{H}_0 \left| \psi_n \right> &= E_m \left< \psi_m \right. \left| \psi_n \right> &&(3)'</tex>

(3)'と(5)から、<tex>\left< \psi_n \right. \left| \psi_m \right> = 0 \ \ \ (n \neq m)</tex>
ということでしょうか。

また、解の完全性も仮定されていますが、それはどうしていえるのでしょうか。
不勉強なものですみませんがよろしくお願いします。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/01/24(Sun) 01:29  No.8205 
こんにちは。

>ということでしょうか。

そうですね。

>また、解の完全性も仮定されていますが、それはどうしていえるのでしょうか。

完全でなければ、その量(ここではエネルギ)を測定できない(=測定してひとつでないいろいろな値を得ること、さえもできない)状態があることになります。 具合が悪いです。

=甘泉法師=




  投稿者:じーつー - 2010/01/24(Sun) 10:51  No.8206 
回答ありがとうございます。計算が合っているようで安心しました。

>完全でなければ、その量を測定できない

E_n = E_0,E_1,,,,E_i
というように、n = i で"頭打ち" しているならば、n = i + 1 以降の
エネルギーが存在せず、軌道も存在しないことになります。
では、n = i + 1 以降の状態が現実世界に存在していることはどうして言えるのでしょうか。
状態が無限にあることはどのようにして示されるのでしょうか。

  投稿者:T_NAKA - 2010/01/24(Sun) 12:27  No.8207  <Home>
横から失礼いたします。

>E_n = E_0,E_1,,,,E_i
>というように、n = i で"頭打ち" しているならば、n = i + 1 以降の
>エネルギーが存在せず、軌道も存在しないことになります。
>では、n = i + 1 以降の状態が現実世界に存在していることはどうして言えるのでしょうか。

どうして、「n = i で"頭打ち" しているならば」という仮定の話で、「n = i + 1 以降の状態が現実世界に存在していることはどうして言えるのでしょうか」という疑問を提示されるのか?これが分かりません。

「n = i で"頭打ち" しているならば」という仮定が成立するような具体的な状況を提示するのが、まず順序というものではないでしょうか?

どうも「量子力学ではエネルギーはトビトビの値をとる」ということが前提にあるような気がしてなりません。
これは粒子がポテンシャルに閉じ込められているような場合であって、自由粒子のエネルギーは連続の値をとることになります。
水素原子における電子を考えると、原子核に近い領域に(確率的に)電子が存在しているならば、電子のエネルギーはトビトビの値をとることになりますが、原子核のポテンシャルの影響に無い領域に(確率的に)電子が存在しているならば、電子のエネルギーは連続になります。

  投稿者:じーつー - 2010/01/24(Sun) 13:48  No.8209 
T_NAKAさん

「n = i + 1 以降の状態が現実世界に存在していることはどうして
言えるのでしょうか」という疑問を提示した理由は、以下の通りです。

命題:完全系を成すならば、状態は(n は)無限にある。
の対偶は「状態が有限(n = i で頭打ちする)ならば、完全系でない。」です。
現在実験的に観測できている状態は有限個でしょう。つまり、観測されたもののみを
使ったのでは完全系は作れません。では、なぜ無限に状態があることを仮定できるのでしょうか。
なんらかの理由で「n = i で"頭打ち" しているならば」という仮定が破綻している(または元から問題になっていない)
ので、その理由が知りたかったのです。

>仮定が成立するような具体的な状況を提示する
量子力学のモデルで提示することは私にはできません。
量子力学のモデルではありませんが、状態数が頭打ちしている例として
デバイモデルを考えたときの原子鎖の振動が挙げられるでしょう。
あれは n が頭打ちしている状況と言えるでしょう。ただ、量子力学の
話ではなく、完全系である必要もありません。

>自由粒子のエネルギーは連続の値をとることになります
確かにエネルギーは連続の値をとれ、状態が無限にあると言ってもよさそうですね。
しかし、次のように考えたら不連続になってしまいます。
0 ≦ x ≦ L の1次元の箱の中に閉じ込められた粒子のエネルギーは
     <tex>E_n=\frac{\hbar^2 n^2 {\pi}^2}{2mL^2}</tex>
です。そして、L → ∞ とすると n が一つ上がった時の上がり幅が非常に小さいため、連続とみなせるでしょう。
しかしここで疑問なのが、「 L → ∞ 」なんて状況はあり得るのか、です。
数学的にはあり得るでしょう。しかし、無限に大きな箱なんて用意できません。
L = 1 m という原子スケールからしたら非常に大きな箱を用意して
電子を想定して n が一つ上がった時の上がり幅を計算すると
<tex>\Delta E_n= E_{n+1} - E_n = \frac{\hbar^2 {\pi}^2 2n}{2mL^2} = \frac{(6.63 \times 10^{-34}/2)^2 n}{(9.11 \times 10^{-31})1^2} = 1.21 \times 10^{-37} \ \ (J)</tex>
です。確かに小さいですが、不連続です。

  投稿者:T_NAKA - 2010/01/24(Sun) 15:54  No.8210  <Home>
どうも無限井戸ポテンシャルのようなモデルを出されると私はお手上げです。
このモデル自体が現実的な物理的意味を持っているのか?私自身は疑問なのです。
n が一つ上がった時の上がり幅というのが、nが大きくなるほど広くなるので、これもあまり現実的ではないように思えます。

ただ、無限井戸ポテンシャルでも、nを制限するような条件はないので、「n が頭打ち」ではないでしょう。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/01/24(Sun) 16:41  No.8211 
こんにちは。

Re: 摂動計算の仮定 じーつー さん - 2010/01/24(Sun) 10:51 No.8206
>E_n = E_0,E_1,,,,E_i
>というように、n = i で"頭打ち" しているならば、

摂動の0次であるH0の固有値の値の有界/無限、分布の離散/連続の具合を知っておかないと摂動計算はできません。

一般に、エネルギーの固有値は下に有界で上に無限、束縛状態(=波動関数が規格化できる状態)で離散で非束縛状態(=同規格化できない状態)で連続と存じます。

=甘泉法師=


  投稿者:じーつー - 2010/01/24(Sun) 17:03  No.8212 
T_NAKA さん
井戸型ポテンシャルを持ち出したのは、自由粒子は井戸の大きさの極限に
なっていると思ったからです。
「n が頭打ち」しない理由を考えることは悪魔の証明の類である気がしてきました。
微妙な出展ですが、Wikibooksの「量子力学」の頁
http://ja.wikibooks.org/wiki/%E9%87%8F%E5%AD%90%E5%8A%9B%E5%AD%A6
の中ほどに「エルミート演算子に対しては対応する固有ベクトルが完全性の
要請を満たすことが知られている」とあるので、この辺りを勉強すれば良い
ことが、なんとなくわかりました。どうもありがとうございます。

甘泉法師 さん
>一般に、エネルギーの固有値は下に有界で上に無限
では、私はまだ見たことがありませんが、上にも下にも有界な固有値があったら、
それに関わる摂動計算はできないのでしょうか。それとも、有限個の基底の
足し合わせで、未知関数を表現するのでしょうか。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/01/24(Sun) 20:24  No.8214 
こんにちは。

>では、私はまだ見たことがありませんが、上にも下にも有界な固有値があったら、

 私も見たことがありません。エネルギーの上限を示唆する事実はないので、在ったとしてもかなり上でしょう。

 有界だとおもしろいことがありますか。なにか面白いことがないと、「針の上で天使は何人踊れるか」や「UFOの動力はなにか」のように、ないかもしれないものの属性を論じるモティベーションがあがりません。

=甘泉法師= 

  投稿者:nomercy - 2010/01/24(Sun) 20:51  No.8216 
>上にも下にも有界な固有値があったら、
それに関わる摂動計算はできないのでしょうか。それとも、有限個の基底の
足し合わせで、未知関数を表現するのでしょうか。


ハミルトニアンの次元が n ならハミルトニアンの固有ベクトル n 個でその系の基底を張れます。
ハミルトニアンはエルミートであり、
エルミート行列は対角化できて一次独立な固有ベクトルを n 個得ることができるからです。

  投稿者:T_NAKA - 2010/01/25(Mon) 00:35  No.8217  <Home>
>ハミルトニアンの次元が n ならハミルトニアンの固有ベクトル n 個でその系の基底を張れます。

位置や運動量演算子を行列で表すと、通常無限次の正方行列になり、ハミルトニアン演算子を行列で表した場合も同様でしょう。
つまり、普通の場合はハミルトニアン行列は無限次なので、固有値の個数が有限個nとはならないでしょう。というより、波動関数が無限個の直交固有関数の一次結合で表されるので、位置や運動量演算子を行列で表すと、無限次の正方行列になるということだと思います。

  投稿者:nomercy - 2010/01/25(Mon) 01:22  No.8218 
自由粒子の話をしているのではありません。
有限次元の時も全く同様に摂動展開をする、
という話です。

  投稿者:T_NAKA - 2010/01/25(Mon) 12:56  No.8219  <Home>
当初の問題は「非」摂動部分の解の完全性です。つまり、摂動とは直接関係の無い議論だと思います。

また、http://teenaka.at.webry.info/200902/article_3.html にあるように、調和振動子モデルは自由粒子ではありませんが、ハミルトニアン行列は無限次です。

  投稿者:nomercy - 2010/01/26(Tue) 00:51  No.8222 
まあそうなんですが。

>一般に、エネルギーの固有値は下に有界で上に無限
では、私はまだ見たことがありませんが、上にも下にも有界な固有値があったら、
それに関わる摂動計算はできないのでしょうか。それとも、有限個の基底の
足し合わせで、未知関数を表現するのでしょうか。


という問いにYESと答えただけです。
有限次元の例としては、スピンが一個だけある系など。
無限次元の例としては、No.8209にもあった格子振動の系(N->∞で無限次元ですがエネルギーは結合定数程度の有限幅に収まる)などがあります。

  投稿者:じーつー - 2010/01/30(Sat) 23:40  No.8228 
ご無沙汰しております。最近非常に忙しく、レスできませんでした。すみません。
磁気共鳴現象を定量的に扱う手法であるスピンハミルトニアンについて勉強しております。
その時に摂動計算が出てきまして、非摂動部分の解の完全性が仮定されていたり、
有限のスピンνに対して完全性関係のようなもの
<tex>\sum_{\nu}\left|\nu\right>\left<\nu\right|=1</tex>
が使われていたため、良く分からなくなってしまい、質問しました。
スピンハミルトニアンの知名度がどの程度なのか分からなかったので、疑問を小出しにする形になりました。

非摂動部分の解が完全でない(有限次元である)時の疑問は、ただの興味でしました。
しかし、有限個のスピンについて、まるで基底であるかのように足し合わせる場面がスピンハミルトニアンにはありました。
スピンハミルトニアンは非摂動部分(スピンを含まない、軌道のみの項)は軌道については完全ですが、
スピンについてはよくわかりません。

  投稿者:TOSHI - 2010/01/31(Sun) 08:19  No.8229 
 ども横から失礼します。TOSHIと申します。

>有限のスピンνに対して完全性関係のようなもの

 完全性に無限も有限も離散も連続も関係ないと思います。任意の状態ベクトルがある演算子の全ての固有ベクトルの重ね合わせで展開可能なら,完全だというだけです。
 
 異なる完全系があるとそれらは表示の違いなのでユニタリ変換で結びつくだけです。散乱の話だと入射状態の完全系と散乱状態の完全系がS行列というユニタリ変換で結びついてます。

 そして,そのほかに摂動論という近似計算の技巧ではありますが中間状態入射状態の完全系と散乱状態の完全系をS行列要素の間にはさむというのもあります。

 中間状態の完全系は入射状態や散乱状態と異なり一般にオフシェル(質量核の上には無い仮想状態)です。そりゃそうでしょう。一般に束縛状態や共鳴状態やそうではなくても電磁場や核力の場にさらされて飛んでいる最中の粒子は自由粒子ではないのですから自由粒子と同じように質量を計算してはいけないのですから。。。

 というわけで脱線しました。

 いつもやってる宣伝ですが,こうしたことの関連事項はEMANさんのボードとは直接競合いないと思われる
 私のブログ「TOSHIの宇宙」http://maldoror-ducasse.cocolog-nifty.com/

のバックナンバーにもあります。

 「スペクトル展開と超関数」とか「量子力学の基礎(表示の話)」とか気楽に読んでください。 失礼しました。。。

                          TOSHI

  投稿者:明男 - 2010/01/31(Sun) 12:25  No.8231 
ただの雑感です。したがって、ちゃちゃであり、数学的に厳密な話ではありませんし、間違っているかも知れません(なら、書くな、と言われそうですがw)。
完全性についてはTOSHIさんの言われる通りなのですが、結局有限・無限(個基底)の区別と完全性は”直接”関係は無い。演算子の作用する状態(ベクトル)空間において、その独立な基底(固有ベクトル)でその空間の任意の状態(ベクトル)が展開出来れば良い。ここで、他でもこれまで話題になった”完備性”が混乱に拍車をかける。完備性は完全性と混用されることもあるが、直観的には距離空間のコーシー列が収束点を持つような場合である。すると、関数空間のような無限かつ稠密な基底を持つ場合は、そのなかの状態ベクトルは無限個の基底が必要な状態も有り得るし、もしかすると表せない(完全性を失う)状態もあるかも知れない(超関数)。実際、無限次元ヒルベルト空間は基底の取り方によってユニタリ変換で移れない系を含む。それが完全かどうかは分からないが、物理的に意味がないとも言えない、というか、場の理論では寧ろ積極的に取り入れねばならないことも示唆されている。これは可算無限と非可算無限の違いや、可分性、濃度とも関係している気がするが、如何せん、私の乏しい知識では皆目、さっぱりわからない。この文章もごちゃごちゃで分からなくなったので、ここらで消滅。

  投稿者:nomercy - 2010/01/31(Sun) 19:59  No.8232 
じーつーさん


一つのスピン1/2を考えると
任意の状態はアップとダウンスピンの重ね合わせで書けますよね。
完全性というのはそういうことです。
スピンが二個以上の場合も同様。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/02/01(Mon) 18:16  No.8235 
こんにちは。 
わたしも雑感を記します。

1 固有値が離散でなく連続の気持ち悪さは数学では
  rigged Hilbert space (Gelfand triple, nested Hilbert space, equipped Hilbert space)
  とかで扱うようですが、わたしには難しいです。幸いいつものディラックのδ関数を使えば知らず知らずこれと同じことになっているらしいので安心しています。

2 座標、運動量とも固有値スペクトルは有界でないことから、必ずこれらからつくられているエネルギー演算子の固有値も正のほうでは有界でないと考えています。

3 スピンなど座標、運動量以外のものも効く場合、たとえば固体結晶のハミルトニアンHが
  H全体 = H原子スタンドアローン + H結晶ポテンシャル + H軌道スピン相互作用 + Hスピンスピン相互作用 + Hゼーマ ン効果 の場合 前のふたつと後ろの三つにわけて
  前のふたつの和   : 非摂動パート。スピンのない世界では固有ベクトルは完全系をなしていたので摂動計算で展開基底にできる。
  後ろのみっつ    : スピンが関係する摂動パート。スピンのかかわらないエネルギーはあらわせない、という意味で固有ベクトルは完全系をなさない。
  ハミルトニアン全体 ; 固有ベクトルは現実世界で完全系をなす。
  と考えています。
PS
>有限のスピンνに対して完全性関係のようなもの
<tex>\sum_{\nu}\left|\nu\right>\left<\nu\right|=1</tex>
>が使われていたため、

スピンの固有ベクトルは、スピンの部分空間で完全ですが、スピンとハミルトニアンは可換でなくエネルギーの基底にはなりません。
後ろのみっつの作用域はスピンの部分空間と一致しないし、上説のように完全系でもないと考えます。

=甘泉法師=



  投稿者:じーつー - 2010/02/09(Tue) 14:53  No.8262 
遅れましたが、レスします。
また物理的実態はあまり考えていない部分があると思われますが、ご容赦ください。

TOSHIさん
>完全性に無限も有限も離散も連続も関係ないと思います。
そうなのですか?例えば2つのベクトル
<tex>\left( \begin{array}{cc} 1\\ 0\\ \end{array} \right) </tex> と <tex>\left( \begin{array}{cc} 0\\ 1\\ \end{array} \right) </tex> で完全性関係のようなもののの左辺を計算すると
<tex>\left( \begin{array}{cc} 1\\ 0\\ \end{array} \right)(1\ \ 0) + \left( \begin{array}{cc} 0\\ 1\\ \end{array} \right)(0\ \ 1) = \left(\begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 0 & 0 \\ \end{array} \right) + \left(\begin{array}{cc} 0 & 0 \\ 0 & 1 \\ \end{array} \right) = \left(\begin{array}{cc} 1 & 0 \\ 0 & 1 \\ \end{array} \right) = \hat{1}</tex>
となります。この関係のこと自体が完全性と呼ばれ、無限和である必要はない、ということでしょうか。

>異なる完全系があるとそれらは表示の違いなのでユニタリ変換で結びつくだけです。
次元が異なっていてもそうなのですか?ユニタリ行列は正方行列だと思います。
もし次元が異なる完全系同士がユニタリ変換で結ばれないならば、
完全性に無限も有限も離散も連続も関係ないことに矛盾してしまいます。
完全系ならば完全性を満たすが、完全性を満たしても完全系とは限らない、ということでしょうか。

>明男さん
軌道に関する座標は完備で積分で表せるが、スピンに関する座標は完備でなく、
本当は和だが、形式的に積分と同じ記号で表していて(小出昭一郎の量子力学(T)P224 中ほど)、
それが混乱に拍車をかけている、ということでしょうか。

>nomercyさん
たしかにそうなのですが、完全系ならば無限和になっているのに、
スピンが有限であるために有限個の状態の和になっています。
それでも何も問題ない、ということでしょうか。

>甘泉法師さん
No.8235 の 3番へのレスです。
>後ろのみっつ    : スピンが関係する摂動パート。スピンのかかわらないエネルギーはあらわせない、という意味で固有ベクトルは完全系をなさない。
これの意味がよくわかりませんでした。特に「スピンのかかわらないエネルギーは
あらわせない」の部分がわかりません。
また、僕の見ている教科書(桑田啓治と伊藤公一の電子スピン共鳴P119〜)では、
非摂動パートで得られた固有関数がスピンに関して縮退しているため、
スピン座標が勝手に導入されています。純粋に軌道座標だけで記述された
状態に、勝手にスピン座標を導入しても問題はないのでしょうか。



また、途中でも一度書きましたが、完全性と完全系は同値ではないのでしょうか。
なんだかこの質問自体が「甘い」と「砂糖」は同値か、というものに似ている気もしますが・・・。

  投稿者:nomercy - 2010/02/09(Tue) 23:39  No.8270 
じーつーさん

基本的に、おっしゃるとおりと思います。
スピンの完全性についてはNo.8262の冒頭の2×2行列の議論そのものです。
スピン1/2は2つの状態しかない有限自由度の系です。
任意のスピン状態は↑と↓の2つの重ね合わせで書けます。
無限和にはなりません。
TOSHIさんからもありましたが、完全性には無限も有限も関係ありません。
特に、有限次元の方は自明です。
(エルミート行列は対角化可能で、すなわちn個の一次独立な固有ベクトルをもつ。従ってこれらn個の固有ベクトルは今考えているn次元状態空間の基底を張る)

>純粋に軌道座標だけで記述された状態に、勝手にスピン座標を導入しても問題はないのでしょうか。

具体的な状況が分からないので何とも言えませんが、
スピンに関して縮退しているなら、
スピンをどのように選んでも良いので、
勝手に(その後の摂動計算がやりやすいような基底の取り方をして)
スピン座標を導入しても良いのではないでしょうか。

  投稿者:じーつー - 2010/02/10(Wed) 00:21  No.8272 
nomercy さん
どうもありがとうございます。
現在立ち止まっているところまでですが、状況の説明をします。

===================教科書要約===================

1つの原子核の周りを、1つ以上のの不対電子が存在するとき、

H_系のハミルトニアン = H_電子の運動 + H_核と電子のクーロン + H_スピン軌道相互作用
              + H_結晶場 + H_電子のゼーマン + H_スピンスピン + H_超微細相互作用 + H_核四重極子相互作用

で表されます。右辺の最初の2項は大きいので、この2つを非摂動部分、
残りを摂動部分として系の固有関数を求めます。
そして、非摂動部分のハミルトニアンにはスピンは含まれていません。
しかし、非摂動部分の固有関数は(核スピンを無視すると)
1つの軌道当たりスピンの縮退度(2S+1)個だけあります。
得られた固有関数Φは、軌道変数の添え字m,n、スピン変数の添え字μ,νを使って

<tex>\left<m\mu|n\nu\right>=\delta_{mn}\delta_{\mu\nu}</tex>

を満たします。
===================要約終了===================

とあります。最後の部分が気持ち悪いのです。何が気持ち悪いのかというと、
例えば水素様原子の電子のシュレーディンガー方程式の解はスピンを含みません。
クーロン相互作用がハミルトニアンに追加されたとしても、それは変わらないでしょう。
では、つの軌道当たり(2S+1)個あるといって、基底を増やしても
"固有関数自体が縮退している"(スピンが違っても関数は同じである)ので、
結局意味はなくなってしまう気がします。
スピン変数を持たない固有関数のはずなのに、スピンに関するクロネッカーのデルタが
入り込むのも、理由がわからず、気持ち悪いです。

  投稿者:nomercy - 2010/02/10(Wed) 00:55  No.8273 
>例えば水素様原子の電子のシュレーディンガー方程式の解はスピンを含みません。

もともとはスピン自由度があるが、
スピンに依存しないので省略しているということです。

まずはスピンをもつ自由電子を考えてみるのが良いと思います。

磁場やスピン軌道相互作用は無いとすればハミルトニアンは H=p^2/2m です。
つまり、スピンはどちらを向いていようとも、エネルギーには関与しません。
このとき、一電子の状態は運動量とスピンを指定して
|pμ>
と表せます。運動量がpの↑スピン電子は |p↑>と書かれます。
μは↑でも↓でもエネルギーは同じです。
pとμを併せて書いていますが、
今の系では軌道とスピンは分離していますので、
結局、平面波の波動関数にスピンの状態を書けただけです。
気持ち的には |p>|μ> こんなかんじ。
すなわち、軌道部分の計算とスピン部分の計算は全く独立に行います。

行列とベクトル(スピノル)で表現することもしばしば用いられます。
↑スピンを (1,0)^T, ↓スピンを (0,1)^T とします。
ハミルトニアンは
<tex> H = \begin{pmatrix} p^2/2m & 0 \\ 0 & p^2/2m\end{pmatrix}</tex>
と表現されます。
磁場がないので↑スピンのエネルギー(11成分)と↓スピンのエネルギー(22成分)は同じです。
非対角成分は零です。
横磁場があったり等、スピンを反転させる寄与があれば非零です。
この行列の固有関数は、運動量pの↑スピンと↓スピン
<tex> \begin{pmatrix} e^{i p x} \\ 0\end{pmatrix}, \quad \begin{pmatrix} 0 \\  e^{i p x}\end{pmatrix}</tex>
の二つにとれます。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/02/11(Thu) 15:56  No.8289 
こんにちは。
別のスレッドで寄り道して考え戻ってきました。

じーつー さん- 2010/01/24(Sun) 00:26 No.8204
> また、解の完全性も仮定されていますが、それはどうしていえるのでしょうか。
T_NAKAさん - 2010/01/25(Mon) 12:56 No.8219
> 当初の問題は「非」摂動部分の解の完全性です。

考えてみました。あれこれいっているにすぎないのですが..

問題:Hをある物理系のハミルトニアンとする。現実の物理を説明するからオブザーバブルである。
Hを和H0+H1と表してH0がオブザーバブルであるようにできるか?

いろいろな考え方
A 物理の現実に対応しないので、H0はオブザーバブルでありえない。
B H0が物理の現実であるような系、たとえばH0が運動エネルギー項なら自由空間、が実在すればオブザーバブルにできる。ある系のハミルトニアン演算子は他の系でもオブザーバブルである。
C H0の表式の数学的性質でオブザーバブルかどうかがきまる。「物理」や「実在」は関係ない。
C−1 PとXがオブザーバブルであることは確かだからそれぞれの関数f(P)やg(X)ならオブザーバブルである。
C−2 調和振動子のハミルトニアンX^2+P^2がオブザーバブルであることは証明されているから(以下、上と同じ)。
C−3 井戸のハミルトニアンP^2 +Vが(以下、上と同じ)
 ....
D H0はオブザーバブルでないが固有関数は完全系をなすので展開にはつかえる。
E ....
  
=甘泉法師=


  投稿者:甘泉法師 - 2010/02/14(Sun) 14:56  No.8314 
追加

E H0がエルミートであればH0はオブザーバブルである。
 
=甘泉法師=

  投稿者:じーつー - 2010/02/15(Mon) 18:42  No.8330 
nomercy さん

(非摂動部分の)ハミルトニアンにスピンが入っていないのに、その固有関数に
「スピンが省略されている」ということが言えるのならば、スピン以外の
いろいろな座標変数が省略されているという解釈もできてしまうのでは
ないでしょうか。スピンは存在が認められているからまだ良いのですが・・・。

スピノルをまともに勉強していないので、変なことを書くかもしれませんが、
<tex> H = \begin{pmatrix} p^2/2m & 0 \\ 0 & p^2/2m\end{pmatrix}</tex>
の p は演算子ですか?演算子なら、スピノルを考慮しない解に
(1,0)^T や (0,1)^T がくっつくことになり、nomercy さんが示した解と整合性が取れると思います。
しかし、確かにそれでも内積計算には問題ありませんが、何か不格好で違和感を感じます。

摂動部分のハミルトニアンにスピン(行列)が入っていることから、非摂動部分の
ハミルトニアンにも2×2の(S×Sの)単位行列が省略されていると言え、その解の
固有関数にもスピンが省略されている、という流れでしょうか。


甘泉法師 さん

新たにスレッドまで立てていただき、ありがとうございます。
しかし、僕はオブザーバブルという概念がよくわかりません。

最もわからない部分は No.8289 のC−1 に関連します。
古典力学の世界で、例えば走っている車の運動エネルギーはオブザーバブルなのでしょうか。
運動エネルギーを測るためには、まず車の質量を重量計で計ります。
そして、スピードガンか何かで速度を計るなどします。
その結果から、mv^2/2 で運動エネルギーを計算します。
この他にも、バネをくっつけた壁になんとか垂直入射で弾性衝突してもらう
なども考えられますが、結局はバネの縮んだ長さから、kx^2/2 で間接的に
測定します。

このように間接的に計測された場合も、オブザーバブルといって良いのでしょうか。
さらに、示されて気づきましたが、僕はBのスタンスで考えていました。
そのためか、元々の問題とオブザーバブルとの関連がよくわかりませんでした。

  投稿者:nomercy - 2010/02/15(Mon) 19:13  No.8335 
>スピン以外の
いろいろな座標変数が省略されているという解釈もできてしまうのでは
ないでしょうか。

そうですね。
どこから出発して、何に注目するかという問題だと思います。
今の場合、出発点はシュレディンガー方程式で、本来これにはスピンは含まれていません。
しかし、スピンに関する現象を記述したいので、ある意味で現象論的にスピンを導入して、ゼーマンエネルギーやスピン軌道相互作用を付け足したということです。

スピン以外の何かが省略されているかも、と考える自由度はありますが、
やはり問題は何を論じたいか?ということです。
スピンを論じたかったので、現象と矛盾しないようにスピンだけ導入したということですね。

電子の内部自由度が何か?を決定するには一つ上の立場から理論を始める必要があります。
相対論的電子論から始めれば、
スピンは必然的に導入され、ゼーマンエネルギーやスピン軌道相互作用の形は一意に導出されます。

  投稿者:nomercy - 2010/02/15(Mon) 19:26  No.8336 
>p は演算子ですか?

そうです。

>何か不格好で違和感を感じます。

行列の形に書いても良い、というだけで、
どのように表示するかは好みですね。

>摂動部分のハミルトニアンにスピン(行列)が入っていることから、非摂動部分の
ハミルトニアンにも2×2の(S×Sの)単位行列が省略されていると言え、その解の
固有関数にもスピンが省略されている、という流れでしょうか。

そのような考えで良いかと思います。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/02/16(Tue) 08:18  No.8343 
Re: 摂動計算の仮定 じーつーさん - 2010/02/15(Mon) 18:42 No.8330

> 甘泉法師 さん
> しかし、僕はオブザーバブルという概念がよくわかりません。

こんにちは。
オブザーバブルを固有状態の組が完全系をなす力学変数という意味で使いました。
cf Dirac II-10 is "We call a real dynamical variable whose eigensates form a complete set an observable."

じーつーさんの「非摂動ハミルトニアンは完全系をなすのか」という質問をいいかえただけです。ディラックがobservableと命名しました。 「観測可能」という言葉からどう観測装置を組むかと話を進めたくなりますが、それとは趣向が違う話です。

=甘泉法師=

  投稿者:じーつー - 2010/02/19(Fri) 19:01  No.8368 
nomercy さん
おけげでよくわかりました。最後までお付き合いいただき
どうもありがとうございます。

甘泉法師 さん
甘泉法師さんもどうもありがとうございます。

>「観測可能」という言葉からどう観測装置を組むかと話を進めたくなりますが、それとは趣向が違う話です。

なるほど、どうやって実験するかとは無関係なのですね。
observable の概念は難しいですが、理解していきたいです。