EMANの物理学 過去ログ No.8163 〜

 ● 不確定性

  投稿者:さと - 2010/01/05(Tue) 19:39  No.8163 
不確定性に関する記述が次のようにありました。
量子の状態で考えると常に不確定性が働き、次の状態は不確定な確率であらわされるにすぎません。
例えば、
東京タワーからハンカチを落としても、どこに落ちるかは確定できない。
1センチ上から落とすならだいたい正確にわかります。しかし、そこから
1センチまた1センチと上がっていくとすれば、今の状態が次の状態に影響を
与え、また次に影響を与えるという連続ですから、次の状態が99.9%
正確だとしても0.999を掛けていくと最後は限りなく0に近づいていきます。ですから東京タワーの上からハンカチを落とすと落下地点はわからなくなってしまうのです。

何か胡散臭い説明で納得しがたいのですが、上記のことは正しいのでしょうか

  投稿者:甘泉法師 - 2010/01/05(Tue) 22:58  No.8164 
こんにちは。遅くなりましたが新年おめでとうございます。

昔読んだ都筑先生のブルーバックスを思い出しました。違うかな?

お話の状況は、量子力学というよりプロセスごとの不確定性、ランダムウォーク(乱歩とか酔歩とかブラウン運動とかフォッカープランク方程式とか)にあてはまると思います。

量子力学の不確定性はこういう還元ができないようなもののように思います。あ、でもシュレジンガー方程式を揺らぎとみる解釈もあるようですね。ファインマンもパスインテグラルの計算で区間をくぎって説明していました。ものを知らず、私も知りたいところです。

=甘泉法師=


  投稿者:じーつー - 2010/01/09(Sat) 10:46  No.8179 
上記のことは正しいのか、の答えになっているかはわかりませんが、僕の解釈を書きます。
僕は、量子力学の不確定性原理

<tex>\Delta x \cdot \Delta p \geq \hbar / 2 </tex>

は、フーリエ変換の不確定性(証明は『≧』の辺りが個人的に難しいです。)

<tex>\Delta x \cdot \Delta k \geq 1 / 2 </tex>

及び、量子力学における波数と運動量の関係

<tex>p = \hbar k </tex>

から説明できると思っています。
なので、不確定性原理の説明としてはビルの例は正確なものとは言い難いと思います。
しかし、読者に不確定性を強調するためにこのような正確ではない例を
出してしまうこと自体は、悪いこととは思いません。
読者に、不確定性がある、ということを強調できれば良いのです。


量子力学の不確定性をもたらしている原因はフーリエ変換ではなく、
<tex>p = \hbar k </tex> とか <tex>E = \hbar \omega </tex> なのかもしれませんね。

  投稿者:hirota - 2010/01/09(Sat) 13:20  No.8180 
東京タワーからハンカチを落とす話は予測の不確定性ですが、量子力学の不確定性は現在の状態自体の不確定性です。(その結果、予測も不確定になるけど : 「不確定性が働き、次の状態は不確定・・」は、その意味だと思う)
もっとも、状態が不確定と言うのも不正確で、確定した量子力学的状態が古典的表現では正確に表せないだけですが。

  投稿者:凡人 - 2010/01/09(Sat) 20:49  No.8181 
可観測量A,Bの演算子が[A^,B^]=iħの時、A,Bの観測値の揺らぎが僊傳>=ħ/2となる、というのが不確定性(原理|関係)ではないでしょうか?(もしħ=0になれば、僊傳=0なので、古典論と同じになります。)

  投稿者:kafuka - 2010/01/10(Sun) 01:01  No.8182 
>不確定性原理の説明としてはビルの例は正確なものとは言い難い
同感です。
カオス的「不可知性」と不確定性原理の「不確定性」をゴッチャにしてはいけないと思います。
東京タワーのハンカチの例では、位置xは正規分布、速度(運動量p)も正規分布
で、この2つの分布は、Δx∝1/m Δpt の関係がありそうです。
(ある時刻tでの関係です。この場合のtは地上に落ちた時刻ではありません)
しかし、電子等の位置を測定した場合、位置の分布と運動量の分布の
間には、フーリエ変換の関係があります。
証明:
運動量pでは、煩雑なのでk=p/ℏ と置き換えたもので示します。
ψ(x)|x> = |x><x|ψ>    (状態ベクトルの固有ベクトル|x>への射影)
ψ(k)|k> = |k><k|ψ>
|ψ> = ∫ψ(k)|k> dk    (全ての射影を合わせればもとの状態ベクトル)
これに、固有ベクトル|x>との内積をとる
<x|ψ> = ∫ψ(k)<x|k> dk = ψ(x)
<x|k> は、exp(ikx)
この証明は、http://blogs.yahoo.co.jp/kafukanoochan/61737027.html を参考にされたい
従って、
ψ(x)=∫ψ(k)exp(ikx) dk
これは、(逆)フーリエ変換 そのものである //

もう一つの違い:
東京タワーのハンカチの例では、ハンカチの落ちる軌道は、観測してもしなくても、なんら変わりません。
しかし、電子とかでは、状態は、一般に非実在です。
(観測する前から決まっているかどうかという意味で、です)
これは、「状況依存性定理」から言えます。
参考: http://blogs.yahoo.co.jp/kafukanoochan/60370534.html

PS.
上で、単に「分布」と書きましたが、
電子とかの確率分布は、ψ*(x)ψ(x) やψ*(p)ψ(p) です。
いずれにせよ、ハンカチの場合とは違います。

  投稿者:甘泉法師 - 2010/01/10(Sun) 10:09  No.8183 
こんにちは。


ちょっと落ちるごとにハンカチの位置を観測して地上に落ちるまで記録する。たくさん(N枚)のハンカチを落としてさまざまなN経路を記録する。
そのうち途中は違っても最後は地上のある地点に落ちるn経路を得る。n/Nで確率がわかる。


途中の観測は一切しない。頭の中でちょっと落ちる区間ごとにハンカチの移動経路を仮想した状態ψを計算する。仮想した経路の状態の重ね合わせで最後に得るψから|ψ|^2を計算して確率を得る。

比喩は1でなく2のことをいっている、と弁護できるかもしれません。

=甘泉法師=

  投稿者:kafuka - 2010/01/10(Sun) 18:08  No.8184 
甘泉法師さん:

こんな例は、どうですか?
シュレーディンガの猫の実験は、ラジウム原子核のα崩壊の有無が猫の生死を決定します。
1.「シュレーディンガの猫の実験」で猫を、観察しながら実験する。
2.「シュレーディンガの猫の実験」で猫を、途中の観測は一切しないで、仮想した状態ψを計算する。
1’「シュレーディンガの猫の実験」でラジウム原子核を、観測しながら実験する。
2’「シュレーディンガの猫の実験」でラジウム原子核を、途中の観測は一切しないで、仮想した状態ψを計算する。

1と2の結果は、同じでしょう(2’とは、違う)
甘泉法師さんが掲げた例は、上記1,2に当てはまる と思います。

2と2’の違いは、、、
ラジウム原子核が崩壊するを|A>  崩壊しないを|B> とすると、
ラジウム原子核の状態|ψRa> = a|A> + b|B> ですから、
|A>が(1,0)†と表現すれば、|B>は、(0,1)†である必要があります。
そう仮定すると、干渉項が現われます。
ψ(q) = <q|ψRa> = a<q|A> + b<q|B>
において、
|ψ(q)|^2=(a<q|A> + b<q|B>)*(a<q|A> + b<q|B>)
=|a<q|A>|^2 + |b<q|B>|^2 + ab<q|A><q|B> + ab<q|B><q|A>
=a^2q1*q1 + b^2q2*q2 + ab(q1*q2 +q2*q1)    ただし|q> = (q1,q2)
第三項が干渉項です。

一方、猫の場合は、
「猫が生きている」を|生>  「死んだ」を|死> とすると、
猫の状態|ψCat> は |生> または |死> のどちらかしか取れません。
一方がわかれば、もう一方は決まるので、1bit と思います。
ということは、
猫の|生> は (1) |死>は(0)で表現できます。
もちろん、(1,0)†と(0,1)† でもいいですが、
|ψCat> = a|生> または |ψCat> = b|死> の一方だけで記述できます。
一方だけでは、それを、どう射影しても干渉項は生じようがありません。

これが、2と2’の違いの1つ と思うのですが、、、

PS.
α崩壊の有無と猫の生死の繋がりを、どう説明するかは、訊かないでね 

  投稿者:甘泉法師 - 2010/01/10(Sun) 22:17  No.8185 
こんにちは。

1 先には「各経路の確率を足すのか・確率振幅を重ね合わせるのか」をいったつもりで、シュレジンガーの猫はまた別の話と思います。

2 さて、シュレジンガーの猫については「ラジウム原子核から猫までの間で観測が状態を変えるところ(量子的)と変えないところ(古典的)の境目はあるのか、あるならばどこか」はシュレジンガーの時代からいまだcontrovertialだと理解しています。ですから
>1と2の結果は、同じでしょう(2’とは、違う)
について自説を展開できるほど素養も根気もありません。すみません。
さらに脱線、深い愛情で目をそらさずじっと猫または原子核を見続ければ、ゼノン効果で寿命が延びるかもしれません。

=甘泉法師=

  投稿者:凡人 - 2010/01/10(Sun) 23:29  No.8186 
>深い愛情で目をそらさずじっと猫または原子核を見続ければ、ゼノン効果で寿命が延びるかもしれません。
量子逆ゼノ効果によって、逆効果になる場合もありますので、敢えて目をそらしていたほうが良い場合もあるかもしれません。
http://div.jps.or.jp/r11/wakate01.html

  投稿者:kafuka - 2010/01/11(Mon) 09:39  No.8187 
>シュレジンガーの猫はまた別の話
そのつもりです。状況設定を借りただけで、言いたいことは、
古典的物体(ドブロイ波長<<物体の大きさ)の時は、
>「各経路の確率を足すのか・確率密度を重ね合わせるのか」
いずれでも、同じ結果(1と2の結果は同じ)じゃないか?
ということです。

で、量子論的物体の場合とどう違うかというと、いい例が干渉項の有無
と思ったわけです。

こんな例では、どうでしょう。
東京タワーの頂上付近に、2つのスリット(穴)を置く。
その上空からハンカチを落とす。
実験結果(予想):
スリットを中心とした2つの正規分布
(重なる部分は、だだの和)
量子力学での計算:
(例えば左スリットを通った確率を <x1|s> 右を通った確率を <x2|s>とし、mをハンカチの質量とする。|s>は始状態)
重なる部分の計算結果は、「だだの和に非常に近い」
と思うわけで、(当然、mが電子の質量なら、1個づつ落としても干渉縞)
>「各経路の確率を足すのか・確率密度を重ね合わせるのか」
いずれでも、ハンカチでは、量子力学の不確定性の説明にならない
と思います。

PS.
古典的物体の上での定義(大きさ)と、下での定義(質量)が合っていませんね。
それから、スリット間の距離によっては「重なる部分」がなくなります。
だいたい、ハンカチが通る程のスリットだったら、電子にとってはスリットと言えなくなるし、、、
もうちょっと考えてみます。

  投稿者:kafuka - 2010/01/11(Mon) 16:01  No.8188 
さとさん:

ハンカチの例では、古典的粒子でもなんらかの擾乱があれば、量子論的粒子と同じ と誤解される
と思います。
また、
>量子の状態で考えると常に不確定性が働き、次の状態は不確定な確率であらわされるにすぎません。
事実と言えば事実ですが、ゼノ効果を掲げるまでもなく、
量子力学に対する説明としては、おかしな記述だと思います。

量子力学は、「状態ベクトルを記述する」という意味で、決定論です。
(状態ベクトルが、力学的作用により どう向くかは、100%確定です)
どうして、不確定性がでてくるかというと、
状態ベクトルを、現実空間に射影(固有ベクトルxへ射影)すると、
xについての関数がでてくる(ψ(x)と書きます)のですが、
xについてとあるように、xについて分布しています。
粒子の位置を観測したとして、どのxになるか、神のみぞ知る です。
まぁ、ψ(x)の絶対値が大きいほど、そのxの値になりやすいことは、言えます。
そこで、ψ(x)*ψ(x)つまり「ψ(x)の絶対値の二乗」が確率である とするわけです。

重要なのは、「量子力学での不確定性」は、外部からの擾乱がないのに「不確定」ということです。
詳しい説明は、省略しますが、
位置xと運動量p(xの相補量)の間に、
xp−px≠0
という関係(正準交換関係と言います)があるからです。
(xやpは、行列や微分演算ということになります)

詳しいことは、「EMANの物理学」のページの「量子力学」の章を見て下さい。

PS.
「電子を1個づつ隣接したスリットに通して発光板に写す実験」があります。
ボールなら、正規分布の和です。
波なら、隣接したスリットに通すと干渉縞が現われます。
電子では、以下です。
http://www.hqrd.hitachi.co.jp/rd/moviej/doubleslite-n.wmv
(最後には、干渉縞になってます!!)

  投稿者:甘泉法師 - 2010/01/11(Mon) 21:19  No.8189 
こんにちは。

>古典的物体(ドブロイ波長<<物体の大きさ)の時は、
>>「各経路の確率を足すのか・確率密度を重ね合わせるのか」
>いずれでも、同じ結果(1と2の結果は同じ)じゃないか?

 まず、空気の分子運動による揺らぎによるブラウン運動の問題なら古典力学の確率を適用し、真空中で途中に他の場や粒子と相互作用しない量子力学の粒子の変位の問題なら経路積分による確率振幅を重ね合わせる。これらは設定の異なる別の問題ですから両者の結果を比べることに意味はないと思います。

 kafukaさんの問題意識を斟酌して述べれば、猫の生死で考えるのは感情が入り混乱するので、前パラグラフの後者の問題でいえば、5分毎に位置を測定するのと測定しないのとでは1時間たった粒子の位置の分布は異なると考えます。

 さて、一般に同じ問題を古典的にも量子的にも考えられるのなら、量子力学が正しく古典力学はその近似と考えられます。たとえば古典力学が原理とする最小作用の原理の経路も量子力学で経路積分の重ねあわせで位相の打ち消しが効かないことに還元され、より深い理解が得られます。

=甘泉法師=

  投稿者:kafuka - 2010/01/17(Sun) 14:57  No.8193 
甘泉法師さん。

>両者の結果を比べることに意味はない
>測定するのと測定しないのとでは1時間たった粒子の位置の分布は異なる
>量子力学が正しく古典力学はその近似と考えられます
理解できました。
ありがとうございます。