EMANの物理学 過去ログ No.7792 〜

 ● 完全系とデルタ関数

  投稿者:QM - 2009/10/22(Thu) 15:13  No.7792 
量子力学の座標表示のページに「残念ながらデルタ関数は完全系ではない」とあります.
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/zahyo.html

しかし,狩木慶治著「量子力学T」pp.183に
「δ(q-q')をq'でラベルされているqの関数と考えたとき,それらはデルタ完全系をなす」と
書かれています.
この記述は,完全系をわかりやすくするための方便(ごまかし)なのでしょうか.
宜しくお願いします.

  投稿者:hirota - 2009/10/22(Thu) 18:55  No.7793 
「完全系」じゃなく「デルタ完全系」なんて書いてるところを見ると、定義が違うっぽいですね。
定義をじっくり読むと良いでしょう。

  投稿者:甘泉法師 - 2009/10/23(Fri) 07:24  No.7796 
こんにちは。

1.
連続固有値をとる固有状態が規格化できないことが瑕だと存じます。それでもδ関数を集めた、いくら小さくてもいいから0でない幅をもつ状態は規格化できるので物理の実際上は問題にならないと存じます。 むしろプランク長さ位で空間が不連続になる可能性と整合するかもしれません。

2.
関係 2πδ(a)=∫exp(iay)dy から 「δ関数で展開できる」 と 「フーリエ変換○フーリエ逆変換=恒等変換」は同値と存じます。 後者は数学の本で論じられていそうです。連続関数ならば命題は成り立つと存じます。

話がずれていたらすみません。

=甘泉法師=

  投稿者:EMAN - 2009/10/23(Fri) 08:22  No.7797 
 今教科書を確認しましたが、「デルタ完全系」とは書いてませんね。
 ちゃんと「それらは完全系をなす」と書いてあります。
 QMさんの書き写しミスでしょう。

 ところで、私が「残念ながらデルタ関数は完全系ではない」と言っちゃってますけど、数学用語的にはこの表現は問題ないかどうか、不安になってきました。

  投稿者:hirota - 2009/10/23(Fri) 11:52  No.7798 
任意の2乗可積分関数がデルタ関数の和 or 積分で表せるかと言うと、まるで不可能ですから、普通に見ると完全系なんて言えませんね。
でも、デタラメと言うわけでもなく、「関数」としてきめの細かい階段関数を考え、最小幅(有限幅)の階段関数をデルタ関数と思えば完全系です。(ベクトル(整数の関数)と単位ベクトルに同じ)
物理での細かさなんて限られた適用範囲しかないと思えば、それで有意味。
「数学の記法は物理概念の表現に使ってるだけで、数学そのものじゃない」ということかな。

  投稿者:凡人 - 2009/10/24(Sat) 00:01  No.7799 
hirotaさん
やっぱり、時空は連続体ではないという事でしょうか?

  投稿者:murak - 2009/10/24(Sat) 11:32  No.7800 
ご無沙汰してます。

> 残念ながらデルタ関数は完全系ではない

量子力学「座標表示」のページにおけるこの書き方は正直言ってマズイと思います。その直後に、その理由として

> 不可算無限個のデルタ関数を用意しなくては他の関数を表現できないことによるのである。

と書いてあるのは、もっとマズイ。

以前に何度か書いたと思うが、量子力学の連続固有値を扱うには大別して二つの流儀がある。一つはフォン・ノイマンの古典的教科書「量子力学の数学的基礎」、最近では新井朝雄さんの一連の教科書で扱われているような、ヒルベルト空間の理論に立脚して(数学的に嘘の無いやり方で)議論を進める流儀。この立場では物理量を表す作用素が連続固有値を持つなら、その固有値に対応する固有ベクトルは存在しない。従って普通の意味での固有関数展開は出来ず、射影作用素の族を用いたスペクトル分解と単位の分解がその代わりを務める。もう一つは、ディラックの教科書に代表される様に、連続固有値に対する固有ベクトルの存在を認めてしまって、離散と連続を合わせた固有ベクトル全体が(離散固有値のみの場合と同様に)状態空間に対する完全系を張るとする流儀である。後者の方法では連続固有値を持つ場合であっても、固有ベクトルの全体が完全系をつくることが理論の大前提となるが、その代償として状態空間は必ずしも(可分)ヒルベルト空間になるとは限らなくなる。

良く知られているように、位置演算子の固有関数はデルタ関数であり、運動量演算子の固有関数は(指数関数形で書いた)三角関数である。特に無限区間で考えた場合、それはどちらも2乗可積分関数のつくるヒルベルト空間には入らない。従ってフォン・ノイマンの立場では、それらはそもそも状態空間の元ではない(がしかし演算子はスペクトル分解可能)。一方ディラックの立場では、両者はどちらも立派な固有ベクトルであり、夫々その全体が完全系をつくる(そうでないと理論に破綻をきたす、というかそもそも理論が成立しない)。

EMANさんとしてはおそらく「互いに直交する関数を(可算)無限個集めれば、完全系をつくると思うかもしれないが、話はそんなに単純ではなく、デルタ関数の場合は非可算無限個集めなくてはならず、可算個では完全系にならないよ」と言いたいのだと思う。しかし状態空間が可算個の元からなる正規直交完全系をもつようなヒルベルト空間に限られるのはフォン・ノイマンの立場での話であり、その場合、「デルタ関数は完全系か」という問いはそもそも意味を持たない。一方、ディラックの立場に立つなら位置演算子の固有関数としてのデルタ関数の族は当然完全系でなければならす、完全系を可算無限次元のものに限るのは筋が通らない。つまりどちらの文脈から言ってもEMANさんの問いかけは焦点がずれている感じがする(なので、本にする場合は是非内容を検討しなおしてね)。

  投稿者:kafuka - 2009/10/24(Sat) 14:59  No.7802 
>murakさん

ちょうど、この辺を勉強しているところで、
量子力学の色々な本を読んで、何が正しいヒルベルト空間の理論か? 疑問だったのです。
量子力学の方には、2つの立場があるのですね。
(もちろん、数学的には、1つしかないですが)

>射影作用素の族
そういえば、「新版 量子論の基礎」p73に、

A=∫a|a><a| da    ただし A|a>=a|a>
は、「a以下の固有値の空間への射影演算子ξ(a)」の微分dξ(a)に置き換え、
A=∫a dξ(a)
とすべき。

と書いてあります。

  投稿者:murak - 2009/10/25(Sun) 01:59  No.7804 
kafkaさんの#7802の書き方に則して言えば、

   「a以下の固有値の空間への射影演算子ξ(a)」からなる族{ξ(a)}

が単位の分解に相当し、dξ(a)は「ξ(a)の微分」ではなく、(積分記号と共になって)単位の分解{ξ(a)}を測度としたスティルチェス積分を行うという意味で、

   A=∫a dξ(a)

が作用素 A のスペクトル分解に相当する。

  投稿者:kafuka - 2009/10/25(Sun) 10:19  No.7805 
>murakさん
ありがとうございます。
おかげで、頭の中の整理はできました。
(理解の方は、まだまだですが、、、)

「波動関数の空間は、そのままでは完備でない」ので「初等積分をルベーグ積分に置き換える」必要がある
とアイシャム「量子論」にあったので、
ルベーグ積分の本を、ちょっと読んだだけなので、
スティルチェス積分??? ですが、
腰を落ち着けて勉強します。

>EMANさん
恐縮ですが、Murakさんの発言を、差し障りのない範囲で拙ブログに引用させて頂きました。
http://blogs.yahoo.co.jp/kafukanoochan/62409894.html

  投稿者:ASA - 2009/10/25(Sun) 12:32  No.7806 
murakさんNo.7800

 この意見は、おかしいですね。EMANの物理学なのだからEMAN流の記述があってもよろしいはずです。精査していませんが、ちょっと見たところブラケット記法に基づいて、両者の仲介を説明している部分に見えました。文脈を無視した批判は、無粋だと思います。

 個人的には、細かいことはおいておく(ベクトルやδ関数等が持つべき性質を暗に要請している)ディラック流が好みですね。数学的厳密さを追求しても、物理学的な意味は有りません。物理をやっているので数学をやっているわけでないですから。

あと、気になった点は、
>dξ(a)は「ξ(a)の微分」ではなく、
 微小部分という意味での微分では? "量子論の基礎"としては、間違いといえませんよ。

  投稿者:murak - 2009/10/25(Sun) 13:00  No.7807 
別にEMANさんの「座標表示」の記事全体を批判しているわけではありませんよ。むしろEMAN節を貫くなら、ここは是非「デルタ関数は完全系をなす」と堂々と書いてもらいたいというのが私の真意です。(それがわからない人はそれで結構)

なお、#7804はkafukaさん(それと暗に「量子論の基礎」の著者)に宛てたものです。

  投稿者:kafuka - 2009/10/25(Sun) 15:14  No.7808 
>murakさん
ちょっと教えて下さい。

族というのは、「どの元も集合であるような集合」ですから、

>「a以下の固有値の空間への射影演算子ξ(a)」からなる族{ξ(a)}

のξ(a)は、「0〜aの固有値の空間への1つ々の射影演算子=射影演算子の集合」
と思っていいですか?

それから、固有ベクトル|a> に対する完全性条件は、どう書くのでしょうか?

∫dξ(a)=1 ???

  投稿者:ASA - 2009/10/25(Sun) 16:21  No.7809 
>EMAN節を貫くなら、ここは是非「デルタ関数は完全系をなす」
EMAN節だと何ゆえ、あの部分で「デルタ関数は完全系をなす」としなければならないのか理解できません。
 できれば、説明願います。

>#7804はkafukaさん(それと暗に「量子論の基礎」の著者)に宛てたものです。
 筆者の取捨選択により、そのようなものはつまらない(物理として不要な記述)として、不要としただけでしょう。著者は"量子論の数学的基礎"を詳述しようとしたわけではなく、「量子論の基礎」として、特に射影仮説周辺の従来あまり省みられなかった物理学(観測問題)に必要な枠組みを提供している様に思えます。

 スティルチェス積分等に係わるのは、物理と関係ないです。kafukaさんをみると数学に目がくらまされて物理の筋道が見えなくなっているのではと危惧します。見通しをよくするため必要最小限の道具(数学)に制限するというのは、教科書の著者にのみ許される自由な選択であり、他人が関係ない掲示板でいうのは見苦しいものと感じます(本人に直接いうべきでしょ)。

  投稿者:murak - 2009/10/25(Sun) 20:52  No.7810 
#7808 kafuka さん

> 族というのは、「どの元も集合であるような集合」ですから、

この言い方は、集合論の中で「集合の集合としての『集合族』を言い表す」ための特殊な言い方です。より一般的に「族」という言葉を使う場合は、何等かの対象(今の場合は射影作用素)があるパラメータ(今の場合は a)によって特徴付けられる集まりをつくっている場合に、その「パラメータによって特徴付けられる集まり」という部分を強調するために、単に「****の集合」という替わりに「****の族」という言い方をします。なので今の場合は、単に「a以下の固有値の空間への射影演算子ξ(a)の集合」を{ξ(a)}と書いているのだと思ってもらえばいいです。

もう少し具体的には、例えば一次元の位置演算子の場合だと、それに対応する「単位の分解」というのは次の様にして構成される射影演算子の集まりのことです。

(1) 区間  $(-\infty, a]$  上で  $1$  それ以外で  $0$  という値をとるような関数を  $\chi_a$  と表しておく。
(2)  $L^2(R)$ に属する関数のうち、 $(-\infty,a]$ 以外で 0 となるような関数のつくる部分空間を $E(a)$ と書いておく。
(3)  $L^2(R)$ に属する関数 $f$ に対して $\chi_a(x)$ と $f(x)$ の積 $\chi_a(x)f(x)$ として得られる関数 $\chi_af$ 対応させる写像を $\xi(a)$ と書くと、 $\xi(a)$ は $L^2(R)$ から $E(a)$ への射影演算子となる。
(4)  $a$ をパラメータとする射影演算子の族 $\{\xi(a)\}_{a\in R}$ をつくると、これが位置演算子に関する単位の分解になる。

このとき明らかに $\lim_{a\to-\infty}\xi(a)=0$ (零演算子)、 $\lim_{a\to+\infty}\xi(a)=I$ (恒等演算子)が成立する。

また区間 $(-\infty, +\infty)$ (実数直線)を分点 $\cdots, x_{k-1}< x_k< x_{k+1}, \cdots$ により幾つかの区間 $I_k=(x_{k-1},x_k]$ に分割しておくと

     <tex> R=(-\infty, +\infty) = \bigsqcup_k I_k </tex>   (直和)

であり、各分割区間  $I_k$  上でのみ $f$ を見た $f_k$ に関して、

     <tex> f_k = \xi(x_k)f - \xi(x_{k-1})f = \{\xi(x_k)-\xi(x_{k-1})\}f </tex>

が成立する。従ってこれらを各 $I_k$ について加え合わせると

     <tex> f = \sum_k \{ \xi(x_k)-\xi(x_{k-1}) \}f </tex>

が成り立つが、 $f$ は任意の関数でよいので

     <tex> I = \sum_k \{\xi(x_k)-\xi(x_{k-1})\} </tex>

と書いても良い。すなわち恒等演算子 $I$ が射影演算子 $\xi(x_k)-\xi(x_{k-1})$ の和に分割された。ここで実数直線の分割を無限に細かくすると右辺の和は積分に移行し

     <tex> I = \int_{-\infty}^{+\infty}d\xi(x) </tex>

が成立すると予想される。これが演算子のスペクトル分解の基礎を与えるものとしての「単位の分解」であり、離散固有値の場合の「固有ベクトルの全体が完全系をつくる」という結果( $I=\sum_k|\varphi_k\rangle\langle \varphi_k|$ )に取って代わるものである。

(kafukaさんのいう「完全性条件」とはこれのことか? ただし、最初の方に述べた形で $\lim_{a\to+\infty}\xi(a)=I$ と書いておいたほうが安全。)

ちなみにディラックのブラケット記法では、これと同じことを

     <tex> I = \int_{-\infty}^{+\infty} dq |q\rangle\langle q|  </tex>

と書く。

(つまり上のディラックの記法は、数学的に由緒正しい「単位の分解」の言い換えにすぎない。正統なヒルベルト空間論では(固有ベクトルが存在しないため)射影作用素を用るという回り道をしないと述べられ無かった結果を $|q\rangle$ という虚構を許して、離散固有値の場合と全く同じ形式で述べる事を可能にしたのが、ディラックのブラケット記法である。従って、そのやり方を認める以上、「デルタ関数は完全系をなす」と述べる事に何等問題は無い。)

  投稿者:ASA - 2009/10/26(Mon) 19:53  No.7812 
やはり、murakさんの主張は間違いですね。
>「デルタ関数は完全系をなす」と述べる事に何等問題は無い
 具体的なデルタ関数系の表現は、どうなるのですか?
例として、調和振子の基底状態数をデルタ関数系で展開するとどうなるのですか?是非示してください。
 普通の摂動計算としては、完全性を使用していますが、
デルタ関数系を用いて同様なことが可能なのでしょうか?
 完全性について教科書で言及するのは、摂動計算などで物理上重要だからですね。

 物理量を定量的に算出する手立てを明らかにできないにもかかわらず、物理的に問題なしとすることは全くもって理解不能です。
(もしかして、こういう物理的に意味の無いこと述べるのがEMAN節を貫くこととmurakさんは思っているのでしょうか?)

>虚構を許して、離散固有値の場合と全く同じ形式で述べる事を可能にした
 筆者の自由としては、虚構(いいかえれば、具体的表現を与えられない)故に、コンプレートネス云々について言及しないということがあるわけです。(方程式の発散解を捨て去るのと似たようなことですけど)

 「形式的に揃っているから物理的に問題がない」とはいえないですね。

  投稿者:yuya - 2009/10/26(Mon) 21:16  No.7813 
高度な議論をされてるのに邪魔してすみません。

>ところで、私が「残念ながらデルタ関数は完全系ではない」と言っちゃっ
>てますけど、数学用語的にはこの表現は問題ないかどうか、不安になって
>きました。

こういうことって、よく起こりますよね。

なんだろう、詳しい人からのツッコミも怖いけれど、それより何より、
数学的にも問題ない表現にしておかないと、
思いもよらない所で初心者がつまづいてしまうかも知れない。

なので、(ときどきは)数学的に厳しい立場からの意見が欲しくなるんですよね〜。

私の場合、それこそ数学にハマり込んで物理に帰って来られなくなる恐れがあるので、
ASAさんの警鐘も同時に有り難いわけですが(笑)

さてさて、murakさんのご説明で大体理解したのですが、

>しかし状態空間が可算個の元からなる正規直交完全系をもつようなヒルベ
>ルト空間に限られるのはフォン・ノイマンの立場での話であり、その場合、
>「デルタ関数は完全系か」という問いはそもそも意味を持たない。

「そもそも意味を持たない」というところの本意を、もう少し知りたいです。
「フォン・ノイマン的にはデルタ関数は完全系ではない」ということであれば単純に納得できるのですが、
全然意味がなくなってしまうのはどうしてなんでしょうか。
(すっげーアホなこと聞いてるかも知れないですけど……)

  投稿者:EMAN - 2009/10/26(Mon) 21:18  No.7814 
 murakさん、
とりあえず、どんな点に気を付けて勉強し直せば良いかということは
今までで一番良くわかった気がします。
 これ以上細かいことを言われても、
自分で問題意識を持ってやって見ない限りはどうも実感できないのです。

 今回、一から勉強しなおそうと思って買ってきたのが
ちょうど猪木先生の教科書でして、
自分の説明もそれほど悪くないな、なんて安心してしまっていたのでした。

 出版は目標を持ってやっておりますが、まだまだ後になると思います。
 まだ調べたいことが山とありますし、
不安な点は少しも残したくありませんので。

  投稿者:ASA - 2009/10/27(Tue) 07:33  No.7816 
EMANさん
 記事「ヒルベルト空間」に書かれていますが、数学用語など"知らないと不安じゃないか"ということが有りますね。このあたりの話は、ディラックが物理用の枠組みをつくり、後付で数学体系が構築され続けています。
 ですから、細部に踏み込めば、いくらでも新しい数学用語がでてきます。
>「ああ、そうだね。 ついでに言えば、それは『無限次元複素ヒルベルト空間』のことだよね。」と軽くかわすことが出来れば
 数学用語を使い軽くかわせるようになるには、それなりの労力が必要で、それなりに大変です。
 それよりも、物理的に関係ないとして切り捨てる方が時間を無駄にすることが有りません。(こういった見切りの能力も重要です)

 教科書の中には、ヒルベルト空間という用語を全く使用しないで、摂動等の物理的な計算手法を丹念に説明しているものも有ります(物理は定量計算できてこそのものなので、こういうものが有難い)。

 個人的には、数学的な基礎に踏み込むより、量子的ビリアル(<0|W(x,p),H|0>=0)などの重要な話題を取り上げた方が、量子論が物理的基礎となっていることがわかって、趣味の学問として味わい深いものとなると思います(量子統計との絡みなど)。

  投稿者:murak - 2009/10/27(Tue) 09:37  No.7817 
EMANさんが了解されていればそれでいいんで、私としてはこれ以上野暮な事を言うつもりはありません。(私が何か書いたからといって、EMANさんがその通り書く筈もないし。。。)


#7813 yuyaさん

「本意」ですか?
フォン・ノイマンの立場だと、そもそもデルタ関数は存在しないので、「それが完全系をなすか?」と問われても困りますね。(物理学者が「霊魂は存在しますか?」と問われているようなものだ)
勿論 $L^2(R)$ における正規直交完全系(例えば調和振動子の固有関数系であるエルミートの関数系等)を具体的に列挙していけば、その中に「デルタ関数からなる系」が現れてこないのは確かです。
しかし、 $L^2(R)$ を含むような、もっと大きな関数空間を上手く設定すれば、そこにはデルタ関数や三角関数も入っていると考えることも出来る。ただ、 $L^2(R)$ の枠内でみてるとそれらは見えないので、それらを(薄紙を隔てて)手探りで扱うような手続きを必要とする(それが射影演算子による単位の分解)。
ただ、ディラックにせよ、EMANさんにせよ、量子力学をヒルベルト空間という限られた舞台で展開するという方針はとっていないので、その場合は、そんな手続きは不要だし「完全系」を可算無限のものに限る必要はさらさら無い(そんな事は気にしなくて良い)という事です。


(ちなみに、調和振動子の基底状態に対応する固有関数をデルタ関数で展開しても、その展開係数としては、元と同じ関数でが出てくるだけです。)

  投稿者:hirota - 2009/10/27(Tue) 10:44  No.7818 
デルタ関数で展開しても、正規直交系と言うのはマズいですね。
自分自身との内積が定義されませんから、正規じゃない。
ヒルベルト空間なら常に内積が定義されてますが、ヒルベルト空間じゃなくなってるんで。
なお、スティルチェス積分というのは
適当な性質を持つ関数 F を使って ∫g(x) dF と書く代物です。
F が微分可能なら ∫g(x) dF = ∫g(x) (dF/dx) dx です。
F が x=1, 2, 3 で 1 づつ増加する階段関数なら、
∫g(x) dF = g(1)+g(2)+g(3) です。( F の微分をデルタ関数で表すとそうなるけど、スティルチェス積分はデルタ関数を使わずに定義できるのがミソ)

  投稿者:yuya - 2009/10/27(Tue) 10:45  No.7819  <Home>
>フォン・ノイマンの立場だと、そもそもデルタ関数は存在しないので、
>「それが完全系をなすか?」と問われても困りますね。

あぁ、そうか(汗)。アホな質問でした。
「デルタ関数は」という主語の時点でフォン・ノイマンの枠から逸脱しているのに、
述語の「完全系をなす」の定義が枠内にとどまっている必要はない、ってことですね。

>(ちなみに、調和振動子の基底状態に対応する固有関数をデルタ関数で展開しても、
>その展開係数としては、元と同じ関数でが出てくるだけです。)

ようするにこういうことになっちゃうから、話は単純ではないよ、というのが
元記事の趣旨なのかな。

「物理学に適しているかどうか」は
「(首尾一貫した立場で)完全系をなすかどうか」とは微妙にズレるので、
前者を論じたいときに、必ずしも「完全系」という表現に全てを押し込めなくてもいいわけですね。

ありがとうございました。

  投稿者:ASA - 2009/10/27(Tue) 11:07  No.7820 
yuyaさん

>>(ちなみに、調和振動子の基底状態に対応する固有関数をデルタ関数で展開しても、
>>その展開係数としては、元と同じ関数でが出てくるだけです。)
>ようするにこういうことになっちゃうから
 無理やり展開すると
 F(x')=∫f(x)δ(x-x')dx
 δ関数の定義より
 F(x')=f(x)
 ということで、フーリエ変換と違って意味がないのですよ。
 (普通このように無意味な場合は、切り捨てます。)

 あと、hirotaさんも指摘してますが、 レギュラーじゃないんですよ。
 ですから、計算手法を確立するためには、何かしらレギュラー化の手続きが必要になります。

 普通の物理系では、完全系の関数セット=正規直交基底関数系ですからね。
 この性質を使って計算手法を積み上げてます。

  投稿者:yuya - 2009/10/27(Tue) 11:42  No.7821  <Home>
ASAさん

>無理やり展開すると……

ふむふむ。よく分かります。ありがとうございます。

私は数学と物理学の両方に興味があるのに
両方とも中途半端なので、どちらも勉強になります。

  投稿者:kafuka - 2009/10/27(Tue) 20:13  No.7823 
>無理やり展開すると……
ですが、

例えば、<ψ|ψ> に対応するものは、 
ψ*(x)ψ(x) の xが-∞〜+∞についての積分は、
<tex>f= \sum_{k}^{}  \left( \xi  \left(x _{k} \right) - \xi  \left(x _{k-1} \right) \right) f</tex> から、
∫ψ*(x)ψ(x)dx が 1 なら
<tex>I= \int_{- \infty }^{+ \infty }  \psi  ^{*}  \left(x\right)  \psi  \left(x\right) d \xi  \left(x\right) </tex>となり、こんな感じに対応します。
で、
<tex> | \psi > =  \sum_{k} |x _{k} ><x _{k} | \psi > </tex> に対応するものは、
<tex> \psi  \left(x\right) = \int_{- \infty }^{+ \infty }  \psi  \left(x\right) d \xi  \left(x\right) </tex>
ですから、これは、自分自身への射影とみなせます。
したがって、一般に、関数f1(x)からf2(x')への射影は、
<tex> f2  \left(x' \right) = \int_{- \infty }^{+ \infty }  f1  \left(x\right) d \xi  \left(x' \right) </tex>
で表せると思います。
(f1、f2が、最低でもベクトル空間に入っていることが条件。これは、|ψ>と同じ条件です)

F(x')=∫f(x)δ(x-x')dx の場合、f(x)は、F(x')の射影になっている と
僕は、思います(自信はないですが)
したがって、
F(x')=∫f(x)δ(x-x')dx は、F(x')=∫ {∫F(x') dξ(x)} δ(x-x')dx
=(∫F(x’) dξ(x') )
=F(x')
で、矛盾はないです。

一般に、
「デルタ関数で展開すると、同じものになる」
ではないでしょうか?

  投稿者:甘泉法師 - 2009/10/27(Tue) 20:35  No.7824 
御議論が活性化しているのを幸い、状態空間の次元の濃度に関するかねてからの疑問について教えていただければと存じます。


ディラック流とします。位置、運動量はオブザーバブル(=固有状態で任意の状態を展開できる)です。固有状態の数は非可算無限個です。エネルギーもきっとオブザーバブルです。ディラックは当時の(きっと現在でも)数学では証明できないが物理からそうだろうと書いています。
Dirac本 §10.Observables から
We shall assume the energy of any dynamical systems to be always an observable, even though it is beyond the power of present day mathematical analysis to prove it so except in simple cases.


しかし位置と運動量でつくったハミルトニアンの式がすべてオブザーバブルとはいえません。たとえば遠くにいくほど際限なく大きくなるポテンシャルでは、束縛状態だけが許されエネルギーは離散値をとり固有状態の数は可算無限です。これでは全状態空間を張ることはできません。


調和振動子もその一つですが、こんなにポピュラーなのに自然にはありえないものなのでしょうか。エルミート多項式*e-x^2/2 は完全系をなさないのでしょうか。 調和振動子から連想した第二量子化した数表示も状態は可算無限個なので、「不完全」なのでしょうか。

よろしくお願いします。

PS 写していてあらためて感心したのですがDiracの文章は明晰で流れがありますね。物理だけでなく英語の教科書にもなる、さすが古典です。

=甘泉法師=

  投稿者:ASA - 2009/10/27(Tue) 21:55  No.7825 
kafuka さん
 すいませんがコメントの趣旨が全く理解できません。

 No.7820 の f(x)は、固有関数に限った話ではありません、何らかの関数(超関数を除く)です。

スレの先頭にあるように
>δ(q-q')をq'でラベルされているqの関数と考えたとき

このような関数セットを用いて何かしらの関数f(x)を展開できると仮定しました。
 この関数f(x)は、2乗可積である必要はなく、不連続とか値が発散しているとかイレギュラな関数も含みます。δ関数より弱いものなら何でも成立します。 同じ強さのケース、f(x)=δ(x)などは微妙です。

  投稿者:kafuka - 2009/10/29(Thu) 07:35  No.7826 
ASAさん
  返事が遅れて、申し訳ありません。

No7823 直しました。
関数f(x)は、最低でもベクトル空間に入ってる必要がある と思います。
要は、|ψ> と同じ条件です。

  投稿者:hirota - 2009/10/29(Thu) 10:45  No.7827 
「デルタ関数による展開」を字義通りに解釈すると困ったことがあります。
デルタ関数を含むシュワルツ超関数は双対空間の片方を狭めると他方が広くなる事を使って関数空間を超関数空間に広げてるわけですが、このことは超関数と内積が定義される相手(双対空間) は限定されることを意味してます。(実際、自分自身との内積も定義されない)
つまり、ヒルベルト空間(双対空間が等しい) の全部に対しては内積が定義されず、展開できる関数も限定されます。
というわけで、あまり信用して何処でも使ってよいものではないでしょう。(「単位の分解」の言い換えとして解釈できる範囲ならOK)

  投稿者:ASA - 2009/10/29(Thu) 11:24  No.7828 
kafukaさん No.7826
>f(x)は、最低でもベクトル空間に入ってる必要がある と思います。
 何ゆえ?
 関数セットδ(x-x')が張る状態空間は、ベクトル空間といえるのでしょうか?(自身の内積が定義できないのに)
 定義によるのでしょうが、ベクトル空間としても、そこからイレギュラーな要素は、排除できません(ξをステップ関数としてF=∫fdξと表現しても同様です。表現の違いだけで、足し合わせそのものに変りはないので排除できません)。
 
 関数セットδ(x-x')の足し合わせにより作成される関数は、δ関数の性質から明らかにイレギュラーな関数を含みます。
 
 繰り返しますけど、こういうものに対して、コンプリートネスを云々しても無意味と思います。

 結論としては、関数セットδ(x-x')を物理状態の基底とはできないので、murakさんの論法は前提からナンセンスであり間違っているのですね。

 論拠としているディラック本(4th.Edt.)を確認しましたが、位置オペレータの固有関数がデルタ関数であるとの記述はありませんでした(物理的に無意味ゆえに避けているのでしょう)。(ノイマンとディラックの対比自体が出鱈目であり、"ブラケット記法の使用=状態としてデルタ関数系を認めること"が成立してない)
 もし、関数セットδ(x-x')が物理状態の基底だとすると、調和振子による基底とのユニタリな基底変換が可能なはずですが、具体的な表現をどうあたえるのか等の問題がたくさん出て来ます(濃度が違うものをどう対応付けるのかetc.)。
 こういった問題を全て片付けた上で、δ関数系が完全系であると主張するなら物理的に意味があります(これで、QMさんへの答えになったかな)。
 コンプリートといっても、何を対象としたばあい、どういう項目でして抜けがないかをちゃんといわないと意味がないです。(関数セットδ(x-x')がこれによって張られる空間に対して、抜けがないことは、自明ですね)

  投稿者:murak - 2009/10/29(Thu) 19:42  No.7830 
「デルタ関数が完全系をなす」という事の意味を正しく理解せずに暴論を吐く人達がいるようなので、少しだけ。

まず言わずもがなの事だが、この「完全系」は「完全正規直交系」とは言葉の意味が違っている。

(もし誰かが、「完全系」という言葉を「完全正規直交系」と全く同じ意味だと思って「デルタ関数は完全系をなす」と言っているのであれば、それは明らかに間違い。一般に、単に「完全系」といえば、正規性や直交性は必ずしも要求しない。また(可分)ヒルベルト空間であれば「完全正規直交系」の集合としての濃度は可算無限なので、そこには非可算無限個の元からなる「完全正規直交系」など存在しない。)

関数空間や関数系の話をしている場合に「完全」といえば、それは、「勝手」な関数が、その関数系の元の線形結合(それは可算和かもしれないし連続的な積分かもしれない)で表現できる事を言うが、その場合の「勝手」も、無制限にどんな関数でもという意味ではなく、あらかじめ決めておいた範囲の関数(言い換えるとあらかじめ決めておいた関数空間)の中での任意のものが展開できるという意味である。(数学ではこのことは常識だが、それ以外の人と話していると、(今回のように)とんでもない誤解の元となる事がある。)

では今の場合に、そのあらかじめ決めておいた範囲は何かといえば、それは対象とする物理系の状態空間としてのヒルベルト空間である。先に例に出したような一次元的な運動を考えているなら、それは $L^2(R)$ であるという事になる。つまり、デルタ関数は対象としているヒルベルト空間には入っていないのだが、それによって展開される対象はあくまでヒルベルト空間の元(ベクトル)なのである。このように話を限っておけば、デルタ関数 $\delta(x-x')$ の系列が完全系として機能するという事を(数学的に)保証しているのが先に述べたヒルベルト空間論における「単位の分解」なのである。従って、その適用範囲を超えてその言葉が使われることは全く本意でないし、また、適用限界を超えたところで変になるからといって、それを無意味と言うのは全く的外れな指摘である。(ただしこの事は、デルタ関数による展開が考えているヒルベルト空間の元以外に対しても意味を持つことは否定しない。物理はしばしば(それまでの)数学の適用範囲を超えたところで大きな果実を得たりするので、話は単純ではない。)

なお、先に述べた「単位の分解」が成立するのは、位置演算子の場合に限った事ではなく、連続固有値のみをもつ自己共役演算子一般にいえる(ただし単位の分解の具体的な構成の仕方は演算子毎に異なる)事である。つまり連続固有値を持つ演算子であれば、それに対応する固有ベクトル(デルタ関数とは限らない)が対象としているヒルベルト空間の外側に存在し、そのセットを用いてヒルベルト空間の任意の元が展開できる(つまりそれらは完全系をなす)事になる。従って、連続固有値を持つ演算子に対しては、その固有ベクトルがどのようなものになるかを言わなくても全く同様の理論展開が出来るのである。このことからディラックは位置演算子の固有ベクトルの具体的な形を表に出さないまま理論を構成するという形をとった。
(しかし、ディラックの記法で $|q\rangle$ 自身の座標表示を求めてみれば、それが何になるかのヒントが得られる。勿論それは、単位の分解で保証される展開の適用範囲外ではあるが。)

結局、ディラックの方法(理論)が(連続固有値の場合でも)ちゃんと上手くゆくという保証を数学の立場から与えているのが、ヒルベルト空間のスペクトル理論なので、物理上の実用性のみを求める人にとってはそれを勉強する意味はほとんど無い。しかし世の中にはこういう事を気にする人がいることもまた確かで、その辺りは人それぞれの価値観で判断すれば良いだけのことであろう。今回、EMANさんは自分の考え方についての、数学的な面からの保険を求めておられるようだったので(そして多分他の誰もこういう事は書かないであろうから)、書いただけである。

  投稿者:ASA - 2009/10/29(Thu) 21:32  No.7834 
murakさん
全体的に No.7800と較べると話の見通しが良くなってます。

No.7800>一方ディラックの立場では、両者はどちらも立派な固有ベクトルであり、夫々その全体が完全系をつくる(そうでないと理論に破綻をきたす、というかそもそも理論が成立しない)。
>固有ベクトルの全体が完全系をつくることが理論の大前提となるが、その代償として状態空間は必ずしも(可分)ヒルベルト空間になるとは限らなくなる。
No.7830> そのあらかじめ決めておいた範囲は何かといえば、それは対象とする物理系の状態空間としてのヒルベルト空間である。

上のNo.7800,No.7830の2つのステートメントが、激しく矛盾しているのですけど、どちらを主張するのですか?

kafukaさん No.7826との議論では、No.7800にしたがってmurakさんによるところのディラックの立場で、No.7792で示された特定のδ関数セットを固有ベクトルとみなし、これらを加法的に用いて生成される関数要素からなる集合体が、ヒルベルト空間より大きなものであることを示し、このより大きな関数空間が状態空間だとすると、物理的に意味を持たない要素(イレギュラー等)を含むことになり、明らかに不適切ですねという論旨を述べました。kafukaさんからは、状態空間への要請項目を引き出し、murakさんによるところのディラックの立場と対比させ、No.7800の主張が変であること示す考えでいました。

また、No.7828 で指摘しましたが、どういう意味でコンプリートなのか説明しないと通じないと思いますが、No.7800をみる限り、ヒルベルト空間より大きな空間を状態空間を前提とし、その空間の要素を全て網羅できる(抜けがなくなる)という意味でのコンプリートネスと受け取るが自然です。

>ヒルベルト空間の任意の元が展開できる(つまりそれらは完全系をなす)事になる。
 数学は得意でないのですが、これも気になりますね。ある特定の部分空間での展開性を前提にして、それのみで完全性の要件とするのは違和感が有りますね。"部分的に完備している"などの用語がより適切な気がします(汎用な枠組みを議論する数学で、非常に特殊なヒルベルト空間のみで事足りるのでしょうか)。

>数学的な面からの保険を求めておられるようだったので(そして多分他の誰もこういう事は書かないであろうから)、書いただけである。
 δ関数セットで文字通りの展開ができることを示すには、「スペクトル理論」とか「単位の分解」の長たらしい説明(明らかに脇にそれてる)より、
 No.7820 F(x')=∫f(x)δ(x-x')dx => F(x')=f(x):ほとんど全ての関数を展開可能。
 この式の方が明快な気がします。

  投稿者:murak - 2009/10/30(Fri) 00:36  No.7838 
なるほど、確かに矛盾しているととられかねない言い方になってますね。原因は、私がその時々で「状態空間」という言葉を少し違う意味で使っているからです。その事情を説明するには、多少準備がいるので、最初にまず数学の話(フォン・ノイマンの立場)から始めます。

量子力学(有限自由度の非相対論的理論)を数学的に記述する場合の舞台となるのは既に述べた様にヒルベルト空間で、その外側は基本的には必要としません。ただし、「状態空間」というものをどう捉えるかという点に関しては、少し微妙な部分があります。単純に考えると、「状態空間」と「量子力学の舞台としてのヒルベルト空間」を一致させてしまうのが一番楽ですが、その場合では、状態として物理的に意味のあるものの全体と「状態空間」は必ずしも一致しないという事が起こりえます。どういうことかをこれから説明します。量子力学では物理量は一般に自己共役作用素で表されますが、有限次元の内積空間の場合と違って、無限次元のヒルベルト空間では自己共役作用素の定義域は必ずしも空間全体にはなりません。例えばある状態関数 $\psi$ のノルムは有限であってもそれにハミルトニアン $H$ を作用させた結果 $H\psi$ のノルムが発散するという事がありえるからです。その場合 $\psi$ は作用素 $H$ の定義域には入らず、そのハミルトニアンが定める物理系の状態としては不適切という事になります。しかしその場合でも作用素 $H$ に対応する「単位の分解」 $\xi(\lambda)$ 

     <tex> I=\int_{-\infty}^{+\infty}d\xi(\lambda) </tex>

は必ず存在し、右辺を $\psi$ に作用させた結果は当然 $\psi$ に戻る事になる。一方、この単位の分解を用いるとハミルトニアン $H$ は

     <tex> H=\int_{-\infty}^{+\infty}\lambda d\xi(\lambda) </tex>

と表される(スペクトル分解定理)が、この右辺を $\psi$ に作用させたものは意味が無いという事になる。つまり量子力学の舞台としてのヒルベルト空間全体と物理的に意味のある状態の全体は(ハミルトニアンが非有界作用素の場合は)一致しないのである。

これと同じ事を、ディラックのやり方で解釈し直してやると、作用素の固有ケットの張る空間(離散固有値のみの場合はこれはヒルベルト空間)と物理的に意味のある状態ベクトルの全体は(必ずしも)一致しないという事に他ならないが、作用素が連続スペクトルを持つ場合はさらに厄介な事になる。何故なら連続固有値に対する固有ケットはヒルベルト空間に属さない(外側に存在する)ので、量子力学の理論を過不足なく展開する舞台をつくろうと思えば、ヒルベルト空間よりもっと広い空間を用意する必要があるからだ。つまりディラックの立場では、量子力学の理論を展開するための舞台としての空間と、固有ケットの展開が(確実に)意味を持つ空間(これはいつでもヒルベルト空間)と、そして状態ベクトルが物理的に意味を持つ空間の三つが(連続固有値を持つ非有界作用素に対しては)全く一致しないという事態になるのである。

ここまで説明すればおわかりだと思うが、#7800で状態空間といっていたのは、「量子力学の理論を展開する舞台としての空間」のことで、#7830で状態空間といっていたのは「固有ケットによる展開が意味を持つ空間=ヒルベルト空間」の事である。両者は、フォン・ノイマンの立場では常に一致するが、ディラックの立場では状況によって変ってしまう。これらを不用意に同じ「状態空間」という言葉で呼んでしまったのは私の不注意ではある。

以上(今回は出血大サービスね)

  投稿者:kafuka - 2009/10/30(Fri) 00:58  No.7839 
僕が、No7823で余計なこと、を書いたので、話がややこしくなったようです。
すいません。
余計なこと言うのは、
デルタ関数が「完全正規直交系」を成すと仮定しての、F(x')=∫f(x)δ(x-x')dx についての記述です。
元のASAさんの記述では、完全正規直交系を成すという前提はないです。

「完全系」とは、単に、その空間のどんなベクトルVも、その空間のあるベクトルの集合{U1,U2,U3,,,}の元の線形結合(和と定数倍)で表わすことが出来る時、
{U1,U2,U3,,,}は、完全系を成す ということです。

で、デルタ関数が「ヒルベルト空間の完全系を成す」証明:
ヒルベルト空間の任意の関数fを、デルタ関数の集合{δ(x-x1),δ(x-x2),
δ(x-x3),,,}の定数倍と和(積分)
で表わすことが出来ることを証明すればよい。
(これは、半ば自明なので証明は削除しました)
しかし、
>デルタ関数は対象としているヒルベルト空間には入っていない
です。
したがって、
「デルタ関数がヒルベルト空間の完全系を成す」という命題は、
ナンセンスでした。

尚、デルタ関数がヒルベルト空間には入らない。というのは、
>シュワルツ超関数では、元空間を無限回微分可能などと激しく小さい空間にして、
>激しく大きい双対空間として超関数空間を作ってる
ので、ヒルベルト空間では、元空間と双対空間が1対1のため
と思います。

  投稿者:ASA - 2009/10/30(Fri) 07:28  No.7840 
murakさん
No.7800で
>> 残念ながらデルタ関数は完全系ではない
>量子力学「座標表示」のページにおけるこの書き方は正直言ってマズイと思います。その直後に、その理由として
>> 不可算無限個のデルタ関数を用意しなくては他の関数を表現できないことによるのである。
>と書いてあるのは、もっとマズイ。
このように、マズイとの指摘しているのですが
 そのあとでの一連のコメントで異なる意味合いを持つ空間に対して"不用意に同じ「状態空間」という言葉で呼んでしまった"のは、もっとマズイことです。

 元のEMANさんの記述は、"前提とする空間が異なるので、不用意に完全系と呼ぶのはまずい。"との意味に受けとれるのでマズイは記述であるとは思われません。

  投稿者:ASA - 2009/10/30(Fri) 07:50  No.7841 
kafukaさんNo.7839

理解されてないようなのでコメントします。
>デルタ関数が「完全正規直交系」を成すと仮定しての、F(x')=∫f(x)δ(x-x')dx についての記述です。
Hirotaさん、Murakさんのおっしゃる通り、これは間違いです。

ディラックのデルタ関数は、その定義から積分と共に用いられることで関数のある一点の値を抽出するという積分作用素ともいえる存在で普通の意味での関数ではないです。
 ですから、普通の関数基底と同様に扱うのは違和感がありますが、それに目をつぶって、δ関数セットδ(x-x')の線形結合として∫f(x)δ(x-x')dx で表現される関数Fを考えてみようというのが、デルタ関数でFが展開できるとの仮定の意味です。
 コンプリート、レギュラー、オルソゴナルなどの性質を仮定していません。ここは誤解しないように。
 ちなみに、Hirotaさん、Murakさんもこのような仮定にたいして、間違いとは指摘してません。
 関数空間でハンドリングしやすい定義を用いれば、デュアル云々で何かしらの制約が付くのかもしれないですけど。ここでは、ディラック本のオリジナル定義式に基づいて論じてます。

  投稿者:hirota - 2009/10/30(Fri) 10:53  No.7843 
「デルタ関数」と「単位の分解」の関係は、確率・統計での分布密度関数と累積分布関数の関係と同じですね。
分布密度関数 $p(x)$ に対する累積分布関数は $F(x)=\int_{-\infty}^{x}p(x)\,dx$ で $p(x)=\frac{d F(x)}{dx}$ となっています。
ここで重要なのは、密度関数 $p(x)$ が存在しない離散分布に対しても、あるいは連続とも離散ともつかない分布に対しても、分布でありさえすれば累積分布関数 $F(x)$ は存在するということです。
離散分布に対しては密度をデルタ関数で表すことができますが、カントール集合のような連続と離散の中間のフラクタルな分布は無理です。
そして、密度関数 $p(x)$ など使わなくても累積分布関数だけで何でも出来ます。
たとえば平均とか分散は
 $m=\int x\,p(x)\,dx=\int x\,dF(x)$ ,  $\sigma^2=\int(x-m)^2p(x)\,dx=\int(x-m)^2dF(x)$ 
となります。(分布関数を使った積分は Stieltjes 積分)
また、実データから分布をだすときに分布密度としてヒストグラムを作り、このとき各集計区間を適切に取るのに苦労しますが、分布関数なら単に集計するだけで何の迷いもありません。
このことに気が付いたのは、実際のデータで最大限にデータ情報を主観を排して搾り出そうと苦労してたときですが、気が付いた後では「分布関数を軽視する現在の統計教育は間違ってる!」と思っています。

  投稿者:ASA - 2009/10/30(Fri) 11:33  No.7844 
hirotaさんNo.7843
 そのような関係があるから、超関数をディストリビューション(分布)と呼ぶ流儀もわけですよね。
 日本語での「完全」と英語での「コンプリート」との概念的違いはかなりあります。英語で示された概念をどう数学的に抽象化しているか考察することも、たまには必要ですね(計算上は必要ないけど、ある物理的内容を数学的に表現するためには、数学的概念の把握も必要)。

  投稿者:kafuka - 2009/10/30(Fri) 17:35  No.7845 
hirotaさんNo.7843

前の発言は、数列を「自然数上の関数」と見ていた のですが、
自然数ではマズイので、以下のように訂正します。

デルタ関数がヒルベルト空間には入っていなくても、
集合{∫f(x)δ(x-x1)dx、∫f(x)δ(x-x2)dx、、、}を考えると、
この集合は、{x1,x2,x3,,,,}の写像FのImageで、
F:{x1,x2,x3,,,,}→ {∫f(x)δ(x-x1)dx、∫f(x)δ(x-x2)dx、、、}
とすると、
このFが、x1,x2,x3,,,,が連続になった極限で、F(x)=f(x) になる。

と思っています。