EMANの物理学 過去ログ No.7024 〜

 ● スピンと相対論的量子力学の関係について

  投稿者:凡人 - 2009/06/17(Wed) 23:23  No.7024 
簡単な事をお伺いして申しわけありませんが、
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/dirac.html
中のαiαj+αjαi=2δij,αiβ+βαi=0,αi^2=β^2=1を満たす最低次数(四次)のαiとβの行列の標準的な解の組み合わせは、
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/pauli.html
中のαi=((0 σi) (σi 0))、β=((1 0) (0 -1))とされており、EMANさんが見つけられた最低次数(四次)の場合の第五の行列を使用した解の組み合わせをディラック方程式の係数に使用しても、標準的な解の組み合わせを係数に使用しても、物理的には相違はないと考えて良いのでしょうか?
もしそうであるとするならば、スピンの存在は、理論的には相対論的量子力学によって初めて説明されると考えて良いのでしょうか?
(相対論的量子力学によって、初めてパウリ行列の存在が、人為的でない形で要請されるという意味です。)
また、スピンを非相対論的に扱った場合は、物理的には、シュテルンゲルラッハ実験等の、低エネルギー状態におけるスピンの効果を測定する実験の実験結果を演算子を用いて説明出来る程度だと考えても差し支え無いでしょうか?

  投稿者:冷蔵庫 - 2009/06/30(Tue) 01:28  No.7075 
質問されてから暫く間が空いてしまっていますが、可能な範囲でお答えしたいと思います。

まず、αi、β、そして第五の行列の5種類のうちから、どの4つを取ってディラック方程式の係数に使用しても物理は変わりません。
おそらくどの定義を採用しても、ユニタリ変換によるスピノルの基底の取替えや、時空の座標軸の反転による再定義など
により互いに移りあうことが可能だと思います。

また、スピン(というかスピノル表現)は、空間の回転対称性に由来するものとして
理解することが出来ます。
スカラーや(3元の)ベクトルが空間の回転対称性の群SO(3)の表現であることと同様です。
つまり、非相対論的な量子力学であってもスピンを導入することは不自然ではありません。
相対論的になると、ローレンツ変換の対称性も加わり、より大きな対称性SO(1,3)になります。
もちろん、この対称性もスピノル表現を持っています。
(SO(1,3)のスピノルはSO(3)のそれの拡張のようなものになっています。
4元ベクトルと3元ベクトルの関係のようなものです。)
非相対論的なスピンについては、EMANさんの
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/linearize.html
も参考におすすめします。

非相対論的に見られるスピンの効果としては、シュテルン・ゲルラッハ実験が有名ですが、
物性の分野では磁性体の性質などにスピンの効果が現れているのを教科書などで目にしますね。

  投稿者:あもん - 2009/07/01(Wed) 20:12  No.7080 
まったく冷蔵庫さんのおっしゃる通りですが、加えて、
(1粒子の)量子力学ではスピンについてあまり満足な記述ができない
ということも重要でしょうね。スピンは結局、場の表現に起因するもの
なので、場の量子論において初めて満足な記述が可能になります。

多くの入門書においては、歴史的背景にそって、
量子力学→相対論的量子力学→相対論的場の量子論
というステップで紹介されますが、純粋に理論的内容を動機にするなら、
量子力学→シュレーディンガー場の量子論→相対論的場の量子論
というステップの方が自然でしょう。

例えば、スピン 1/2 のシュレーディンガー場は、
空間回転  $ x' = \exp( \theta^a J^a ) x $  に伴って、
 $ \psi'(x') = \exp( \theta^a T^a ) \psi(x) $ 
のように振舞う複素2成分の場で、ここで  $ J^a \ \ (a=1,2,3) $  は
空間回転 SO(3) の生成子、 $ T^a = i\sigma^a /2 $  はその既約表現
である SU(2) の生成子です。このような場の量子論を考えると、
ネーターの定理により自然に角運動量にスピンの寄与が付加されます。

非相対論的であっても、場の量子論を考えればスピンは自然に説明される
わけです。さらに相対論へ行くと、スピンと統計性に関連性があると
わかります。半整数スピン⇔フェルミオン、整数スピン⇔ボゾン、
という関連性です。

  投稿者:凡人 - 2009/07/02(Thu) 22:44  No.7087 
冷蔵庫さん、あもんさん
ご教示頂き大変有難う御座いました。
お陰で私は根源的な所で大間違いをしている事が分りました。
また、EMANさんの
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/linearize.html
を読んでいなかったのがいけなかったです。
EMANさん、どうも大変申しわけ御座いませんでした。
<<追伸>>
と思ったのですが、時間をかけて数式を検討したところ、申しわけ御座いませんが、
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/linearize.html
は、(AE^+B・p^+C)ψ=0に(A'E^+B'・p^+C')という式が乗じるという操作が、
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/dirac.html
のディラック方程式の導出法以上に人為的である(=自然ではない)と思いました。
はっきりいえば、非相対論的量子力学の場合は、(A'E^+B'・p^+C')を乗じるという、かなり人為的な操作を行う事によって、無理やりスピンを付加している感があると思いました。
<<さらに追伸>>
素粒子物理学(=場の量子論的な考え方)では、使用する数式や数式の項に対して、物理過程や物質を対応させなければならないと思いますが、上記の場合、(A'E^+B'・p^+C')という数式を乗じるという操作は、将にシュレディンガー方程式に、人為的にスピンを付加する操作となりはしないだろうかと思っています。
一方、ディラック方程式の導出法の場合は、特殊相対性理論とシュレディンガー方程式を素直に組み合わせて導出されたクライン・ゴルドン方程式がスピンを付加する役割を担っていると考えられる為、自然だと思えるのです。

  投稿者:あもん - 2009/07/04(Sat) 09:26  No.7093 
ですから現在ではそういうディラックのやったような方法で理解するのではないのです。
非相対論なら空間回転、相対論なら時空回転の変換によって、どのように振舞う場があるか
ってことを定義づけることによって、自動的にスピンが入ってくるのです。

非相対論的な空間回転 SO(3) の場合なら、1次元表現、2次元表現、3次元表現、… とあり、
1次元表現がスピン0の粒子、2次元表現(SU(2))がスピン 1/2 の粒子、3次元表現が
スピン1の粒子を表す、という具合です。

相対論的な時空回転(ローレンツ変換)SO(3,1) の場合はもうちょっと複雑ですが、基本的に
SL(2,C), SL(2,C)^* という2つの既約表現(スピノル表現)とその合成から構成できます。
これらのスピノル表現はスピン 1/2 の粒子を表し、SL(2,C)xSL(2,C)^* が1階のテンソル
に相当し、すなわちスピン1の粒子を表すという具合です。

電磁気学のような場の古典論でも、スカラー場やベクトル場があって…等と考えるでしょう?
場の量子論においては複素数の場まで許されるので、群論を使ってちゃんと調べると、スピノル
表現という古典論では意味がなかった表現も許されることになる、というわけです。ちなみに
2つのスピノル表現を便宜上2階建てにしたのがディラック場で、ディラックがもともと考案した
4成分の複素数場になります。

  投稿者:凡人 - 2009/07/04(Sat) 20:27  No.7101 
あもんさん
>場の量子論においては複素数の場まで許されるので、群論を使ってちゃんと調べると、スピノル表現という古典論では意味がなかった表現も許されることになる、というわけです。
との事ですが、群論を使用して相対論的なスピンや非相対論的なスピンを演繹的に導出する事は出来るのでしょうか?
私は不勉強なので間違っている可能性は高いですが、群論を使うとスピンの持つ数学的意義が鮮明になり、スピンについて理解しやすくなったり、数学的に扱いやすくなるだけであるということはないのでしょうか?
実在する素粒子の内部属性として、何故スピンが存在しなければならないかという事に対する物理学的説明は、今現在でも、半整数スピンの場合は、本質的にはディラック方程式の導出過程の中にだけ存在するというような事はないのでしょうか?

  投稿者:はっしー帝國 - 2009/07/05(Sun) 12:49  No.7108 
>一方、ディラック方程式の導出法の場合は、特殊相対性理論とシュレディンガー方程式を素直に組み合わせて導出されたクライン・ゴルドン方程式がスピンを付加する役割を担っていると考えられる為、自然だと思えるのです。

イメージですが、

(ディラック方程式)^2 = クライン・ゴルドン方程式

なので、ディラック方程式で成り立つ事は、クライン・ゴルドン方程式でも成り立ちますが、クライン・ゴルドン方程式で成り立つ事は、ディラック方程式で成り立つとは限らない、"のだそうです"。

ちなみに、「のだそうです」ってどういうこと?って突っ込まれても答えられません(^^;ゞ

あと、「クライン-ゴルドン方程式にはスピンの概念は入っておらず、スピン-0の粒子を記述する方程式である」らしいですね。

なので、「クライン・ゴルドン方程式がスピンを付加する役割を担っていると考えられる」、という意味が見えないです。

本当のところ、「スピンを付加する役割を担っている」のはパウリですよね?

  投稿者:TOSHIi - 2009/07/05(Sun) 13:58  No.7109 
 どもTOSHIです。

>はっしー帝国さん。。

 Fermionのスピンを担うのはPauliのσです。スピン1/2ではs=1/2σです。

 σ^2=1なので,「(ディラック方程式)^2 = クライン・ゴルドン方程式」ではスピンゼロや1を担っているのですがFermionのようなパウリのスピン行列σは隠れて見えなくなります。

 しかし,非相対論でのH=p^2/(2m)で(σp)^2=p^2なので
同値な表現としてH=(σp)^2/(2m)と書いても同じです。

 自由粒子では全く同じですが電磁相互作用があれば

 H−eΦ=(p−eA)^2/(2m)とH−eΦ={σ(p−eA)}^2/(2m)

両者の違いが見えるようになり,後者のみがパウリのスピン項を担います。

 これが歴史的にはディラック方程式で発見されたスピンの意味です。

 別に相対論の方程式だからスピン項が出てきたわけではなく,波動関
数をスピノールにして行列表現をしたから見えてきただけです。

 H=p^2/(2m)でなくH=(σp)^2/(2m)と解釈すれば,相対論のクライン・ゴルドン方程式などでも自由粒子なら一見隠れているスピンを担う役
割が顕在してくるのではないでしょうか?

                      TOSHI


 

  投稿者:はっしー帝國 - 2009/07/05(Sun) 17:40  No.7110 
TOSHIさん、御世話様です。

>σ^2=1なので,「(ディラック方程式)^2 = クライン・ゴルドン方程式」ではスピンゼロや1を担っているのですがFermionのようなパウリのスピン行列σは隠れて見えなくなります。

> しかし,非相対論でのH=p^2/(2m)で(σp)^2=p^2なので同値な表現としてH=(σp)^2/(2m)と書いても同じです。

なるほど!!σ^2=1ならば、(σp)^2=p^2、ですね!!

>自由粒子では全く同じですが電磁相互作用があれば

> H−eΦ=(p−eA)^2/(2m)とH−eΦ={σ(p−eA)}^2/(2m)

>両者の違いが見えるようになり,後者のみがパウリのスピン項を担います。

> これが歴史的にはディラック方程式で発見されたスピンの意味です。

前者と、後者は、σ^2=1ということで、一見同じ式に見えますが、後者はσ=±1という解が出てくるということですよね?

  投稿者:はっしー帝國 - 2009/07/05(Sun) 20:07  No.7111 
おわび。

はっしー帝國>なので、ディラック方程式で成り立つ事は、クライン・ゴルドン方程式でも成り立ちますが、クライン・ゴルドン方程式で成り立つ事は、ディラック方程式で成り立つとは限らない、"のだそうです"。

方程式が成り立つとか、そういうことではないようです。

間違った記述ですので、真似なさらないようにお気をつけ下さい。
すいませんでした。

  投稿者:凡人 - 2009/07/07(Tue) 00:26  No.7121 
ついでにお伺いしたいのですが、光子のスピンが1であることは、電磁場を量子化する為の計算の延長線上の計算によって、演繹的に導出する事は可能なのでしょうか?

  投稿者:あもん - 2009/07/07(Tue) 03:20  No.7122 
凡人さん:
最初の方の質問は申し訳ないですが具体的な意味がよくわからないです。
まあ場の量子論と名乗ってる教科書でも、そのいくつかではディラックの
古い方法を踏襲しているので、群論的な場の表現の構成に出会ったことが
ないのかも…と想像しました。その場合、例えば九後汰一郎さんの「場の
量子論I」の冒頭でも読んでみたら良いかと思われます。

>光子のスピンが1であることは、電磁場を量子化する為の計算の延長線上
>の計算によって、演繹的に導出する事は可能なのでしょうか?

これはその通り可能です。具体的には電磁場の量子の2つの偏光状態
A, Bに対して、A+B, および A−B という状態がそれぞれヘリシ
ティ(進行方向のスピン成分)+1とヘリシティ−1になります。
スピンの大きさが1ならヘリシティ0の状態もあるはずだと思うかも
しれませんが、それは非物理的状態に属するため、観測不可能であると
わかります。

  投稿者:凡人 - 2009/07/08(Wed) 23:57  No.7134 
あもんさん
素粒子については、ベクトルポテンシャルを理論的な核としているゲージ理論や群論にまで理解を進めないと、正しい理解に至る事は決して出来ないと思いました。
この度も丁寧にご教示頂き、真に有難う御座いました。
それと、冷蔵庫さんとはっしー帝國さんとTOSHIさんにつきましても、ご教示頂き大変有難う御座いました。