EMANの物理学 過去ログ No.6759 〜

 ● 清水明「新版 量子論の基礎」のある記述について

  投稿者:kafuka - 2009/04/15(Wed) 07:42  No.6759 
この本のp230の補足に、
引用>
補足:局所量子論における|C|の最大値

実は、上の例(ベルの定理についての量子論の場合の計算結果)で得られた|C|=2√2という値は、
局所性を満たす量子論で許される最大値であることがわかっている。
従って、これを上回るような|C|を与える理論があったとしたら、
それは、
量子論の枠からはみ出した理論であるか、
局所性を満たしていない(従って因果律を満たさない)理論か、
あるいは、局所性以外の仮定(たとえば、測定値の値域の制限)を満たしていない理論
であるかの、どれかである
<引用終

この記述を、素直に読めば、記述の帰結以外に、
(普通の)量子論のことを、局所量子論と言っている
ということも、僕には読みとれます。

質問1.(普通の)量子論は、局所量子論である で合ってますでしょうか?

合っているとすると、「(普通の)量子論は、局所量子論であるが、非局所性理論である」という言説は、
僕には?です。
それで、僕は、
量子論(=局所量子論)は、(非局所的帰結をもつ)局所性理論である と、理解しているのですが、

質問2.この理解は、誤りでしょうか?

皆様のご意見を、お願いします。

PS.
局所性だけでEPR実験を説明できるのは何故かというと(本を持ってない方には失礼ですが)
p228の「(飛んできた時=局所で) |+->と |-+>の重ね合わせになっている」
p229 の 「、、、原因は、量子論特有の干渉効果である」
から、そう理解できます。

  投稿者:TOSHI - 2009/04/15(Wed) 10:26  No.6760 
 どもTOSHIです。

 >kafukaさん。。

 清水さんの本は最近私も買いましたが,要するに幾分哲学的ですが因果律には「ラプラスの悪魔」に代表されろような実在論では成立する古典的な軌道イメージの「巨視的因果律」,あるいは「決定論的因果律」とハイゼンベルグの不確定性原理によって限界がある「微視的因果律」があることをご理解頂ければいのではないかと思います。

 量子論はベルの不等式を破るということで「巨視的因果律」,あるいは「決定論的因果律」を破るので古典的には非局所的理論ですが「微視的因果律」は破らないので局所的理論なのです。

 ボームのパイロットウェーブとかネルソンらの確率過程とかもありますがアインシュタインのように人間の頭では常識的な実在論以外は受け入れられないというので色々と哲学的モデルが想定されていますが結局決定論ではなく「決定論まがい」でないとベルの不等式を破らないのですね。内容や結果がが量子論と同じものをもたらすのであれば,かつてハイゼンベルクの行列力学とシュレーディンガーの波動力学が等価であることが証明されたようにボームのそれも同じものを別の言い方に変えた程度のものでしょう。

 ところで「微視的因果律」というのは,2つの時空点xとyがあって空間的に離れているときにはそこでの局所的観測可能量A(x)の交換子はゼロである。[A(x),A(y)]=0 であるというものです。

 空間的というのは4次元距離の平方が負である(x−y)^2<0,つまり|x−y|>ct(後者ではx,yが2事象(events)の空間座標でtは時間差)ということで,座標系を同時刻t=0にとることも可能でそのときには空間座標として離れていること,という式です。

 Aの交換関係がゼロというのはxとyの2つの事象は超光速な通信手段がないならと全く独立で無関係という意味です。

 もっと詳しく言うと一般の観測量Qというのは通常Q(t)=∫A(x,t)d^3xで与えられます。A(x,t)は密度でこれを局所観測量といいます。

 そして[A(x),A(y)]=0 というのはこの被積分関数の密度のAのことです。同時刻で考えるとx≠yなら[A(x,t),A(y,t)]=0という意味ですが一般のψ(x,t)を量子場,または波動関数とすればこうした観測可能な物理量A(x,t)は必ずA(x,t)=Cψ+(x,t)ψ(x,t)やCψ+(x,t)∇ψ(x,t)etc.(Cは一般に複素数)のような双1次形式(bilinear form)で表わされます。

 そして,ψ(x,t)がボーズ場なら[ψ(x,t),ψ(y,t)]=0という交換関係,フェルミ場なら{ψ(x,t),ψ(y,t)}=0という反交換関係になるのですがA(x,t)=ψ+(x,t)ψ(x,t)のような双1次形式ではどちらも交換関係[A(x,t),A(y,t)]=0を満たすという意味で微視的因果律が満たされるわけです。

(微視的因果律さえ満たされればいいのでボーズ統計,フェルミ統計のほかにパラ統計(パラ・ボーズ,パラ・フェルミでも理論的にはOKですがボーズとフェルミだけで矛盾の無い理論になっているのでこれらは今は主流をはずれています。)

 巨視的には超光速に見えても微視的には光速は超えてはいないというのが量子論が局所量子論と呼ばれている所以ですね。しかし古典的巨視的因果律は破っているはずでそうでないとエンタングルとかの議論は無意味になるでしょう。

(最後のこの文章は誤解されるかもしれないので補足しておきます。「局所的」とか「非局所的」とかの言葉の違いと同じく,結局言いたいことが伝わりさえすればいいのですが「巨視的には超光速に見えても微視的には光速は超えてはいない」というのを「巨視的」と「微視的」を入れ換えて「微視的世界では光速を超えても巨視的世界では光速を超えない」と言い換えても意味的には同じように感じたりします。言葉って不思議ですね。)

                        TOSHI

  投稿者:明男 - 2009/04/15(Wed) 11:53  No.6762 
ケチをつけるつもりは毛頭ありませんが、このやりとりで納得できるのはかなり現代物理に馴染んだ人だけでしょうね。敢えて言うなら文系の人にはちんぷんかんぷんでしょう。ひとつの問題はTOSHIさんの言われるように言葉の限界と具象性にあると思います。言葉では特に相関と因果律にあると思います。相関はその意味の通り”関係がある”ことですが、それは因果関係とは限りません。因果は言葉どおり因があって(時間が明確な未来に)果があるということで、しかも関係があります。量子論には本来因果律は明確には含まれていません。相対論的量子論、場の理論ではTOSHIさんの解説通り、相対論の要請から局所理論であると言えます。そして因果律は光速を越えて伝わりませんが、相関は光速を越えている(ように見える)ことも矛盾しない量子論だと思います。エンタングルも波束の収縮も因果律と矛盾しない非局所的相関として解釈されます。因果律は物理的(現実的)観測と矛盾しないことが本質です。ですから物理的観測を行うと(瞬時に)相関が確定します。
ここまでは意見。ここからはSF(スペキュレイティブフィクション)です。
我々の物理空間(観測可能な実空間)は実数空間が虚数空間の一部であるように、今のところ観測不能なさらに大きな空間の一部である可能性は高いと思います。仮想粒子、ゴースト場抜きでは構成できない標準理論、タキオン抜きでは考えられない超弦理論、実在という意味では”無い”存在を媒介して射影される空間、無限を有限の漸近でしか捉えられない数学理論、どれをとってもまだ不完全です。仮想粒子もある条件下では実粒子に転換し、観測可能となります。そのときおそらく時空点の意味が変わり、因果律と相関の本当の理解が進むのかも知れませんね。我々はまだプランクスケール以下のミクロスケールを直接観測する術を持ちませんからね。

  投稿者:凡人 - 2009/04/16(Thu) 00:25  No.6767 
TOSHIさん
>内容や結果がが量子論と同じものをもたらすのであれば,かつてハイゼンベルクの行列力学とシュレーディンガーの波動力学が等価であることが証明されたようにボームのそれも同じものを別の言い方に変えた程度のものでしょう。
というご意見には少々異議があります。
行列力学や波動力学では、量子は観測した瞬間だけ位置と運動量が決定した状態となり、それ以外は位置と運動量は決定していない状態となりますが、ボーム力学では、量子は決定論的な運動方程式を有している為、観測するしないに関わらず、常に位置と運動量が決定した状態となります。
ここが標準的な量子力学とボーム力学の本質的な差異だと私は思っています。
ボーム力学に基く量子の運動方程式が観測等によって求められない現在、実用上=効用上は「同じものを別の言い方に変えた程度のもの」といっても何ら問題は無いかもしれません。
がしかし、将来、ボーム力学が評価され、量子を実在論的に扱うことによって、素粒子物理学がさらに一段階進歩する日が来ないとも限らないと私は思っています。
<<追伸>>
明男さんのご意見に私も概ね賛同させていただきます。

  投稿者:通りすがり - 2009/04/16(Thu) 06:12  No.6769 
明男さん

>実数空間が虚数空間の一部であるように、

数学の話だと思いますが、「虚数」ではなく「複素数」とおっしゃりたかったのでは?
しかし、物理的に複素数であることを示すには、どうするかですね。

  投稿者:凡人 - 2009/04/17(Fri) 00:01  No.6781 
ネット上の情報を確認したところ、ボーム力学で仮定しているところの量子ポテンシャルが、ローレンツ共変にはなり得ないと考えていらっしゃる方が多数いらっしゃるようなので、死ぬ気になって検索したところ、以下の論文を発見しましたのでお知らせしたいと思います。
http://arxiv.org/ftp/quant-ph/papers/0302/0302076.pdf
この論文では、量子ポテンシャル(≒the guiding equation)がローレンツ共変となっても問題は無いという事が記述されていると思うのですが、いかがでしょうか?
尚、本内容については、こちらの「14. Lorentz Invariance」の内容も参考になると思いますので、興味がある方はこちらもどうか参考にしてくださるようお願いします。
http://plato.stanford.edu/entries/qm-bohm/