EMANの物理学 過去ログ No.6551 〜

 ● 有限時間の測定では、エネルギーが正確に決められないことを意味している???

  投稿者:QIT - 2009/03/09(Mon) 18:47  No.6551 
甘泉法師さん

スレッドを改めさせて頂きました。記事にありました「有限時間の測定では、エネルギーが正確に決められないことを意味している。」という部分は、世に出回っている誤解です。このリンクされているHPは北海道大学の物理の方のものでしょうか?
一昔前の教科書に間違って書かれていた記述を、あまり深く咀嚼せず、書かれているものでしょう。

摂動論における有限時間の確率振幅の計算の中ではエネルギー保存則が一見破れて見えるため、この間違った主張が結構昔からまかり通っておりました。

最近では、量子測定理論が一般にも知られるようになったため、このスレッド表題のような誤解はだんだん減ってきているようではありますが。。。

実際には、エネルギーを含めたあらゆる量子力学的物理量の測定時間には特に原理的下限はありません。

測定の相互作用の強さを十分に大きくすれば、例え状態のエネルギー分散が非ゼロ(<tex>\Delta E \neq 0</tex>)でも、いくらでもエネルギーの測定時間は短くできますよ。

  投稿者:甘泉法師 - 2009/03/10(Tue) 09:36  No.6554 
QITさん ご教示ありがとうございます。


エネルギーは与えられた各時刻に任意の精度で測定することができる。
ということと承知しました。 ありがとうございました。


>実際には、エネルギーを含めたあらゆる量子力学的物理量の測定時間には特に原理的下限はあり>ません。

エネルギーでなく運動量について
ΔpΔt〜 hbar / c
の式を導出して、運動量をΔpの精度で測定するためにかかる時間がΔt、と旧い教科書で勉強したのを思い出します。
 ランダウリフシッツ理論物理学教程 非相対論的量子力学I §44
                  相対論的量子力学I 序文

>最近では、量子測定理論が一般にも知られるようになったため、このスレッド表題のような誤解>はだんだん減ってきているようではありますが。。。

最近の量子測定理論では、旧説がどう改められているのかたいへん興味があります。

=甘泉法師=

  投稿者:QIT - 2009/03/10(Tue) 11:00  No.6556 
甘泉法師さん

レスありがとうございます。

>エネルギーでなく運動量についてΔpΔt〜 hbar / c の式を導出して、運>動量をΔpの精度で測定するためにかかる時間がΔt、と旧い教科書で勉強したのを思い出します。ランダウリフシッツ理論物理学教程 非相対論的量子力学I §44 相対論的量子力学I 序文

残念ながら今手元に、ランダウリフシッツがありません。

ここの部分の論旨、導出を掲示板に書きこんで頂けませんか?

  投稿者:QIT - 2009/03/10(Tue) 13:06  No.6557 
ランダウリフシッツの本の内容を確認していないので、当てずっぽうで議論させて頂きます。

たぶん、一般的な測定を含めての解析ではなく、運動量の情報を波動関数の振動から読み取るような測定に関して不確定性を導出するのでないかと推測します。

一般的な測定を許すならば、原理的には様々な測定モデルが考えられます。

そしてエネルギーや運動量、そしてほかの物理量の測定には明らかな原理的下限は存在しません。

典型的にはエネルギーを測りたい粒子を他の多体系に吸収させて、温度上昇を見てエネルギーを読み取る方法もあるでしょう。

この場合、特に相互作用の強さを大きくすれば、平衡状態への緩和時間もいくらでも短くできると思います。

もう少し具体的な例を挙げます。この例は決して最新の量子測定理論ではなく、とても古典的なものです。

von Neumannのポインターモデルといいます。(他の掲示板にもちょうど解説が出てますが。
http://hooktail.maxwell.jp/cgi-bin/yybbs/yybbs.cgi?room=room1&mode=res&no=23098&mode2=preview_pc


状態<tex>|\Psi\rangle</tex>にある物理系に対して、測りたい物理量を<tex>\hat{A}</tex>としましょう。

これと相互作用をして<tex>A</tex>の大きさに応じて目盛が動くマクロなメータの針の系を考えます。

針の位置座標を<tex>\hat{x}</tex>とします。このメータの初期波動関数は原点近傍に鋭く局在しているものをとります。

これを<tex>u(x)</tex>と書きましょう。

メータと系の相互作用を
<tex>\hat{H}=g\hat{A}\otimes \left(-i\hbar\frac{\partial}{\partial x} \right)</tex>
として、この相互作用がかかる時間を<tex>\Delta T</tex>とします。

すると系とメータの合成系の状態は
<tex>\exp\left[-i\Delta T\hat{H}\right]|\Psi\rangle\otimes u(x)=\sum_n \langle a_n |\Psi\rangle |a_n \rangle\otimes u\left(x-g\Delta T a_n \right)</tex>
と書けます。(導き方は
http://hooktail.maxwell.jp/cgi-bin/yybbs/yybbs.cgi?room=room1&mode=res&no=23098&mode2=preview_pc
で丁寧に解説してくれてます。)


ここで<tex>a_n</tex><tex>\hat{A}</tex>の固有値、<tex>|a_n\rangle</tex>は対応する固有状態です。

終状態のメータの波動関数部分を見てください。固有値の値によって波動関数が局在する位置が移動しています。

従ってマクロなメータ部分の位置測定を行えば、対応する<tex>\hat{A}</tex>の測定結果が得られます。

ここでポイントは、<tex>\Delta T</tex>を短く固定しても、結合定数<tex>g</tex>を大きくすれば、いくらでも精度よく物理量が測れているという点です。

<tex>g\Delta T</tex>を十分大きくすれば、、<tex>\Delta T</tex>自体は小さくて構わないのです。

この相互作用の形を実現する実験は何かなどは、測る物理量や物理系によって変わってきます。

具体的にどのように実験するのかというはケースバイケースでしょうが、エルミートなハミルトニアンで記述される測定は、どんなものでも原理的に存在すると考えるのが現代の量子測定理論の思想であり、最近になってやっと広まった考え方だと思います。