EMANの物理学 過去ログ No.6213 〜

 ● 剛体回転

  投稿者:hirota - 2008/12/29(Mon) 14:51  No.6213 
剛体の自由回転運動での遠心力の作用を解説します。
その前に、準備として剛体回転の運動方程式を導きます。
No.6153, No.6200 から
慣性テンソル  $I_s=\int(r_s^2 1_3-r_s r_s^T)\,dm$ 
$r_s$ は物体固定座標での位置ベクトル, 添字 s は物体固定座標, 添字なしは慣性座標, $x^T$ は x の転置, $1_3$ は3次元単位行列 )
剛体の姿勢=3次元特殊直交行列 (空間回転行列) U
  $r=U r_s$ 
交代行列  $\Omega_s=U^T\dot{U}$ 
速度ベクトル  $v=\dot{r}=\dot{U}r_s$ 
  $v=\omega\times r=U v_s=U(\omega_s\times r_s)$ 
∴  $\Omega_s r_s=U^T\dot{U}r_s=\omega_s\times r_s$ 

  $r_s=\begin{pmatrix}r_1\\r_2\\r_3\end{pmatrix}$ ,  $\omega_s=\begin{pmatrix}\omega_1\\\omega_2\\\omega_3\end{pmatrix}$ 
とすると
  $\Omega_s r_s=\omega_s\times r_s=\begin{pmatrix}\omega_2 r_3-\omega_3 r_2\\\omega_3 r_1-\omega_1 r_3\\\omega_1 r_2-\omega_2 r_1\end{pmatrix}=\begin{pmatrix}0&-\omega_3&\omega_2\\\omega_3&0&-\omega_1\\-\omega_2&\omega_1&0\end{pmatrix}r_s$ 

  $\Omega_s=\begin{pmatrix}0&-\omega_3&\omega_2\\\omega_3&0&-\omega_1\\-\omega_2&\omega_1&0\end{pmatrix}$ 
角運動量  $L=U L_s$ 
角運動量保存則より  $\dot{L}=\dot{U}L_s+U\dot{L}_s=0$ 
∴  $\dot{L}_s=-U^T\dot{U}L_s=-\Omega_s L_s=-\omega_s\times L_s$ 
これが角運動量保存則より導かれる運動方程式です。

さて遠心力ですが、質量 m が  $r_s$  の位置にあり、角速度ベクトル ω で回転していると、遠心力は
  $F_s=m\,v_s\times\omega_s=m (\omega_s\times r_s)\times\omega_s=m(\omega_s^2 r_s-\omega_s\omega_s^T r_s)$ 
遠心力によるトルクは  $\Omega_s\omega_s=\omega_s\times\omega_s=0$  を使って
  $N_s=r_s\times F_s=m\,r_s\times(\omega_s^2 r_s-\omega_s\omega_s^T r_s)=-m\,r_s\times\omega_s\,\omega_s^T r_s$ 
    $=m\,\Omega_s r_s\,r_s^T\omega_s=-m\,\Omega_s(r_s^2 1_3-r_s r_s^T)\omega_s$ 
であるから、積分して
  $\dot{L}_s=-\Omega_s I_s\omega_s=-\Omega_s L_s$ 
これは角運動量保存則より導かれる運動方程式と同じです。
つまり、物体固定座標での遠心力によるトルクは、慣性座標での角運動量を保存するように働いています。

  投稿者:yuya - 2008/12/29(Mon) 18:01  No.6214 
hirotaさん[6213]:
$v=\omega\times r=U v_s=U(\omega_s\times r_s)$ 

すみません、初歩的なことかも知れませんが、 $v_s$ の定義は何でしょうか?
物体固定座標における速度ベクトルであれば、常にゼロだから、
 $v = Uv_s$ にはならないですよね。

  投稿者:hirota - 2008/12/30(Tue) 01:57  No.6215 
慣性座標での速度ベクトルを単純に変換したもの。
つまり、その式が定義です。
No.6173 に書いた、「角運動量ベクトルを乾電池固定座標に座標変換したもの」も同じ意味です。

  投稿者:heavy moon - 2008/12/30(Tue) 04:57  No.6216 

hirotaさん[6213]
難しくてよくわからないのですが、EMANさんの図を見ながら考えています。
私は慣性座標系で考えていましたし、yuyaさんにもそのように言いました。しかし、角運動量が保存するのだから(方向は物体固定軸で原点ー質点方向と直角な軸上)、回転座標系で考えたほうがスッキリするのかもしれません。もう一度初めから考える必要がありそうです。年を越すことになるでしょう。

皆様、どうかよいお年を。

  投稿者:yuya - 2009/01/02(Fri) 17:55  No.6219 
あけましておめでとうございます。
今年もよろしくご指導ください。

hirotaさん[6215]:
>慣性座標での速度ベクトルを単純に変換したもの。
>つまり、その式が定義です。

ふむー、「物体固定座標」って、そういうことなのですか。

ちょっと自分の頭を整理します。

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慣性系で位置 $r$ にある質点 $M$ が、回転系では $r_s$ にあり、
 $r_s = C r$ により変換されるとします( $C$ は[6213]の $U^T$ に相当)。
このとき、速度については
 $\dot{r_s} = \dot{(Cr)} = \dot{C}r + C\dot{r}$ 
で変換されます。これは、
慣性系において $M$ と同じ場所( $r$ )に静止している点 $N$ を考え、
「慣性系において、 $M$ は $N$ に対して相対速度 $\dot{r}$ で運動している」
と考えると理解しやすいです。
第1項は、 $N$ 自体を回転系で見たときの速度です。
第2項は、 $N$ に対する $M$ の相対速度ベクトルを、回転系の座標軸に合わせて単純に変換したものです。
この2つを加えて、速度ベクトルの変換が完了します。
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[6213]における $v_s$ は、この $\dot{r_s}$ 全体ではなく、第2項のみを指しているのですね。

ということは、 $v_s$ は、慣性系から見た $M$ の速度でもないし、
剛体にはりついた回転系から見た速度でもない、ということになります。
慣性系における速度ベクトルをそのまま、
座標軸だけ物体固定座標に置き換えたもの、ということですよね。

 $\omega_s$ 、 $L_s$ についても同様ですが、このように定義した物理量を用いて、
普通の回転系と同じ議論が成り立つのかどうか、私には判断できず悩んでいます。

そもそも、このような $v_s$ 等を考えること自体、私には馴染みが無かったのですが、
力学の世界では珍しくも何ともないものなのでしょうか?

頑張って $v_s$ に意味づけを与えるとすれば、
「回転系における、 $M$ の $N$ に対する相対速度」ということですが、
 $M$ は回転系では静止していますから、
「回転系における $N$ の速度は $-v_s$ である」と言うことができます。

回転系において、 $N$ には遠心力だけでなく、その2倍のコリオリ力が反対向きに働いており、
合計すると遠心力をひっくり返したようになります。
hirotaさんの議論に適宜マイナス符号を付けたものが成り立ち、
結果として計算が合致することは納得できます。

  投稿者:hirota - 2009/01/03(Sat) 12:36  No.6221 
あの式で定義された各変数は、計算を簡単にするため適当に導入したものですから、物理的意味は気にしないで下さい。(気にしたらマケ?)
現実の力学問題を解く時は、よく正準変換で位置も運動量もゴチャまぜにした変換を行なって問題を簡単にしますから、物理的意味の不明な変数などザラです。(名前をつけるときは適当に近い意味を使ったりする)
もちろん必要なときは、正しい座標変換による物理量だって使います。

おっと、計算簡単だけでなく、使う事も言わなくては。
剛体回転を見るのは慣性系ですから、解を当てはめるには慣性系に戻さねばなりません。
そのとき、物体姿勢を見て座標方向だけ戻すのは簡単ですが、変化率まで変換するのは面倒です。
つまり、あれは瞬時の物体座標を使った「あくまでも慣性系」なのです。
言うなれば「瞬時物体固定慣性座標」なら物理的意味が通るでしょうか。(漢字を並べてもワカランと思うが)

  投稿者:yuya - 2009/01/03(Sat) 19:31  No.6224 
hirotaさん[6221]:
>あの式で定義された各変数は、計算を簡単にするため適当に導入したものですから、物理的意味は気にしないで下さい。(気にしたらマケ?)

>つまり、あれは瞬時の物体座標を使った「あくまでも慣性系」なのです。

なるほど〜!!すっきり分かってきました。ありがとうございます。

教わったことをもとに、私の理解をまとめます。

[6213]の前半にあるとおり、慣性系での角運動量保存 $\dot{L} = 0$ を
物体固定座標慣性系で書き直すと $\dot{L_s} = - \omega_s \times L_s$ となりますが、
 $L_s$ についても、「回転系における角運動量」とは言えず、
慣性系での角運動量そのものを、座標軸だけ貼り直して単純に変換したものです。

座標軸が物体に合わせて傾いても、慣性系であることには変わりありませんから、
言わば $L$ というベクトルを表す「矢印型の杭」を立てて、
その先端の位置を、各瞬間の座標軸の目盛りで読み取るようなものです。
ある瞬間に採用した座標軸において、剛体の角速度が $\omega_s$ のとき、
杭はその座標軸に対して $- \omega_s$ の角速度で動いていると考えられるので、
その先端の速度 $\dot{L_s}$ が $(- \omega_s) \times L_s$ に等しいことが納得できます。

これに対して回転系では、遠心力のトルクによって「本当に」角運動量が変化しようとします。
したがって、上の $\dot{L_s}$ が、「回転系における角運動量の時間変化」と同一かどうかは自明ではありません。

初心者らしく、物体固定座標慣性系と回転系を明確に区別し、
遠心力はあくまで回転系で現れる力と考えて、基本にのっとって計算してみます。
heavy moonさんの参考になれば幸いですが、間違っているかもしれません。

回転系の物体固定座標慣性系に対する回転速度を $\nu$ とします。
 $\nu$ の定義は(質点ではなく)回転座標系自体の回転速度ですが、
いまは質点に追従して回る座標系を考えているので、 $\nu = \omega_s$ となります。
回転系における質点の各物理量を $_{rot}$ によって表すと、
 $r_{rot} = r_s$ 、 $\omega_{rot} = 0$ 、 $v_{rot} = \omega_{rot} \times r_{rot} = 0$ 、遠心力 $F_{rot} = - m \nu \times (\nu \times r_{rot})$ 
これらを用いて遠心力によるトルクを計算すると、
 $\begin{array}{ll} r_{rot} \times F_{rot} & = r_{rot} \times [-m \nu \times (\nu \times r_{rot})] \\ & = r_s \times [- m\omega_s \times (\omega_s \times r_s)] \\ & = r_s \times (-m\omega_s \times v_s) \\ & = \cdots \\ & = - \omega_s \times (r_s \times mv_s) \end{array}$ 
これを全質点について合計すると
 $\begin{array}{ll} \sum(r_{rot} \times F_{rot}) & = \sum[-\omega_s \times (r_s \times mv_s)] \\ & = -\omega_s \times \sum(r_s \times mv_s) \\ & = - \omega_s \times L_s \end{array}$ 

最左辺は $\dot{L_{rot}}$ 、最右辺は $\dot{L_s}$ なので、両者が一致することが示されました。
なお、上の計算の $\cdots$ の部分は、外積の順序を適当に入れ替えただけのように見えますが、
一般にはこのような操作は許されません。
ここでは $v_s = \omega_s \times r_s$ という関係があるために、このような等式が成り立ちます(ヤコビの恒等式を用いると簡明)。

しかし、回転系では常に $\omega_{rot} = 0$ 、したがって $L_{rot} = 0$ となるのに、
どうして遠心力のトルクによって $\dot{L_{rot}}$ が生じるのか、悩んでいました。

その回転系に居座り続けていれば $L_{rot}$ の変化を見るのであって、
剛体は刻一刻と回転系を乗り換えているのですね。
ちょうど $\dot{L_{rot}}$ の分を消費するかのように剛体は姿勢を変えて( $\dot{L_s}$ )、
新たな回転系では再び $\omega_{rot} = 0$ 、 $L_{rot} = 0$ になるわけですね。