EMANの物理学 過去ログ No.6017 〜

 ● テンソルについて

  投稿者:RIB - 2008/12/01(Mon) 22:52  No.6017 
テンソルの解説について一つEMANさんに提案です

相対論に出てくるテンソルって基本的に添え字のついた表記、つまり基底とその成分を用いたディアディック表記の話しかしてません。

けれど、それじゃよくわからない人も多いと思います。
テンソルっていうのは、そもそも「座標や基底の取り方にかかわらず、その本質的な物理的意味は変わらない量」である、みたいなことをもっと前面に押し出すべきだ、と自分は思うのですが・・・


そうすれば、反変テンソルは、基底の変換を打ち消さねばならず、基底と逆の変換を受けることは自明だし、どうして完全反対称テンソルが擬テンソルになるのかも納得がいきやすいと思うのです。

変換則が反変・共変の大きな違いであるのは間違いありませんが、その根底には「どの観測者(=基底)からみても、物理的意味は同じ」という意味がある、というような感じにしてはいかがでしょうか?
どうぞ、ご検討お願いします

  投稿者:凡人 - 2008/12/03(Wed) 01:30  No.6019 
>その根底には「どの観測者(=基底)からみても、物理的意味は同じ」という意味がある、というような感じにしてはいかがでしょうか?
それって、ゲージ原理の事でしょうか?
そういえば、啓蒙書レベルの知識ですが、ゲージ理論って、標準モデルの核心になっているみたいですね。
間違っていたら申し訳ありません。

  投稿者:EMAN - 2008/12/03(Wed) 13:50  No.6023 
 とりあえず、ゲージ原理は関係ないけど。

 テンソルの説明は私もまだ満足仕切れているわけではないので、いつか書き直すかも知れません。 その時に、ご提案の件について思い出すこともあると思います。

 テンソルは他の分野でも説明する機会があると思うので、(書き直しとなると結構面倒なので、)その時に別の説明を試みるかも知れません。 直したいところは他にも幾らでもあって、今後も気持ちの赴くままにやっていこうと思ってます。 すみませんが、気長にお待ち下さい。

 今書いている統計力学だって、もう、何年も前からのリクエストにやっと応えている感じなんですよ。 リクエストした人はもうそのことを覚えてないかも知れない・・・。

  投稿者:凡人 - 2008/12/04(Thu) 01:18  No.6036 
>とりあえず、ゲージ原理は関係ないけど。
申し訳御座いませんでした。

  投稿者:RIB - 2008/12/06(Sat) 21:26  No.6061 
>EMANさん

ありがとうございます。この提案がちょっとでも意味のあるものになったとしたら、光栄です。

>凡人さん

私が言いたいのは、ゲージ理論も含めて「すべての観測者から見た物理法則は同じである」という、相対性原理に関する話です。

ゲージ変換もある意味では「観測者を変える」ということです。しかしMaxwell方程式はその形を変えない。これは一つの例ですね。

  投稿者:凡人 - 2008/12/07(Sun) 22:08  No.6067 
RIBさん、大した話しではないと思いますが、
>ゲージ理論も含めて「すべての観測者から見た物理法則は同じである」という、相対性原理に関する話です。
という記述は、ゲージ原理が(一般)相対性原理に包含されているように受け止められます。
けれども、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%82%B8%E7%90%86%E8%AB%96
を読むと、(一般)相対性原理の方がゲージ原理の中に包含されているように受け止められますが、いかがでしょうか?

  投稿者:RIB - 2008/12/08(Mon) 00:35  No.6068 
>凡人さん

私の説明不足でしたね。私は別に一般相対性原理などに限定する意図はありませんでした。純粋に「本質的な物理的意味は、誰から見ても同じ」という、一見すれば当たり前の要請として、「相対性原理」という言葉を使っていました。
しかし、この意味での「相対性原理」といっても、実際思いつくのは、考えている空間の基底を(完全刑をなす範囲で)取り替えても不変、としか読めないので、それは一般相対性原理と同じといえるのかもしれません・・・これは要考察ですね

そして、ゲージ理論は、その要請を具体的に、「軸の取り方によらない」というようにして取り扱う理論のようですね。
注意してほしいのは、結論としての一般相対性「理論」では量子論的扱いには向かないということです。一方、ゲージ理論は素粒子理論にも適用されています。だから、一般相対性理論より広い範囲に適用できるものです。しかし一般相対性「原理」については、むしろ、ゲージ不変性を要請することと、一般相対性原理を要請することは、同じに思えます。

まぁ私もゲージ理論を満足に学んでいるわけではないので、勝手なことは言えませんがね・・精進します

  投稿者:凡人 - 2008/12/08(Mon) 22:41  No.6075 
RIBさん、ご返答有難う御座います。
>そして、ゲージ理論は、その要請を具体的に、「軸の取り方によらない」というようにして取り扱う理論のようですね。
ゲージ理論では、非連続値理論から非可換理論までも扱えるようなので、およそ、物理学上の本質理論と呼べるような理論は、将来的にも、すべてゲージ理論に包含されるのではないかと私は思っています。
>まぁ私もゲージ理論を満足に学んでいるわけではないので、勝手なことは言えませんがね・・精進します
精進の結果、相対論やゲージ理論について、私のような無学なものでも感動できるような内容を把握されましたら、どうかご教示のほどをお願いいたします。

  投稿者:あもん - 2008/12/09(Tue) 18:10  No.6080 
ゲージ理論についていくつか。

・一般相対論がゲージ理論の一種であることを最初に明示したのは日本の内山龍雄氏です。通常の微分幾何学で用いられる計量と接続場の代わりに、4脚場(フィアバイン)とスピン接続というものを時空構造として取り入れることで、一般相対論を再構築することができ、ゲージ理論であることが明確になります。

また、もともと電子やクォークなどを記述するスピノルは、ローレンツ群 SO(3,1) の既約表現であり、曲がった時空上で直接取り扱うことができないわけですが、4脚場やスピン接続を導入することでこれが可能になるということもあり、統一理論においてはかなり必須の方法といえます。ただしスピノルを扱う場合はリーマン空間では納まらずに、リーマン=カルタン空間と呼ばれる更に一般的な空間(多様体)を導入するのが普通です。これはリーマン空間にはない、捩れ構造が入ったような空間で、エネルギー運動量が時空の曲率を生むのに対応して、素粒子のスピンが時空の捩率を生むという仕組みになります。例えば、M理論の1つの有効理論であると考えられている11次元超重力理論はこのような数学の上に構築されています。

・ゲージ場の量子論が脚光を浴びたのはトホーフトが非可換ゲージ場の量子論のくりこみ可能性を証明してからでしょう。一般に対称性が高い場の量子論はくりこみの際に無限大の相殺が起こりやすく、くりこみ可能になりやすい傾向にあります。しかし一方で、ゲージ対称性などの局所的対称性がアノマリを有すると矛盾するという側面もあり、特にカイラルなモデル(パリティが破れたモデル)の構築はシビアといえます。

素粒子標準模型ではクォークとレプトンが競合して絶妙にアノマリがキャンセルしているし、ひも理論が26次元や10次元でなければ意味を成さないのもこの事情によります。ちなみに標準模型の絶妙なアノマリキャンセレーションは、背後にもっと大きなゲージ対称性があることを予感させ、それは大統一理論(GUT)の動機の1つになっています。

・ゲージ場の量子論は長い間謎めいた理論だったのですが、BRS処方の発見以降、かなり見通しがよくなりました。とはいえ、かなり想像をたくましくしないと理解できない理論であることは間違いありません。古典論では簡単で美しいゲージ理論も、量子化する際には無駄に多い自由度がネックとなり、簡単には意味のある量子論が得られないのです。ゲージ固定やゴースト場の導入などによってようやく量子論が得られるのですが、状態空間は不定計量になり、非物理的状態(観測不可能な状態)が混入するという複雑な理論になるのです。

しかしそういう複雑さがあるために、予想だにしなかった事柄が証明され、結果上手くいっているという事も多々あります。例えば、弱い相互作用がゲージ理論から得られるとすると、ゲージ対称性が破れているにせよ破れていないにせよ、対称性に見合った数のゼロ質量粒子が存在しなければおかしいのですが、現実にはそんなものはありません。ところがゲージ場の量子論の理解が進むと、そのゼロ質量粒子が物理的状態として存在する必要がないことがわかり、この問題は解決されます。実際、ヒッグス場起源の粒子の一部がゼロ質量なのですが、これは非物理的になってると考えられているのです。

また、クォークはハドロンの中で互いにゆるく結合しているように振舞うが、その1つを叩き出すことはできない(漸近的自由性と閉じ込め機構)という事も、ゲージ場の量子論の予想外の結果といえるでしょう。証明はまだ完全ではないようですが、どうやらカラーSU(3)一重項(色のないハドロン)以外は非物理的状態に属するようなのです。

もっと簡単なところでは、光子のスピンは1だけど、スピンの進行方向の成分(ヘリシティ)は±1だけで、ヘリシティ0が観測されないのもゲージ場の量子論のトリックの1つです。ヘリシティ0の光子は非物理的状態なのです。

  投稿者:凡人 - 2008/12/09(Tue) 23:28  No.6082 
あもんさん、仰られる事は良くは分りませんが、兎に角感動しました。有難う御座いました。
ところで、後半で仰られている内容は、ゲージ原理に適合しない、或いは、ゲージ対称性が破れた状態や理論は、必ず非物理的なものになってしまうというように理解すれば宜しいのでしょうか?

  投稿者:あもん - 2008/12/10(Wed) 05:07  No.6083 
凡人さん:

>ゲージ原理に適合しない、或いは、ゲージ対称性が破れた状態や理論は、必ず非物理的なものになってしまうというように理解すれば宜しいのでしょうか?

あ、いえ。ゲージ対称性が自発的に破れているにせよ、破れていないにせよ、ゲージ場の量子論(その共変量子化)には非物理的な状態が混入するという複雑な側面があるということです。具体的には "観測できないお化けのような粒子が計算上必要とされる" ということです。理論が非物理的になるということではないです。理論はあくまでコンシステント(無矛盾)と考えられるのです。むしろそういう "お化け" がいないと、逆に矛盾するのです。

啓蒙書を何冊か読んでることを前提に、啓蒙書にはあまり書かれていない側面を書き連ねてしまいました。ゲージ理論や統一理論に興味がおありなら、ちょっと古いけど、

講談社ブルーバックス「アインシュタインを超える」ミチオカク他

は、もし読んでいないならお勧めかな。超ひもを絶賛しすぎてて気持ち悪いという一面もあるけどw


  投稿者:凡人 - 2008/12/10(Wed) 20:52  No.6095 
あもんさん、ご教示有難う御座いました。
>講談社ブルーバックス「アインシュタインを超える」ミチオカク他
については、いきつけの書店には置いてありませんでしたので、代わりに、こちらを読んで自己啓蒙したいと思います。
http://hep1.c.u-tokyo.ac.jp/~kato/gauge.pdf

  投稿者:RIB - 2008/12/11(Thu) 00:16  No.6100 
ゲージ理論も含めた「対称性」についての話ならSGCライブラリから出ている「対称性と保存則」もいいかもしれません。

当方、物理学部2年なのですが、最近専門に入り、いたるところにゲージ変換が出てきます。その重要性はきちんと学んでいないのでいまだよくわからないのですが・・・今回の件で少々興味がわきました。冬休みにでも統一理論も含め、ざっと学んでみることにします。

ちなみにミチオ・カクと言えばあのクソ重いM理論の本を書いてる方ですね・・1時間で挫折しました笑

  投稿者:あもん - 2008/12/11(Thu) 04:08  No.6101 
凡人さん:

ご紹介の PDF, 啓蒙というよりは、入門のイントロという感じですが、なかなか良いと思います。

RIBさん:

ミチオ・カクというと、ひも理論の厚い教科書は存じてますが、M理論の教科書も書いていたのは知らなかったです。ひも理論については、BRS処方の応用みたいなものなので、BRSや経路積分に基づいた理解の仕方をするなら、非可換ゲージ場の量子論とそれほど難易度は変わりません。ちなみに私が学生の頃に感じた難易度は次の通り:

力学 1
電磁気学 2
特殊相対論 2
一般相対論 4
統計力学 3
量子力学(多体系を除く) 3
場の量子論(QEDまで) 6
非可換ゲージ場の量子論 7
ひも理論、共形場の理論 8

ゲージ理論自体は電磁気学にも現れるもので、それ自体の難易度は2だと思います。しかしその量子論となると、QEDで6、ヤンミルズで8でしょうね。学部2年生ということであれば、啓蒙書と入門書で、当面、香りを嗅いでおくくらいでよろしいかと…。

  投稿者:凡人 - 2008/12/11(Thu) 23:22  No.6114 
そういえば、加來道雄(Michio Kaku)さんについては、是非ともM理論を発展させていただいて、ノーベル賞をとっていただきたいですね。