EMANの物理学 過去ログ No.5790 〜

 ● 気体分子運動論

  投稿者:白昼夢 - 2008/11/14(Fri) 23:15  No.5790 
分子量Mの気体の圧力について<tex>P=nMc ^{2} /3V</tex>となりますよね。
どうして根二乗平均速度を用いるのですか?平均速度とは値が異なる場合があるのは理解できますが、意味上の違いと言いますか、何故平均速度がこの式には使われないのか分かりません。詳細を教えて頂ければ嬉しい限りです。

  投稿者:yuya - 2008/11/15(Sat) 00:17  No.5792 
気体分子の速さを「2乗してから平均をとったもの」を $u$ としたとき、
 $P = nMu/3V$ となり、あえて $c = \sqrt{u}$ とおけば $P = nMc^2/3V$ とも書ける、ということですよね。

直接のご質問は「なぜ根2乗平均速度を用いるのか」とのことですが、
「なぜ平均してから2乗するのではなく、2乗してから平均をとったものを考えるのか」が分かれば解決するでしょうか?

式の導出は教科書に載っていると思うので、直感的な説明をやってみます。

向かい合った壁の間を、一定の速さでボールが運動しているとします。
ボールは壁に当たると跳ね返り、速さはそのままで向きだけを逆転させて(つまり弾性衝突)、永遠に往復を繰り返します。
片方の壁に注目すると、壁はボールから定期的に衝撃を受けています。
ここで、ボールの速さを3倍にすると、壁の受ける「ダメージ」はどうなるでしょうか?

3倍の速さでボールがぶつかってくるわけですから、1回の衝突で受けるダメージも3倍になります。
それだけではなく、ボールが往復に要する時間が1/3に短縮されますから、衝突の回数自体も3倍になります。
このため、壁が受けるダメージは3×3=9倍になります。つまり、ダメージは速さの2乗に比例します。

ボールを気体分子と考えて、壁への「ダメージ」が圧力に寄与すると考えてみてください。
気体の圧力は、多数の気体分子の壁への衝突の総和として現れますが、個々の気体分子に着目したとき、
それぞれが自分の速さの2乗に比例して圧力に寄与するので、「平均をとってから2乗する」のでなく、
「2乗してから平均をとる」必要があるのです。

かなり無茶苦茶なたとえ話ですが、理解の助けになれば幸いです。

  投稿者:白昼夢 - 2008/11/16(Sun) 09:10  No.5828 
yuya様、凄い分かり易い説明を有難う御座います!どうして根二乗平均速度を用いるのかが明確になりました。助かります。

もう一つ初歩的な質問をさせて頂きます。
<tex>P=nMc ^{2} /3V</tex>
この式中のnは分子のモル数、Mは分子のモル質量と捉えてよいのでしょうか?あるテキストに<tex>M=mN _{A} </tex>(mは分子一つの質量)とされていたので上のように考えました。

宜しくお願いします。

  投稿者:白昼夢 - 2008/11/16(Sun) 09:12  No.5829 
あとこの問題においてparticleを分子と訳したのですが問題ないですか?

  投稿者:yuya - 2008/11/16(Sun) 11:34  No.5834 
白昼夢さん:
「分かり易い」と言っていただけると、とても嬉しいです。
いつもEMANさんの掲示板の高度な議論にはついて行けないのですが、
「山の頂上」で活躍できなくても、「すそ野」の辺りで役に立とうと頑張ってます。
というわけで、いつ間違ったことを言うか分からないのでご注意を(笑)。

>この式中のnは分子のモル数、Mは分子のモル質量と捉えてよいのでしょうか?

それで正しいと思います。教科書によって書き方の流儀はいろいろあるかもしれません。
 $nM$ の部分は、最も素朴に書けば「(容器内の)分子の全質量」です。
これを出発点にすれば、すべて算数的に納得できると思います。

(全質量) = (分子1個の質量)×(分子の個数)
=(分子1個の質量 $m$ )×(分子1モルの個数 $N_A$ )×(分子のモル数 $n$ )
前の2項をまとめて $mN_A = M$ とおくと
=(分子1モルの質量 $M$ )×(分子のモル数 $n$ )
となります。あっ、要するに $M$ は「分子量」か。

毎度、幼稚なたとえ話で恐縮ですが、
「1本10円の鉛筆3ダースの値段は10×12×3 = 360円」というのを、
10×(12×3) = 10×36 (1本の値段×本数)と考えてもいいし、
(10×12)×3 = 120×3(1ダースの値段×ダース数)と考えてもいいのと同じことです。

>あとこの問題においてparticleを分子と訳したのですが問題ないですか?

まぁ直訳すれば「粒子」で、「分子(molecule)」よりももっと広い意味になりますよね。
この式の導出に際して用いられているモデルでは、本物の気体分子と比べて
いろいろな理想化がなされているので、particleという語を用いているのかもしれません。
もちろん、【実際には】分子(という粒子)の話をしている、と考えてよいのだと思いますが。