EMANの物理学 過去ログ No.4102 〜

 ● 実際の計算(5)

  投稿者:Stromdorf - 2008/06/07(Sat) 11:15  No.4102 
 いよいよ「全過程 d'Q = 0 なのにエントロピーが減少する例」の解説です。

 前例と同じく、断熱壁で覆った断面積 A、深さ 2L のシリンダーに温度 T_0 でモル数 2 n_0 の理想気体を入れたものを用意し、シリンダーの中央に断熱壁を挿入し、ピストンから遠い方に熱量 - Q < 0 を流入すると同時にピストンに近い方に熱量 Q > 0 を流入します。
 この操作の間は d'Q = 0 です。

 さて、この操作を始める前のシリンダーから遠い方のエネルギーを U_0a 、近い方のエネルギーを U_0b とすると

(33) U_0a = U_0b = n_0 C T_0

であり、その操作が終わった段階におけるシリンダーから遠い方のエネルギーを U_1a 、近い方のエネルギーを U_1b とすると

(34a) U_1a = U_0a - Q

(34b) U_1a = U_0a + Q

となります。ただし内部エネルギーは負にはなり得ませんから

(35) 0 < Q < U_0a

という制約条件が付きます。ゆえに温度については

(36a) T_1a = T_0 - q

(36b) T_1a = T_0 + q

 ただし

(37) 0 < q ≡ Q / U_1a < 1

です。
 さて、この状態から前の例と同じプロセスを実行します。すなわちピストンを長さ L だけ拡大し、断熱壁を取り払い、平衡状態に達してからピストンを長さ L だけ押し込みます。
 この最後の温度を T_4 とすれば、途中の計算を省略すると、

(38) T_4 = T_0 × g(α)

 ただし

(39) g(α) = {(1 + 2^(-α))/2 - (1 - 2^(-α))q/2} × (3/2)^α

     = (1 + q)/2 × (3/4)^α + (1 - q)/2 × (3/2)^α

     < (3/4)^α + (1 - q)/2 × (3/2)^α

(40) α = R/C

です。ややこしい式ですが、α > 0 がどんな値であっても、熱の注入量 Q をうまく選べば、すなわち 0 < q < 1 の範囲で q をうまく選べば

(41) g(α) < 1

とすることができます。具体的には

(42) 0 < (2/3)^α × {1 - (3/4)^α}

ですから、0 < q < 1 を

(43) (1 - q)/2 < (2/3)^α × {1 - (3/4)^α}

となるように取ればよいわけです。このとき (38) により

(44) T_4 < T_0

となります。そして、エントロピーについても

(45) S_0 = 2 n_0 ln{T_0^C (LA/n_0)^R}

(46) S_4 = 2 n_0 ln{T_4^C (LA/n_0)^R}

ですから

(47) S_4 < S_0

となって、このような q を選んだ場合には、終始 d'Q = 0 であるにもかかわらず最初の状態より最後の状態の方がエントロピーが減っているという事態が生じます。
 これは、この過程が断熱過程ではないことを意味しています。

  投稿者:Stromdorf - 2008/06/07(Sat) 11:19  No.4103 
>(36a) T_1a = T_0 - q

>(36b) T_1a = T_0 + q



(36a) T_1a = T_0 - q T_0

(36b) T_1a = T_0 + q T_0

の誤りでした。訂正します。