EMANの物理学 過去ログ No.3626 〜

 ● 無題

  投稿者:明男 - 2008/03/22(Sat) 18:06  No.3626 
HGさん、こんにちは。

十数年前、人工知能技術に携わっていたことがあり、HGさんの作業仮説は当時かなり活発に議論されました。一般にコンピュータはただの高速計算機だと思われがちですが、それなりのソフトウェアと知的データベースを用意してやれば、かなりの推論を人間より遙かに正確に速く行うことが可能であると思います。
しかし(科学的)創造力とは価値を生み出すことであり、価値は機械にとって意味有るものではない気がします。価値は目的意識であり、何のためにそれを行うのか、それは広い意味で正しいのかという内省なしでは、価値そのものが定義できないと思うからです。
この内省こそが自らの存在を意識し、疑い、悩み、上昇志向を目指す「知性」の本質であり、創造力は知性の発露として知能とは一線を画すものであると考えます。
膨大な文献と実験結果、観測事実をサーベイし、突き合わせ分類し、ある種の法則や理論を導き出すことができるとしても、それは命じられねばならないでしょう。これは創造力ではありません。それでも有意義なら、意味があるではないか、ということは言えます。それこそマシーンの能力です。
結局、HGさんの言われるような知能は現在でも有る程度完成しており、例えば意識決定支援システムや知的検索エンジン、連想機械などにその発芽を見ることができます。問題は創造力の方です。科学が既にあるものを掘り出すだけの金鉱堀りであるなら、これほど魅力はないでしょう。そこには知性のみが切り開ける新たな知見があり、宇宙はそれほど広さと深さを兼ね備えているからです。
長くなりましたが、最後に、技術的側面自身も知性によって、また飛躍するので、可能性は無限ではないでしょうか。

  投稿者:HG - 2008/03/22(Sat) 19:46  No.3627 
明男さん、早速ご専門のお立場からご教示をいただきありがとうございます。

何度も同じようなことを言って恐縮なのですが、意識や志向性や心といったものが
再現困難なのは、それがあまりにも歴史や環境と絡み合っているからではないで
しょうか。
そして、物理や数学の創造能力においては、そういったしがらみが少ないない分
機械化の見通しが立てやすくなるとはいえないでしょうか。
いやむしろ、そのようなしがらみが少ないからこそ、物理や数学の創造においては
我々よりも人工知能の方が(究極的には)適しているとはいえないでしょうか。

価値の定義についてですが、物理学で言えばより一般的な物理法則を解明することを
価値と認めてよいのではないでしょうか。
物理学は有限かつ論理的な体系ですから、私には、やはり人工知能に部があるように
思えるのです。

  投稿者:明男 - 2008/03/23(Sun) 13:06  No.3630 
HGさん。
専門というほどではないです。ある企業の先端技術開発に関わっていただけですから(^^;)。

それはともかく、論理的思考自体は何も人類の専売特許ではなく、遙かに優れた推論機械を作り出すことは可能でしょう。
そして人間的な迷いの無い分、機械の方が有利という考えも分かります。そればかりではなく、カーボノイドである我々人類とシリコノイドでは神経伝達速度がかなり違いますから。
前にも書きましたが、膨大な知識と推論エンジンがあれば、既存のデータの中に含まれる一般的原則や原理を見出し、より多くのデータに適合するモデルを構成することも可能でしょう。
しかし、例えば数学でもブルバキが行ったような抽象化やよりグローバルな視野に立つ、真に新しい学問の創設、すなわち創造、が可能かと言えば、甚だ疑問です。
物理学においても、現代量子力学の”真空”概念は、言わば思想であり、それは矛盾の解明という梃子によって人類が生み出した新しい知見、概念です。或る意味既存の概念に反し、それを壊し、そして再構築するといったプロセスを経て初めて可能となったものです。勿論これもまた、更に新しい概念によって書き換えられる可能性のあるものですが、いくら歴史を掘り返しても出て来ないものでしょう。なぜなら、それは自然観、つまり哲学とも深く結びつき、決して数値の精度のみによっているからではないからです。
昨今、超高エネルギー実験では人工ブラックホール生成や高次元への扉を開くかも知れない領域へ近づきつつあります。もし、エネルギー保存則が一見成立しない事象が観測されたならば、人工知能はエネルギー保存則の方を書き換えるでしょう。
超高エネルギーでは保存則は修正される、とかなんとかして。
しかし我々人類はおそらく、別次元の可能性を考え、新しい宇宙観を持つに違い在りません。それが知性の志向性に適っているからです。真に新しい知見を生み出すこと、創造は、機械には出来ないという理由はこの辺りにあります。