EMANの物理学 過去ログ No.2683 〜

 ● 低エネルギーにおけるハドロン

  投稿者:あもん - 2007/10/02(Tue) 22:56  No.2683 
TOSHIさん、他のみなさま:

「なぜ光速は一定か?」スレッド #2670 からの続きです。

例えばカイラルSU(2)σ模型を考えると、π0→2γ は陽子が3角ループを回るグラフで説明できますね。このとき外線の π0 が接続するのは湯川相互作用のバーテックスで、つまり主に核力(強い相互作用)と電磁気力によって崩壊していると考えられるわけです。弱い相互作用は関係ありません。SU(2)L×SU(2)R → SU(2)V の自発的破れのスケールを f とすると、核子は m(N) = g(N) f の質量を獲得しているので(g(N) は核力の結合定数)、崩壊幅 〜e^4 m(π)^3 / f^2 は、本来的には 〜e^4 g(N)^2 m(π)^3 / m(N)^2 という意味であり、これなら核力と電磁気力で崩壊していることが一目瞭然です。ここまではおさらい。

そうすると、じゃあ何故荷電パイオンの崩壊にも同じ f が入るのか、ということが少し気になると思うんです。私は以前 Nifty.FPHYS でカイラルSU(2)σに電弱力を入れたモデルを紹介しました。結果、荷電パイオンはWボゾンと次のミキシングを持ちます:

g(2) f/2 ( W ∂π^* +W^* ∂π)

ここで g(2) はゲージ SU(2)L の結合定数です。このため荷電パイオンの崩壊幅に f^2 のファクターが入るわけです。中間状態にWボゾンがあるので、これは弱い相互作用が関与した崩壊です。同様に π0 にもZボゾンとのミキシングがあり、レプトン対への崩壊幅もあるのですが、→2γ の幅が圧倒的なので無視されてしまいます。

弱い相互作用が関与しているかについては、WボゾンとZボゾンの質量を無限大とした極限、あるいはフェルミ結合定数を0とする極限を考えてみるべきでしょう。それで抑制される反応は、弱い相互作用が関与していると言えます。この極限で π0→2γ は影響を受けませんが、π→(レプトン対) は当然抑制されてしまいます。

あと、昔の現象論的素粒子論で、フェルミのカレントカレント結合の弱い相互作用を考えた場合、荷電パイオンの崩壊を説明するためには、荷電カレントに f∂π の項を仮定するべきでしょう。そんな理論もかつてはあったのだろうと私は予想しているのですが、この場合謎のパラメータ(崩壊定数) f について、何故 f = m(N)/g(N) という等式が成立しているのか不思議だったと思うんです。「核力と弱い相互作用に何故関連があるんだ?」と...。

上のカイラルSU(2)σの話は、そのタネ明かしになっています。このことはニュートン理論においては等価原理(慣性質量=重力質量)は謎だったけれど、一般相対論でその必然性が判明したことに酷似しています。

  投稿者:TOSHI - 2007/10/04(Thu) 11:56  No.2702 
 どうもTOSHIです。

 π0→2γについてはちょっと古臭い頭になっていました。

 私がアノマリーに遭遇した当時はモデルが必要で構造因子の内容の相互作用まで真剣に考える余裕はありませんでしたが、現在的に考えれば、そうしたモデルは不要で、そもそも低エネルギー定理によれば相互作用の断面積は電荷の2乗に比例し,π0の場合には、それが(2/3)^2×1/2なら実験に合うというトフフトの話を忘れていました。

 すなわち,π0=(pp~−nn~)/√2でこのうち,up-クォークpの電荷が2/3であり,電磁相互作用の陽子の三角グラフをと湯川相互作用のバーテックスというよりは,電磁相互作用のpクォークの三角グラフと量子色力学のグルオン-クォークバーテックスがメインで,π0はカラークォークの相互作用でpクォーク-反pクォークがその中に閉じ込められているというのが構造因子であるという意味では非常に強い相互作用なので、確かに弱い相互作用は考える必要がないというのでいいようです。

 ちょっと古臭い考えに固執していてすみませんでした、あもんさん、Φマンさん、他の方々...

 というわけで明男さんの示された光子散乱によるハドロンの生成というトピックスは高エネルギーでのπ0の生成も含んでいると考えられ、先に切り捨てた逆反応も当然あり得ます。

 最近の理論では実粒子としてのpクォークの質量がどの程度のオーダーに同定されているのか知りませんが、仮想陽子を対生成するのよりも仮想pクォークを対生成する方が、2光子のエネルギー的には小さくていいのでしょうか?

                       TOSHI

                 

  投稿者:TOSHI - 2007/10/04(Thu) 12:30  No.2704 
PS:(2/3)^2×1/2というのはカラー自由度3あるいは3^2が抜けてるかもしれません。ちょっと思い出しながら書いただけで,こまかい数値はめんどくさいので。。。失礼
                     TOSHI
                  

  投稿者:あもん - 2007/10/05(Fri) 09:30  No.2719 
>仮想陽子を対生成するのよりも仮想pクォークを対生成する方が、2光子のエネルギー的には小さくていいのでしょうか?

そういうことではないと思いますけど。私は知りませんが、もし何らかの方法で πqq の結合定数(あるいは形状因子)が導かれれたとすれば、それはそれで陽子ループで計算するのと同じ結果になると思います(qはクォークの意)。また、一番説得力がある、標準模型+低エネルギー定理+アノマリの方法では、有効作用(すなわち πγγ のバーテックス)が直接導かれ、中間状態についてはよくわからないわけですが、結果はカイラルSU(2)σの陽子ループによるものと一致します。(カラー自由度をちゃんと考慮しないと一致しないことはよく知られていますね。)