EMANの物理学 過去ログ No.2148 〜

 ● 線形の場と非線形の場

  投稿者:ワイル - 2007/08/04(Sat) 00:03  No.2148 
「場」について「線形」の場と「非線形」の場とがあります。

1.ゲージ場(電磁場、強い力の場、弱い力の場)

@ 電磁場(線形)
・何に対して作用するのか? ・・・ 「電荷」をもった粒子
・何が伝達するのか?    ・・・ 光子(フォトン)

光子には、電荷が無いため、光子が新たな電磁場を作ることはない。
つまり、電荷Aと電荷Bとがあった場合、その合計の電荷Cは、
C=A+B
で求めることができる。
マクスウェルの電磁場方程式にも、電磁場ポテンシャルAについて、1次の項しかない。

A強い力の場(ヤンミルズ場・・・非線形)
・何に対して作用するのか? ・・・ 「色電荷」をもった粒子
・何が伝達するのか?    ・・・ グルーオン(8種類)

グルーオンが、色電荷を持つため、グルーオン自身が新たな強い力の場を作る。
つまり、色電荷Aと色電荷Bとがあった場合、その合計の色電荷Cは、単純な
C=A+B
にはならない。
ヤンミルズのゲージ場方程式にも、ゲージ場ポテンシャルAについて、2次や3次の項がある。

B弱い力の場(ヤンミルズ場・・・非線形)
・何に対して作用するのか? ・・・ 「弱電荷」をもった粒子
・何が伝達するのか?    ・・・ ウィークボゾン(3種類)

ウィークボゾンが、弱電荷を持つため、ウィークボゾン自身が新たな弱い力の場を作る。
つまり、弱電荷Aと弱電荷Bとがあった場合、その合計の弱電荷Cは、単純な
C=A+B
にはならない。
ヤンミルズのゲージ場方程式にも、ゲージ場ポテンシャルAについて、2次や3次の項がある。

2.重力場

@ニュートン理論の重力場(線形) ・・・ ニュートン重力場の源は、質量だけである。
したがって、重力場が、新たな重力場を作ることはないので、重力場AとBがあった場合、その合計の重力場Cは、
C=A+B
で求めることができる。
ニュートン重力理論の基本方程式は、スカラー・ポテンシャルφについてのポアソン方程式である。

A一般相対論的重力場(非線形) ・・・ 一般相対論的重力場の源は、運動量&エネルギーである。
したがって、重力場(運動量&エネルギー)が、新たな重力場(運動量&エネルギー)を作り出すことが、ありえる。
したがって、重力場が、新たな重力場を作ることがあるので、重力場AとBがあった場合、その合計の重力場Cは、単純な
C=A+B
で求めることができない。
数学的に、一般相対論的理論における基本量は、計量テンソルg[i][j]であるが、この計量テンソルについて、(一般相対論的理論の中で、最もシンプルな)アインシュタインの重力場方程式を展開すると、ヤンミルズのゲージ場方程式に比べても、非常に非線形度の強い複雑な方程式である。
http://homepage3.nifty.com/anoda/oldpage/space/mlab07/mlab07.htm

線形の場と、非線形の場とでは、このような違いがある。

3.相対論的理論

・4次元で考える必要がある。
・1つの方向に、100メッシュでも、100^4 = 1億メッシュ が必要。
さらに精度を上げ、1方向1000メッシュにすれば、1000^4 = 1兆メッシュ が必要になる。

4.相対論的量子論

さらに、相対論的量子論の場では、
・位置・時刻と運動量・エネルギー
など、非可換な物理量があるため、たとえば、位置・時刻と運動量・エネルギーの組ごとに、記憶領域を取る必要がある。

つまり、位置・時刻と運動量・エネルギーのペアだけでも、単純な相対論的理論の場合の、さらに2倍。

つまり、それぞれ、
2億メッシュ
2兆メッシュ
の記憶量が必要(これ以外にも、量子論で、非可換な物理量のペアは、いろいろとあるので、それ毎の記憶容量が必要)。

このようなことを考えれば、特に、一般相対論や量子ヤンミルズ理論(QCD,GWS)については、その計算が、たとえ、コンピュータを用いても、膨大で困難なのが、お分かりになるかな?

さらに、その一般相対論と量子ヤンミルズ理論に、+αを統合する「超ひも理論」やM理論における計算については、
・一般相対論以上の非線形理論
・従来の量子論以上に非可換(グラスマン数の計算なども必要)
・つまり、従来の理論とは比べものにならないほど、非常に複雑
・10次元や11次元の理論なので、極めて膨大な記憶容量が必要
ということで、少なくとも、従来の古典的コンピュータでの計算は、不可能に近いように思える。
「超ひも理論」やM理論の計算では、高性能な量子コンピュータでの計算が必要になるかも知れない。

  投稿者:ワイル - 2007/08/05(Sun) 11:08  No.2162 
>>非可換な物理量

古典力学や古典論における物理量(位置、時刻、運動量、エネルギーなど)は、基本的に普通の実数なので、その掛け算について
A×B=B×A
という、交換法則が成立しますので、「可換」といいます。

しかし、量子力学や量子論における物理量は、演算子(シュレディンガー流)あるいは行列(ハイゼンベルク流)で表現されるので、その掛け算について交換法則が、一般に成立しません。つまり、「非可換」です。

これは、量子力学において、交換子
[A,B] = A・B - B・A
を使って、
[A,B] = i・hbar ( hbar = h / 2・π : hはプランク定数)
としてあらわされます。
ここで、古典力学では、hbar -> 0 なので、
[A,B] = 0
となって、常に可換になります。

ヤンミルズ場では、場をつくる作用素α、βについて、非可換というわけです(量子力学・量子論における、それとは違いますが)。

さて、場の理論では、ヤンミルズ理論のゲージ場や、一般相対論の重力場では、「線形の重ね合わせ」が出来ない「非線形な場」というわけです。

それで、現在の量子ヤンミルズ理論や、(完成はしていないけど)量子重力理論では、
・非線形 ・・・ C=A+B が成立しない
・非可換 ・・・ A×B=B×A が成立しない
ということなのです。
このような理論の計算は、非常に面倒で、手計算では、ほぼ不可能でしょう。

現在の量子ヤンミルズ理論や、古典的な一般相対論の計算は、コンピュータ、それも最高速レベルのスーパー・コンピュータを利用しても(スーパー・コンピュータの演算性能は、最近のパソコンに比べても、数万倍以上です)、数週間から数ヶ月は、かかるようです(古典的な一般相対論の場合は、その非線型度や複雑さが、かなりのものであることが要因)。

一般相対論を量子化した量子重力理論が、将来できたとしても、その計算は、量質ともに、現在の一般相対論や量子ヤンミルズ理論に比べても、さらに膨大で複雑なものになるのは、目に見えるでしょう。

  投稿者:ワイル - 2007/08/05(Sun) 11:13  No.2163 
微分についても、通常の偏微分では、微分の順序を、
dxdy -> dydx
と変えても、その結果は一緒です。
つまり、
dxdy = dydx
です。
つまり、通常の偏微分は、「可換」です。

しかし、ゲージ理論(ワイル理論、ヤンミルズ理論)や重力理論(一般相対論、ブランス・ディッケ理論)で現れる共変微分では、「非可換」です。
つまり、
DxDy = DyDx
が、一般に成立しません。

ゲージ理論や重力理論では、このようなことがあるので、微分計算も面倒です。

微分の話があれば、積分の話。。。
積分の場合、量子力学や量子論では、普通の積分でなく、ファイマン流の「経路積分」というものになるわけです。

経路積分については、私も詳しくないので、たとえば、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%B5%8C%E8%B7%AF%E7%A9%8D%E5%88%86
などを読んでください。

ただ、簡単には、「経路積分」の計算は、普通じゃない積分計算であることは、間違いないでしょう(なにしろ、数学的には厳密に定義されている積分ではないらしい)。

また、古典力学、場の古典論(ゲージ理論、重力理論)、量子力学(非相対論的量子力学/相対論的量子力学)における計算は、つまりところ、微分方程式を解くことになりますが、場の量子論においては、古典力学・古典論・量子力学の微分方程式の元になるラグラジアンの積分(作用積分)を指数とする指数関数を含む、経路積分を行って、場の量Oの期待値<O>(粒子の散乱現象、寿命など)を求めることのようです。
http://www-het.ph.tsukuba.ac.jp/study/lattice05/lattice05.html

しかも、経路積分を行っている途中で、無限大の量が出てきて「発散」するらしいのですが、それを実験で得られた値に置き換える操作、つまり、「繰り込み」の操作が必要になるということで、かなり面倒な感じです(また、古典論では、ネーターの定理で保証されている「対称性による保存量の存在」が、量子論では保証されない「量子異常」という現象もある)。

どちらにせよ、量子ゲージ理論、量子重力理論の計算は、
・通常の足し算(線形的な重ね合わせ)、掛け算(可換)
・通常の微分、積分
のどちらも適用できない世界ということで、非常に膨大で複雑なものになる、というのは確かでしょう。

量子ゲージ理論と量子重力理論をあわせて、本当の「場の量子論」で、それが適用されるのは、素粒子論や宇宙論の世界というわけですが、そこでは、つまりは、人間の身近・古典的(古典力学、古典電磁気学など)な世界の現象でて適用できる「古典的な数学」が適用できない、ということで、新しい数学が必要、というわけです(幾何学についても、場の量子論では、古典的なゲージ理論や重力理論の世界で利用されていた古典的・可換な微分幾何学でない、非可換微分幾何学が作られているようです)。

  投稿者:ワイル - 2007/08/05(Sun) 14:19  No.2164 
EMANさんの日記にもあったけど、(数学的厳密性を考えないとして)ネーターの定理というのは、
「対称性が保証されば、それに対応する保存量が存在する」
ということだと思います。

そして、その「対称性」というのは、古典論では、相対性原理やゲージ原理に対する対称性だと思います。

まず、3次元理論では、ニュートンの運動方程式や、ニュートン重力場、静電場、静磁場で現れるポアソン方程式などは、ガリレオの相対性原理についての対称性(ガリレオ変換について共変性)があります。
そして、その対称性に対する保存量として、

・力(ニュートンの運動方程式)
・質量密度(ニュートン重力場)
・電荷密度(静電場)
・電流密度(静磁場)

が存在する、というわけです。

一方、4次元理論では、マクスウェル理論やヤンミルズ理論などのゲージ理論は、局所ゲージ変換に対する対称性、一般相対論は局所ポアンカレ変換に対する対称性(共変性)があります。

そして、それによって、

・マクスウェル理論 −> 電荷
・ヤンミルズ理論(QCD) −> 色電荷(カラー荷)
・ヤンミルズ理論(GWS) −> 弱ハイパー電荷
・一般相対論 −> 運動量・エネルギー

といった保存量が、これまた、存在します。

ネーターの定理は、相対性原理やゲージ原理に対する不変性=対称性が成り立つ場合に対して、それに対応する保存量が存在する、ということ、と解釈できます。

で、古典力学や場の古典論では、実際に、このネーターの定理が成立する、と言って良いでしょう。

しかし、量子論の世界では、このネーターの定理が破れる場合があると、いうわけで、それが「量子異常(アノンマリー)」ということのようです。

ところで、量子理論における、「繰り込み」も、「量子異常」も、非相対論的理論/相対論的理論に関係なく、ありうると思いますが、いかがでしょう? >> TOSHIさん

  投稿者:TOSHI - 2007/08/05(Sun) 23:41  No.2174 
 こんばんは。。TOSHIです。

 何気なく読んでいたらワイルさんが何かお呼びのようだったので出てきました。見過ごしていました。

>ところで、量子理論における、「繰り込み」も、「量子異常」も、非相対論的理論/相対論的理論に関係なく、ありうると思いますが、いかがでしょう? >> TOSHIさん

 「繰り込み」については相対論では伝播関数=2点グりーン関数の運動量表示は、偶数スピンでクラインゴルドンの逆=1/(p^2−m^2)で1つのループグラフで何本入るかは相互作用の形によります。

 積分はd^4p=4次元ですから2本なら分母も4次なので対数発散です。アナロジーで考えると非相対論だと伝播関数=2点グりーン関数は1/[E−p^2/(2m)]となり積分はd^3p=3次元ですね。

 電荷の2乗つまり α を計算する真空偏極グラフのループだと相対論では分母が2次発散しますがゲージ条件で対数発散にできます。非相対論での電子で同じループでは分母が4次分子が3次だから発散しませんね。

 そもそもマクスウェルの方程式は最初から相対論しかないので、非相対論では電荷つまり微細構造定数 α などを論じるには理論として不十分です。質量とエネルギーが等価ということから電磁質量∞とかの古典論での困難が出たので非相対論での散乱理論=S行列理論を構成してもその繰り込みまで考える余裕はなかったのですが、そもそもQEDは非相対論で意味があるかどうかも疑問です。

 量子異常もくりこみと関係がありまして確かにネーターの定理は量子論でのゲージ対称性による保存則ではWT恒等式(ワード高橋恒等式)になり、カイラル対称性も質量があると破れてWT恒等式が破れることと関係しています。

 ただ、D>4での次元正則化は一般にゲージ不変ですがDiracのγ行列でγ5カレント=カイラルカレントを含むときにはゲージ不変を保つのが不可能なために生じるのが量子異常で、別の藤川の理論ではやはりカイラルカレントでは経路積分のヤコビアンのおつりから量子異常が説明できます。

 つまり、カイラルカレントの入った相互作用をくりこむときのおつりとしてアノマリーが出るのでやはり非相対論では関係ないような気がします。

 この程度しかわかりません。

 ところで非線型の話はカラーを運ぶグルオンの話もそうですが、電気力の場合その源である電荷に働く力を媒介する光=電磁波が電荷という力の源を持たないから理論が線型なのに対して、質量あるいはエネルギーの源である粒子の間に働く重力を媒介する重力子=重力波が質量は0でも、それ自身また当然エネルギーを持っているので重力の源になるから、それだけで2次以上になる、という非線形性が自由重力場の量子化でさえ困難にしている元凶ですね。

                  TOSHI

  投稿者:ワイル - 2007/08/06(Mon) 10:45  No.2176 
ヤンミルズ理論が対称とする、強い力と弱い力は、原子核や素粒子といったスケールでのみ有効(強い力の到達距離は、10の−15m、弱い力の到達距離は、10の−18mとされる)なので、重力や電磁力と違い、私達の日常に関係なさそうだが、そうでもないようです。

強い力は、原子核の核子、つまり、陽子や中性子、現代的にはクォークを結びつける力です。
核分裂や核融合といった原子核反応は、この強い力が関わります。

弱い力は、中性子が陽子+電子+反電子ニュートリーノに変わる反応など、つまりベータ崩壊とよばれる放射性崩壊を引き起こす力で、これは、粒子の種類(フレバー)を変える作用があります。

太陽や恒星の内部の核反応では、強い力のほか、弱い力も関わっているとされていますし、弱い力が引き起こす放射性崩壊は、地球内部の熱(地熱)の原因にもなっているといわれます。

強い力や弱い力が存在しないと、太陽・恒星や地球などのエネルギーが存在しえないことになり、我々、生命も存在できないでしょう。




  投稿者:あもん - 2007/08/10(Fri) 00:05  No.2214 
>質量とエネルギーが等価ということから電磁質量∞とかの古典論での困難が出たので非相対論での散乱理論=S行列理論を構成してもその繰り込みまで考える余裕はなかったのですが、そもそもQEDは非相対論で意味があるかどうかも疑問です。

お久しぶりです。昔シュレーディンガー場にクーロン力(単純な逆2乗力)を入れた理論で遊んでいたことがあって、そのときわかったのは、少なくとも1ループに関しては発散は全て定数で、それらは電子の自己ポテンシャルに繰り込めるということです。結合定数や質量の繰り込みは必要なく、繰り込み点も必要ないことが判明します。例えばメラー散乱の断面積の非相対論極限をQEDから計算するのは骨が折れますが、この非相対論的理論からは暗算に近い計算でそれを求めることができます。かつて FPHYS で公開したかどうか、ちょっとよく覚えていないのですが。

カイラル性のあり得ない非相対論的場の理論からは、アノマリはあり得ないというのは、私もその通りだと思います。

  投稿者:TOSHI - 2007/08/10(Fri) 04:30  No.2215 
 お久しぶりです。あもんさん。。。

 非相対論については繰り込みで遊んだことがなかったので先のようなコメントになりましたが、あもんさんが計算してそうなったのならそうなんでしょうね。カイラル性:アノマリーについては非相対論ではないでしょうね。また、ご活躍期待しています。

                      TOSHI