EMANの物理学 過去ログ No.2144 〜

 ● 量子ヤン-ミルズ理論について

  投稿者:凡人 - 2007/08/03(Fri) 00:21  No.2144 
murakさんが、以前、
>「ナビエ・ストークスの式が解析的に解ける」かどうかは我々が持ち合わせている数学というツール(の計算ツールとして)の問題であって、
と述べられていたため、この件のおさらいのために、『数学21世紀の7大難問』(中村亨、ブルーバックス)を読み返していたところ、P134に、ワイルさんのお好きそうな、
>勝手なコンパクトで単純なゲージ群Gに対して、R^4での量子ヤン-ミルズ理論が存在し、質量ギャップが存在する事を示せるか?
という、「ミレニアム問題」があった事を思い出しました。
そこで、またまた以下の記事を思い出したのですが、
http://www.kek.jp/ja/news/press/2007/supercomputer2.html
上記内容を信頼するならば、この「ミレニアム問題」は、数学的には、一般的、且つ完全には解決していないけれども、量子色力学においては、格子QCDとスーパーコンピュータによる数値実験により、厳密に解決されたといって良いのではないかと思ったのですが、この考えは正しいのでしょうか?
クレイ・リサーチ社の「ミレニアム問題」公式サイトのURIは、以下の通りです。
http://www.claymath.org/millennium/
「ミレニアム問題」を初めてお知りになる方のために、念のために付け加えますが、「ポアンカレ予想」の問題については、グリゴリー・ペレルマンが解決したようなので、この問題に挑戦しても、賞金は貰えないと思います。

  投稿者:ワイル - 2007/08/03(Fri) 19:12  No.2145 
こんばんは

>勝手なコンパクトで単純なゲージ群Gに対して、R^4での量子ヤン-ミルズ理論が存在し、質量ギャップが存在する事を示せるか?

『数学21世紀の7大難問』(中村亨、ブルーバックス)のP135の説明からすれば、この問題は、簡単に言えば、「4次元ミンコフスキー時空の中で、量子ヤンミルズ理論が、ちゃんと物理的意味があるかどうか?」ということを証明せよ、ということのようです(つまり、量子ヤンミルズ理論の理論的整合性を問うている)。

量子ヤンミルズ理論とは、量子色力学(QCD)およびGWS電弱理論のことです。


>>http://www.kek.jp/ja/news/press/2007/supercomputer2.html
>>上記内容を信頼するならば、この「ミレニアム問題」は、数学的には、一般的、且つ完全には解決していないけれども、量子色力学においては、格子QCDとスーパーコンピュータによる数値実験により、

こちらの問題は、現象的には、理論的には、量子色力学で記述できるが、現実世界の現象との検証を行うための計算が、非常に膨大で難しく、最近のスーパーコンピュータの計算能力によって可能になり、実現できた、ということのように思えます。
(こちらは、量子色力学という理論を、実際の現象に適用するための計算の方法と実現性というわけです)

格子QCDとは、量子色力学の計算法のことです。

量子電磁力学やGWS電弱理論などの計算は、ファイマン則による経路積分を、摂動法によって行うようですが(それをそのまま計算する発散してしまうので、実験値の置き換えによる繰り込みの計算が必要になるようです)、量子色力学では、摂動法による計算では、いろいろと問題があって、最近は、格子QCDによる計算法が有力になりつつあるようです。

ただ、どちらにせよ、量子電磁力学、GWS電弱理論、量子色力学といった「場の量子論」の計算は、計算量が膨大のようです(特に、GWS電弱理論や量子色力学は、基礎になっているヤンミルズ理論が非線形理論であるため、計算量の他に、厄介な問題もあるようです)。

古典論のレベルでも、一般相対論のアインシュタイン重力場方程式も、方程式自体が、非線形性の強い方程式のため、解析的には一般的に解けないし、スーパーコンピュータなどを使う場合でも、膨大な計算量と厄介な問題が立ちはだかっているようです(流体力学のナビエ・ストークス方程式も、非線形方程式なので、解くのが厄介のようです)。


こうした理論では、理論は出来ていても、計算量が膨大なのと、非線形という困難な問題があって、コンピュータの性能向上によって、現実の現象への適用が可能になってきた分野といえましょう。

よって、

>>厳密に解決されたといって良いのではないかと思ったのですが、この考えは正しいのでしょうか?

上述の2つの問題は、全くタイプが違う問題のようです。

  投稿者:ワイル - 2007/08/03(Fri) 19:30  No.2146 
>>量子ヤンミルズ理論とは、量子色力学(QCD)およびGWS電弱理論のことです。

量子ヤンミルズ理論といえる、量子色力学(QCD)や、GWS電弱理論が必要になるのは、強い力や弱い力の効果が必要になってくる、原子核や素粒子(レプトン、クォーク)のスケールくらいですね。

それより大きい、分子や原子のスケールでは、電磁気効果だけを考えればよいので、マクスウェル&ローレンツの古典電磁力学と量子力学をもとにした、量子電磁力学(QED)で、十分のようです。

そして、マクロでの電磁現象においては、マクスウェル&ローレンツの古典電磁力学で十分です(さらに、私達の日常身近な電磁現象では、ほとんどさらに簡便なクーロンやガウス、アンペールなどの静電磁力学で十分でしょう)。

一方、重力についても、私達の日常での現象とか、地球や太陽系内の天体の現象であれば、(水星の近日点移動など)例外を除けば、ほとんど、線形のニュートン力学で十分であり、非線形な一般相対論が必要になるのは、中性子星やブラックホールのような極限的な強い重力場での現象というわけです。

地球、木星、太陽などの天体の周囲は、重力場であるとともに、電磁場にもなっています。こうした天体の電磁場であれば、線形のマクスウェル&ローレンツの古典電磁力学で十分でしょう。
しかし、天体の電磁場でも、中性子星やブラックホールなどの周囲の電磁場では、非線形のヤンミルズ理論が必要のようです。

つまり、非線形なヤンミルズ理論や一般相対論が必要になるのは、原子核や素粒子のような超ミクロの世界とか、中性子星やブラックホールのような極限の世界になり、私達の日常とか、太陽系内の天体、分子・原子といったレベルでは、ニュートン力学、古典電磁力学や、それらを基にした、量子力学、量子電磁力学といった線形理論で十分なことが多い、というわけです。

だから、ヤンミルズ理論や一般相対論といった非線形理論は、一般的になれないですね。

しかし、素粒子論や宇宙論では、ヤンミルズ理論や(ブランス・ディッケ理論なども含む広い意味での)一般相対論が不可欠になります。

  投稿者:ワイル - 2007/08/03(Fri) 20:00  No.2147 
>>しかし、天体の電磁場でも、中性子星やブラックホールなどの周囲の電磁場では、非線形のヤンミルズ理論が必要のようです。

中性子星やブラックホールのような天体現象を扱う扱う場合に、一般相対論による重力場と、ヤンミルズ理論による電磁場を合わせて考え、その両者の相互作用を考えたモデルのことを、天体物理学者などは「色付き」モデルといっているそうです(中性子星は、その名の通り、宇宙に浮かぶ巨大な中性子というわけですから。中性子星より高密度で、ブラックホールにはならない天体として、クォーク星というのもあるらしい、という話です。どっちにしろ、これらの天体の周囲の電磁場は、ミクロの世界の強い力の場や弱い力の場のような非線形な電磁場でしょう)。

一方、地球や木星くらいなら、ニュートン理論による重力場と、マクスウェル&ローレンツ理論による電磁場との組み合わせで十分でしょう。

  投稿者:ワイル - 2007/08/04(Sat) 09:57  No.2149 
>>中性子星やブラックホールのような天体現象を扱う扱う場合に、一般相対論による重力場と、ヤンミルズ理論による電磁場を合わせて考え、その両者の相互作用を考えたモデルのことを、天体物理学者などは「色付き」モデルといっているそうです

いわゆる、5次元版一般相対論ともいえる、カルザー・クライン型理論が、天体物理学や宇宙論の分野で、使われているというわけです。

オリジナルのカルザー・クライン理論は、1920年前後に一般相対論+マクスウェル理論の5次元理論として創られましたが、中性子星やブラックホールの「色つき」モデルが基礎にしているのは、、それを、一般相対論+ヤンミルズ理論の5次元理論にした、「拡張カルザー・クライン理論」とでもいう理論ということです(太陽や通常の恒星などには、一般相対論+マクスウェル理論のオリジナルのカルザー・クライン理論が適用できそう)。

カルザー・クライン型理論が、実際の天体現象の解析に適用されているというわけです。

現代は、実際の現象への応用ということで、ミクロの現象も、天体・宇宙の現象も、
・重力理論(ニュートン理論/アインシュタイン理論/ブランス・ディッケ理論)
・ゲージ理論(マクスウェル理論/ヤンミルズ理論)
・量子力学
といった3本の物理理論と、高速なコンピュータを道具として使うことで、具体的なシミュレーションという形で扱うことができる時代、というわけで、その意味で、ミクロの科学も、天体・宇宙の科学も、より、面白い時代に成ってきていると思います(現在では、分子・原子の世界は、量子力学や相対論的量子力学を多電子系に適用した量子化学で扱うのがメイン)。。

そうしたものは、100年前とかであれば、単なる空想のような形でしか扱えなかったわけで。

そういうことが、これからの物理や化学の面白さかも知れませんね。

そして、その先は、やはり、物理や化学の理論を使って、生命現象を、具体的なシミュレーションで考えるようになるのでしょう。
さらに、それによって、ミクロ世界や宇宙と生命とを、統合して考えられるようにもなるのでしょう。

  投稿者:凡人 - 2007/08/04(Sat) 15:17  No.2150 
ワイルさん
念のため聞きして申し訳ありませんが、
>勝手なコンパクトで単純なゲージ群Gに対して、R^4での量子ヤン-ミルズ理論が存在し、質量ギャップが存在する事を示せるか?
という、「ミレニアム問題」は、
http://www.kek.jp/ja/news/press/2007/supercomputer2.html
上記内容を信頼するならば、数学的には、一般的、且つ完全には解決していないけれども、量子色力学においては、格子QCDとスーパーコンピュータによる数値実験により、厳密に解決されたといって良いのではないかと思ったのですが、この考えは正しいということでよろしいのでしょうか?
また、新たに質問して申し訳ありませんが、GWS理論も、量子ヤン-ミルズ理論の一種なのでしょうか?

  投稿者:ワイル - 2007/08/04(Sat) 17:12  No.2151 
>>上記内容を信頼するならば、数学的には、一般的、且つ完全には解決していないけれども、量子色力学においては、格子QCDとスーパーコンピュータによる数値実験により、厳密に解決されたといって良いのではないかと思ったのですが、この考えは正しいということでよろしいのでしょうか?

ずばり言って、正しくない、と思います。
なぜなら、QCDに限らず、物理理論が、実際の現象に対する検証や解析に実用的に利用できることと、その理論が、数学的・物理的にちゃんとした理論であることを証明することとは関係ならないからです。

ITの世界でも、実用的に使えているプログラムが、数学的・論理的に正しいプログラムであること証明することが難しいことと、似ています。

>>また、新たに質問して申し訳ありませんが、GWS理論も、量子ヤン-ミルズ理論の一種なのでしょうか?

GWS理論も、QCDも、量子ヤンミルズ理論の一種です。
正確には、
QCD(量子色力学)・・・ SU(3)の量子ゲージ理論
GWS理論  ・・・ SU(2)×U(1)の量子ゲージ理論
です。

ほかに、以下も量子ヤンミルズ理論です。
標準理論    ・・・ SU(3)×SU(2)×U(1)の量子ゲージ理論
GUT(大統一理論)の初期のもの ・・・ SU(5)の量子ゲージ理論
とされています。

あと、
QED(量子電磁力学) ・・・ U(1)の量子ゲージ理論=量子マクスウェル理論
です。

  投稿者:TOSHI - 2007/08/04(Sat) 17:13  No.2152 
ども凡人さん、ワイルさん、こんにちはTOSHIです。

 ミレニアム問題の解説本見ましたが、そもそも何がこの問題なのかが、私にはよくわかりませんでした。

 ウィルソンの演算子積展開(OPE)の話かなと思いましたが、これに関してはLSZの公式のZimmermannの摂動論の枠内でこれを証明した理論がありますが、いずれにしろ質量ギャップがあればx〜yでの局所演算子積の真空期待値が所定の形になるという理論的根拠がよくわかりません。

 いずれにしろ、去年かことしノーベル賞をもらった「漸近的自由性」と同じく「くりこみ群」の話でちょっとむずかしいのではないかと思います。

 「漸近的自由性」についてもくり込み群方程式に現われる「βなる記号で表現される関数=β関数」が非可換ゲージ場との結合定数gの関数になり、漸近自由になる条件は、「β関数」のg^2の係数がカラーによるユニタリ群の2つのカシミアオペレータの1次関数になり、この群の次元数の関係から、カラーが3種類のときにフレーバーが16種類以内なら漸近自由になる、ということがわかるので非可換ゲージが存在すれば、理論は漸近的自由になることが証明できますが、これと似たメカニズムがOPE(operator product expansion)とmass-gapの間にもあるのかもしれません。

 計算的部分では「ヒッグス機構」ではクォークの質量などは過小評価で説明できないのは確かにその通りですが「クォーク凝縮」なるメカニズムでは質量生成を説明できて、これを「計算QCD=格子力学」で数値的に計算して示したという話は聞いていますがこの話が質量ギャップの話なのかなあ?よくわかりません。

 ひまがあったら調べてみます。

                       TOSHI

  投稿者:ワイル - 2007/08/04(Sat) 17:22  No.2153 
>勝手なコンパクトで単純なゲージ群Gに対して、R^4での量子ヤン-ミルズ理論が存在し、質量ギャップが存在する事を示せるか?

この問題について、あちらこちら調べると、なんかトポロジー的な数学的な問題のように思えてきました。
質量ギャップがなんなのか、ということはありますが。。。

ただ、どちらにせよ、この問題は、格子QCDとスーパーコンピュータによる数値実験の話とは、ほとんど関係がないということは確かでしょう。

  投稿者:凡人 - 2007/08/04(Sat) 18:22  No.2155 
TOSHIさんへ
説明を漏らして申し訳ありませんでしたが、『数学21世紀の7大難問』(中村亨、ブルーバックス)のP151に、
>勝手なコンパクトで単純なゲージ群Gに対して、R^4での量子ヤン-ミルズ理論が存在し、質量ギャップが存在する事を示せるか?
の「質量ギャップが存在」する事の意味は、「QCDでは、グルーオンと呼ばれる、カラー力を媒介する粒子(電磁場の場合なら光子)がゼロでない質量を持つ」事とされていたようなので、
http://www.kek.jp/ja/news/press/2007/supercomputer2.html
と関連があるのではないかと思い、この掲示板で質問をさせていただいている次第です。

ワイルさんへ
>QED(量子電磁力学) ・・・ U(1)の量子ゲージ理論=量子マクスウェル理論
も、本当に量子ヤン-ミルズ理論の一種なのでしょうか?

  投稿者:ワイル - 2007/08/04(Sat) 19:54  No.2156 
>>本当に量子ヤン-ミルズ理論の一種なのでしょうか?

マクスウェル理論も、ヤンミルズ理論の特別な場合の一種ということはできます。

  投稿者:凡人 - 2007/08/04(Sat) 20:50  No.2157 
ワイルさん TOSHIさん
参考までに申し上げますが、本「ミレニアム問題」については、以下の書籍の「第10章 ミレニアム賞問題」に、詳細が記されているようです。
http://www.saiensu.co.jp/?page=book_details&ISBN=ISBNsgc-45

ワイルさん
>マクスウェル理論も、ヤンミルズ理論の特別な場合の一種ということはできます。
という事は出来る(かもしれない)という事をお教え頂き、大変有難うございました。

追伸
ヤン-ミルズ理論について、いろいろネットを調べていたら、良い資料を見つけました。
http://osksn2.hep.sci.osaka-u.ac.jp/~naga/works/wyp05final-050204.pdf

  投稿者:TOSHI - 2007/08/05(Sun) 07:06  No.2158 
 こんばんは。。TOSHIです。
 
 長々と書いて投稿する前に確認して文字を直そうと思って、キャンセルでなく前画面に戻るとしたら3時間の労作は全部消えました。また寝ます。

 エッセンスだけもう一度書きます。

 私の参考書は森北出版の「数学7つの未解決問題」というもので解説していた「松木」というのは問題の直訳を載せてるけど、関連理論の解説ばかりで何かよくわかりません。

 それで凡人さん紹介の本を見た覚えがあったので探したらありました。なんと副題がミレニアム問題と同じです。ということは買ったときは別の興味で買ったのでしょう。

 で10章を読むとやはりよくわからん。

 そこで8章を読んだらやっと質量ギャップの意味がわかった。つまり公理論のWightman関数として場の演算子の2点グリーン関数=「場の演算子積の真空期待値」=「自由粒子でないつまり相互作用をしている粒子の伝播関数つまりプロパゲータ」は質量が0から無限大までの全ての自由粒子伝播関数に展開係数を掛けたものでスペクトル展開できるのは当たり前ですが、このうち質量が0の部分は消えます。

 そしてその次の質量まではふつう連続につながってなくてギャップがあって正の最小質量mがあり、結局2点x,yがx〜yのときexp(−m|x−y|)となるという話ですね。

 そして改めてミレニアムをよく読むと、この質量ギャップが存在するかどうかというのは問題の後半で、前半は後半とは独立した別の問題でした。ただ後半は前半の成立が前提です。

 そもそも問題を解く以前にこんなに読者を混乱させて問題の意味を理解しにくい抽象的な出題はなんとかならんもんでしょうか。

 前半はミンコフスキー空間を4次元ユークリッド空間にしたらヤンミルズ理論は存在するかという本当に抽象的なものでこんな言い方だと普通の物理屋には理解不可能、数理物理屋ならわかるかもしれない。。

 まあ、Wightmanとかは日本の新井朝雄などと同じく公理論的場理論、今は構成的場理論などやってる数理物理屋ですからミンコフスキー空間を4次元ユークリッド空間にするウィック回転などにはとても神経質です。

 そして矛盾のない場の理論は4次元では自由場の理論以外は存在しないことなどを証明したりしていますね。だったら物理屋が摂動論など相互作用の入った場理論を計算しているのはどう解釈するのでしょうか?

 まあ、くりこみと称して何らかの正則化をしなければ有限で発散しない結果を得られない理論なので、くりこみの結果でいくら精密な値が得られても、確かに理論に矛盾がないとは言い切れませんが。

 ところがミンコフスキーが非コンパクトでユークリッドがコンパクトだから似て非なるものなのにユークリッド化の方は物理屋も公理論屋も割りと無神経に使っています。

 虚数×時間itを実数の温度変数β=1/(kT)に変えると量子力学のグリーン関数=プロパゲータは松原の温度グリーン関数になって量子力学をユークリッド化すると統計力学になることはよく知られています。

 新井朝雄の高い本「場の量子論と統計力学」も「統計力学」の本だと思ったら大間違いで公理論的場理論の本です。まあ公理論もユークリッドのほうがやりやすいのでしょう。

 でまあ、連続時空でくり込みを考え次元正則化などもユークリッド化してやりますが、格子時空もユークリッド化したほうが便利です。

 そもそも格子にすればカットオフ=切断波長があります。つまりとれる波長には格子間隔程度より大きくなければ不可能という下限があります。ということは波長の逆数=振動数=エネルギーには上限があります。

 これで連続時空では全部紫外発散していたファインマン積分は積分の上限が無限大ではないので発散せず、くり込み無しで有限となるので正則化の必要がなくなります。

 こいうわけでフーリエ積分がフーリエ級数になるだけで、あるいは場の理論のフォック空間であるヒルベルト空間が量子力学のように可分になるだけで、発散あるいはくりこみの問題は解消するので今の格子理論とは別の動機でうん十年前、私も格子をやったのですが、そのときはデカルト格子は一様だが等方性を破る、極座標差分では等方的だが一様性を破るので対称性を破らずに離散化するには「時空の量子化(第三量子化)」しかないか、でもこれは「微視的因果律」を破るとか悩んだこともありました。

 現在の格子理論でも時空の対称性は破りますが、これはあとで格子間隔を 0 にして極限をとると対称性は回復されるので問題はゲージ対称性のような計算に必要なものを差分化した状態で保存できるかという問題です。

 幸いウィルソンによる「格子ゲージ理論」は時空の対称性は保持できないけどゲージ対称性は格子にしても多少の工夫で保持できる理論です。そこで極限をとる順序を従来の順序と逆転して理論が成立すれば確かに正則化の問題、「クォーク閉じ込め」さらに後半の「質量ギャップ」も、ユークリッド化して統計力学にすれば「モンテカルロシミュレーション」=「私も冷却塔の飛散水滴の計算で使ったけど要するに乱数というか試行錯誤というか簡単なもんです。」ですべて計算可能らしいので成功すればすべて解決してめでたしめでたし、ということらしいですね。

 で凡人さん紹介のKEKの記事を読んだらちょっと違いました。そんな大きなテーマではなく「クォーク凝縮」などの根拠を与える「カイラル対称性の自発的な破れ」が起こることを格子QCDの計算で証明したという記事でした。

 なので凡人さんの最初の質問でミレニアムは既にほぼ解決されたのかというのがこの記事のことであれば答はNOだと思います。

 もちろん、上記の格子のアプローチで大きいテーマの計算に成功すればミレニアムのヤン・ミルズのみならず、超弦理論を待つこともなく格子が場の理論を救うことも可能でしょう。

 もっとも重力の問題は無理です。 TOSHI

  投稿者:ワイル - 2007/08/05(Sun) 10:53  No.2161 
凡人さん、こんにちは

>>参考までに申し上げますが、本「ミレニアム問題」については、以下の書籍の「第10章 ミレニアム賞問題」に、詳細が記されているようです。

詳しい話は、TOSHIさんの解説を読んでもらうとして、この問題に限らず、「ミレニアム問題」では、解ければ良いというものでなく、その論文なり理論なりが、まわりから、どの程度支持されるものかも、審査の対象とのことで、そのための審査には、2年くらいかかるそうです(それまで、賞金も出ない)。

ましてや、スーパー・コンピュータの数値解析実験で、うまくいったから、解けたというのは、審査の対象にならないと思って良さそうです。

理論の実験・検証(現在では、コンピュータによる数値実験やシミュレーションも含む)や応用を考えている人たちは、あまり厳密な数学的な証明みたいなのは、あまり考えない人が多いと思いますが、それでは、ミレニアム問題の審査の対象になるような論文は作れないと思います。

>マクスウェル理論も、ヤンミルズ理論の特別な場合の一種ということはできます。

実際は、マクスウェル理論には、特殊相対性原理(ローレンツ変換に対する不変性)とゲージ原理(ゲージ変換に対する不変性)が隠れていたのですが、1916年の一般相対性理論の発表後、ヘルマン・ワイルが特殊相対性原理とゲージ原理を基礎として、マクスウェル理論を再構成したのが、「アーベル・ゲージ理論」もしくは、ワイルのゲージ理論というものです(数学的に、マクスウェル理論と、まったく同等なのですが)。

それを、さらに一般的な場合に拡張して作られたのが、ヤンミルズのゲージ理論、もしくは、非アーベル・ゲージ理論とよばれるものなのです。

ゲージ理論というのは、局所的にゲージ変換
http://homepage2.nifty.com/eman/electromag/gauge.html
に対して物理法則が形を変えないことを要求する原理(ゲージ原理)に基づく理論のことです(さらに、大域的にはローレンツ変換、あるいは、それに並行移動を加えたポアンカレ変換に対して物理法則が形を変えないことも要求しています)。

マクスウェル理論あるいは、ワイル理論においは、線形的な重ね合わせ、つまり、場の量Aと場の量Bがあった場合、その合計の場の量Cは、
C=A+B
という、単純というか線形的な重ねで求めることができます。

マクスウェル理論あるいは、ワイル理論では、その場の量をつくるための作用素が、絶対値が1である普通の複素数を基本としたもので表現されます。

場を作る作用素が普通の複素数で表されるということは、2つの作用素をα、βがあったとすれば、その掛け算について、
α×β = β×α
という、交換法則が成立します。
この意味で、マクスウェル電磁場は、「アーベル(可換)な場」といいます。

一方、ヤンミルズ理論は、ワイル理論を、そのような単純・線形的な重ね合わせが成立しない場合にも適用できるように拡張して出来たものです。
ヤンミルズ理論では、場の量を作る作用素が、普通の複素数でなく、複素数の行列(正確には、行列の固有値が1で、行列式の値が1となる、特殊ユニタリ行列)で表現されます。
そのため、ヤンミルズ理論の場の作用素は、行列なので、その作用素α、βの掛け算について、一般に交換法則が成立しません。

そのために、ヤンミルズ理論が対象とする場は、「非アーベル(非可換)な場」といいます。
この「非アーベルな場」のことを、ヤンミルズ場といっています。
このヤンミルズ場では、場の量Aと場の量Bの合計の場の量Cを求めるのに、
C=A+B
という、単純な線型的な重ね合わせが適用できないことが特徴です。

弱い力の場や強い力の場は、このようなヤンミルズ場の例です。
従って、弱い力の場や強い力の場の現象を扱うには、ヤンミルズ理論が必要なのです。

逆に、ヤンミルズ理論は、その特殊な場合(場の作用素が可換である場合)に、ワイル理論(つまり、マクスウェル理論)を含むものとして作られています。

ワイル理論(マクスウェル理論)と、ヤンミルズ理論との関係は、ニュートン理論や特殊相対論と一般相対論との関係にも似ていると言って良いでしょう。

  投稿者:ワイル - 2007/08/05(Sun) 18:39  No.2167 
>>その場の量をつくるための作用素が

この作用素は、ゲージ理論では、粒子を表すスピノル(正確には、ディラックの相対論的波動方程式を満たすディラック・スピノル)に対して作用するもの、と考えます。

電磁場の作用素は、単一のスピノル(電荷を表す)に対して作用すると考えます。

しかし、ヤンミルズ作用素は、複数個のスピノルから成る組に対して作用すると考えます(弱い力の場の作用素は、弱電荷を表す2個のスピノルから成る組に対して、強い力の場の作用素は、色電荷を表す3個のスピノルから成る組に対して、それぞれ作用すると考える)。

この作用素は、物理的には、光子、ウィークボゾン、グルーオンといったゲージ粒子に対応します。

なお、一般相対論などの重力理論における重力場は、時空を表す計量テンソルに対して作用するものと考えられます。

  投稿者:ワイル - 2007/08/05(Sun) 18:48  No.2168 
ちょっと訂正。

>>ヤンミルズ作用素は -> ヤンミルズ場の作用素は

  投稿者:TOSHI - 2007/08/05(Sun) 20:42  No.2169 
 こんばんは。TOSHIです。

 夜と昼が逆転していて寝て起きたら、消えた内容で書いてないことをいくらか思い出しました。

 それはヤン・ミルズのようなゲージ理論でのゲージオン(ゲージ理論というのは局所対称性つまり第2種の対称性ですがそのもとになる第1種の大局的対称性の群に基づく力場を媒介するボソンのことです)の質量の話です。これは可換な電磁場U(1)では光子、力場を与える群が非可換なカラーSU(3)ならグルオン(ニカワ粒子)ですが、とにかく質量が 0 でなければゲージをどのようにとってもいいというゲージ対称性の自由度がありません。つまりいわゆるゲージ不変な理論になりません。

 したがって、電弱のSU(2)×U(1)やカラー対称性つまりヤン・ミルズをカラーSU(3)に適用したQCDで今問題にされているカイラル対称性についても、それらのゲージ対称性が自発的に破れる以前には全てのゲージオンの質量は 0 です。電弱ではウィークボゾン、QCDではカラーグルオンなどのゲージオンは対称性があるうちは質量が 0 ですが、それが破れた結果として、その破れ具合に応じてゲージオンのいくつかは質量を獲得するということが普通は「ヒッグス機構」というメカニズムで説明されています。

 質量を持った後のベクトル粒子は普通はProca場と呼ばれ、それをUμとするとき、相互作用カレントJμのない自由場ならばクライン・ゴルドン方程式(□−m^2)U=0を満足します。これはm=0ならUμではなくAμと書いて□A=0 と書くことができます。

 そして、いわゆるゲージ条件のようなものとしては自動的に∂μUμ=0を満足しますから、光でいえば∂μAμ=0 =「ローレンツゲージ」に固定されていることになり、質量mを持ったとたんに、ゲージ選択が自由であり、ゲージ変換の下で理論は不変であるというゲージの自由度はなくなります。その代わりに光子のNL場(中西-Lautrap場)や非可換ゲージでのFPゴーストなどの補助場によるゲージ固定は不要になって理論としては単純になります。

 そして先の2点グリーン関数の質量スペクトルによる展開において可換ゲージ(電磁場U(1))では質量ギャップがないことが必要条件でした。つまり 0 の次の最小質量mもまた 0 でなければスペクトル展開の式自身が矛盾するということになります。これは昔光子の裸の質量は 0 ですが繰り込んだ後も正確に 0 でなければならない話としてQEDでは結構有名な話です。

 しかし、同じヤンミルズ場でもたとえばQCDのような非可換ゲージの場合、自由でない粒子の2点グリーン関数を質量スペクトルで展開したときには自由粒子の2点グリーン関数だけでは展開できず3点以上の自由粒子グリーン関数を含むのでQEDのように質量ギャップがあってはいけない、という結論にはなりません。

 これとグルオンが質量を持ったままゲージ不変な理論というのが必要であり、2次元空間ではこれは可能ですが4次元では不可能という話などが例の第8章に書かれているのですが、こうした有質量ゲージ不変性の必要性の理由や、それと質量ギャップの存在との間にどんな関連があるのかは私の現状の知識レベルでは、把握できませんでした。

              TOSHI

  投稿者:ワイル - 2007/08/05(Sun) 20:58  No.2170 
>>その場の量をつくるための作用素が

電磁場やヤンミルズ場での作用素は、それぞれの場におけるポテンシャルで、それは4次元におけるベクトルで表現されます。
それぞれ、電磁ポテンシャル、あるいは、ゲージ場ポテンシャルといっています。

こうしたベクトル・ポテンシャルの基になるものを、物理では、生成子、数学では、基底、といっています。

電磁場では、それは絶対値1の複素数ですが、弱い力の場では、パウリ行列とよばれる2次元の3種類の複素行列、強い力の場では、ゲルマン行列とよばれる3次元の8種類の複素行列です。

従って、このベクトル・ポテンシャルも、電磁場では1種類ですが、弱い力の場では3種類、強い力の場では8種類、あります。

重力理論では、時空を表す計量テンソル自身が、ポテンシャルになります。
それを量子化すると、スピン2の重力子というゲージ粒子が現れるとのことです。

質量の起源とされるヒッグス粒子は、広瀬立成氏の解説書では、「真空粒子」とされます。

現代における、「真」の素粒子は、

真空粒子 ・・・ ヒッグス粒子(スピンは0)
物質粒子 ・・・ 6種類のレプトン、6種類のクォーク(スピンは1/2)
ゲージ粒子 ・・・ 光子、3種類のウィークボゾン、8種類のグルーオン(以上のスピンは1)、重力子(スピンは2)

とされています。

  投稿者:凡人 - 2007/08/05(Sun) 21:31  No.2171 
TOSHIさん
体調が万全でない中、ご足労をおかけして大変申し訳ありません。
また、TOSHIさんが記されている内容について、雰囲気しか理解出来なくて申し訳ありません。

>>勝手なコンパクトで単純なゲージ群Gに対して、R^4での量子ヤン-ミルズ理論が存在し、質量ギャップが存在する事を示せるか?
>の「質量ギャップが存在」する事の意味は、「QCDでは、グルーオンと呼ばれる、カラー力を媒介する粒子(電磁場の場合なら光子)がゼロでない質量を持つ」事とされていたようなので、
というのは、『数学21世紀の7大難問』(中村亨、ブルーバックス)のP152を読むと、「公理」(ただし、数理物理学的な)を追加する事により説明しても良いようなので、「カイラル対称性」という「公理(?)」を追加する事により、グルーオンの質量を説明しても、問題を解いた事になるようです。
どうやら、この「ミレニアム問題」は、他の「ミレニアム問題」と違って、純粋数学の問題に還元出来る問題ではなく、どちらかといえば、量子物理学の問題であるように、私には思えてきました。

そういうわけで、コンピュータシュミレーションでグルーオンの質量やハドロンの質量を求めたとしても、この「ミレニアム問題」を解決した事にはならないのだと思いました。
また、逆にコンピュータシュミレーションでグルーオンの質量やハドロンの質量を求める事が出来るようになった(?)にもかかわらず、万々が一にも、この問題が数学的に厳密に解けない事が証明されでもしたら、大変なジレンマに陥るような気がしてきました。
だから、この「ミレニアム問題」は、物理学者や数学者の方に早く解決してもらわないと、枕を高くして休む事が出来ないと勝手に思っています。

>現在の格子理論でも時空の対称性は破りますが、これはあとで格子間隔を 0 にして極限をとると対称性は回復されるので問題はゲージ対称性のような計算に必要なものを差分化した状態で保存できるかという問題です。
これは、時空が連続であるか否かの問題に関わる問題なのでしょうか?

>長々と書いて投稿する前に確認して文字を直そうと思って、キャンセルでなく前画面に戻るとしたら3時間の労作は全部消えました。
私は、作成した文章を大量に消失させないよう、QTClipというツールとTeraPad、TeraPadで作成した文章をクリップボードに転送する自作ツールを使って、時々文章をクリップボードを経由してセーブしています。
TOSHIさんも、この方法つきまして、ご参考にしていただければと思います。