EMANの物理学 過去ログ No.1957 〜

 ● 揚力

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/15(Sun) 09:21  No.1957 
 こんにちは冨士です。

 以下の記述は間違っていると思うので、検討してみて下さい。

 力学 -> コラム -> 空中浮揚に要するエネルギー
 「ヘリコプターは、、、空気を下に放り投げた反動で浮いていられるのである。」

理由
 ヘリコプターが飛ぶための力はローターの「揚力」によって発生していて、原理的には飛行機の翼と同じです。そして揚力の本質は翼両面間の「気圧差」であって、「反動(反作用)」ではありません。

 気圧差で浮くというと「浮力」を連想しますが、飛行船は正にこの浮力だけで浮いています。飛行船の密度は周囲の空気より小さくなっていて、これにより静止していても飛行船を支えるのに十分な浮力が発生します。

 これに対して、飛行機やヘリコプターの密度は周囲の空気より大きく、浮力では機体を支えることができません。そこで、翼両面間の気圧差が大きくなるような「特殊な条件」を作り出し、機体を支えています。

 この特殊な条件とは、「翼の上面を流れる空気の流速が、翼の下面を流れる流速より大きくなる」というものです。この条件を効率よく作り出すために考えられた構造が「翼」です。そして、翼は空気の中を前方に移動することでこの条件を達成します。

 翼の上面を流れる空気の流速が、翼の下面を流れる流速より大きくなると、ベルヌーイの法則により、翼の上面を押す気圧が、下面を押す気圧より小さくなります。これが揚力です。

 揚力を得るためには必ず翼が動く必要があり(空気に対して)、その結果空気も動くので、直感的に「空気を押しのけた反動で飛んでいる」と誤解する人が多いのですが、以下の思考実験をしてみれば誤解が解けると思います。

 「2本の直線的な流路A、Bを平行に並べる。次に流路Aの中の流速を、流路Bの流速より大きくする。この状態で流路AとBの間の部分を翼とみなす。この時翼に揚力は働くか。また翼に垂直な方向の流れは発生するか。」

 これはベルヌーイの実験そのもので、揚力(圧力差)が発生しますが、翼(流路)に垂直な方向の流れは発生しません。翼に垂直な方向の流れが発生していない以上、この力の原因が反動(反作用)であるわけがありません。


補足1
 実際問題として空中を飛んでいる飛行機やヘリコプターの翼は空気を下に押しのけます。つまり、空気の反動も機体を支える役目の一部を担っているのです。これは事実であり、また上記の誤解の原因にもなっています。さらに言えば、浮力も小さいながら機体を支えています。

 しかし機体を支えている主たる力は揚力であり、揚力を得るために翼断面を工夫した結果として、空気が下に押しのけられているに過ぎないのです。
 
 例えば翼の迎角を大きくしていけば空気を下に押しのける力が強くなりますが、揚力が減り、結果的には機体を支えられなくなって墜落します。これを「失速」といいます。


補足2
 また、空気を押しのけた反動が翼の主たる力であるならば、速度を上げるにつれて翼はどんどん大きな力を発生させるはずです。しかし実際には、翼が発生する力は音速に近づくにつれて激減します。

 この時翼の主たる力が揚力だと考えれば、翼の上面から空気が剥がれてベルヌーイの法則が成立しなくなるため力が減少する、と説明できます。そして、これがプロペラ機が音速を越えられない理由です。


補足3
 歴史的に見ても、「空気を下に押して飛ぼう」という発想は多かったようです。19世紀に作られた飛行機械を見るとそれがよくわかります。それに対してライト兄弟は揚力に注目し、効率のいい翼型を研究することで飛行機を完成させました。


補足4
 ところが、飛行機械のお手本である昆虫は全く揚力を利用していませんし、鳥類も滑空時以外は揚力を使いません。空気を下に押した反動で飛んでいるのです。これは体の大きさが小さく、相対的に空気の物性が変わるからなのですが、同時に多くの人が「飛行機は空気を下に押して飛んでいる」と誤解する原因になっているような気がします。

  投稿者:EMAN - 2007/07/15(Sun) 20:35  No.1958 
 冨士さん、はじめまして。

 作用反作用で飛んでいるというのは間違いではありません。
 このサイトに対して、昔から何度も同様な指摘があり、ここの掲示板でも過去に何度か議論がなされてきました。

 この世に、作用反作用を満たさない運動はありえません。 もしあればそれはニュートン力学以外の何かによる力であって、運動量保存を満たさない、世紀の大発見であります。

 ところで、浮力も作用反作用で説明されます。

 ベルヌーイの定理も、ニュートン力学からの帰結であって、航空力学に応用しやすいように作られています。

 ミクロな分子運動まで含めれば、完全に作用反作用が成り立っているのですが、航空力学の翼の設計において、作用反作用を適用するのは適切でない場合がほとんどです。

 それは渦の発生に伴う抵抗など、その複雑な空気の挙動を、作用反作用によって計算することが事実上困難だからです。

 作用反作用による説明は、ベルヌーイの定理を否定するものではありません。


 2本の流路の話につきましては、「もし上下に気圧差が発生していて」、流路の間の仕切りが自由に動く状態ならば、仕切りは上に上がります。 気圧の高いところにある空気分子は、気圧の低いところにある空気分子よりも強く仕切りを叩くからです。

 このように作用反作用で説明されます。
 もし仕切りがしっかり固定されていたならば動くはずはありませんし、そうなると翼と同じ状態だとは言えません。

 ベルヌーイの定理を使った場合でも気圧差で説明されますが、この点では同じでありましょう?

 この例を持ち出された理由は、「翼が空気を下向きに押したわけではないではないのに、力が発生するのだから作用反作用ではないではないか」という指摘のためでしょうが、そもそもこの実験において、気圧差が生じた理由は、ベルヌーイの定理によって説明できないのです。

 この点について誤解されている方が非常に多いのですが、ベルヌーイの定理は、流線上での速度が変化するとき、気圧が変化するというものです。 完全に分かれた流路では適用できません。 流速が早いだけで気圧が下がるわけではないので、注意が必要です。

 以上が、これまでここで行われた議論でおおよそ合意に達した内容をまとめたものですが、私の説明に勘違いもあるかも知れませんし、納得の行かない点があれば、もっと詳しく説明させて頂くつもりでおります。

 音速に近付くにつれて揚力が減る理由については、これまで考えたことがありませんので、今すぐにはうまく説明できません。 どなたか、分かる方がいらっしゃいましたらご協力をお願いします。 分からなければ分かるまで議論しましょう。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/16(Mon) 11:24  No.1965 

 なるほど、大方了解しました。

 ベルヌーイの法則について、実際に自分で実験したわけではないので、「流速が変化しなければならない」という点と、「2本の流路がどこかで連結され、そこで同じ速度になり、圧力が一致していなければならない」という点を忘れていました。

 つまり私の思考実験は間違っていました。これだと条件をどうにでも設定できるので、結果もどうにでも解釈できます。ちなみに間違った実験の図は以下の通りです。
http://www.11moon.com/temp/ex1.jpg

 次に、「流速を途中で変える」、「初期の速度と圧力をそろえる」の2点を改良した思考実験を示します。これでどうでしょうか。
http://www.11moon.com/temp/ex2.jpg

 この実験の目的は、以下の文章を説明することです。

1. 空気の流れは常に翼に平行であり、垂直向きの成分は生じない。したがって垂直方向に空気の反動(巨視的な)が生じることはない。

 厳密には流路を絞るところで垂直向きの成分が生じるが、流路の形状が対称なのでキャンセルされる。また、翼に接する部分の流路は完全に平行。

2. 垂直な流れは存在しないが、流路AとBの流速が異なるため、翼の上面と下面を押す圧力は異なる。この結果翼は上向きの力を得る。これが揚力であり、巨視的な空気の反動には依存しない。

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 次に、原文の「言葉使い」については依然として間違っていると思っています。

1. まず、一般的にヘリコプターが飛ぶ話について「反動」という言葉を使った場合、それが空気(酸素や窒素)分子個々の反動を意味するというのは非常識です。一般的には空気を「巨視的」にとらえ、「空気(分子の塊)を(まとめて)下に押し出した反動で浮く」と読まれると思います。そしてこの考えは間違っています。

 理由は前回の補足で述べたように、空気を十分下に押し出しているにも関わらず、浮く力が減る現象「失速」が存在するからです。重要なのは「翼両面の圧力差を大きくすること」であり、翼下面の効果にだけ注目するのは誤りです。

 翼上面が持つ「空気を上から吸う」という効果も重要であり、実際の翼の設計では空気を上から吸う力の方が大きい場合が多いようです。私は実際に飛行機を設計したことがないので具体的な数値はあげられませんが、短距離離着陸機や、低燃費飛行機の設計では揚力を増やすためにプロペラを翼上面に配置することがよくあります。

2. 次に、空気分子レベルでの作用反作用を考えた場合でも、「空気(分子)を下に放り投げた反動で浮いていられる」という表現は間違っています。正確には「空気を下に放り投げる反動に対して、上に放り投げる反動を減らすことで浮いていられる」とすべきです。これが「揚力」の微視的説明です。

 なぜ「減らす」という言葉の方を強調するかというと、上に述べたように実際の翼の設計ではより支配的であるのと、「見落とされやすい」からです。

 このように考えれば、次の疑問にも答えられるはずです。

 「音速に近付くにつれて揚力が減る理由については、これまで考えたことがありませんので、今すぐにはうまく説明できません。」

 翼の速度が音速に近づくにつれ、翼の先端には「音の壁」というものができます。そして、翼の実効的な形状が「翼の形状+音の壁」に変化していきます。音の壁は進行方向を軸にして左右対象なので、音の壁に関しては、空気は上面と下面の両方に均等に押し出されます。
http://www.11moon.com/temp/sound_barrier2.jpg

 音の壁がない場合は
http://www.11moon.com/temp/sound_barrier1.jpg

 その結果、音の壁の後ろ(裏)に隠れている上面は実質的に「表面」でなくなり、空気を吸うことができなくなります。つまり揚力は発生しなくなります。ただし、翼の下面は音の壁からはみ出すことが可能なので、依然として下面が空気を下に放り投げることは可能です(翼断面の設計と迎角によります。上の図ではそうなっていません)。

 つまり、音速を越えても翼が力を発生させることは可能で、実際プロペラ機で音速を越えるための実験も数多く行われました。しかし私が知る限り成功していません。プロペラの効率が悪すぎるからです。

 「翼は空気を下に放り投げるものだ」という発想だとこの現象を理解できませんが、むしろ「翼は空気を上から吸うものだ」と考えれば自然と理解できます。私の説明がどの程度正しいのか保証の限りではありませんが、少なくとも私は「吸う」というキーワードを通して「揚力」というものを理解しました。だから余計に「押し出す」という言葉に拒否反応を示したわけです。


補足5
 もう一つ「言葉上の問題」を感じたのは、文字通り「空気(もしくは燃焼ガスや推進剤)を下に放り投げて飛ぶ機械」がたくさん存在するからです。ロケットは何も吸わずただ推進剤を押し出して浮きます。またジェットエンジンは空気を吸い込みますが、より大量の燃焼ガスを押し出すので、「吸う力」は問題になりません。極端な話、ハリアーは下から空気を吸って、下に吹き出して浮くこともできます。

 つまり、これらの飛行機械に関して「揚力」は全く関係ないか、少なくとも支配的ではないのです。その結果として、ロケットエンジンは真空中で、ジェットエンジンは非常に空気の薄い高空でも動作します。また、音速の前後でも効率は変わりません。理由は「押し出すのはこちらの勝手」だからです。これらの力をここでは「推力」と呼びます。

 これらに対して、「飛行機の翼」、「ヘリコプターのローター」、「飛行機のプロペラ」などは揚力を主たる力として動作します。その結果、空気の薄い高空では動作しません。また音速を越えると効率が極端に落ちます。理由は「吸うのは相手次第(空気がなければ吸えない)」だからです。

 それではなんでそんな不便な「揚力」を現在でも利用しているかというと、推力で飛ぶのに比べて圧倒的に効率がいいからです。例えば上の方で「ジェットエンジン」という言葉を使いましたが、実は現在ジェットエンジンは作られていません。現在作られているエンジンのほとんどは「ターボファン」もしくは「ターボプロップ」と呼ばれる形式のエンジンで、その力は80〜90%がファンやプロペラの発生する揚力、残りの10〜20%が推力で構成されています。

 つまり、ジェットエンジン(推力)のいいところとプロペラ(揚力)のいいところを合わせ持つように作られているのです。

 というわけで、物理的な話は別としても、技術的には「推力」と「揚力」は明確に違っていて、「ヘリコプター」という例を出すのであれば区別すべきだと思います。


補足6
 また、この世には「揚力を利用せず、ただ空気を下に放り投げるための翼」というのも存在します。これはもはや翼ではなく「ブレード」と呼ばれていますが、真空を得るためのターボ分子ポンプのタービンなどがこれに相当します。

 この機械は飛ぶためにあるのではありませんが、「空気を下に放り投げている」のは事実です。また当然分子レベルでの作用反作用の法則にしたがって動いています。しかし揚力を無視しているので、ヘリコプターのローターとは設計の原理や方法が全く異なります。また結果的に形状も大きく異なります。

 というわけで、何の注釈もなく「ヘリコプターのローターは空気を下に放り投げている」と書くと、ヘリコプターのローターとターボ分子ポンプのタービンの形がなぜ違うのか説明できなくなります。


補足7
 長々と「吸う」という概念について述べてきましたが、空気が生じる力を気体分子の運動の総和として考えると、「吸う」という力を直接定議することはできません。直接定義できるのは、作用反作用の法則によって気体分子が何かを「押す力」だけであり、吸う力は「ある部分の押す力が、他の部分の押す力に比べて弱い」という形で間接的、二次的に定義されるにすぎません。

 したがって「全ては作用反作用、もしくは押す力だけで説明できる」というのはもちろん真実です。しかしだったらなぜ「吸う」なんていう概念が生まれたのでしょうか。それはこういった高次の概念を仮定した方が物事を理解しやすく、便利だからです。したがって、それが物理に反しない限り、わかりやすい言葉や表現を使うべきだと私は考えています。

 また、物理的な実体や原理が全く同じであっても、一般社会や応用の世界で区別されているものは、物理の話の中でも区別するか最低限注釈を付けるべきだと思います。そういう意味で「浮力」、「揚力」、「推力」は違うものです。これは「光と電磁波と放射線(ガンマ線)」に違う言葉を当てて区別するのと同じだと思っています。

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 ずいぶん長い文章になったので、私がこれを書いている意図について説明します。私がこれを書いているのは、このサイトの間違いを修正するためでもなく、誰かを論破するためでもなく、自分の知識や論理を自分で確認し、それを必要十分な文章に表現する訓練としてです。できれば他の人のためにもなるようにと丁寧に書いていますが、基本的には自分の楽しみのためです。

 ですから、実は「正しいか間違っているか」にはあまり興味がありません。何かの過程を経て「わかった」と感じられることの方が重要です。実際の仕事の中で、「わからないまま覚えたこと」はたとえ正しくても役に立ちませんが、「わかったこと」はたとえ間違っていても役に立つからです。

  投稿者:murak - 2007/07/16(Mon) 17:43  No.1966 
こんにちは。というか初めましてというべきでしょうか。

冨士さんのおっしゃりたいことは大体了解しました。

しかし、それでも私はEMANさんの説明(特にあの文脈での説明)は間違っていないように思いますし、私自身飛行機やヘリコプターは周囲の空気を掴んで下に放り投げることで浮いていられるのだと思っています。ただし、これには注釈が必要で、これをそのまま書くと航空力学や流体力学の専門家が怒リ出すかもしれません。一方また、冨士さんのおっしゃられるように、翼やローターが感じる圧力を気体の個々の分子が及ぼす力にまで分解して説明するのは確かに行き過ぎで、それでは流体特有の現象、特に揚力の発生理由を説明するには不向きです。それが何故不向きなのか、あるいは飛行機が空気を下に押しやって浮いているというと何故流体屋が怒るのかを(物理的に)理解するには、冨士さんの持ち出された「音の壁」というものが確かに一つのヒントを与えてくれるようです。

それを説明する前に、冨士さんが持ち出されている水路(?)の思考実験ですが、これは翼に働く揚力を説明するものとしては不適当であるように思います。実際、この実験で得られる流れは実際に飛行中の翼の周りに出来る気流を再現しないでしょう。冨士さんは翼の上下の流れを平行流にすることにこだわっておられるようですが、実際に飛行している翼の周りでは必ず何等かの下降流が起こらねばなりません。何故なら、飛行中の翼に働く力は飛行機自体を推進させている「推進力」を除けば、「重力」と周囲の流体から受ける「抗力」しかなく、重力が鉛直下向きである以上流体から受ける抗力は必ず上向き成分を持たねばなりません。この力は流体から受けるものでしたから、その反作用は(ニュートン力学の法則にしたがって)必ず(運動量変化として)流体に現れます。しかるに翼より前方の流れには鉛直成分が無いわけですから、当然翼より後方では鉛直下方の運動量が無くてはならない事になります。(これは、流体が、翼より後方では(例え僅かでも)下方にその流れを曲げられねばならないことを意味する。ただし、ここではまだ、流体がそのような運動量を得るメカニズムについては何も説明していない事に注意。)

では、流体は(翼を通過する際に)どうやってその(鉛直下方の)運動量を得ているのでしょうか? あるいは逆に言うと、流体はどうやって鉛直上向きの力、すなわち揚力を翼に与えているのでしょうか。(注:揚力とは物体=翼が流体が流体から受ける力=抗力を流れに平行な成分と垂直な成分に分けた際の、垂直成分のことにすぎない。ちなみに平行成分が抵抗である。) この際、誰でも思いつきそうな一つの説明は、翼が空気中を移動する際に、その下面にあたる粒子(気体分子?)を下方に刎ね飛ばすことの反動として上向きの力(すなわち揚力)を得ているのであろうというものです。しかし、このようなモデルによる計算ではおそらく実際の飛行機の受ける揚力を定量的に説明することは出来ないのでしょう(私はした事が無いので、本当のことは知りませんが)。実際、このモデルは気体の構成粒子の間の相互作用というものを全く無視している事に相当しますから、いわゆる流体力学にはなっていません。このことは逆に言えば、翼に揚力が発生する真の、というか流体力学的、あるいは航空力学的理由は、ここで無視した流体粒子間の相互作用にこそあるという事になります。そのように考えてみると、ここで冨士さんが示唆された「音速に近づくと揚力が著しく減少する」という事実(?)が大きな意味を持ってくることがわかります。実際、音速というのは、流体中における弾性波動の伝播速度ですから、飛行速度、あるいは流体の速度が音速に近づくという事は、流体中に生じた圧力変化の情報伝達がうまくいきにくくなる(あるいは、流体粒子間の相互作用が困難になってくる)ということを、物理的には意味しているわけです。(逆に、流速の遅い極限を考えれば、そこでは、圧力情報は十分早く伝わる。あるいは流体の各部分で起こった変化に全体が十分素早く応答できるということを意味しています。この理想的極限が音速無限大の流体、すなわち非圧縮流体です。)

(ここまで書いたところで、事情により一旦中断しますが、ここまで書けば、あとはEMANさんが自分で考えてくれるかな。。。)

  投稿者:ASA - 2007/07/16(Mon) 22:13  No.1969 
murak さん はじめまして。
当方の物理的イメージが異なるようなのでコメントします。
>空気を掴んで下に放り投げることで
下向きの流れを作り出すことによるものと理解してます。
流れは運動量をもちます。
流れを下向きに変化させることは、運動量変化が力なので、下向きの力です。その力の反作用として流れを変化させた物体である翼に揚力が働くわけです。
翼が生ずる揚力は、翼上面での流れの変化と翼下面での流れの変化の合計です。
翼上面からの寄与を冨士さんは「吸う」と表現しておられるようです。

>気体の構成粒子の間の相互作用
 具体的には、どのような相互作用を想定しておりますか?
ちと、理解しがたいです。
>ここで無視した流体粒子間の相互作用にこそあるという事になります。
流体力学の利点はそのような相互作用を想定する事無く、マクロなパラメータで記述できることにあります。
圧縮性流体の運動方程式を解くだけですね。

>圧力変化の情報伝達がうまくいきにくくなる
定常流を考えるなら関係ないと考えます。

>流体粒子間の相互作用が困難になってくる
 やはり、音速になると作用しにくくなるという相互作用は、理解できません。

>流体の各部分で起こった変化に全体が十分素早く応答できるということを
 応答ということは、非定常だと思いますが。
  揚力は定常流で解析できますので、やはり理解できません。 

  投稿者:murak - 2007/07/17(Tue) 02:03  No.1974 
話を続けます。

前回述べた事をまとめておきましょう。要点は二つ。翼は結局、その揚力に見合うだけの運動量を流体に与えていなければならないという事。及び、それを具体化するプロセスは流体の流体としての性質、あるいは流体粒子間の相互作用のあり方に強く規定されている筈だという事です。実を言うと私が言えることもこれだけで、あとは、これらの条件が満足されるように流体中を運動する翼の回りに出来る流れや応力の場を計算し、定常になった流れを求めれば、それがよく言われるようなものになっているというだけです。

しかし、これではあまりにそっけないので、もう少し説明をすると、数値計算や観測(というか風洞実験等)によれば、飛行中の翼の上面では、(翼の前方よりは)速い流れが、また下方(の少なくとも一部)では遅い流れが形成されている他、翼の前方付近では上方に向かう流れが、また後方付近では下方に向かう流れが形成されているようです(私は専門家でないので、正確さは欠けるかもしれない)。これは何を意味するかといえば、翼の周りには、その下方から前方、上方を回りこみ、後方ではまた下方に向かうような流れ、つまり循環を持つような流れが(翼を通過する流れの他に)形成されているという事でもあります。そしてそのような流れの、翼に接する面での圧力(あるいは翼の受ける圧力)を見れば、翼の上方では翼の遥か前方部分よりは小さな圧力が、また下方では大きな圧力がかかっている事になり、その関係は丁度ベルヌーイの定理でいわれるところの(各流線上での)流速と圧力の関係になっているというわけです。またこのときの翼の表面の各部分にかかる圧力をすべて足し合わせれば(積分すれば)それが丁度翼の受ける揚力になっている筈です。ただし、冨士さんもおっしゃっておられるように、この際の翼の上面と下面での圧力の(大気圧=流線の無限前方での圧力)からの偏差を比べれば、下面での変化より上面での変化の方が大きい(という事に観測ではなっているらしい)。つまり、上面と下面からの圧力の寄与の差引勘定でいえば、翼は下から押し上げられているというよりは上から引っ張り上げられている(あるいは吸い上げられている)というのに近いわけです。これが冨士さんや流体屋さんが、「(飛行機は)空気を下方に投げることによって浮いている」という表現を嫌う理由なのでしょう。つまり翼に対する流体力学的効果は、上から引っ張り上げられるというカタチで現れるではないかというわけです。

しかし、ここで忘れてはならないのは、このような流体力学的状況が生じた、そもそも原因は、流体中を物体(翼)が運動したという事にある。つまり物体が周りの流体に影響を与え、流体の速度場や圧力場を変化させ、それが定常に達した際のバランス関係として上で見たような関係が成り立っているのであって、決して先見的に流れの場があって、そこに物体が嵌め込まれた結果として、揚力が働いているわけではないという事です。(ただ、定常状態だけを見ていると、流れの場が先にあって、そこに物体が嵌め込まれているとしても結果的には同じだが。)それともうひとつ大事なのは、例え翼に直接的に働く圧力の関係で、上面が重要であっても、翼が最終的に流体に与える運動量は(揚力に見合うだけの)鉛直下向きのものであるという事です。(これと、翼の周りの循環が関係する)。

(とりあえず、ここまで。ASAさんのコメントについてはまた後日。)

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/17(Tue) 05:06  No.1975 
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「実際、この実験で得られる流れは実際に飛行中の翼の周りに出来る気流を再現しないでしょう。」
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 もちろんこの思考実験そのままの状況が現実世界で発生することはありません(だから思考実験なわけです)。しかし翼の付近に「拘束条件(境界条件)」が生じることで揚力や流線が変化することはよくあります。

 この場合拘束条件というのは翼に接近した「壁」です。私の思考実験の要点は「任意の壁を置くことで、揚力を維持したまま、垂直方向の流線が生じないようにできるか」という点にあります。

 ヘリコプターの場合ほとんど関係ないので補足でも取り上げませんでしたが、「高速走行する自動車や鉄道列車、また飛行機でも離着陸時」には「地面」という拘束条件が非常に大きな効果を発揮します。したがって、翼(ボディーを含めて)だけの解析というのは全く意味を持ちません。常に「翼と地面に挟まれた空気はどのように動くか」という観点で考えます。

 ちなみに、自動車で最初にこの問題が指摘された時(戦前のドイツ)、自動車の車体の下を流れる空気は、地面と車体と進行方向の全てに平行で、自動車の後ろでは上向きに巻き上げられていたにも関わらず、「上向きの力」を発生し自動車をひっくり返していました。理由は、地面と車体の間に挟まれた空気は、「粘性抵抗」によって車体上面を流れる空気に比べて速度が遅くなり、圧力が大きくなるからです。

 「空気(の塊、もしくは流線)を下に押し出すことで、上向きの力を得る」という考え方をどう演繹すると上記の自動車をひっくり返せるのか「思考実験」してみて下さい。


補足8
 さらに言えば、上にも壁があるという条件が現実に存在します。それは「トンネル」です。新幹線が高速でトンネル内を走行する時、車体の上面、下面、側面は全て異なる圧力を受けます。そしてこの圧力は「車体速度」、「車体先端の形状」、「壁との間隔」によって大きく変わります。特にトンネルの入り口では圧力が瞬間的に変わるため、空気の慣性も大きく影響します。この時の衝撃を緩和するためいろいろと先端形状が工夫されました(トンネル側の形状も、日立の機械研究所でやっている)。

 初代の新幹線0系は、飛行機の先端形状をそのまま持ってきました(設計者が旧軍の飛行機設計者だったからだそうですが)。しかし、現在は700系(アヒル顔)のような新幹線が主流になっています。ところが700系のような先端形状をした飛行機は見たことがありません。新幹線の先端形状が、なぜ航空機の先端形状から分化したのかというと、それは「トンネルという拘束条件が厳しい」からです。

 つまり、私の思考実験はそんなに非現実的で的外れなものではないのです。

 私は理科大で量子光学と光物性、日立でレーザーと流体を専門にしてきましたが、常に「理論やコンピュータシミュレーション」と「現実的な設計」の間で悩んでいます。それはつまり、「空気分子の作用反作用」を元にして「安全な飛行機」を設計するにはどうしたらいいか、ということです。

 実際問題として、空気分子の作用反作用を完全に理解したからといって安全な飛行機を設計できるわけではありません。理由は、一人の人間がそこまで広い「専門」を持つことは不可能だからです。飛行機を作るには数千数万の専門家が必要で、その99%は空気分子の作用反作用を正しく理解していません。そういう専門家が他の専門家とうまく連携するために必要なのが「高次に抽象化された概念」です。

 高次に抽象化するというのは、「元の概念の価値を必要十分に保ったまま情報を圧縮する」ということです。今回の例で言うと「揚力」とか「吸う」というような言葉がそれにあたります。そしてこれを体系化したものが「言語」であり、その補助として記号や図があります。

 私が今まで参加(もしくは見聞)してきたプロジェクトの中で、基本となる原理原則自体が間違っていたものは一つもありません。また、各専門家が担当業務を全うできなかったこともほとんどありません。しかし、よく言われるようにプロジェクトの99%は失敗に終わります。

 失敗に終わったプロジェクトの原因を調べると、結局専門家の間で多くの誤解が生じていたことが分かります。さて、ここでプロジェクトの成功率を上げるにはどのような改善が有効でしょうか。

1. 全ての専門家が物理の勉強をする(例えば空気分子の作用反作用について)。
 
2. 全ての専門家が、連携する他の専門家に対して、必要十分な情報を与えられるように努力する。

 ここまで丁寧に書けば、ほとんどの人が2を選択すると思いますが、大学の物理の先生のほとんどは「安全な飛行機を設計できないのは物理を知らないからだ」というような発言をします。「だったら(物理を知っている)お前は安全な飛行機を設計できるのか」と聞きたい。

 だから私は「言葉遣い」というものを非常に重視しているのです。言葉を正しく(というよりは有効に)使わないと、専門家はうまく連携できないのです。今回のヘリコプターの例を取るなら、「ヘリコプターのローターが空気を下に押し出して飛んでいると思っている人間は、たとえ空気分子の物理を正しく理解していても、安全なヘリコプターを設計できない」ということです。

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「実際に飛行している翼の周りでは必ず何等かの下降流が起こらねばなりません。何故なら、飛行中の翼に働く力は飛行機自体を推進させている「推進力」を除けば、「重力」と周囲の流体から受ける「抗力」しかなく、重力が鉛直下向きである以上流体から受ける抗力は必ず上向き成分を持たねばなりません。」
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 間違っています(少なくとも言葉が)。「抗力」というのは翼の進行方向の反対向きに働く力で(一般的には水平)、翼が上向きの抗力を受けることはありません。

 と同時に「圧力」が抜けています。上の文章をどう演繹しても「浮力」を説明できません。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/17(Tue) 08:02  No.1976 
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当方の物理的イメージが異なるようなのでコメントします。
>空気を掴んで下に放り投げることで
下向きの流れを作り出すことによるものと理解してます。
流れは運動量をもちます。
流れを下向きに変化させることは、運動量変化が力なので、下向きの力です。その力の反作用として流れを変化させた物体である翼に揚力が働くわけです。
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 思考実験をしても全くとり合ってもらえないようなので、「実験」を示します。
http://www.11moon.com/temp/bernoulli's_principle.mov

実験結果
 この実験で使った紙製の角パイプにおいて、背景に見える机の上面と一致している面を上面とする。この上面は重力に対しても鉛直上向きである。

 この角パイプの中にブロアのガスを高速に噴射した結果、上面は下方に変位した。この変位は、ブロアの吹き出し口の位置や角度を変えることでその量が多少変化するが、向きは変わらない。また振動も発生しない。つまり安定している。

 この現象は、角パイプの中をガスが高速に移動することに起因して、上面が何らかの力を下向きに受けていることを表している。

命題
 現在この力は、角パイプの中を移動するガスの運動量を上向きに変化させた反動(反作用)だという議論がなされている。ではそのガスの運動量の変化を、角パイプの中を移動するガスの流線の変化として示せ。

参考
 角パイプの大きさは幅100m、高さ10mm、長さ300mmである。上面以外の各面は厚くなっているので大きな変形はしない。上面は0.26mmのケント紙でできていて、今回の条件で適度に変形する。

 それでは、よろしくお願いします。

  投稿者:ASA - 2007/07/17(Tue) 08:51  No.1977 
指定ファイルを再生できる環境にでないので憶測でコメントします。
>紙製の角パイプ
翼の話をしていたのに、いきなり、条件が違うものを持ち出されても困惑します。

さらに、上面のみを切り出し、問題にしていますが無意味です。
角パイプの下面は、上側に変位しないのでしょうか?
微小といえども無視できないです。
パイプ下面で、内外の圧力差を計測するセンサ(局所的に薄皮にする)で計れるはずです。
パイプ全体を翼と見立てることが出来ますが、実験で使用したパイプの重心には何か力が働いているのでしょうか?

追伸:運動量は、マスと速度の積なので圧縮性流体の場合、密度分布と流速分布から運動量分布を求めなければなりません。また、密度分布は、圧力分布なので、圧縮性流れの中の物体に働く力は、双方を考慮しなければならないことは言うまでもないことです。(非圧縮性流体なら流速分布が運動量分布なので、力としては運動量変化のみを考慮すればよい)


  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/17(Tue) 09:12  No.1978 
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 要点は二つ。翼は結局、その揚力に見合うだけの運動量を流体に与えていなければならないという事。
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 それでは「失速」と「音の壁」について説明してみて下さい。

失速
 翼が空気の流れを変えて(運動量を下向きに変えて)上向きの力を得ている、というのは直観的な事実です。そして翼の迎え角を大きくすればするほどその力は大きくなるはずです。ところが、迎え角がある角度を越えると上向きの力は数分の一に激減します。空気を下に押し出す量は増えているにもかかわらずです。なぜでしょう。

音の壁
 翼(プロペラ)が空気の流れを変えて(運動量を後ろ向きに変えて)前向きの力を得ている、というのは直観的な事実です。そして翼の回転数を大きくすればするほどその力は大きくなるはずです。ところが、翼の速度が音速に近づくと後ろ向きの力は数分の一に激減します。空気を後ろに押し出す量は増えているにもかかわらずです。なぜでしょう。


補足9
 Webを見ていて失速状態で空を飛んでいるものを発見しました。それは「凧」です。凧を翼として見た時、迎え角が大きいので完全に失速しています。凧の力学についても一応「揚力」という言葉が使われていて、実際「凧を揚げる」という言葉もあるので否定はしません。しかし、この揚力は私が使っている「気圧差を原因とする揚力」とは別のものです。

 そして、この凧が浮いている力こそが「空気を下に押し出した反動」そのものなのです。さて、ここで昔自分が揚げた凧がどのように飛んでいたかをよく思い出して下さい。

 次に私が言っている揚力を利用した凧について説明します。それは「ゲイラカイト」と呼ばれています。私自身は両方揚げたことがあるので、「飛びの違い」をよく実感していますが、皆さんはどうでしょうか。

 このゲイラカイトはもともとグライダーの研究から生まれてきたもので、実際グライダーをウインチで牽引して離陸させる様子は、ゲイラカイトを揚げている様子とそっくりです。そして、ゲイラカイトはたいしてヒモを引っ張らずに垂直近くまで揚がります。グライダーにいたっては、ウインチの後ろ側まで飛んでいきます(風上に向かって)。

 ところが、いわゆる凧は糸が切れるほど風の強い日でもせいぜい30度ぐらいまでしか揚がりません。もちろん風上に向かって飛んでいくなんてことは考えられません。なぜでしょうか。直観的には、凧の方が迎え角が大きく、「空気を下に押し出した反動」は大きく見えるにもかかわらず。

 また、ゲイラカイトの方がよく揚がる(抗力に対する揚力が大きい)ということは、ゲイラカイトの方が凧よりも多くの空気を下に押し出しているのでしょうか。私にはとてもそう思えません。なぜなら、ヒモを引っ張る力が小さいからです。ヒモを引っ張る力の水平成分は、飛行機の推進力にあたります(抗力と釣り合う)。それが小さいのに、より多くの空気を下に押し出すなんてことができるのでしょうか。もしそれが事実なら、それこそ「運動量保存の法則」に反するのではないでしょうか。

 この凧の例は、具体的な体験に照らして考えられるので、いい思考実験になるのではないでしょうか。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/17(Tue) 09:41  No.1979 
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指定ファイルを再生できる環境にでないので憶測でコメントします。
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 そういう場合は再生できるフォーマットをお知らせ下さい。一応.divx形式のムービーをアップロードしておきます。
http://www.11moon.com/temp/bernoulli's_principle.divx

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>紙製の角パイプ
翼の話をしていたのに、いきなり、条件が違うものを持ち出されても困惑します。
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 複雑にからんだ要素を分解し、単純化するというのは物理の基本です。もちろん条件は違いますが、物理が変わるわけではありません。翼の物理を説明できるなら、この角パイプの物理も説明できるはずです。

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追伸:運動量は、マスと速度の積なので圧縮性流体の場合、密度分布と流速分布から運動量分布を求めなければなりません。また、密度分布は、圧力分布なので、圧縮性流れの中の物体に働く力は、双方を考慮しなければならないことは言うまでもないことです。(非圧縮性流体なら流速分布が運動量分布なので、力としては運動量変化のみを考慮すればよい)
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 その通りです。そのような面倒なこと(定量的なこと)を考えなくてもすむように「実験を単純化」しているのです。

  投稿者:EMAN - 2007/07/17(Tue) 12:58  No.1980 
 ちゃんと無視せずに、最初の事から全て考えてますから、ご安心下さい。 ちょっと十分な時間が取れないだけです。
 また、議論のあちこちに突っ込みたい部分は沢山ありますが、自分の中で結論の出ていない部分に関わってきますから、議論の混乱を避けるために黙っています。
 もうしばらくお待ちください。

  投稿者:ASA - 2007/07/17(Tue) 13:05  No.1981 
>もちろん条件は違いますが、物理が変わるわけではありません
条件が違えば、適用できる物理法則は変わります。常識ですよ。 流体の運動量変化による説明を求めるなら、非圧縮性流体として扱えるケース、船のスクリューや液体金属用の発電タービンなどを例に出してもらいたいですね。

追伸:
 圧力も、流体を構成する微視的要素の運動量の変化として説明できます。また、圧力は、空気を押すことにより増加します。
 ですから、空気を掴んで放り投げるという言い方は、いささか乱暴ですけど上側の空気を下側に押し出すことによる反作用により、ヘリコプターが浮かぶという説明は間違っていません。

  投稿者:kara - 2007/07/17(Tue) 16:03  No.1983 
流体はあまり知らないのですが、提起されているいくつかの問題について、考えを書いてみます。

>「空気(の塊、もしくは流線)を下に押し出すことで、上向きの力を得る」という考え方をどう演繹すると上記の自動車をひっくり返せるのか「思考実験」してみて下さい。

これは、「自動車」と、「流体+地球」の運動量保存で説明できると思います。翼の場合と違うのは、「流体」の一部分が「地球」置き換わっているだけで、「自動車」以外にトータルとして下向き運動量を与えているという点で同じと思います。


>失速
 翼が空気の流れを変えて(運動量を下向きに変えて)上向きの力を得ている、というのは直観的な事実です。そして翼の迎え角を大きくすればするほどその力は大きくなるはずです。ところが、迎え角がある角度を越えると上向きの力は数分の一に激減します。空気を下に押し出す量は増えているにもかかわらずです。なぜでしょう。

流体は詳しくないので、細かいことは分かりませんが、これは、「空気を下に押し出す量は増えているにもかかわらず」という部分が誤りなのではないでしょうか。失速というと、大雑把にはきれいな層流が乱流になることと思いますが、乱流になれば、トータルとしての流体がまとまってある方向の運動量を持つ傾向が激減すると思います。



  投稿者:EMAN - 2007/07/17(Tue) 18:26  No.1984 
 以下の文は私の思考時の癖で論文調になってますが、長いので修正しないでそのまま載せることにします。 怒っていたり、冷たい態度を取ろうと言うわけではありませんので、気にしないで下さい。


まず、冨士さんが描いて下さった例(下リンク)について。
http://www.11moon.com/temp/ex2.jpg

 これは、各流路の形が入り口も出口も上下対称であり、
水平の流れを生み出している。 また、中央の仕切りの形も上下対称であるから、流体に対して上下どちらか一方に余分な力が掛かることも無い。

 しかし、上側経路では流速が速くなっており、それ故に圧力が低く、下側経路では相対的に圧力が高い。 よって、「翼だと見立てられる部分」は上へと動く。 翼が流体を下へと押し出しているわけではないにも関わらず。

 さあ、このことを「巨視的な視点で」説明してみてください、というのが、冨士さんの意図するところ。

*****************************************************

 もしこれがパイプの中の話でなければ、真ん中の仕切りはどちらかへ動くかというと、動かないであろう。 上下の壁がないために流速の差が出ないからである。 この点は、普通の航空機の翼とは話が違う部分であるから、気を付けないといけない。

 しかし、それでも、このモデルで、「翼相当部分」に力が掛かっており、もしそれを固定してなければ動くはずなのだから、その力を流体の「巨視的な動きの反動」として説明できるのか?と詰め寄られると、「これは翼とは違う」と逃げたところで立場的に弱いし、すっきりと説明できなければ気持ちが悪い。


 この「翼相当部分」が動く理由は、ミクロ的な作用反作用を使ってもいいのならば説明できる。 上側の経路で流体の圧力が低くなる理由も、流体の分子運動の進行方向の速度成分が上がった為、分子運動の上下成分が相対的に減少したとして説明できる。 (それでも細かい部分を煮詰めるには苦労するだろう。)


 ところで、この問題で、無視されている点がある。 止まっている状況しか考えていないのではないか?! では翼相当部分が「実際に動いた」ならば、どうなるだろう。
 もし動いたら、その分だけ下側に隙間ができるから、それを埋めるべく、流体は下へと移動するので、巨視的な流れができることになるだろう。 これは、「流れは常に水平である」という前提条件を崩しているわけだから、これ以上論じても仕方ないことになる。

 そこで、私の返答は、こうなる。
「このモデルは、仕切りが上下に動いている時には、反論目的には使えない」。


 この「翼相当部分」の移動時に発生する乱流などについて、それがどんな形になるか、という点では、作用反作用による考え方では荷が重い。 応用には向かないのである。 これは最初から弱点を認めているところである。

 しかし、巨視的な作用反作用が成り立つことは、ニュートン力学を認める限り、強く信じていいことだろう。

  投稿者:kara - 2007/07/17(Tue) 18:51  No.1985 
冨士さんの、流路の中の翼という思考実験ですが、翼が受ける流れに垂直な方向の力は、当然運動量保存によって、その反対方向の運動量が流体に与えられますが、結局流体から流路の壁に伝えられて、作用反作用が完結すると思います。自動車の例の、「地球」と同じパターンですね。

  投稿者:EMAN - 2007/07/17(Tue) 18:54  No.1986 
 音の壁について。

 私は、「音速に近付くにつれて揚力が減る理由については、これまで考えたことがありませんので、今すぐにはうまく説明できません。」と書きましたが、これは冨士さんが描いて下さった図と説明がそのまま使えそうです。


> 音の壁に関しては、空気は上面と下面の両方に均等に押し出されます。
http://www.11moon.com/temp/sound_barrier2.jpg


 空気が上下に均等に押し出されているとのことなので、運動量の観点からしても、上向きの力が得られないことが言えますよね。
 特にベルヌーイの定理を使わないと説明不能な現象だという話でもなさそうです。

  投稿者:EMAN - 2007/07/17(Tue) 18:57  No.1987 
 ここでふと気付くのですが、冨士さんは、私が「空気を下に叩きつけている」という表現を、翼の下面だけの効果を考えているものだと、決め付けている書き方になってますね。

 それは次の一文です。

> 重要なのは「翼両面の圧力差を大きくすること」であり、翼下面の効果にだけ注目するのは誤りです。


 そんな風には考えていませんよ!?

 気流を翼の上からうまく引っ張ってきて下に叩きつけようと、下面で押し出して下に叩きつけようと、私にとっては、空気を下方に叩きつけているという、ひとつの事実として捉えています。

 結局、そこの微妙な表現が気に入るか気に入らないかの問題だけなのではありませんか?!


 この辺りの誤解から、「何を言ってるんだ、あなたたちの方が間違っているのは確実なのに!」という反発心を生んで、私たちの説明に対して受け入れられない気持ちを生じさせている可能性があります。


  投稿者:EMAN - 2007/07/17(Tue) 20:04  No.1988 
 私は私で、今回の議論で、

 なぜ「作用反作用」と言うときに航空関係者がめちゃくちゃ怒り出すのか、その理由が初めてはっきり分かった気がしました。

 つまり彼らの多くは作用反作用によって説明できると聞くと、「そういうことを言うやつらは翼の下面のことしか考えていない!」と思ってしまうわけですね。

 そう考えると、今までの経験と辻褄が合います。
(これまで別の理由を考えていました。)

 そして、困ったことに彼らの一部には、「流体の作用は作用反作用などでは説明できるものではない」という考えを経て、「これは作用反作用とは全く別種の力だ」とまで信じてしまっている人がいる。

 すると今度は、物理学者が怒り出す。
 実は、業界で形成された、用語に対する感性の違いに過ぎないことなのに。

 お互いを無知だと思ってるからそうなるのかな。


  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/18(Wed) 01:03  No.1989 
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>もちろん条件は違いますが、物理が変わるわけではありません
条件が違えば、適用できる物理法則は変わります。常識ですよ。
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 程度の問題ですが、普通「条件」が変わっても適用できる物理法則は変わりません。翼の上に壁がある時の物理法則は、翼の下に壁がある時の物理法則と同じです。

 物理法則が変わるのは「話」が変わる時です。光や素粒子に関する物理法則は、確かに翼の物理法則から離れているんで、説明しても意味がありません。

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追伸:
 圧力も、流体を構成する微視的要素の運動量の変化として説明できます。また、圧力は、空気を押すことにより増加します。
 ですから、空気を掴んで放り投げるという言い方は、いささか乱暴ですけど上側の空気を下側に押し出すことによる反作用により、ヘリコプターが浮かぶという説明は間違っていません。
---

 その通りです。そしてそれは私の言っていることと物理的には同じです。

 私が問題にしているのは、2回目の投稿の最初に述べているように「言葉」です。

 面倒なんで次のステップに移りますが、私はこれまでの説明の中で「明示せずに」、「翼の下面を通過した空気を、翼が押し出した(放り投げた)空気」、「翼の上面を通過した空気を、翼が吸い込んだ空気」と分けてきました。そして、翼が吸い込んだ空気の運動量をわざと隠してきました。この運動量を含めれば失速の問題も、音の壁の問題も普通に説明できますし、もちろんその運動量の変化の総和は、重力による力積とつりあいます。

問題1
 しかし私は、翼の上面を通過して下向きに曲がった空気を「押し出した(放り投げた)」と表現するのは、「日本語」として間違っていると思います。なぜなら「押し出す(放り投げる)」という言葉は、物体が働く「斥力」を意味するからです。確かに翼は、その下面では空気に対して斥力を働いていますが、上面では「引力」を働いています。しかも引力の効果の方が大きいのです。

 それを「押し出している」というのは、「地球は物体を上から下に押しているので、物体は下に落ちる」と言うようなものです。そしてこのような間違った言葉が使われるのは、単に日本語能力の問題だけではなく、その背後にある概念や物理の認識が間違っているからに違いありません。そしてそれを読んだ子供とかは間違った認識を持ち、「自分の作った飛行機はなぜ飛ばないのか」ということに悩まされるのです。
 
 前にも書いたように、私は「正しいかどうか」にはあまり興味がありません。私は、「たとえ物理的には間違っていても、子供がよく飛ぶ飛行機を作れるような説明(言葉使い)をしたい」と考えています。「間違っていたらだめだろう」と言われるかも知れませんが、子供にとっては飛行機が飛ぶことの方がずっと重要です。そして飛行機を作ることに楽しみを見いだし、作り続けていけば、いずれ正しい物理的理解に達するはずです。というか、これは物理の歴史そのものだと思いますけどね。


問題2
 もう一つの問題は、「押し出す(放り投げる)」という言葉が基本的に「近接力」を表す言葉だということです。両方の文字に「てへん」が含まれていることからも明らかです。(巨視的な)気体に対して近接力と言うのも変なのですが、翼の下面が空気を下に押し出す様子を見るかぎり、「翼にぶつかって下向きになった」という表現は自然に感じられます。

 ところが翼の上面を流れる空気の場合、圧力が上方に伝わる間に翼が前方に移動してしまうため、ある部分の空気Aの運動量が下向きに変化し始める時、翼はすでに下方にない、というような状況が発生します。「運動量の差し引き」という意味では確かにこの空気Aも翼を「支えて」いますが、直観的には、「空気Aは翼との間の空気Bを支え、その空気Bが翼を支えている」ように見えます。これはむしろ「遠隔力」です。

 まあ遠隔力なんて難しいことを考えなくても、気体に働く力に関しては昔から「吹き飛ばす(斥力)」と「吸い寄せる(引力)」という適切な言葉が存在し、子供でもよく理解しています。そしてこれらには「てへん」の替わりに「くちへん」が含まれています。漢字っていうのは本当に物理的ですよね。これは電磁気学でいう遠隔力とは異なりますが、少なくとも力学でいう近接力ではありません。したがって、私は翼の上面に起こっている物理を説明するのに適した言葉だと思っています。


問題3
 最後に技術的な観点から考えると、ヘリコプターのローターの場合、翼の後ろで変化する空気は、「後ろのローターに食われてしまう」のです。ということは当然「自分が吸っている空気は前のローターが吐いた空気だ」ということです。これはプロペラやタービンの場合も同じです。

 飛行機の翼の場合は基本的に関係ありませんが、「大きな飛行機の後ろを小さな飛行機が飛んでいて墜落した」なんて場合は実質的にこの問題が起こっているのです。でも具体的に何が起こっているかは誰にもわかりません。原理的にもシミュレーション的にも非常に難しい問題なのです。

 というわけで、支障がない限り、空気の力を「気体の分子運動の総和」ではなく「圧力」として考えるべきだと思います。圧力は、気体の分子運動の総和の「上位概念」で、確かに気体の分子運動を全て把握すれば、圧力を厳密に定義できます。でも気体の分子運動を全てどころか一部でさえ(もしくは統計的にでさえ)把握するのは困難です。それに対して圧力は、「気体の分子運動なんか全く分からなくても定義できる」という便利なものです。また測定も簡単です。

 例えば「ブラウン運動」を説明しようというなら、気圧だけではどうしようもありません。「気圧の正体」として分子の運動量を論じる必要があります。しかし、ヘリコプターのローターを定性的に論じる際に必要とは思えません。

  投稿者:EMAN - 2007/07/18(Wed) 01:34  No.1991 
 ああ、言葉の問題でありましたか。
 勘付いておりましたけれど。

 これについては、表現が気に入る、気に入らないの話ですので、これ以上の議論を続けても無駄かと思われます。
 では、物理的イメージについては一致したようですので、この件は解決ということにしましょう。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/18(Wed) 02:02  No.1992 
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>「空気(の塊、もしくは流線)を下に押し出すことで、上向きの力を得る」という考え方をどう演繹すると上記の自動車をひっくり返せるのか「思考実験」してみて下さい。

これは、「自動車」と、「流体+地球」の運動量保存で説明できると思います。翼の場合と違うのは、「流体」の一部分が「地球」置き換わっているだけで、「自動車」以外にトータルとして下向き運動量を与えているという点で同じと思います。
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 地球の運動量まで含めなくても、単に「地面で反射した」と考えればいいんじゃないですかね。実際飛行機のフラップなんかは「地面から跳ね返ってきた流線をもう一度地面に押し戻す」というような考えで設計されています。

 しかし、自動車の底面には流線を下に向ける構造がありません。むしろわずかに下向きの迎え角が付いているので、本来なら(粘性がないなら)流線は上を向くはずなのです。しかし実際にはよく飛びます。

 私も本当にどうなのかは知りませんが、「底面の空気は粘性を通して自動車から前向きの運動量をもらう、その結果減速し、圧力が上がり、自動車を飛ばす」のだと思っています。流線は下向きにはなりませんし、地面に反射することもありません。

 「じゃあなんで上面の圧力は上がらないんだ」というと、単に技術的な問題として、上面の方がつるつるに作れるからです。したがって、現在でもこの問題に対する最も効果的な対策は「下面をなるべくつるつるに作る」ということです。

 また、実際には上面の圧力の方が上がることもあるようで、車が飛ぶ前には不安点に振動するそうです。しかし、上面から圧力がかかっても「何も困らない」ので走行は続き、ある瞬間下面からの圧力が限界に達すると「飛んで終わり」ということになるわけです。

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>失速
 翼が空気の流れを変えて(運動量を下向きに変えて)上向きの力を得ている、というのは直観的な事実です。そして翼の迎え角を大きくすればするほどその力は大きくなるはずです。ところが、迎え角がある角度を越えると上向きの力は数分の一に激減します。空気を下に押し出す量は増えているにもかかわらずです。なぜでしょう。

流体は詳しくないので、細かいことは分かりませんが、これは、「空気を下に押し出す量は増えているにもかかわらず」という部分が誤りなのではないでしょうか。失速というと、大雑把にはきれいな層流が乱流になることと思いますが、乱流になれば、トータルとしての流体がまとまってある方向の運動量を持つ傾向が激減すると思います。
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 その通りです。私は単に言葉の問題として、「(翼の下面が)空気を下に押し出す量は増えるが、(翼の上面が)空気を上から吸わなくなるため」というように言いたかったのです。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/18(Wed) 02:15  No.1993 
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 ところで、この問題で、無視されている点がある。 止まっている状況しか考えていないのではないか?! では翼相当部分が「実際に動いた」ならば、どうなるだろう。
 もし動いたら、その分だけ下側に隙間ができるから、それを埋めるべく、流体は下へと移動するので、巨視的な流れができることになるだろう。 これは、「流れは常に水平である」という前提条件を崩しているわけだから、これ以上論じても仕方ないことになる。
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 翼部分が動くことは考えていません。ただし、翼部分は構造的に上下に動くようになっていて、しかも翼には上向きの圧力がかかっています。それでも動かないのは、翼部分には圧力を打ち消す「重力」が働いているからです。

 そもそもこの話は「空中に静止しているヘリコプター」から始まったので、妥当な仮定だと思います。実際翼が動くとすると定量的な議論が必要になるので、「思考実験」じゃ無くなってしまいます。

  投稿者:kara - 2007/07/18(Wed) 05:18  No.1994 
>地球の運動量まで含めなくても、単に「地面で反射した」と考えればいいんじゃないですかね。

質問が、翼の場合に見られる、流体に与えられた下向きの運動量が、自動車が飛ぶ現象ではどこに消えたのかを問うている、と解釈したため、「それは、地球に行った」という答え方になりました。


  投稿者:murak - 2007/07/18(Wed) 06:24  No.1995 
日帰り出張で掲示板をチェックしていないうちに議論がどんどん進んで、話も殆ど終息してしまった感がありますが、私の方にも補足しておくべき点がありますので、少し書いておきます。

まず「抗力」という言葉遣いについてですが、あの使い方は物理での一般的な用法からいえば間違っているわけではありません。実際、あそこでの「抗力」の意味は、中学理科にも出てくる、斜面におかれた物体の問題等で、物体が面を押す力の反作用として面から受ける力を「抗力」と呼ぶ例に倣ったもので、英語で言えば reaction にあたるものです。一方航空工学や流体力学では物体が流体から受ける力のうち(背景流としての)流れに平行な成分(抵抗、drag)を「抗力」と呼ぶ習慣があります。このことを承知の上で、あそこではわざと物体が流体から受ける力の全体(合力)を「抗力」と書いたのですが、その点については文中に括弧書きで説明してある筈です。(なお、流体力学でも今井功の教科書なんかでは drag を「抗力」ではなく「抵抗」と書いています。)また、圧力は、あの場合(その積分値のカタチで)「抗力」に含まれています。

それともう一つ大事なことは、「境界条件」の問題です。確かに先の私の書き込みでは境界条件には触れていませんが、あそこでの説明は、流体の境界が無限遠方、もしくは翼が流体に与えた運動量が粘性等で散逸してしまうに十分なだけ遠方にあるという境界条件に相当します。そして飛行機が実際に上空を飛んでいる場合には、その境界条件が当てはまります(多分ヘリコプターが十分上空を飛んでいる場合もそうでしょう)。このことは実際に上空を飛んでいる飛行機の後方には下降気流が観測されることから分かります(しかし、それは地面まで到達するわけではない)。

では、その下向き運動量が散逸してしまう前に下方境界(地面)に到達すればどうなるのでしょうか? その場合、翼は地面を感じます。どういうことかと言えば、それは下向きの流れが地面に到達した時に起こる圧力変動が弾性波の形で流体を伝わって翼にまで伝わるからです。(その速度は勿論音速ですが、非圧縮流体の仮定をおいてしまうと、その速度は理論上無限大、すなわち瞬時に翼にまで伝わることになってしまいます。)しかし、このような波動伝播がある状態は定常状態ではありませんので、それによって流れ(及び圧力場)は変化することになります。なので、平板状の物体と下方(あるいは上方)の境界が十分近く平行に置かれた状況での定常流を考えると、解は境界が無い場合とは全く変ってしまって、それは(少なくとも板と境界面の間では)殆ど平行流になるでしょう。このときもし境界面や板と流体の間に粘性抵抗が働くなら、その分流速が遅くなり、板に上向きの余計な(?)力が働くという状況は十分ありえるでしょう。

従って、冨士さんもご自身でおっしゃっておられるように境界条件の設定はとても大事で、場合によってはそれが問題の物理的状況を全く変えてしまう事があります。一方、計算機で数値シミュレーションを行う場合は、計算上の制約から境界が無限遠にあるなんて状況設定は出来ませんから、必然的に何等かの境界条件をおく必要が出てきます。従って、その場合、(計算上の制約から置いた)境界条件が、問題の物理的性質を変えていないかどうかは十分検討する必要があります。この観点から言えば、冨士さんの持ち出された例は、いずれも、平行流が流れに垂直な方向の力を物体に与えるという例にはなっていますが、実際の飛行機が上空を飛んでいる際の状況を説明するものではありません。というのが私の見解ですが、冨士さんのこだわっておられるのはあくまで平行流で揚力(この場合の意味は単に流れに対して鉛直上向きの力という意味だが)を出すという事のようなので、それも仕方が無いことなのかもしれません。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/18(Wed) 06:43  No.1996 
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 気流を翼の上からうまく引っ張ってきて下に叩きつけようと、下面で押し出して下に叩きつけようと、私にとっては、空気を下方に叩きつけているという、ひとつの事実として捉えています。
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 上の書き方もまだまだおかしくて、「失速」という現象を理解できていないように読めます。「空気を下方に叩きつけているという点では同じ」という言い方は、翼の上面と下面に働く物理が同じで、状況によらず連動して働く場合にのみ可能なことです。

 例えば「双発機のエンジンは、右にあるか左にあるかは違うが(ちなみに回転方向も違う)、空気を後ろに叩きつけているという点では同じ」と言うのは、全く問題ありません。

 それから「空気を下方に叩きつける」という言い方も問題です。じゃあ「空気を下方に叩きつけなければ浮けないのか」となり、気球が浮かんでいる理由を共通の原理で説明できなくなってしまいます。だから私は最初の最初で「浮力」の話を出したのです。

 浮力を説明する時、巨視的な「気流」は全く出てきません。「気圧(差)」だけです。そして揚力も第一義的には気圧差だけで説明できるのです。第二義的に、気圧差を生じさせるための方法として、浮力は重力によって生じた気圧差をそのまま利用し、揚力は翼を使って気流を曲げることで気圧差を生成し、利用しているのです。

 こう考えてくると、「結局気圧差を作りだせればどんな方法でも浮くんだ」と思いつきます。それが私の思考実験、及び実験の元です。と同時に、「翼の上前方にエンジンを置き、エンジンの力で直接翼上面の気流を速くして揚力を増している飛行機がある」という実例も出しました。この方法を極限まで推し進めれば、もはや空気を下に叩きつけなくても飛行機は浮けるのです。他にもいろいろな方法が考えられるでしょう。

 「翼は空気を下方に叩きつけるもんだ」という表面的な理解だと、このように話を広げることができません。

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 この辺りの誤解から、「何を言ってるんだ、あなたたちの方が間違っているのは確実なのに!」という反発心を生んで、私たちの説明に対して受け入れられない気持ちを生じさせている可能性があります。
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 違いますね。私は2回目の投稿の冒頭で、「大体了解しました、、、後は言葉遣いの問題です」と書いています。つまり、その後の話は実は物理ではなく「誤解」がテーマなんです。私自身が「誤解」にテーマを移しているのに、その誤解に反発する、というのは何か変でしょう。

 とにかく、「微妙な表現」の背後には「より重大な誤解」があります。また、「言葉の間違い」というのは往々にして「原理の間違い」より大きな害を及ぼします。「物理的解釈が正しければ言葉なんてどうでもいいだろう」と考える人がいるかも知れませんが、そもそも言葉がなければ誰もその人の物理的解釈が正しいかどうか検証できません。また、言葉に意味を見いださないのなら、そもそもこのサイトや掲示版自体が無意味だ、ということになってしまいます。

 ですから、何かを書くのであれば、可能な限り意味のある言葉を書くようにするべきだと思います。
 

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 つまり彼らの多くは作用反作用によって説明できると聞くと、「そういうことを言うやつらは翼の下面のことしか考えていない!」と思ってしまうわけですね。
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 原文の書き方だとそう思われても仕方がないですね。結局第三者に伝わるのは、「あなたの知識や理解そのもの」ではなく「あなたの書いた言葉」なのです。

 日本には「言霊」という面白い概念があって、これはつまり「言葉」にはそれを発した人間とは異なる魂があり、自分の意志で勝手に世界を変えていく力がある、というような意味です。言霊に躍らされないように、と私は常々考えています。


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 実は、業界で形成された、用語に対する感性の違いに過ぎないことなのに。
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 それは「過ぎない」じゃすまない話です。どの「業界」にも属さない人間にも分かるように伝えるべきです。その象徴として私は「子供でもわかるように」と何度も書いています。


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 お互いを無知だと思ってるからそうなるのかな。
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 そういうバカな輩は多いですね。ロジックは極めて簡単で、「俺は物理が得意だ。物理の専門家だ。だから偉いんだ」というものです。そんなにバカで本当に物理を理解できているのか、と聞き返したくなる。

 普通の人は「俺は物理が得意だ。物理の専門家だ。ということは相対的に他のことに関しては苦手で、素人だってことだよな」と気がつきます。これが専門家としての自我の確立です。

 次に、「すると何をするにも一人じゃ無理なんだから、他の分野を専門にする友達をいっぱい増やして仲良くしておかなきゃ」と考えます。

 ところがいざ仕事を始めてみると、「話が通じねー。どうしたらいいんだ」となります。その時「自分の話していることは正しいのか」という観点に立つと話は進みません。例えば、日本人とドイツ人が会話をしようとする時、日本語とドイツ語のどちらが「正しい」のかを考えても埒が明かない、ということです。それで普通はより簡単で一般的な言語である英語を使って話したりするわけですが、これは上で書いた「子供にでもわかるように」という考えに通じます。

 それでも多くの場合話が通じないもんです。その時私が立つ観点は、「自分が話したことによって、相手の仕事は正しく進んだか」というものです。相手の仕事が正しく進むことが、自分の話が正しかったと判定する唯一の基準です。つまり、小さな子供が相手であれば、「ヘリコプターのローターは小さなドラえもんが支えている」と言ったって別に間違いではないのです。

  投稿者:ASA - 2007/07/18(Wed) 08:28  No.1997 
>>No.1989
>普通「条件」が変わっても適用できる物理法則は変わりません。
 普通の意味が激しく違うようですね。
前提条件つまり物理的フレームが違えば適用できる物理的アプローチは変わります。
 ここでは圧縮性を無視できるかどうか、言い換えればローターの翼がどの程度の定常的な圧力勾配を起こすかという定量的なお話をしなければなりません。圧縮性が無視できるならクッタージューコフスキーの定理から揚力は循環量だけで決まります。循環即ち流れの曲率ですから下向きの流れのみを考察すればよいことになります。

>問題1:しかも引力の効果の方が大きいのです。
ローターの翼は、それほど高速回転をしてないと認識しているので非常に疑問です。
定量的に示してください。

>問題2:圧力が上方に伝わる間に翼が前方に移動してしまうため
 間違い。ローターの翼は、超音速で回転しませんし、周期的なので元の位置より後方の場合もありますね。

>問題3:「自分が吸っている空気は前のローターが吐いた空気だ」ということです。
 これも間違い。前の回転翼が下方に空気を叩き出すので、ローター部の圧力が減少し、その結果、上面から新たに空気が吸い込まれる。この空気を更に次の回転翼が下方に空気を叩きだ出す。

>>No.1993
>そもそもこの話は「空中に静止しているヘリコプター」から始まったので、妥当な仮定だと思います。実際翼が動くとすると定量的な議論が必要になるので、「思考実験」じゃ無くなってしまいます。
「空中に静止しているヘリコプター」では、ローターの翼が動いているケースなので冨士さんの持ち出された色々な「思考実験」は無意味で、定量的な議論が必要です。
是非「引力の効果が大きい」を定量的に示してください。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/18(Wed) 13:02  No.1998 
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 ここでは圧縮性を無視できるかどうか、言い換えればローターの翼がどの程度の定常的な圧力勾配を起こすかという定量的なお話をしなければなりません。
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 ローターには何種類もの原理の力が働いています。私はその中に「流線を下方に曲げずに翼上下面に圧力差を生じるような状態を作れるか」という実験を提案しました。

 これは「ローターにはその他の力は働いていない」と言っているわけではありません。また、定性的な実験ですから、この力がローターの力のx%を占めている、というような話をしているわけでもありません。

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>問題1:しかも引力の効果の方が大きいのです。
ローターの翼は、それほど高速回転をしてないと認識しているので非常に疑問です。
定量的に示してください。
---

 私自身は具体的な数値を持っていないので、一つだけ引用します。
http://www.h5.dion.ne.jp/〜gungun/Aerodynamics2.htm

 中間辺りに「翼の断面と翼面の圧力分布」というそのままズバリの図があります。

 「空気の流れ」で考えると、どこがどのように「働いて」いるのか分かりません。また、下にも同じ問題が書いてありますが、そもそも翼の後ろにおいて(特に失速した状況で)、ある空気が翼の上面と下面のどちらを通って来たか区別するのは困難です。しかし、空気を「ブラックボックス化」し「圧力」に置き換えてしてしまえば、非常に簡単に実験、理解、説明できます。

 繰り返しますが、私は「圧力として解釈することが物理的に正しい」と言っているのではありません。「その方が簡単に子供に説明できる」といっているだけなのです。


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>問題2:圧力が上方に伝わる間に翼が前方に移動してしまうため
 間違い。ローターの翼は、超音速で回転しませんし、周期的なので元の位置より後方の場合もありますね。
---

 絵で書くと分かりやすいのですが、翼が前方に移動する距離は、
(翼上面のA点までの距離)*(ローターの速度)/(音速)です。

 角度でいうと音速の時ちょうど進行方向から45度になります。音速以下の場合は90度(下方)との間、音速を越えると0度(前方)との間になります。静止している場合は90度(下方)で、この時だけ遅れは発生しません。

 周期的だから云々という点は、私も既に述べているようにその通りです。

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>問題3:「自分が吸っている空気は前のローターが吐いた空気だ」ということです。
 これも間違い。前の回転翼が下方に空気を叩き出すので、ローター部の圧力が減少し、その結果、上面から新たに空気が吸い込まれる。この空気を更に次の回転翼が下方に空気を叩きだ出す。
---

 言葉の問題になりますが、このスレッドの議論では「前のローターが吐いた空気」を、翼の上面下面を問わず「翼の運動によって流線が変化した空気全て」と捕らえています。したがって「上面から吸い込まれた新たな空気」というのは「前のローターが吐いた空気」そのものです。

 そもそも、ローターは「ノズル」のような明確な噴出口を持っていませんし、また「吐いた空気を区別するために色を付けておく」なんていう実験もできません(思考実験でも)。

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「空中に静止しているヘリコプター」では、ローターの翼が動いているケースなので冨士さんの持ち出された色々な「思考実験」は無意味で、定量的な議論が必要です。
是非「引力の効果が大きい」を定量的に示してください。
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 空中に静止したヘリコプターの場合、ローターの垂直方向の速度は0です。つまり、位値エネルギーは全く変化しません。この状態で慣性系をローターに移せば「ローターは静止していて、空気が前から飛んでくる」というモデルに置き換えられます。


 最後に、私は「この実験で何かを証明しよう」とか「設計をしよう」というわけではありません。単に「面白いから」であり、もしかしたら誰かが将来似たような実験や設計を行う時の助けになるかも知れない、という程度に考えています。

 そういう実験に対して、繰り返し「定量的に」というのは無意味だと思いませんか。また、もし私が大学で空力などをやっていて、実際に定量的な値を示すことができたとして、それをあなたは検証できますか。またそもそも、私の説明やデータを信じますか。「思考実験」の優れたところは、他の何にも依存せず、誰でも自分の頭の中だけで結論を出せる、という点にあります。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/18(Wed) 15:55  No.2000 
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まず「抗力」という言葉遣いについてですが、あの使い方は物理での一般的な用法からいえば間違っているわけではありません。
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 おそらくあなたの言っていることや物理は全て正しいと思います。しかし、それは私にとって何の意味もありません。

  投稿者:ASA - 2007/07/18(Wed) 17:40  No.2001 
>ローターには何種類もの原理の力が働いています。
 何種類もの原理の力が働くわけないでしょ。原理的には流体力学のみと考えられます。

>定性的な実験ですから、この力がローターの力のx%を占めている、というような話をしているわけでもありません。
 ですから無意味と指摘したのです。

>私自身は具体的な数値を持っていないので、
 そうですか。流体関連のプロジェクトに参加なされた経歴があるようなので、
先に当方が示した「クッタージューコフスキーの定理から揚力は循環量だけで決まります。循環即ち流れの曲率ですから下向きの流れのみを考察すればよいことになります。」
これ以外の方法論で導出した結果をお持ちなのかと思ってました。

>「空気の流れ」で考えると、どこがどのように「働いて」いるのか分かりません。
 変ですね。流体力学のアプローチだと空気の流れを求めない限りは、どこにどのような力が「働いて」いるか計算できないはずでけど。

>「その方が簡単に子供に説明できる」といっているだけなのです。
 それはあなたが単に説明しやすいというだけで、一般性を持ちません。
また、物理的に間違っている場合には、逆効果になるケースが多いのではと危惧致します。
 
>(翼上面のA点までの距離)*(ローターの速度)/(音速)です。
 あと圧力変化の影響は、空気の流れ込みによって緩和され遠方には作用しないと思われます。
データをお持ちで無いようなので定量的は議論はできませんが、定常的な負の圧力勾配の存在範囲は、ローター上部近辺(吸い込み流の存在範囲)しかないと思われます。
 この負の圧力勾配がローター上部の空気に作用し下降流を作り出していると捉えることも可能であります。よって圧縮性を考慮して圧力勾配があるというモデルでも上方の空気を掴んで投げるという説明を否定できません。

>「上面から吸い込まれた新たな空気」というのは「前のローターが吐いた空気」そのものです。
他の部分では言葉の用法に厳密なようなので、ダブルスタンダードだと思います。

>ローターは「ノズル」のような明確な噴出口を持っていませんし、また「吐いた空気を区別するために色を付けておく」なんていう実験もできません
 線香の煙に色付けをすればいいのでは?

>この状態で慣性系をローターに移せば「ローターは静止していて、空気が前から飛んでくる」というモデルに置き換えられます。
 間違い。回転という加速系なので慣性系への変換はできません。

>実際に定量的な値を示すことができたとして、それをあなたは検証できますか。
 計算過程を示してくだされば、検証できます。

>誰でも自分の頭の中だけで結論を出せる、という点にあります。
 ですから、それが独りよがりのものでは意味が無いと主張してます。

  投稿者:murak - 2007/07/18(Wed) 19:55  No.2003 
どうやら、まだお解り頂けていないようなので、もう少し書いておきます。

> こう考えてくると、「結局気圧差を作りだせればどんな方法でも浮くんだ」と思いつきます。それが私の思考実験、及び実験の元です。と同時に、「翼の上前方にエンジンを置き、エンジンの力で直接翼上面の気流を速くして揚力を増している飛行機がある」という実例も出しました。この方法を極限まで推し進めれば、もはや空気を下に叩きつけなくても飛行機は浮けるのです。他にもいろいろな方法が考えられるでしょう。


残念ながら、この部分は(実例の部分を除いて)完全に間違いです。少なくとも「浮く」ということを飛行物体が自力で達成することを考える限りは。

幸い、飛行機の翼が気流を下方に曲げることで揚力を得ているという事についてはご理解頂けているようなので、これをベースに考えましょう。この時の空気の流れを翼に固定された視点ではなく流体系、あるいは地上系から見ると、翼はその移動に従って自分が通過する付近の空気塊(の大部分)を一旦上方に放り投げた後、それを今度は下方に投げていることになります。この際の上下方向の運動量の収支を考えると、結局下向きに与えている運動量の方が多く、結果として機体は浮いていられる事になります。このような一連の動作を翼は周囲の流体自体の助けを借りながら実現してるわけですが、その際の流体力学的、あるいは航空力学的特徴はどういう部分に現れているかといえば、それは(周囲の物質が流体的特徴を持っていなかった場合、つまり流体粒子間の相互作用が全くない場合に)翼の下面が掃過して下方に叩きつける量より、遙かに多量の空気を下方に投げることが出来るという所にあります。言い換えるなら、飛行機の翼は単純に想像されるよりは遙かに効率よく空気を下方に投げるための装置だと考えることも出来ます。(この意味で、私は最初の書き込みで「飛行機は『周囲の空気を掴んで』下方に放り投げている」と書いたのです。)

このように考えてくると、翼上前方にエンジンを置くことで揚力が増す理由も簡単に理解することが出来ます。すなわちエンジンは翼上面を通過する空気の速度を増して上面での圧力を下げますが、これは翼後方で下方に折り曲げられる単位時間あたりの空気の量を増やしている事に他ならないのです。(つまり流速が上がって翼上面での圧力が減ることと、後方で折り曲げられる=下方に投げられる空気の運動量が増えることは常にセットなのです。このことを忘れて、揚力を増やすには上面での流速を増やしさえすれば良いのだと思ってしまうと、ちょっと危険です。)

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蛇足ですが、ついでなので、飛行機の速度が音速に近づくと揚力が激減する物理的理由も考えてみましょう。上で述べた様なメカニズムで、翼が効率よく周囲の空気をかき集められる背景には、空気の流体としての性質(つまり圧力変化に応じて如何様にでも流れが変えられるという性質)が大きく関係しています。実際、翼上面での流速が増して圧力が低下すると、定常状態を維持するためには当然周囲から空気が寄ってこなければなりません。つまり飛行機は実際にはその周囲のかなり広い範囲の空気に影響を与えながら飛んでいるわけです。実際、翼の前方の空気塊は翼が近づいてくるかなり前から上昇運動を始めます。これは勿論定常流としてそのような流れが形成されているためですが、見方を変えれば、翼前方の流体粒子は圧力変化を通して翼がやってくることを事前に察知しているのだと思うことも出来ます。では飛行機が音速に近づくと何が起こるでしょうか? 中途半端だとかえって考えにくいので、いっそ飛行機が音速を超えてしまったとしましょう。これまでから何度も述べているように、流体中の圧力情報は音速でしか伝わりません。しかるに、飛行機の機体は音速を超える速度で飛んでくるわけですから、結局流体粒子は機体が近づいてくることを事前に知ることなく、突如として押しつぶされる事になります(これが衝撃波が形成される際に起こっていること)。この場合、上に述べたようなメカニズムで飛行機より前方の空気を集めることは全く出来ないという事になります。かなり粗っぽい説明ですが、これが音速に近づくと揚力を得る上述のような機構がうまく働かなくなる事の原理的な理由です。

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以上、長々と書いてきましたが、飛行機は上空では必ず流体に下向きの運動量を与える(空気を下に投げる)反動として浮いています。ただ、物体の周囲の気流を外的な強制により調節してやれば、物体自体が空気を下に投げない事もあるいは可能かもしれませんが、これでは物体が自力で浮くというのにはほど遠い。その方法で物体がある距離を飛行するには、その経路に合わせて強制的な気流を作り出す装置をあらかじめ設置しておき、その中を(丁度列車がレールの上を走るように)飛行するか、若しくは飛行物体を包み込む巨大な装置があって、その装置を移動させながら、中の飛行物体を飛ばすようなイメージになりそうです。(でもこれってエネルギー効率的にはとても無駄なことをしているような気がします。)

  投稿者:ASA - 2007/07/18(Wed) 20:52  No.2004 
>飛行機の速度が音速に近づくと揚力が激減する物理的理由も考えてみましょう。

相互作用を持ち出した説明より、納得しやすい説明ですね。

このような説明を考えてみました。
いきなり超音速の状態でなくまず遷音速の状態を考えます。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%BF%BC%E5%9E%8B
に示されている一般ジューコフスキー翼を仮定すると、
遷音速状態では、翼上部の流れが音速を超えるので翼上面のみに衝撃波が発生します。
発生した衝撃波は、上方に運動量を運ぶので、翼は下向きの力を受けます。よって揚力が減少します。また、衝撃波面の後の流れも衝撃波発生前と同様である保証がありません。下方への流れが減少するなら、これも揚力の減少要因となると考えます。

  投稿者:murak - 2007/07/18(Wed) 22:27  No.2007 
ASAさんこんばんは。

翼の上下の流速は非対称なので、確かに遷音速領域での衝撃波の生じ方には上下の非対称性があって、そのことが重要ですね。実は航空力学は全くの門外漢で、遷音速領域で起こる現象のことも良く知らなかったりします。なので現象としての説明はすっとばしてしまいました。結局、私がしたのは音速付近で流体の物理的特性が大きく変ることの(荒っぽい)定性的な説明だけなので、現象としての正しい説明は、(よろしければ)ASAさんにお願いします。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/20(Fri) 13:16  No.2010 
 さて、最初に私が提出した思考実験について自分なりに総括しておきます。
http://www.11moon.com/temp/ex2.jpg

予想される結果
 左からやって来た流れは、流れAと流れBに分離するが、この時流れAの方が流速が速くなる。したがって、ベルヌーイの定理により流れAが翼上面を押す圧力は、流れBが翼下面を押す圧力より小さくなる。したがって、翼は上向きの力を得る。

 ここまででも話は通じるが、もし翼が上下方向に自由に動けるとした場合は、翼が得る上向きの力を相殺する重力が働いていると仮定し、翼を動かないようにできる。


物理的説明1
 巨視的な運動量に注目した場合、流路、流れ、翼の全てで、その垂直方向成分は0である。したがって当然運動量保存の法則は成り立つが、それは「何も説明しない」。


物理的説明2
 圧力に注目した場合、その値は次のようになる。

翼の上面に相対する壁 +A
翼の上面       -A
翼の下面       +B(ただし、BはAより大きい)
翼の下面に相対する壁 -B
 
 ここで、全体の圧力は均衡しているので、流路が動くことはない。しかし、翼は上向きの力(B-A)を受けるので、固定されていなければ動いてしまう。そこで-(B-A)に相当する重力が働いていると仮定し、動かないようにする。

 運動量保存の法則については、そもそも運動量という概念が出ていないので何も言えない。
 

物理的説明3
 個々の気体分子の微視的な運動量に注目した場合、運動量と力積が等価であるという原理から、上の物理的説明2で行った「圧力」の議論をそのまま「運動量」に置き換えることができる。

 運動量保存の法則については、圧力の議論において「均衡している」、「重力と釣り合っている」という表現が、「運動量が保存されている」という表現と等価である。そして、もちろん圧力という言葉を使わなくても、運動量だけでこの現象を説明できる。


結論
 圧力というのは、流体を構成する分子の微視的な運動量の変化を論じた場合の「一部」を表す上位概念である。したがって、微視的な運動量に関する議論は圧力の全てを説明する。これに対して、いくら圧力を議論しても流体の微視的な運動量は全く分からない(例えば壁に平行な向きの運動量や、壁から離れた分子の運動量など)。

 したがって、より根源的な物理である運動量を使って物事を説明しようとする姿勢は基本的に正しい。

 しかしながら、上の物理的説明1で述べたように運動量には「巨視的」な捉え方もあり、この方が一般的である。巨視的な運動量というのは、分子の塊の運動量の総和であり、便宜上「全ての分子は流線方向に流速で運動している」と考える。このような考え方が生じるのは、現実的な系で微視的な運動量を測定したり議論することがほとんど不可能だからだ。

 この巨視的な運動量というのも微視的な運動量の上位概念だが、圧力よりもさらに上にあるので、圧力を説明できない。これが、上の物理的説明1が何も説明できていない理由である。ただし、物理的説明1は間違っているわけではない。もちろん運動量保存の法則に反しているわけでもない。ただ説明できないのである。

 というわけで、ヘリコプターのローターが発生する揚力の説明に運動量を使う場合は、「分子の微視的な運動量は」と注釈を入れるべきである。また、必要十分で誤解の生じない「圧力」という概念の方を使うべきである。

 さらに言葉の問題として、運動量の説明では「押す」という言葉しか使えないが、圧力の場合は「押す(正圧)」と「引く(吸う、陰圧)」の両方の言葉が使える。翼の上面の物理に対して「上から吸われている」と説明するのと、「上から押される力が減っている」と説明するのでは、明らかに前者の方が直観的である。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/20(Fri) 14:44  No.2012 
---
> こう考えてくると、「結局気圧差を作りだせればどんな方法でも浮くんだ」と思いつきます。それが私の思考実験、及び実験の元です。と同時に、「翼の上前方にエンジンを置き、エンジンの力で直接翼上面の気流を速くして揚力を増している飛行機がある」という実例も出しました。この方法を極限まで推し進めれば、もはや空気を下に叩きつけなくても飛行機は浮けるのです。他にもいろいろな方法が考えられるでしょう。

残念ながら、この部分は(実例の部分を除いて)完全に間違いです。少なくとも「浮く」ということを飛行物体が自力で達成することを考える限りは。
---

 言葉が抜けていたので、補足しておきます。「空気を下に叩きつけなくても飛行機は浮ける」というのは、正確には「空気を「翼の」下側に叩きつけなくても飛行機は浮ける」ということです。

 空気を下「向き」に叩きつけることはもちろん必要ですが。それは翼の上側だけで完結できます。つまり、空気を「上から吸い続け」ればいいのです。これは「空気を下に叩き続ける」というのと全く等価です。

 上から吸われた空気は後方で上に戻り、前方に戻ってきてまた上方から吸われる、と考えることができ、この気流の循環を維持しているのが翼上方にあるエンジンだ、となるわけです。そしてこの翼上方の系は、微視的な運動量で考えると、「浮力」と同じような効果を及ぼします。

 浮力の説明において、上空の空気圧が下がるのは分子が上空に上るまでに重力によって運動量を失うからです。これに対して、流体は流れることによって流線に垂直な方向の運動量を失います。原理は異なりますが、結果的に「翼上面の圧力が下がる」という点では同じです。

 そしてこの時、翼は静止していても揚力を発生できます。なぜなら翼の上下面間には圧力差が発生していて、その圧力差はエンジンによって保たれているからです。粘性がない限り、翼下面の空気は全く動きません。つまり「気球と同じです」。これが、「もはや空気を下に叩きつけなくても飛行機は浮ける」という表現のちょっと詳細な説明です。

 このように書くと、「エンジンが空気を後ろに押し出しているんだから翼は必ず前に進むだろう」と思うでしょう。もちろん進んでもいいのですが、止まっている方が思考実験は簡単です。翼の上にエンジンを「前、後、後、前」と並べれば静止させることができます。

---
言い換えるなら、飛行機の翼は単純に想像されるよりは遙かに効率よく空気を下方に投げるための装置だと考えることも出来ます。(この意味で、私は最初の書き込みで「飛行機は『周囲の空気を掴んで』下方に放り投げている」と書いたのです。)
---

 この解釈と表現で問題ありません。ただし、「空気を下方に投げる」のは翼の上側でも下側でもよく、翼の上側の場合は、投げるという言葉よりも「吸う」という言葉を使った方が直観的です。

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すなわちエンジンは翼上面を通過する空気の速度を増して上面での圧力を下げますが、これは翼後方で下方に折り曲げられる単位時間あたりの空気の量を増やしている事に他ならないのです。
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 この部分は間違っています。なぜなら何の根拠もなく「(空気が)翼後方で下方に折り曲げられる」と書いているからです。

 一般的な翼の後方で気流が下方に折り曲げられるのは、それによって翼の上下面間に圧力差を生じさせるためです。構造的には適切な翼型の翼に適切な迎え角を与え、翼を前進させることでこれを実現しています。しかし、私の思考実験の中にある飛行機は「最初から」エンジンによって圧力差が保たれているので、翼はただの板でよく、水平で、前進している必要もありません。

 つまり、空気を翼後方で下方に折り曲げることは「できません」。むしろ翼後方では下からも空気が吸われて、翼に下向きの力を与えます。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/20(Fri) 15:58  No.2013 
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 >ローターには何種類もの原理の力が働いています。
 何種類もの原理の力が働くわけないでしょ。原理的には流体力学のみと考えられます。
---

 今回のヘリコプターの問題を考えるにあたって、最低でもローターには「(流体力学の結果による)圧力」、「(流体力学の結果によらない)圧力(静圧、つまり浮力)」「重力」、「(エンジンによる)トルク」が働いていると考えられます。私は重力を扱う時に流体力学は使いません。

---
>定性的な実験ですから、この力がローターの力のx%を占めている、というような話をしているわけでもありません。
 ですから無意味と指摘したのです。
---

 私が言いたかったのは、「無意味と言うこと自体が無意味だ」ということです。

---
>私自身は具体的な数値を持っていないので、
 そうですか。流体関連のプロジェクトに参加なされた経歴があるようなので、
先に当方が示した「クッタージューコフスキーの定理から揚力は循環量だけで決まります。循環即ち流れの曲率ですから下向きの流れのみを考察すればよいことになります。」
これ以外の方法論で導出した結果をお持ちなのかと思ってました。
---
 
 そんなもんはありません。この項の目的は、「引力(翼上面の負圧)の効果の方が大きい」という私の言葉を説明することでしたが、それについて「異論」はないですね。

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>「空気の流れ」で考えると、どこがどのように「働いて」いるのか分かりません。
 変ですね。流体力学のアプローチだと空気の流れを求めない限りは、どこにどのような力が「働いて」いるか計算できないはずでけど。
---

 まさにその通りです。だから流体力学のアプローチは取らない方がいいのです。流体力学が生まれて数百年経ちますが、設計に使えるレベルで流体力学の「計算」ができるようになったのはコンピュータが高速になったここ数十年のことです。それに比べて、圧力の「測定」は簡単で、直観的で、実用的です。

---
>(翼上面のA点までの距離)*(ローターの速度)/(音速)です。
 あと圧力変化の影響は、空気の流れ込みによって緩和され遠方には作用しないと思われます。
---

 この項の目的は、「圧力が上方に伝わる間に翼が前方に移動してしまう」という私の言葉を説明することでしたが、それについて「異論」はないですね。

---
>「上面から吸い込まれた新たな空気」というのは「前のローターが吐いた空気」そのものです。
他の部分では言葉の用法に厳密なようなので、ダブルスタンダードだと思います。
---

 分かっていただければ結構です。

---
>ローターは「ノズル」のような明確な噴出口を持っていませんし、また「吐いた空気を区別するために色を付けておく」なんていう実験もできません
 線香の煙に色付けをすればいいのでは?
---

 色の問題ではありません。
 
---
>この状態で慣性系をローターに移せば「ローターは静止していて、空気が前から飛んでくる」というモデルに置き換えられます。
 間違い。回転という加速系なので慣性系への変換はできません。
---

 厳密にはそうですが、実質的に問題ありません。ヘリコプターのローターも風洞(つまり慣性系)で実験しています。

---
>実際に定量的な値を示すことができたとして、それをあなたは検証できますか。
 計算過程を示してくだされば、検証できます。
---

 それは素晴らしい。それでも私は値を出しません。なぜなら、この掲示板の大多数の人間は検証できないと思うからです。それから、もし私が出すとしたら「計算結果」ではなく「測定結果」です。

---
>誰でも自分の頭の中だけで結論を出せる、という点にあります。
 ですから、それが独りよがりのものでは意味が無いと主張してます。
---

 本質的に「思考実験」というものが分かっていないようですね。私が出した思考実験に対する私の結果は、確かに独りよがりで「あなたにとっては意味のない」ものでしょう。しかし、私の出した思考実験に対するあなたの結果は、たとえ独りよがりであっても「あなたにとって意味のある」ものなのです。

 思考実験は実験ではないので、「誰に対しても意味のある(つまり客観的な)思考実験の結果」なんてものは存在しません。

  投稿者:ASA - 2007/07/20(Fri) 18:30  No.2014 
 長いので分けます。

全般的に流体力学の理解不足です。また、物理概念の表現が変です。

>「(流体力学の結果による)圧力」
 力学の結果という表現が意味不明です。
「流体力学で定義されている圧力」なら意味が通じます。

>「(流体力学の結果によらない)圧力(静圧、つまり浮力)」
 静圧と浮力は違います。
流体力学の教科書には、流れのポテンシャルから浮力の導出が記載されています。

>私は重力を扱う時に流体力学は使いません。
無知なあなただけのお話です。流体力学の体系では外力を含めて扱えます。
(外力が無ければ浮力は発生しない)

>無意味と言うこと自体が無意味だ」ということです。
 意味不明です。あなたが、Eman氏の説明にクレームしたのがこの議論の発端です。
Eman氏は、クレームに対して、エアクッション効果を無視するとの注記で対応しています。
これを、本当に無視できるものか定量的な評価をしていないので、多くの読者は疑問思うのでしょう。
この一連の議論によって、粗雑でもオーダー評価ができないかと期待していました。

>そんなもんはありません。 
 期待はずれなわけですね。

>「引力(翼上面の負圧)の効果の方が大きい」という私の言葉を説明することでしたが、それについて「異論」はないですね。
 異論はあります。揚力が働いているのですから、合計として上向きの力(「引力」?)が働くのは当然です。
 定理より揚力は、循環に比例します。循環は、形状により異なり、平板形状だと上と下との寄与は同じです。また、背面飛行中はどうなのかとか、いろいろ疑問が発生します。
 ちなみに、負圧という用語を使っていますが、この圧力の基準は何ですか?
基準の取り方で、たとえば翼上面を基準とするなら、翼下面にのみ「正圧?」があることになります。定量的な議論を続けるつもりがないならこれらの質問に答えなくて結構です。

  投稿者:ASA - 2007/07/20(Fri) 18:33  No.2015 
続き

>圧力の「測定」は簡単で、直観的で、実用的です。
 本当にプロジェクトの経験のおありか?
 予備評価もなしに、いきなり試験機体を作って飛ばせばよいという意見は、大抵コスト面から却下です。闇雲に試験機体を作って、設計目標をクリアできるわけはありません。コストにはパイロットの命も含むのですよ!!
 あと、翼への応力測定は簡単だと思いますが、周囲の圧力分布はどう測定するのですか?
失速などを分析するには、流れの解析が必須だと思っていました。翼応力測定値のみから分析する手法があるのでしょうか?、

>「圧力が上方に伝わる間に翼が前方に移動してしまう」という私の言葉を説明することでしたが、

それについて「異論」はないですね。
 そもそも圧力変化は流速変化によりキャンセルされるので遠方に伝わりませんし、また、圧力変化は、上方のみに伝わるものでもありません。
さらに、murakさんにも同様のコメントをしたように、定常状態では、圧力と流れはバランスしているので、伝わる云々が意味不明です。

>分かっていただければ結構です。
 使われている用語が信用ができないということが良く分かりました。

>ヘリコプターのローターも風洞(つまり慣性系)で実験しています。
 本当ですか?ローターは回転部全体のことですよ。ローターの試験で回転させないとは考えづらいです。ブレード単体の試験なら風洞でやることも考えられなくもないですが、ブレードの外側と内側でうまく流速勾配を与えなくては意味無いので、特殊な風洞が必要です。

>「測定結果」です。
 結果だけでは意味がないです。「計算過程」という言葉を理解できていますか?

>「あなたにとっては意味のない」ものでしょう。
>思考実験は実験ではないので
 「思考実験」といっておられますが実質「妄想」なわけで、私だけでなく他の人々にも意味がないです。

  投稿者:murak - 2007/07/20(Fri) 20:00  No.2016 
議論中すみません。

本線の議論とは別ですが、一応言い訳(?)を述べておくと、私が波動の伝播云々の話をしている時は、勿論定常ではない状況のことを念頭においています。

それともう一つ、これはASAさんに逆に質問なのですが、「そもそも圧力変化は流速変化によりキャンセルされるので遠方に伝わりません」と書いておられますが、これは非圧縮流体での事でしたっけ? 密度一定の非圧縮流体であれば自由表面でもないかぎりそもそも波動伝播は(確か)無かったですよね。一方、圧縮性流体の場合は音波が存在しますよね。これって、密度情報だけが伝播しているんでたっけ? ちょっと混乱してしまいました。(そういえば、これまで私は音波のことを弾性波ってかいてましたが、これは固体というか弾性体の場合の用語でしたね。このまえとある教科書で確認したら音波のことは粗密波ってかいてありました。) 勿論定常状態ではいずれにしろ波動伝播は無いでしょうが。。。

なお、本筋とは全く関係ないのですが、私にとって馴染みのある現象のスケールでは、大気は密度成層していて、とても波々としているという印象を持っている(それに定常状態というのもとても長い時間の平均を取らない限り意味がない)ので、つい波を考えてしまう癖があります。ご容赦下さい。(でも、工学の人達が扱っている流体に関しては、全く素人です。)

  投稿者:ASA - 2007/07/20(Fri) 21:22  No.2017 
murakさん今晩は。
私は、物理で流体力学をかじったことがある素人です。
murakさんの初めの説明は、なんとなく定常ではない状況を想定していると感じました。
 元々は非圧縮性流体を想定していました。今は、圧縮性を幾分考慮してます。(あと粘性を少々)しかし、定常状態のことを念頭においているのは変わりません。ですから、波動伝播は無意味と思ってます。非定常の状態は難しく定性的なことですら、かなりお膳立てをしないと議論できないと考えてます。これは平衡状態をのみ論ずる熱力学の立場に似ています。

 なお、音波は、流体の教科書によると熱伝導と粘性を無視する近似により密度変動ρの波動方程式を求めてます。熱伝導と粘性を考慮すれば、エネルギーロスがあるので、時間、空間の両面で減衰し、十分な時間(といっても秒スケール)が経てば定常状態として扱えるはずです。


  投稿者:凡人 - 2007/07/21(Sat) 01:15  No.2018 
流体力学が全く分からない人間が口を出して申し訳ありませんが、昔、簡単な模型飛行機を何機か作って、ことごとく墜落させてきた人間なので、どうか大目に見てください。
安全な飛行機やヘリコプターの形状を設計するためには、EMANさんがご指摘しているように、極力、翼やロータ、胴体等の周りに渦が出来ないようにしなければならないのではないでしょうか?
そうだとすれば、その設計の為の計算は非常に複雑になり、計算を行って設計しても、実験を行うと、当然の様にうまく行かないという事になるのではないでしょうか?
何度も引き合いに出して申し訳ありませんが、以下の格子QCDに基づく計算によって、カイラル対称性の破れを実証したように、
http://www.kek.jp/ja/news/press/2007/supercomputer2.html
シュミレーション環境プログラムを作成して、遺伝的アルゴリズム(GA)等を使って、力技で計算して設計した方が楽で、かつ良い設計が出来るのではないでしょうか?
私は、タービンブレードの設計をGAで行って成功したという話しを、科学雑誌等で十年以上前に目にしたような記憶があるのですが、実は現在、その辺のところは、コンピュータの計算能力の向上等により、格段に進歩しているということは無いのでしょうか?

  投稿者:murak - 2007/07/21(Sat) 05:11  No.2019 
ASAさん、今晩は。

私の理解では、圧縮性流体中の音波の方程式を求める際に、最終的に密度の式にするか圧力の式にするかは恣意的なものであって、どちらでも良かった筈だった思います。実際、熱力学の式として例えば理想気体の状態方程式を採用したとすると、温度一定の仮定の下では、圧力と密度は反比例しますよね。なので、この関係の下で圧力変化と密度変化は裏腹の関係にあるのではないでしょうか。(つまり、原理的にはどちらを使ってもいい筈。なので、私自身は音波を疎密波だと考えても、圧力波だと考えても良いはずだと思っています。ただし、現実問題としてどちらを使った方が良いかという問題はあるかもしれないし、その点については私はなんとも言えない。)

先の発言でも少し書いたのですが、密度一定の非圧縮流体の場合、そもそも流体中に波動が生じないので、例え非定常状態であっても、波動伝播は起こりません。この場合(ASAさんがどこかで書いておられた様に)流体の流速分布と運動量分布は常に等価になって、圧力変化が流速変化によって(ただちに)キャンセルされるという状況が出現するのだと思います(多分)。そして、亜音速領域での揚力を議論する場合などは非圧縮の仮定で導いた結論がかなりよく現実を近似するようなので、翼の周りの気流が定常状態からずれて、再び定常状態に戻るような場合でも、波動伝播の役割はあまり(殆ど?)重要でないのかもしれません。それ故また、音波を許すような圧縮性流体を考えた場合でも、流れと音波はあまり関係ないのかもしれません。しかし、弾性体中での物体の外力に対する応答が弾性波の速度により規定される事、及び弾性波の速度を無限大にする事と剛体近似が対応している事からの類推で考えれば、流体の圧力変化に対する応答特性も音速により規定されて不思議はない気がします。一方また、流体の密度が場所によって異なるような場合(典型的な例は密度成層がある場合)には非圧縮性の仮定をおいても流体中に波動が生じ得ます。実際、密度成層回転流体としての大気中にはかなり多様な波動が存在していて、そこでは流れと波動は無関係ではありません(ただ、現象のスケールは今考えている問題とは大分違いますが)。

ただ、ASAさんの言われるように翼に働く揚力を考える際には、定常状態を考えておくだけで十分であるのもまた事実です。実際、翼の古典理論で、クッタ・ジューコフスキーの定理を求める場合には力学(dynamics)は全く使いません。しかし、その一方で定常状態でしか物事を見ていないと、物事の因果関係がわからなくなることもあるような気がします。(実際、私には、冨士さんの議論は、定常状態におけるバランス関係のみにとらわれて、何が原因で、何が結果なのかを完全に取り違えているように見えます。)そんなわけで、定常ではない状態を念頭においた発言を意図的にしているというところはあります。とはいえ、やはり非定常状態を扱うのは難しいので、定性的議論といえども、実験や観測結果、あるいは数値シミュレーション等の結果を援用しながらやらないと道を誤るかもしれませんね。

  投稿者:ASA - 2007/07/21(Sat) 07:19  No.2020 
流体力学では、密度の式即ち、連続の式が基礎方程式なので密度変化が第一義的です。理想気体なら状態方程式により、p/ρ=RTでおっしゃるように温度一定の仮定では、pの表記で問題ないですが、流体で扱う問題は、断熱過程が多いので温度一定の仮定はあまりしません。回転翼が空気を押すとき等は、断熱過程と考えられます。

>流れと音波はあまり関係ないのかもしれません。
 教科書は、これを前提として記述されているように見えます。音波の項目としては、有限振幅(微小でない場合)以外は衝撃波の話題が記載されてます。

>流体の圧力変化に対する応答特性も音速により規定されて不思議はない気がします。
 この音速は一定でないところが肝です。(周波数や振幅やら、境界やら気体の状態に依存)

>定性的議論といえども、実験や観測結果、あるいは数値シミュレーション等の結果を援用しながらやらないと道を誤るかもしれませんね。
 これが言いたかったことです。

  投稿者:murak - 2007/07/21(Sat) 15:29  No.2024 
多分、断熱過程というか、等エントロピー流とかでも理想気体等の適当な仮定の下では密度と圧力は適当な関係で結ばれるので、やはりどちらでも(原理的には)同じだろうと思っていたのですが、確かに、流れが速い(音速に近い)場合や衝撃波のことを考えると、圧力を基本変数に選ぶのはあまりうまくなさそうですね。こうした熱力学的部分の困難を考えると、密度変化を第一義的と考えたほうが良いとおっしゃっているのだと理解しました。

圧縮流のイメージを掴むヒントが少し得られたような気がします。おつきあいありがとうございました。

  投稿者:ASA - 2007/07/21(Sat) 19:25  No.2025 
補足しておきますと、質量保存則の表現が連続の方程式です。
エネルギーや運動量が保存しない状況、粘性抵抗が効く過程でも質量は保存しているので、密度を基本変数にすると広い範囲で現象を述べることができるためと考えます。

 実在の空気では、熱伝導率が低いことが経験的にわかっているので断熱過程を前提とするのは良い近似と考えられます。
 しかし、変数としてはエントロピーよりむしろ、不可逆変化を前提としてエンタルピーを使うことが多いようです。

追伸:何故不可逆なのかとか粘性が働くのかという疑問に対する説明で、分子間相互作用を使われたなら違和感を感じなかったでしょう

  投稿者:murak - 2007/07/22(Sun) 09:11  No.2028 
> 追伸:何故不可逆なのかとか粘性が働くのかという疑問に対する説明で、分子間相互作用を使われたなら違和感を感じなかったでしょう

ASAさんが、このようにおっしゃった理由がわからずにしばらく考え込んでしまいました。(粘性の原因を説明したことは無かった筈なのにと・・・)

どうやらこれは、私が最初の発言で書いた「流体粒子間の相互作用」が「分子間相互作用等による粘性の発生」と読まれてしまったのだなとやっと気付いた次第。これでようやく色々な点で納得がゆきました。

確かに私のほうもその前に「気体構成粒子間の」と書いている部分があったので、誤解を受けても仕方が無かったのですが、あの部分で想定していた「流体粒子」はあくまで巨視的な(今井功の教科書等でかかれている)意味でのもので、その相互作用というのは基本的には圧力伝達のことです。つまり流れが速くなると圧力伝達に色々問題が出てくるといいたかっただけです。(粘性のことは最初から殆ど無視しています。)

  投稿者:MaT - 2007/07/23(Mon) 02:03  No.2042 
こんばんは。 どんどん話が難しくなって、私にはついていけないのですが、こんな考え方はどうでしょう。

もし、この世界は、空気でなく水(ぐらい重い気体)で満たされているとしたら、もっとイメージしやすいのではないでしょうか。
水中でローターをまわすのと、空中で同じ量の水を下へ投げつけるのと、同じ反作用力になるとは思えないのです。(水泳で手が押し出す水の量を、同じだけ空中で投げたら、ほとんど反動はないでしょう。)
つまり、
「ヘリコプターは、、、空気を下に放り投げた反動で浮いていられるのである。」
は、やはり、おかしいのでは?

  投稿者:EMAN - 2007/07/23(Mon) 12:24  No.2043 
> もし、この世界は、空気でなく水(ぐらい重い気体)で満たされているとしたら、もっとイメージしやすいのではないでしょうか。

 確かに、イメージし易いです。
 ちょっと大袈裟に考えた方が分かりやすいので、空気をそのような「重い物」として捉えるわけですね。 私もすでにそのようなイメージを使って考えていますが、他にもそういうイメージを使っておられる人は多いかと思います。


> 水中でローターをまわすのと、空中で同じ量の水を下へ投げつけるのと、同じ反作用力になるとは思えないのです。

 「思えない」だけでは、ある意見に反論する根拠としては弱いです。 その思いが、議論に参加している大多数の心に訴えかけることが出来れば、その多くの人たちはそのモヤモヤを解消する為に、納得の行くまで再び考え始めることになります。 その切っ掛けとしては「思えない」という事例を提出することは役に立ちます。

 ところが今回、私はMaTさんとは違って、同じ反作用力になると「思えています」。 水と空気の、流体としての共通点から、十分、そう思えるのです。


> 水泳で手が押し出す水の量を、同じだけ空中で投げたら、ほとんど反動はないでしょう。

 その根拠はありますでしょうか。
 水はかなりの重さですから、水を詰めた風船なんかを投げるのを考えれば、十分な反動があることが予想できると思いますが。 スケートボードなんかに乗ってこれをやったら、きっとかなり進めるはずですよ。

  投稿者:MaT - 2007/07/23(Mon) 14:51  No.2044 
こんにちは。
むしろ、「思う」だけで、文を書いているのはEMANさんのほうじゃないですか?

水泳と水風船の話が一番イメージしやすいはずですが、人間の体重と、風船の水の質量比からみて、スケボーの上で水泳で手を動かすぐらいの速さで水風船を押し出したら、人が進む速さは、多くても手の動きの1/10程度でしょう。
水泳で手だけで泳ぐこともありますが、手の動きの1/5以上の速さは出ているはずです。

それに、空中で水を投げるときと、水中で手を動かすときとでは、手にかかる抵抗がまるで違います。今試しに15リットルのバケツ(かなり大きい)の水を振り回してみましたが、水中での抵抗はこれよりさらに大きいです。

もし、水中で手で押す水は、ずっと先まであって、圧力は弱まりながらも無限に伝わる。という話であるなら、ヘリコプターは「空気を下に投げ出す」というよりは、よく言われる「空気の布団 の上に載っている」という表現のほうが適切な気がします。

大気中の現象は、どこまでも空気が連続して存在する点を無視して語ることはできないのではないでしょうか。この連続して存在する空気による力を簡潔に表現したのが「圧力」という概念だと思います。

  投稿者:EMAN - 2007/07/23(Mon) 18:30  No.2045 
 私が「思うことだけに頼って書いている」という批判が、数値を挙げて説明していない点に向けられたものでしたら、それは胸を刺されるようでしたが、受け止めることにしましょう。

 水の入った風船を投げることを想像して頂けるならば、ある程度、反動の手ごたえの強さというものを思い起こして頂けると考えて書いたのです。

 「水の塊を空中で投げてもそれほど反動は得られない」ということに対する「そんなことは無いでしょう」程度の意見でした。

 もう気付けば10年以上も泳いでいない私の感覚で説明したものよりも、MaTさんに試して頂いた結果を使った方が説得力がありそうです。

 15Kg程度のバケツの水を動かすよりも泳ぎの時の水の抵抗の方が強いとのことですので、15kgのおもりを使ってみましょう。 それは片手か両手に掛かる力かは分かりませんが、仮に体重60kgの人がこれくらいのおもりを後方へ投げますと、スケボーは、手を動かす速さの 1/4 程度の速度が出ることになりますよね。 これくらいの速度が出るのなら、話として問題ないのではありませんか?

 泳ぐ時に受ける水の抵抗のうち、実際にどれくらいの力が、水を本当に後方へ押し出す力として使われたのかは測りようがありません。 ですからこれ以上細かいことを議論しても、余り有益ではありません。

*******************************************

 なぜ作用反作用説より圧力説が「より良い」と考えられるのかが分かりません。 私は圧力による説明を否定しているわけではないのです。 圧力ばかりを考えて、作用反作用を否定しようとするところには明らかに問題があると主張しています。

 何か理解を示して歩み寄らなくては議論が収束しないと思うので、MaTさんの考えを何とか推測したいと思っています。 MaTさんは、次のように考えておられるということでしょうか?

 「ヘリが空気中に圧力差を作り出し、その圧力差でヘリが浮く。 ヘリは作用反作用で空気を下に押すと考える時よりも、遥かに少ない労力で宙に浮いていられる。」

 とりあえず確認したいだけですので、ここで止めます。


  投稿者:EMAN - 2007/07/23(Mon) 19:53  No.2046 
 MaTさんの書き込みの意味をもう少しじっくり考えてみました。
 まだ分からないでいますが、答えられる部分には答えておきます。


> もし、水中で手で押す水は、ずっと先まであって、圧力は弱まりながらも無限に伝わる。という話であるなら、
ヘリコプターは「空気を下に投げ出す」というよりは、
よく言われる「空気の布団 の上に載っている」という表現のほうが適切な気がします。


 水はずっと先まである必要はありません。
 運動量保存による説明では、水の運動量を変えさせすれば反動が働くというものです。
 押し出された水が、その先、どこへどう進もうが関係ありません。



> 大気中の現象は、どこまでも空気が連続して存在する点を無視して語ることはできないのではないでしょうか。
> この連続して存在する空気による力を簡潔に表現したのが「圧力」という概念だと思います。

 これも上と同じ考えで、作用反作用による説明において、空気が連続してどこまでも存在することは前提として必要ではありません。


  投稿者:凡人 - 2007/07/23(Mon) 23:04  No.2047 
MaTさん。「空気の布団」と表現してしまうと、私はもはや「空気の布団」の「空気」を気体としてイメージ出来ません。
なぜなら、「本当の空気」は分子で構成されていますが、私は分子間力が殆ど働いていない状況だというイメージです。
けれども、「空気の布団」の「空気」は、私は分子が流動出来ない程、分子間力が働いているというイメージです。
したがって「空気の布団」は、私は固体のイメージです。
付加えると「空気の布団」の中では、私はヘリのローターは回らないというイメージです。

追伸
言い忘れましたが、私の気体の「圧力」のイメージは、分子間力が殆ど無い状況で、ばらばらな運動量を持った大量の分子が、何らかの壁に衝突して、壁に力を加えるというイメージです。

  投稿者:EMAN - 2007/07/24(Tue) 01:15  No.2048 
凡人さん、
空気の布団というか、空気のクッションという表現は私も使っているんですよ。 翼から下に投げ出された空気が地面に達して、行き場を失った状態を例える為です。

 このとき、この一種の「跳ね返り」を翼は感じていて、普通より強い反作用(揚力)を得ることになります。

 私は、特に強い分子間力のある状態を意図した表現として使っているわけではありません。 狭いところに「押さえ込まれた気体」というイメージです。

  投稿者:murak - 2007/07/24(Tue) 01:35  No.2049 
> 水はずっと先まである必要はありません。運動量保存による説明では、水の運動量を変えさせすれば反動が働くというものです。押し出された水が、その先、どこへどう進もうが関係ありません。

これについては、あまり賛成ではありません。
水泳の例で、ひとかきしただけの場合は、それでもいいかもしれませんが、ヘリコプターが空中に浮いている場合は、下向きの運動量を与えつづけているわけですよね。以前にも書いたように、それで定常な流れが形成されているなら、その行く先は重要です。その流れがどこかの境界に到達する前に消散していて、それが主に粘性によるものであれば、それは粘性により支えられているとも言えるし、流れが地面に到達しているなら、(少なくとも部分的には)地面によって支えられていると言える。特に、地面が十分に近くて、鉛直方向の流れが見えなくなっているなら、物体の重さは、(間の空気の圧力を通して)その下の地面によって支えられていなくてはならない。

という事を書きかけたが、その必要は無かったですね。
(今週は時間的余裕があまりありません。)

  投稿者:一読者 - 2007/07/24(Tue) 03:46  No.2050 
水がどこまであるかによって押し出される水の体積が変わるのではないでしょうか?
液体の粘度が変わればさらに変わるでしょうし。
液体の重さだけを考えていてはいけないのではないでしょうか?

あと、ここまでの議論を読んでの感想ですが、作用反作用で説明は相当注意しなければならないと思います。
作用反作用はあまりにもいろいろなことが一言で説明できすぎて、場合によっては何も説明していないに等しくなってしまうと思います。
揚力がある物体を投げ出す反作用であることは間違いないのですが、それでは説明として足りないと感じました。

  投稿者:MaT - 2007/07/24(Tue) 12:19  No.2051 
>MaTさんは、次のように考えておられるということでしょうか?
>「ヘリが空気中に圧力差を作り出し、その圧力差でヘリが浮く。 ヘリは作用反作用で空気を下に押すと考える時よりも、遥かに少ない労力で宙に浮いていられる。」

はい、そのとおりです。

その後思い出したのですが、流体力学(あまり知りませんが)の基本概念に、
流体の持つエネルギー=速度+圧力+位置(mgh)+温度、の各エネルギー
で、このうち位置と温度は通常は無視できるので、速度+圧力が支配的というのがありますが、
「空気を下に投げ出す」というのは、このうちの速度だけに着目していることにならないでしょうか?
圧力というのは一種のバネ反力ですから、運動量で説明するのは無理がある、あるいは、回りくどい説明をしているような気がします。

圧力を考えるとき、空気がどこまでも連続していることは重要です。(近くに空気以外何もないとき)
圧力は隣り合う空気分子間の反斥力ですから、先に空気がないと圧力は発生しません。空気分子の運動量で説明するなら、先にある空気がヘリの方向へぶつかってくるときの力、ということになります。

  投稿者:EMAN - 2007/07/24(Tue) 12:27  No.2052 
> 作用反作用はあまりにもいろいろなことが一言で説明できすぎて、場合によっては何も説明していないに等しくなってしまうと思います。


 一読者さん、おっしゃる通りですね。
 私はずっと前に「ベルヌーイの定理」対「運動量保存」で議論していた頃に、ベルヌーイの定理が「結果として成り立っているに過ぎない」ことを揶揄するために一つの喩えを持ち出したことがあります。

 しかしその喩えは、今や運動量保存の側に当てはめた方がしっくり来そうです。 今や議論は「流体力学」対「運動量保存」のようになっており、「結果として成り立っているに過ぎない」と言われても仕方ないのは運動量保存の方になっているからです。


 その喩えというのは、「車はエネルギー保存で動いている」と言うものです。

 もともとガソリンが持っていたエネルギーから、車から出た音や振動や熱や電磁波などのエネルギーを差し引けば運動エネルギーになる。 よって、車の速度はエネルギー保存で説明できる、という内容です。


 今の議論をこの喩えに重ねてみると、どんな感じの話になっているのか、分かりやすくなるでしょう。 (私の主観がかなり入っていることをお断りしておきます。)


「自動車が動く原理は熱力学だ。 エネルギー保存説は間違っている。 撤回しなさい。」

「いや、間違ってはいないでしょう。 意図があってこういう表現しているのだから、放っておいて下さいよ。」

「それでは誤解する人が後を絶たないではないか。 熱や振動を減らしさえすれば自動車が動く、良い自動車が作れると信じる人が出てきては問題でしょう。」

「ここの文脈ではこれでいいでしょうが! 細かいことまでは言ってないんだから。 これ以上は好みの問題ですよ。」

「ま、注釈は付けて置いた方が無難かと思いますが。」

「あれれ? 私も熱力学を使うのが正しいと思いますよ? エネルギー保存で説明するのはまずいのでは?」

「だから、エネルギー保存を適用すること自体は間違っちゃいないんですよ。 それで車を設計できるだなんて私は初めから一言も言ってないのですから。」

「いや、納得できませんよ。 頑なに熱力学を避けているように見えますが、なぜですか?」

「誰も熱力学を否定しているわけじゃないし。 エネルギー保存が使えないという意見に反対しているだけです。」

「エネルギー保存を使った説明は特殊な場合にしか使えないのではありませんか? だったらどんな場合にでも使える熱力学で説明した方が、よりスマートなやり方に思えるのですが。」

「いやいや、エネルギー保存だってどんな場合にでも成り立っていますよ。 どうしてこんな単純な話にこんなに突っかかられるのか、分からないよー。」

「はあ、やれやれ・・・。」

 少なくとも、私にはこのような雰囲気に見えています。

  投稿者:明男 - 2007/07/24(Tue) 14:32  No.2053 
明男です。
EMANさんの見ている風景は私にも近い感覚がありますが、さらに物理的描像以外に言語的あるいは直観的描像までを正誤の対象に含めるという埒もない(ような)議論が同レベルで為されて、余計混乱の度合いが増しています。それで敢えて口を挟まなかったのですが、ここが少なくとも「物理」のサイトである以上、言い回しがどうの、表現がこうの、という指摘はあくまで二義的なものだと思います。

>MaTさん
仕事上、流体力学を流れのある河川工学的に扱うことが多いのですが、その場合、圧力はEXPLICITには出てきません。むしろ、速度と位置、密度ですね。それらは物理的にはエネルギー・運動量・質量の保存則であり、剪断力など力学に近い概念で解かれます。要は対象モデルで選択される項が現象に則してREASONABLEかどうかだけの問題であり、本質的なものでは無いと思います。
したがって、たとえ速度だけで記述できたとしても、それが充分か不十分かは別な問題です。

  投稿者:MaT - 2007/07/24(Tue) 17:34  No.2055 
私は、言い回しとかの話はしてないつもりです。
EMANさんが、ヘリコプターの浮上で圧力を無視しているのは、間違いじゃないか。という話です。
EMANさんの考えだと、真空の宇宙でロケットがガスを放出するのと、空中でヘリが浮くのとでは、ガスの質量・速さが同じなら、同じ力になるということですが、それはおかしいのではないかと。
やはり、ヘリの場合は周りの空気の影響を多大に受けるのでは。

>河川工学的に扱うことが多いのですが、その場合、圧力はEXPLICITには出てきません。

それは、川の場合は全体が流れるため、(堰による)速度の変化=圧力になる、という話ではないですか?
建築では動くものは扱わないので、浄水場の水槽ぐらいしか経験がないですが、これの壁の設計で、水が地震で動くときは、
地震の加速度×ぶつかる水の量
を水圧の増加分と考えます。(ほんとは動くのは壁のほうですけど)

(かえって、ややこしくなる話)
ヘリコプタの場合は、空気がぶつかってくるのでなく、離れていくのですが、マイナス速度でぶつかると考えると、等価的にどこまでの空気がぶつかっているのか、が、問題になると思います。
少なくとも、ローター面を通過している分だけの空気の影響だけしかない、ということはないのでは。

  投稿者:明男 - 2007/07/24(Tue) 17:57  No.2056 
>MaTさん
MaTさんが言い回しを云々というつもりは全くありませんでした。

・・・(堰による)速度の変化=圧力になる
ああ、そう考えても良いと思いますが、つまり、どちらを使うかという問題だと言いたいわけです。

(かえって、ややこしくなる話)
その通りだと思います。実際に計算したことはありませんが、翼の周りのシミュレーションも領域を充分大きくとらなければ、境界条件が大きく利いてくるでしょう。河川の場合、逆に境界条件がほとんどを決定してしまいます。エネルギーの散逸構造が大きく異なるので一概には言えませんが、物体近辺のみでは現象をうまく再現できないと思います。

  投稿者:EMAN - 2007/07/24(Tue) 18:27  No.2058 

 MaTさん、ありがとうございます。
 考えの相違点があることがはっきりして良かったです。 しかも分かりやすい違いでした。 それでも、どうやってこの溝を埋めて行ったら良いものでしょう。 考え中です。


 もう少し質問してよろしいでしょうか。
 次の意見の中に反対したい部分はありますか?


 (1)「流体力学はニュートン力学と矛盾する結果を導き出すような重大な欠陥を含む理論ではない。」


 (2) 「翼が空中を横切る時、その影響で風が生じるが、風や翼や機体など、影響を受けた全体を合わせれば、運動量保存則は成り立っているはずである。」


 (3)「ヘリのローターが動いた結果、風が生じた。 これを、ヘリが風を作ったと解釈することにする。 なぜなら、ヘリ以外には、風を動かす要因が見当たらないからである。」

               以上3つです。

  投稿者:凡人 - 2007/07/25(Wed) 00:27  No.2062 
MaTさん、EMANさん、一読者さん
>あと、ここまでの議論を読んでの感想ですが、作用反作用で説明は相当注意しなければならないと思います。
というのは、全く仰るとおりだと思いました。
私の考えは、大分浅はかで真に申し訳ありませんでした。
ここで考え直してみたのですが、それでも、ヘリの揚力が発生する第一の要因は、やはり空気の分子の「作用反作用」だと思います。第二の要因は、もしかすると、MaTさんが仰られる「隣り合う空気分子間の反斥力」による圧力になるのかもしれません。(他にもいくらか要因はあるとは思いますが。)
しかし、ここで注意しなければならないのは、第一の要因と第二の要因の比がどの程度であるのかという事だと思います。
この比の値によって、論議すべき内容が大分違ってくるのではないかと思いました。
そうであるならば、この比の値を何らかの方法で概算するのが、論議を収束に向かわせる一番の方法だと思ったのですが、いかがでしょうか?

  投稿者:一読者 - 2007/07/25(Wed) 02:16  No.2063 
凡人さん
EMANさんが良い説明をしてくれそうですので、書き込もうか迷ったんですが、ちょっと私の書き込みの意図を誤解されているようなのですこしだけ書き込ませていただきます。

作用反作用であらわす力もそれだけで全てであるし、圧力であらわす力もそれだけで全てであると思っています。
どっちがどれだけ効いているという意味ではないです。

  投稿者:MaT - 2007/07/25(Wed) 03:45  No.2064 
いま風呂の中で、のぼせながら実験をしてみました。
空の歯磨きのチューブの中に水を詰め、ふたに小さな穴を開け、輪ゴムで締め付けて水が噴出すようにして、水ロケットのおもちゃを作りました。これを水中(水面直下)で走らせた場合と、発泡スチロールの上に乗せて浮かべ、空中で水噴射した場合を比べました。
実のところ、浮かべたほうはちょっと触っただけで、ツーと動いてしまうので、どれだけ動いたかよくわからないのですが、
輪ゴムが縮みきるまでに動いた距離は、水中は70cm、水上は(たぶん)50cmでした。水中はかなりの水抵抗がありますから、実際の差はもっと大きいと思います。

No.2058の(1)〜(3)についてですが、
運動量保存則は、他から力がかからない、他に力が伝わらない、場合に成立するものです。
こういう場合は力学の基本公式
m*a + c*v + k*x = F
(m:質量、c:粘性抵抗、k:ばね係数、F:外力)
を思い浮かべると見当がつくのですが、私が気にしているのは、どこまでも続く空気がkを持っているのではないかということです。
空気に伝わった力は、周りに広がりながら、どんどん弱くなりながら伝わり続け、そのうち空気の粘性抵抗に吸収されてなくなる。というふうに考えています。建築流では、こんなふうに動かなくなった点は、固定点と等価であると考えます。

したがって、周りの空気を動かす分までの運動量を考えるということなら問題ないでしょうが、それぐらいなら、圧力という名の、周りの空気からの反力を考えたほうが早いと思います。

(EMAN流の力学に不慣れな人のために・・・運動量=力×時間 の関係がありますから、単位時間で区切って考えると(時間=1とすると)運動量と力は同じものになります。)

  投稿者:明男 - 2007/07/25(Wed) 11:12  No.2066 
>MaTさん

力学の基本公式とやらを書かれていますが、例えば空中を落下する物体を”物理的に”理想化すれば、もっとも単純な描像は
流体による粘性抵抗(速度に比例)項と慣性抵抗(およそ速度の2乗に比例)項として表現できます。後者は圧力差によるものですが、力学的には単純化されます。バネ定数のようなモデルはあまり見たことはありません。そもそも、この式で運動方程式が解けますか?有限要素法を用いて数値的に解くとしても、kやx(境界条件)にかなり人工的な仮定を必要とします。
流体力学的には後者は実際上は境界層の剥離や渦の生成などにより生じる複雑な現象ですが、力学的モデルでは圧力がEXPLICITに必要でないというのは以前にも書いたとおりです。
要はモデル化の階層レベルの話であり、EMANさんが好みと言われているのもそこら辺にあるのではないでしょうか。
やはり論点がずれている気がします。

  投稿者:EMAN - 2007/07/25(Wed) 12:34  No.2067 
> したがって、周りの空気を動かす分までの運動量を考えるということなら問題ないでしょうが、


 ここでMaTさんが問題ないと言って下さっているのは、空気全体が最終的に固定点と等価であると見なせることが前提でのことでしょうか。

 いや、たとえ空気に伝わった力や運動が消え失せなくとも、影響を受けている範囲の空気を考える限りは運動量保存は問題なく成り立っているのですが、そこはご理解いただけるでしょうか。

 ある程度広い範囲の空気の動きを考えておけば、影響がその範囲を飛び出すまでは、その中で運動量保存が成り立っているということです。



> それぐらいなら、圧力という名の、周りの空気からの反力を考えたほうが早いと思います。

 どちらの考えが手っ取り早いか、どちらの考えが好きか、どちらがしっくり来るか・・・そういう事はまるで気にしていません。


 今、「周りの空気を動かす分までの運動量を考えるということなら問題ない」と言って下さいましたが、それを認めて下さるだけで十分なのです。
 それが作用反作用による説明の全てです。
 たったそれだけのことです。 単純なものでしょう?


  投稿者:凡人 - 2007/07/25(Wed) 22:46  No.2073 
MaTさん
気体と液体では、分子間力の大きさや働き方が違うと思いますから、液体での「実験」結果を、ストレートに気体に当てはめることは出来ないのではないでしょうか?
揚力を真面目に解明しようとすれば、結局、分子のレベルで問題にしなければならないのではないでしょうか?
それと、「空気の粘性」でしらべたら、以下のようなものが出てきましたが、何か参考になりませんでしょうか?
http://www.isas.jaxa.jp/j/column/interview/24.shtml

T_NAKAさん
http://teenaka.at.webry.info/
をポータルサイトとして使わせていただいて、大変申し訳ありません。

  投稿者:一読者 - 2007/07/26(Thu) 04:10  No.2074 
個人的には以下の4つを説明したら良いんじゃないかと思います。
(もともとの発端となった記事に関しては目的が違うので今のままの方が良いと思いますが。)

1.翼が空気分子を弾き飛ばす反作用のような単純なモデルでは説明できないことを示す。
2.流体力学的な考え方で説明する。
3.空気分子の単位で考えたときと流体力学的な考え方の関係を説明する。
4.空気分子を含めた全体の運動量が保存していることを説明する。

2だけだと狐につままれたように感じるし、4だけだとあたりまえすぎて本質がなにもわからないです。

  投稿者:hasida - 2007/07/26(Thu) 10:20  No.2076 
(1)「流体力学はニュートン力学と矛盾する結果を導き出すような重大な欠陥を含む理論ではない。」

流体力学の基礎方程式である*べき*ナビエ=ストークスの式はニュートンの式を流体に当てはめて書き下しただけですから矛盾するはずはありません。ただ解けないことだけが問題です。

 (2) 「翼が空中を横切る時、その影響で風が生じるが、風や翼や機体など、影響を受けた全体を合わせれば、運動量保存則は成り立っているはずである。」

相対論的効果が無視できて流体が連続体とみなせる範囲(小さい方は量子力学が出てくる以前にブラウン運動で流体力学の仮定は破綻します)で、絶対正しいのは巨視的な上記(2)の立場と微視的な(微分表記の)ナビエ=ストークスの式だけです。ただどちらも実用品ではないのであれこれ近似を使って解けるようにするのです。

揚力発生の原因はコアンダ効果だ、と言うのも間違いではありませんが計算には向きません。翼の理解にはクッタ=ジューコフスキーの見方が一番便利で有利だから工学部でも教えられるのです。たかが学部学生で習う範囲なのに基本的なところで論争が絶えないのは不思議なのですが、分からないでもないです。

流体について思考実験やモデル化を考える場合、流体力学にはスケール則が使えないことを忘れてはいけないでしょう。もっと露骨に言うと、そのモデルはその大きさその流速でしか成立していないのです。なまじっかスケール則が成り立っているように見える範囲もあるが故に一般原則を発見したと誤解する状況が繰り返し発生するのでしょう。

「気体粒子間の相互作用」という言い方を「粘度の影響」と見ればこれは極めて重要です。粘度=0では揚力も抗力も発生しようがない「ダランベールのパラドックス」に陥ります。粘性が大きくて慣性の影響を無視できる極限は「慣性=0」のモデルと一致しますが、逆の極限と「粘度=0」とは全くの別世界になります。

  投稿者:EMAN - 2007/07/26(Thu) 12:56  No.2077 
> 個人的には以下の4つを説明したら良いんじゃないかと思います。

 結局、私が流体力学の解説をして、「私は流体力学に異論を差し挟む者ではありませんよー」という十分なアピールをした上で、「ところでこんな単純な考え方も成り立っているということは知っておいてもらって損はないですよ」という「こぼれ話」として考えを広めるようにすれば、変な反発を招かずに解決というわけですね。


 解析力学の記事を書き始めた途端に、力学のページに対する感情的な批判が急減したという前例もありますし。
 「こいつの言うことなら信頼できる」と安心してもらうことがまず大事なようです。


 しかし先ほど hasidaさんもバチッと言い切って下さってますし、私が急いでやらなくても大丈夫かなと思います。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/27(Fri) 16:41  No.2095 
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私はMaTさんとは違って、同じ反作用力になると「思えています」。 水と空気の、流体としての共通点から、十分、そう思えるのです。
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 ならないですよ。

 なぜなら、「水泳で手が押し出す水の量」と言った場合、常識的に考えて「風船」に入れられるのは「手のひら」の側にある水であって、「手の甲」の側に含まれる水は含まれないからです。

 水の量が減るので、当然反作用も減ります。

 より正確には、「水泳で手が押し出す水の量と手が引きずった水の量の和」とすべきです。空中に置き換えたモデルでは、風船は2個になり、前後に並ぶようにヒモで縛って、2個の風船の間に手を差し込んで投げる、というように感じになるでしょう。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/27(Fri) 17:05  No.2096 
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 押し出された水が、その先、どこへどう進もうが関係ありません。
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 なんですかそれは。

 押し出された水が跳ね返ってきて「再度」手にぶつかっても関係ないんですか。実際分子レベルの衝突で考えるなら、物体にぶつかった分子は跳ね返り、流体を構成する他の分子にぶつかって再度跳ね返り、多くの場合再度物体にぶつかるんです。

 その流体を今の状態に維持しているのは、何らかの「境界条件」です。それは、流体が無限に続いているという仮想的な条件でもいいし、どこかに壁(もしくは開放)があるという現実的な条件でも構いません。しかし、「境界条件が要らない」というのは少なくとも物理ではありません。

 境界条件が不定なら、運動量もエネルギーも保存しませんよ。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/27(Fri) 17:14  No.2097 
「だから、エネルギー保存を適用すること自体は間違っちゃいないんですよ。 それで車を設計できるだなんて私は初めから一言も言ってないのですから。」

 だったら「車」や「ヘリコプター」といった「具体的な名称」を出さずに、「乗りもの」や「動くもの」といった「抽象的な名称」を使うべきです。

 乗りものが運動量保存の法則を満たしているとか、エネルギー保存の法則を満たしていると言っても誰も「誤解」しません。
 
 何回も言っているように、「誤解」は原理的な間違いより質が悪いのです。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/27(Fri) 17:25  No.2098 
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ここが少なくとも「物理」のサイトである以上、言い回しがどうの、表現がこうの、という指摘はあくまで二義的なものだと思います。
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 それは大間違いです。

 「物理のサイト」と書いた瞬間に、「他のサイト」が意識され、物理のサイトは他のサイト(にいる人)と「相関」を持たなければならなくなるのです。

 「言い回しがどうの、表現がこうの、という指摘はあくまで二義的なものだ」という考えは、他のサイトとの相関を否定し、「物理のサイト」を孤立化させ、社会的な価値を無にします。そういう人は、「物理のサイトだ」などとは言わずに、「ここが全世界だ」と思って書いて下さい。

  投稿者:EMAN - 2007/07/27(Fri) 18:09  No.2099 
 木を見て森を見ずとはこのことでしょうね。
 言葉にこだわりを持つのが大事な時もありますが、言葉だけでしか判断できないというのも困りものです。

 傍から見るならば私の言葉だけからしか判断できないのだから、何もかも正確に、ツッコミどころが生じないように事細かに述べろと、冨士さんはおっしゃりたいのかもしれません。

 しかし私はこんな単純な事を言うのに、ぐっちゃらぐっちゃらと細かな点にこだわって、言葉のチェスを楽しむような気持ちの余裕は今はありません。

 さて、冨士さんは話をかなり前の段階に再び戻したいのでしょうか? 私がご指摘の部分について理解していることは、ある程度の読解力があれば読み取れるはずですが。

 文法に厳しくこだわってエラーを出して止まったり、そこに情報として含まれる事柄のみを抽出して、定義ファイルが見付からないと文句を言うようなコンパイラの思考では無理なのかも知れません。

 私がMaTさんのために、多くの下書きやたとえ話を書いて、しかし、本質ではない部分で悩ませたり、議論が横道に逸れないように泣く泣く削っている苦労を知って頂けたらと思います。

 私は掲示板では誰にでも分かるように話すのではありません。
 伝えたい人に分かるように話すのです。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/27(Fri) 18:17  No.2100 
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流体について思考実験やモデル化を考える場合、流体力学にはスケール則が使えないことを忘れてはいけないでしょう。もっと露骨に言うと、そのモデルはその大きさその流速でしか成立していないのです。なまじっかスケール則が成り立っているように見える範囲もあるが故に一般原則を発見したと誤解する状況が繰り返し発生するのでしょう。
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 同感です。

 私も「スケール上の理由から昆虫は揚力を使わずに飛んでいる」と指摘していますが、むしろ飛行機やヘリコプターの方が例外で、「飛行機やヘリコプターが簡単に(つまり子供のおもちゃレベルで)成立可能な地球に生まれた私たちはラッキーだった」とさえ言えます。

 運動量保存の法則と流体力学の原理は全てのスケールに共通して適用でき、より基本的で重要な概念ですが、逆にスケールによる区別がないので現実的な現象を説明するには不便です。つまり、前にも書いたように、電波と光とガンマ線を区別せず、全部「電磁波」と呼んで説明するのと同じです。

 というわけで、「(飛行機やヘリコプターの)翼は(昆虫の羽などに比べて)特別なんだ」という意味も込めて、「より正しい言葉で説明してほしい」、と書いているわけです。運動量保存の法則と流体力学で動いている、という点では魚もヘリコプターも昆虫も同じですが、その動きには多くの本質的な違いがあります。この違いを説明するにはより高次な物理概念と言葉が必要です。

  投稿者:sym - 2007/07/27(Fri) 21:14  No.2102 
飛行機と昆虫の飛び方の違い。

・飛行機は上向きの空気分子をつかんで飛ぶ。
・昆虫は周りの空気分子をつかんで飛ぶ。

という説明で飛び方の違いがある程度わかると思うのですが、どうでしょうか。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/27(Fri) 22:46  No.2103 
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飛行機と昆虫の飛び方の違い。
・飛行機は上向きの空気分子をつかんで飛ぶ。
・昆虫は周りの空気分子をつかんで飛ぶ。
という説明で飛び方の違いがある程度わかると思うのですが、どうでしょうか。
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 全く分かりません。

 飛行機や鳥は「滑空」できますが、昆虫は滑空できません。なぜですか。

 滑空とは翼を動かさずに飛ぶことで、グライダーは何らかの動力で上昇した後滑空だけで飛びます。トンビなどの大きな鳥もほとんどの時間滑空しています。また翼長70cmに達するメガネウラなどの絶滅昆虫も滑空していたのではないかと言われています。

 これに対して、小さな鳥(ハチドリ)や普通サイズの昆虫は羽(翼)の動きを止めた途端下に落ちます。

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 普通は空気の粘性が相対的に大きくなるため滑空できない、と説明されるのですが、それは昆虫が飛べる理由の説明にはなりません。それで長い間「昆虫の飛行メカニズムは流体力学の原理を越えている」なんて言われ方がされてきたのです。

 まあ「原理」を越えているとは思いませんが、昆虫の飛行メカニズムに関しては、現在でも定量的どころか、定性的にさえ分かっていません。もちろん実験的な再現もされておらず、このメカニズムを応用して飛べる機械もありません(何年か前の日経サイエンスにそう書いてありました)。

 現在分かっているのは、昆虫が積極的に羽を失速させ、羽の裏側にきれいな渦を作り、逆側に羽ばたく時に逆向きの渦を作ることで元の渦を止め、エネルギーを回収しているらしい、ということぐらいです。ただし、それでもまだ十分な説明とは言えない、と日経サイエンスの記事には書いてありました。

 つまり、少なくとも昆虫は何らかの形で「空気との共振」を利用していて、その結果、羽の振動数は他のパラメータに対して一意に定まります。飛行機の翼やヘリコプターのローターの揚力を考える時に「共振」なんて概念は全く出てきません。速度を上げれば単純に揚力が増加する、失速は絶対なし、それだけです。

 昆虫の飛行を理解するには、まさに非定常的な流体力学の問題を解くしかありません。運動量は、まあ、保存されているでしょうが、それは何も説明しません。圧力も、変化する上にその変化を予測する方法がないので無力です。だからヘリコプターのローターと同列に扱ってはいかん、ということです。

  投稿者:冨士 俊雄 - 2007/07/28(Sat) 00:12  No.2106 
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いま風呂の中で、のぼせながら実験をしてみました。
空の歯磨きのチューブの中に水を詰め、ふたに小さな穴を開け、輪ゴムで締め付けて水が噴出すようにして、水ロケットのおもちゃを作りました。これを水中(水面直下)で走らせた場合と、発泡スチロールの上に乗せて浮かべ、空中で水噴射した場合を比べました。
実のところ、浮かべたほうはちょっと触っただけで、ツーと動いてしまうので、どれだけ動いたかよくわからないのですが、
輪ゴムが縮みきるまでに動いた距離は、水中は70cm、水上は(たぶん)50cmでした。水中はかなりの水抵抗がありますから、実際の差はもっと大きいと思います。
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 実験ご苦労様です。

 まず、上の問題を考える時には、運動量ではなく、圧力で考えた方が分かりやすいと思います。というのも水中で発射した水は跳ね返ってくるため、空中で発射した水とは運動量が異なるからです。もしくは、水中で発射した水は周りの水とくっつくため重くなる、と考えてもいいでしょう。

 圧力で考えた場合、ゴムの張力によってチューブの中が加圧され、フタに開いた穴の部分だけその圧力がなくなる、となります。次にその圧力は、穴から水が出る時の抵抗によって変化します。穴から水が出られない時、抵抗は無限大となり、圧力は最大になります。逆に抵抗なしで水が出られるなら、圧力は0になってしまいます。

 ここで、空中で水を発射する場合と水中で発射する場合を比べると、穴のすぐ外側に水のある水中の方が抵抗が大きくなります。つまり水中の方がチューブの内圧が上がるということです。ここで穴の大きさは同じなので、チューブが受ける力も水中の方が大きくなります。だから水中の方がよく進むのです。

 最後に、チューブとゴムは圧力が異なるまま同じ量だけ変位したわけですから、内部の水に与えた運動エネルギーの大きさも異なります。最初にゴムが持っていた弾性エネルギーが同じだとすれば、差分のエネルギーはチューブやゴムが勢いよく動くことで熱エネルギーとして食われてしまった、と考えられます。そういう意味でも、空中での水の発射は効率が悪いのです。

---
こういう場合は力学の基本公式
m*a + c*v + k*x = F
(m:質量、c:粘性抵抗、k:ばね係数、F:外力)
を思い浮かべると見当がつくのですが、私が気にしているのは、どこまでも続く空気がkを持っているのではないかということです。
---

 空気がバネになるのは体積が変わる時です。今回の実験では空気の体積が一定なので、空気が弾性エネルギーをためることはできません。

  投稿者:hasida - 2007/07/28(Sat) 00:53  No.2107 
>というわけで、「(飛行機やヘリコプターの)翼は(昆虫の羽などに比べて)特別なんだ」という意味も込めて、「より正しい言葉で説明してほしい」、と書いているわけです。運動量保存の法則と流体力学で動いている、という点では魚もヘリコプターも昆虫も同じですが、その動きには多くの本質的な違いがあります。この違いを説明するにはより高次な物理概念と言葉が必要です。

ここまでご理解いただいているのにEMANさんの表現に不満を表明される冨士さんが私には物凄く不思議なのですが。
「より高次な物理概念」は多分「ありません」。
「飛行機の翼が特別」というなら同じくらいにカラスの翼もトンボの羽も「特別です」。

(富士さんには表現での不満があるということですが)私はEMANさんのは飛行機にもトンボにもあてはまる正当性な物理的説明と思っています。

それに対して富士さんのご提案は明らかに正しくない。なぜならEMANさんの巨視的説明より細かい話をしようとしたら、ナビエ=ストークスの方程式に行ってしまうまでの間には本当に正しい説明なんて「有り得ない」のが流体力学というものだからです。(そんな説明がある=ナビエ=ストークスの式が解析的に解ける、ということですので。)

ですから、「本当に正しいEMANさんの説明」を「明らかに正しくない説明」をかついだ冨士さんが「正しくないから訂正せよ」と主張するのは「お門違い」というものです。

飛行機の翼やタービンブレードの実用的理解が必要なら流体力学の教科書通りクッタ=ジューコフスキーのアプローチに従えば良いのです。そしてこのことはEMANさんの説明と何ら矛盾しません。

  投稿者:sym - 2007/07/28(Sat) 01:21  No.2108 
私は
富士さまが仰っているような「より高次な物理概念と言葉」というものは必要ないと思うのです。

一見異なるもの(現象)である電波や光、ガンマ線を統一的に説明することができる、これは驚異的にすばらしいことです。また逆に、電磁波をその波長から細かく分類することができるようにもなります。
それらは、電磁波という基本概念に統一されているのです。

私は、物事を考えるときに重要なのは、無意識のうちに頭の中においているモデルを認識し、それがどういったものであるかを意識することだと思っています。

私が飛行の仕方を考えるときのモデルは古典力学に従って、理想気体である空気分子が翼を構成する分子に衝突するものです。飛行機の翼を考えるときも、昆虫の羽を考えるときも、このモデルに当てはめて考えています。
飛行の原理について自分の中で納得できる説明はあるのですが、もう少し考えなければいけないと感じています。


ところで、富士さまは気体の粘性を分子運動論から説明できますでしょうか?(えらそうなことを言って申し訳ありません。)

  投稿者:murak - 2007/07/28(Sat) 04:21  No.2109 
大局的な話の流れに反対するものではありませんが、

> EMANさんの巨視的説明より細かい話をしようとしたら、ナビエ=ストークスの方程式に行ってしまうまでの間には本当に正しい説明なんて「有り得ない」のが流体力学というものだからです。(そんな説明がある=ナビエ=ストークスの式が解析的に解ける、ということですので。)

これは、少し言い過ぎのような気がします。

「ナビエ・ストークスの式が解析的に解ける」かどうかは我々が持ち合わせている数学というツール(の計算ツールとして)の問題であって、それと物事の定性的(あるいは物理的)説明が出来るかどうかは別問題でしょう。勿論、解析解があればそのような説明が容易になることは確かですが、解析解がなくても定性的性質を議論するという数学的アプローチはあり得るわけですし、また解を求めたからといって、それで物事の定性的(物理的)説明が完了するわけでもない。実際、上の言明が正しいとすれば、「クッタ・ジューコフスキーのアプローチ」すら正しくないことになってしまう。

問題は、流体力学の教科書にかかれているクッタ・ジューコフスキー流の説明と、EMAN流の説明の間を繋ぐ努力をするかどうかという事ではないでしょうか。ただし、クッタ・ジューコフスキーのアプローチはあくまで「はじめに流れありき」の説明なので、「どのようにしてその流れに至ったのか」を説明するものでない事には注意しておく必要がありますし、その部分に粘性が重要(つまり非粘性の仮定の下ではその遷移は導けない)なのはご指摘の通りです。(更に言えば、「何故そのような流れになったのか」については(一部で指摘があるように)境界条件が重要で、境界条件が変ると解(流れ)は変ります。)

---
上とは別件ですが、運動量保存や作用反作用による説明を気体の分子運動にまで直接還元してしまう事の必要性については、私自身は多少懐疑的で、それと流体力学的説明の間には多少のギャップがあるように感じています。分子運動論的説明を持ち込むと、おそらく熱力学を真正面から議論しなくてはいけなくなる筈で、それと流体力学で行われている各種近似との間を繋ぐのが難しいような気がしています(これについては私自身の知識不足という事もあるが)。

  投稿者:凡人 - 2007/07/28(Sat) 07:22  No.2110 
murakさん
hasidaさんの先の意見に、「これは、少し言い過ぎのような気がします。」というのは、私は賛成できません。
@数学を知らない人間が言うのもおかしいですが、hashidaさんが述べられた「本当に正しい説明」は、なんとはなしに理解できますが、murakさんの「定性的(あるいは物理的)説明」というのは、どのレベルで、なんの内容を述べられているのかが、私には良くわかりません。
Aまた、murakさんの、「運動量保存や作用反作用による説明を気体の分子運動にまで直接還元してしまう事の必要性については、私自身は多少懐疑的で、それと流体力学的説明の間には多少のギャップがあるように感じています。」と述られていますが、どこに、どのようなギャップが存在するのかということについても、良く分かりません。
Bmurakさんが「各種近似との間を繋ぐのが難しい」から、「分子運動論的説明を持ち込む」のは、好ましくない(?)と述べられている意図も、良くわかりません。現在は、コンピュータという、強力な「ツール」があるので、一層そのように思います。
Cmurakさんの「数学というツール(の計算ツールとして)」という表現も、何か曖昧な表現であるように思えます。

  投稿者:ASA - 2007/07/28(Sat) 07:52  No.2111 
以前のコメントが理解されていないようなので、murakさんへ再度コメントします。

>それと物事の定性的(あるいは物理的)説明が出来るかどうかは別問題でしょう。
 方程式の解が境界条件やら各種パラメータに敏感なので、何の前提条件も無く定性的な説明は困難です。(物理的説明というのが意味不明ですが)

>解析解がなくても定性的性質を議論するという数学的アプローチはあり得るわけですし
 密度流速の4元場がない状態での数学的アプローチというのが理解できません。どのようなアプローチを想定しているのか説明願えませんでしょうか。

>解を求めたからといって、それで物事の定性的(物理的)説明が完了するわけでもない。
 何を持って説明とするか不明ですが、亜音速の揚力で衝撃波解に基づいた定性的説明を披露したことがあります。これは、具体的な解に基づかず、圧力波の速度が大きく影響するとのおかしな説明よりずっとましだったと考えてます。

>EMAN流の説明の間を繋ぐ努力をするかどうかという事ではないでしょうか。
 そうでないと考えます。問題は流体力学の理解不足にあると思えます。ちゃんと理解していれば、EMAN流(作用反作用)の説明は、汎用性のある説明だと理解できるはずです。

>それと流体力学的説明の間には多少のギャップがあるように感じています。
 ギャップはないですよ。不可逆過程でのエンタルピーの話をしましたが、状態量を何にするかとか想定する熱力学過程に依存するので熱力学は必須です。気体の状態方程式などは熱力学の範疇です。

>流体力学で行われている各種近似との間を繋ぐのが難しい
 双方とも統計平均とみなせるマクロな量を扱っているので親和性が高いです。(平均自由行程とか緩和時間とか)

  投稿者:凡人 - 2007/07/28(Sat) 08:47  No.2113 
そういえば、murakさんが、「『ナビエ・ストークスの式が解析的に解ける』かどうかは我々が持ち合わせている数学というツール(の計算ツールとして)の問題であって、」と述べられた件についてですが、「ミレアニム賞問題」と関連はありませんでしょうか?
この関連は、あまりに難しい内容のため、私は説明出来ませんが、内容をお知りになりたい方は、『数学21世紀の7大難問』(中村亨、ブルーバックス)をお読みください。

  投稿者:明男 - 2007/07/28(Sat) 09:05  No.2114 
富士さん、こんにちは。

>ここが少なくとも「物理」のサイトである以上、言い回しがどうの、表現がこうの、という指摘はあくまで二義的なものだと思います

大間違いとの御指摘ですが、二義的の意味は御存知ですか。
もしこれが大間違いだとすると、言い方、表現こそが(第)一義的であると見なされている訳ですね。他とのサイトとの相関だとか社会的価値などと大仰な物言いですが、それこそレトリックに過ぎず、あまり中身があるとは思えませんが。
しかし、「嘘でも分かり易い方がましだ」と考えられている方らしい理屈です。
物理のサイトである以上、と言ったのは、嘘(間違いではない。間違いは訂正できる)ではなく、正しい(と信じる)ことに基づいて議論することが基本であるということです。でたらめで良いならどこぞのトンデモ理論でお口に合うものを探されたら如何でしょうか。
もう一言付け加えるなら、「ここを全世界だと思って(書け)」などとは失礼極まりない。そのような表現は本来、管理人さんにしか許されません。何様ですか?
言葉(尻)に拘泥されるにしては日本語の機微を度外視しておられるのでしょうか。悪しきディベートの見本を見ているようで少し不愉快です。

  投稿者:murak - 2007/07/28(Sat) 12:52  No.2115 
誤解を受けているようなので補足。

「流速(及び密度等)の4次元的な場が無い状態で全てを(定性的に)説明する」と言っているわけではありません。ASAさん自身ががおっしゃられているように(また私自身も強調しているように)、流体系の解(流れ等)は境界条件(やその他のパラメータに)敏感ですぐ変ってしまいますから、まず解を知ることは何より重要です。その解を知った上で、それとEMANさん流の説明との間の関係をもう少し具体的につける事は可能だろうし、また説明としてはそれをすべきだろうと言っているのです。(物理的説明とか定性的説明と言ってるのはこのことです。)

どうもASAさんは、私が「解析解がなくても・・・」といった部分を「4次元(密度)流速場を知らなくても上記のような説明が可能」と読んでおられるようですが、そんな事を言うつもりでは全くありません。「解がある」事と「解析解がある」事は別問題であって、解析解がなくても(あるいは知られていなくても)解が実験や数値シミュレーションから知られる事はあります。また古典的なクッタ・ジューコフスキーの理論から得られる解は、様々な仮定や簡略化の下での定常解ですが、これは一つの解析解(あるいはそれに近いもの)です。このような(知られている)解に基づいて、上記のような説明を考えるというのが私の意図していた文意です。(この部分を強調しなかったのは私の責任かもしれませんが。)

余談ですが、数学のミレニアム問題の一つとしてのナビエ・ストークス方程式の問題は上述のような具体的問題とはあまり関係がなく、3次元ナビエ・ストークス方程式の解の存在(や滑らかさに関する数学的な証明上の)問題です(細かい点では多少違うかもしれないが)。この場合解の存在は「解析解の存在」という意味ではありません。(数学では、解の存在証明と、それを具体的に書く事は別問題です。)

「分子運動云々」については、流体の微視的な性質が最終的に分子運動に還元されるであろうことについては全く異論がありません。ただ、その説明は、熱力学を真正面から扱うことになるので(上述のような説明に比べて)難しくなるのではないかという個人的予想を述べただけです。勿論、熱力学の部分を上手く説明できるのであれば、それで全く問題は無い。

---
なお、「圧力波の伝播速度」云々の話は、確かにあてずっぽうで言ったので、飛行機の速度が音速に近づいた際の揚力の急激な減少を説明するものとしては妥当なものではないと思います。(その点については既に認めている通り。ただ、音速を堺に流体の性質が変るだろうという予想はそれ程悪くないだろうとは思ってますが。)

また、基本変数を何に選ぶかは、(流速が十分遅い限り)やはり任意性というか恣意性のある問題です。普通の流体力学では確かに密度を基本変数に選ぶことが多いでしょうが、例えば天気予報に使われるような数値計算プログラムの多く(特に地球全体をとりまく流れを求めるもの)は、密度を消去して圧力と温度(或は他の熱力学的変数)を陽に扱います。さらに言えば、圧力の方を座標にするような定式化もします。(これらは勿論使用する目的にも依存して決まる事で、そうでないものも存在しますが。)

  投稿者:凡人 - 2007/07/28(Sat) 15:44  No.2116 
murakさん
murakさんの今の説明を読んで、murakさんのこれまでのコメントは、流体力学を実際的に応用して行く立場からのコメントであったという事が、なんとはなしに分かってきました。不仕付けな事を申し上げて、申し訳ありませんでした。
ところで、「3次元ナビエ・ストークス方程式の解の存在(や滑らかさに関する数学的な証明上の)問題です(細かい点では多少違うかもしれないが)。この場合解の存在は『解析解の存在』という意味ではありません。」というコメントを頂きましが、「滑らかな解」と「(滑らかな?)解析解」が、同義ではない理由につきまして、出来れば、素人でも分かるよう、ご教示を頂けませんでしょうか?

  投稿者:murak - 2007/07/28(Sat) 19:19  No.2117 
凡人さんへ

引用部分については正確には「『解を解析的に求める』という意味ではありません」と書くべきだったかもしれません(それと解の(数学的な意味での)解析性はまた別の問題になる)。それはともかく、とりあえず凡人さんの質問にだけ答えておきます。(本来の話の流れからは外れますが。)

例えば、区間[0,1]上で定義された関数で、その最初の1/3の区間[0,1/3]ではその値がベッタリゼロ、また最後の 1/3 の区間 [2/3,1]ではべったり 1 になっているようなものを考えることにします。中間部分の値を上手く決めてやることで、これら両側の値の間を連続関数としてつなぐことは簡単です。また、すぐには思いつかないかもしれませんが、0 と 1 の間を無限階微分可能な関数でつなぐことも可能です。しかし、関数を解析関数の範囲に限ると、これは出来ません。実際、[0,1]区間全体で解析的な関数が、その中の部分区間[0,1/3]で値がベッタリゼロになるなら、それは全体でベッタリゼロになることが(解析関関数の性質から)証明されてしまうからです。このような意味で、「滑らかさ」と「解析性」の間には数学としては大きなギャップがあります。

  投稿者:凡人 - 2007/07/28(Sat) 20:32  No.2118 
murakさん
一定区間において、有限個または、無限個の解析関数を滑らかに(無限階微分可能な形で)つないだ関数が、解析関数ではない、滑らかな関数であるというように理解すれば宜しいでしょうか?

  投稿者:murak - 2007/07/28(Sat) 20:53  No.2119 
これについては、本当は別スレッドにした方が良いと思いますが、行きがかり上このまま答えておきます。

解析関数とは、局所的にはテーラー級数に展開出来る函数のことです。これを(展開の中心点をずらしながら)テーラー級数が収束する限りどこまでもつなげていって最終的に得られる結果が解析函数です。従ってそれは結果として全ての点で(少なくと局所的に)級数展開可能になります。一方、滑らかな(かつ解析的でない)函数といいうのは、必要な階数だけの導関数が連続になるように(ある意味人工的に)つなげた函数です。なので(人工的に)つなげた点での級数展開可能性は要求されませんし、実際そのような点では級数展開が可能になりません。(先の例で言えば、1/3と2/3がそのような点になります。)

  投稿者:hasida - 2007/07/28(Sat) 22:27  No.2120 
>> EMANさんの巨視的説明より細かい話をしようとしたら、ナビエ=ストークスの方程式に行ってしまうまでの間には本当に正しい説明なんて「有り得ない」のが流体力学というものだからです。(そんな説明がある=ナビエ=ストークスの式が解析的に解ける、ということですので。)
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>これは、少し言い過ぎのような気がします。
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仰るとおり、このスレッドを離れては言い過ぎになるかもしれません。拙い例えかもしれませんが、私には冨士さんのおっしゃりようが「角の3等分の作図を見出したアマチュア数学好き」のように思われたので「そんなことは不可能です」と申し上げました。クッタ・ジューコフスキーのアプローチは「厳密に正確ではない」が「ある範囲で実用的に妥当である」、近似作図法になぞらえるべきものだと思っています。

アインシュタイン方程式の解の性質を近似解法も交えて検討するのは勿論物理学の範疇でしょうが、流体力学はナビエ=ストークスの式を書き下して以来工学の方に来てしまっていると思うのです(その昔とある物理屋さんに「ナビエ=ストークスの式の研究は工学屋の理論派と数学屋が物理屋を飛び越してやっている」と聞いたことがあります)。というのも進歩の方向が実用性で決められているように思うからです。

翼の理論はある程度以上レイノルズ数が大きければ(但し∞は含まず)「境界層以外は完全流体」という仮定が一律に使えて適用範囲が広い、という面もありますが、結果的には人間が作ってきた範囲の、タービンブレードより大きな翼全てを包括できているのだろうと思います。一方でトンボの羽には手が回っていないというお話は、私は存じませんでしたが、十分考えられる話だと思います。今後マイクロマシンを作っていく中で工学としての流体力学がこれまでとは違った方向性を求められるようになるかもしれません。

寡聞にして存じませんが、液体ヘリウムの「超流動」ではレイノルズ数∞で「ダランベールのパラドックス」を目の当たりにすることが出来るのでしょうか?

  投稿者:凡人 - 2007/07/29(Sun) 00:49  No.2121 
murakさん
「滑らかな(かつ解析的でない)函数」について、丁寧に教えていただき、大変有難うございました。
これ以上の内容については、今後、自力で勉強してゆきたいと思いますが、以下のURIの内容を見て、murakさんから教えていただいた内容に、一点だけ疑義を申し上げさせていただきます。
http://www.sophia.ac.jp/syllabus/2005/gakubu/1773_74050.html
その疑義とは、「級数展開可能性」は「べき級数展開可能性」としたほうが、より正確ではないではないかというものです。

hasidaさん
hasidaさんにつきましても、murakさんと同様、いろいろと教えていただき有難うございました。
「進歩の方向が実用性で決められているように思うからです。」というのは、仰るとおりだと思います。
出すぎたことを申すかもしれませんが、hasidaさんとmurakさんのご意見の食い違い(?)は、まさに、このことから来てるのではないかと思いました。
「寡聞にして存じませんが、液体ヘリウムの『超流動』ではレイノルズ数∞で『ダランベールのパラドックス』を目の当たりにすることが出来るのでしょうか?」ということをお聞きして、日経サイエンスの以下の記事を思い起こしました。
http://www.nikkei-bookdirect.com/kir55gR2yy/bookdirect/science/english_read/bn200608.html
この記事が正しいとすると、ビッグバンを完全に説明するためには、流体力学も必要になってくるのでしょうか?
なお、この記事で記されていた、ビッグバン直後に生成される「液体」も、たしか「超流動」だったと記憶しています。

EMANさん
いつも掲示板を利用させていただいて、大変申し訳ありません。
今日の『地球へ』(以下のTVアニメ)を見ていたら、
http://www.terra-e.com/
私の記憶に間違いが無ければ、ソルジャー・ブルーが、自分を信じなければ何事も始まらない、自分が行ったことが正しかったかどうかは、最後の最後にならなければ分からない、というような事を言っていました。
私も、ソルジャー・ブルーを見習って(?)、私のインチキ物理学の道を、わき目も振らずに邁進して行きたいと思うのですが、ご迷惑ではありませんでしょうか?

  投稿者:murak - 2007/07/29(Sun) 02:06  No.2122 
凡人さん

べき級数展開可能性については凡人さんの言われるとおりでいいですよ。(ただ、その前に何度かテーラー級数と書いているし、文脈等でわかる場合は省略する事もあり得るという事です。)

それと、hasidaさんとの事について、私自身は意見の相違があるとは思っていません(hasidaさん側がどう思われているかはともかく)。実際、#1966, 1974あたりを見ていただければ分かるかと思うのですが、私自身も流体系については結局は方程式系を解くしかないという意味のことを言っている筈です(そうは見えないかもしれませんが)。ただ、それでも数値計算なり観測(実験)なりにより解の様子が分かれば、それから物理的説明(あるいは解釈)を導き出すことは(ある程度)可能だろうと言っているだけです(数値計算した後は誰でもそのような作業をする筈)。ただし、某氏のように思考実験だけでそれを行おうとすることは危険でしょう(これについてはASAさんがしきりに強調されている通り)。私自身について言えば、かなり大胆で乱暴な発言をしているように見えるかもしれませんが基本的には教科書に書いてあったり等で既に知られている事を、ちょっと見方を変えて言っているだけです。(ただし、時々想像の部分も入っているので、ASAさんからは「と」の人と思われているようですが。)

液体ヘリウムの超流動の件については、私は十分な知識を持ち合わせていませんので何ともいえませんし、多分もっと適切な人がいるでしょう。