EMANの物理学 過去ログ No.1041 〜

 ● 公理について

  投稿者:ヒラメ - 2007/02/02(Fri) 17:29  No.1041 
こんにちは。突然ですが、公理、すなわち数学で約束事として使っていい命題というのはいくつほどあるのでしょうか。
ある証明をしていて、原理原理と厳密に考えていくうちに、数学の公理系の話までさかのぼってしまったのです。
点と点を結ぶ直線が引けるとか、自然数には必ず次の数が存在するとか、分野ごとにいろいろあるようですが、
全部でいくつと決まっているのですか。それともたくさんありすぎてよく分かっていないのですか。
数学は科学の言語のようなものだといいますから、その約束事である公理は一番モトのモトでしょう?
どれだけあって、どんなものが含まれているのか、一度把握できたら気分が良いような気がするのですが。

  投稿者:EMAN - 2007/02/02(Fri) 19:59  No.1044 
とりあえず、wikipedia を読むと面白いことが幾つか書いてますね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E7%90%86

 その中の、「公理の直観的歴史的妥当性」の項目の辺り。

> 公理は記号で書かれたただの論理式の集まりなので、理屈の上ではナンセンスな公理のもとに全く意味の無い数学理論を構築してもよい。 しかし現実的には誰もナンセンスな公理系に興味を持たないので、何らかの直観的歴史的意味がある公理系のみを研究対象とする。


 数学なんて公理を変えれば幾らでも新しいものが作れるのに、どうなってるんだろう、と思ってましたが、そういうことでしたか。

 で、ヒラメさんの質問の要点は、「公理として採用される命題は何種類あるんですか」という質問ですか? それとも「一つの体系には何種類くらいの公理を採用するのが普通ですか」というニュアンスでしょうか?

 どちらにしても私は詳しくないので、他の人の答えを期待していますけれど。

  投稿者:ヒラメ - 2007/02/02(Fri) 20:49  No.1045 
紹介してくださったページ、拝読しました。
どうも私はいまだにユークリッドの時代のように、数学というものは本質的にひとつしかないと素朴に考えているようです。
少なくとも私たちはあまり専門数学的ではない分野の証明において、直感的・歴史的に問題のない公理を「一般常識」のような形で共有していますから、
それはひとつの何といいますか、標準的公理系として完成しているのではないか、
その公理系公理一覧みたいなものがあるのじゃないかと思った次第です。

  投稿者:Stromdorf - 2007/02/03(Sat) 19:01  No.1049 
>どれだけあって、どんなものが含まれているのか、一度把握できたら気分が良いような気がするのですが。

 数学者が改まったフォーマルな立場で答える場合には「公理的集合論」というものがあり、その中でも最も標準的なのが、「ツェルメロ・フレンケル(+選択公理)の公理的集合論」という、ZFCと略称される理論体系があります↓

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%AC%E7%90%86%E7%9A%84%E9%9B%86%E5%90%88%E8%AB%96

 でも、数学の解説書でそこまで厳格に書いてある本は稀で、「常識的な」集合論をもとに、「常識的な」推論を、ただし「厳格に」適用して議論するのが数学の議論の特徴です。

  投稿者:ヒラメ - 2007/02/03(Sat) 23:36  No.1050 
ご説明ありがとうございます。
ただ数学という学問の体系についてまるで無知なので、理解が遅れています。
ZF(C)公理系で公理化された集合論によって公理系が成り立っている、ということでしょうか。
なんだか頭がこんがらがってきました。
それともすべての数学は集合論であり、あらゆる公理はZF公理系の8つの公理のいずれかに該当するのですか。


  投稿者:Stromdorf - 2007/02/04(Sun) 09:24  No.1053 
>それともすべての数学は集合論であり、あらゆる公理はZF公理系の8つの公理のいずれかに該当するのですか。

 すいません。説明が舌足らずでした。
 数学の各分野というのは或る程度独立に発展してきたものですから、それぞれがそれぞれの公理を出発点として理論展開されているという実体はあります(例えばユークリッドの原論の公理は「幾何学」の公理体系ですね)。
 ですが、現代数学が厳密に定式化される歴史において、すべての数学分野を統合して、一つの形式体系の中で理論展開できるように整備されていきました。
 ZFCというのは、そのような「すべての数学理論が展開できるような理論」における公理系の一つです。ですからZFCのもとで幾何学も展開できるし、自然数論も展開できるし、他のすべての数学が展開できます。
 これはZFCの中にユークリッドの公理や自然数論を展開するための公理(=ペアノの公理)が含まれている、というよりも、ZFCの公理を使えば幾何学や自然数論を展開できるような公理を持つモデルがZFC集合論の内部に作れる、という意味です。

  投稿者:ヒラメ - 2007/02/04(Sun) 12:58  No.1057 
>これはZFCの中にユークリッドの公理や自然数論を展開するための公理(=ペアノの公理)が含まれている、というよりも、ZFCの公理を使えば幾何学や自然数論を展開できるような公理を持つモデルがZFC集合論の内部に作れる、という意味です。

トンチンカンな質問の趣旨を理解してくださってありがとうございます。よくわかりました。
分野ごとに様々な公理があるようだけれど、複数の分野を組み合わせて使うときはどうするのだろう、というのが最初の質問が出てきたきっかけでした。
きっといろいろな分野の公理をまとめて一袋にした公理系があって、その中の一部を場合に応じて選び取って使っているということなのだろう、と考えてあの質問になったわけですが、
別にひとつの袋にいっしょにつまっているのではなくて、それぞれは完結しているけれど、ただ行き来不可能にばらばらなのではなくてZFC集合論でくくられているのですね。

  投稿者:あもん - 2007/02/05(Mon) 13:00  No.1067 
ヒラメさん:

数学の基礎が "論理" と "集合" であることは何となくわかるでしょう。これらをちゃんと定義づけできれば、解析学や幾何学などは、それに幾つかの公理を追加することで形成できるはずです。しかし、集合の定義づけは意外と簡単ではなく、結果、ZF(C) 集合論に落ち着くことになります。

この数学基礎論形成の過程には、重要なパラダイム・チェンジがあります。多くの一般の人は、古いパラダイムの上でなんとなく数学を捕らえているのが現状です。このことを物理学に例えると、多くの一般の人が相対論や量子論をよく理解していないで生活していることと同様です。

もし数学の新しいパラダイムを理解したいなら、何度か目から鱗を落とさなければならないでしょう。そしてそれは、次の2冊の啓蒙書によって可能だと、私は思っています。

(1)吉永良正「ゲーデル・不完全性定理」講談社ブルーバックス
(2)竹内外史「集合とは何か」講談社ブルーバックス

共に amazon.co.jp にあります。単なる読み物ですから、時間が空いたときに気軽に読めるものです。ただし上の順に読むべきです。また、行き詰ったときの参考書として、

(3)寺阪英孝編「現代数学小事典」講談社ブルーバックス

を挙げておきます。

(1)には、哲学的比喩が多すぎる、説明がやや不確か等の欠点もあるのですが、モチュベーションを得るために必要な一冊だと思います。

  投稿者:ヒラメ - 2007/02/07(Wed) 20:03  No.1086 
あもんさんへ。見ていらっしゃるといいんですが。

薦めてくださった本(1)「ゲーデル・不完全性定理」を読んでいます。
不完全性定理にはしばらく前から興味があって一度ちゃんと知りたいと思っていたので、素晴らしいタイミングでした。
ありがとうございます。
確かに数学的というよりは、文学的表現が多いですね。
でもその分読みやすくて、感覚をつかむ上では助かります。

  投稿者:あもん - 2007/02/07(Wed) 22:57  No.1088 
お役に立てたようで良かったです。特に私の場合はそうだったのですが、「ゲーデル・不完全性定理」を読んだだけだと、色々疑問点が残ります。私はそのために、以前 Stromdorf さんにご迷惑をかけてしまいました。で、たとえ全て理解できなくても、その後に「集合とは何か」を読むことを是非お薦めしたいのです。それで疑問の 80% くらいは、きっと解消することでしょう。たかが読み物ですが、じっくりゆっくりと読んで、概念の変革を楽しんで欲しいです。(^^)