EMANの物理学 過去ログ No.1007 〜

 ● p型半導体について

  投稿者:金澤 - 2007/01/29(Mon) 20:16  No.1007 
こんにちわ、いつも興味深く拝見させていただいています。
p型半導体のホール効果についてご意見頂ければ幸いと思い投稿します。p型ではキャリアが正孔だからn型とは逆向きに現れると言う説明なのですが、私には「正孔も結局は電子が移動してるのだからn型と同じ様に現れる」と思われてなりません。もし何かアドバイス頂ければありがたいです。

  投稿者:EMAN - 2007/01/29(Mon) 23:18  No.1008 
 確かにこれは難しい・・・。
 私にはいい説明が思いつきません。
 ざっとネットを調べてみたけれど、
見る限りではみんなこの問題を避けてるようですね。
 むしろ wikipedia の
「右図の解説ではPとN型半導体の相違を明確にできない。」
と書いてあるのが清々しく思えるくらい。

 うーん、お恥ずかしい。 今、考え中です。

  投稿者:小林@那須 - 2007/01/31(Wed) 21:00  No.1016 
>「正孔も結局は電子が移動してるのだからn型と同じ様に現れる」と思われてなりません。もし何かアドバイス頂ければありがたいです。

電子と正孔を粒子的に捕らえたモデルを想定するならば、金澤さんの考え方で正しいと思います。でも実際のシリコンでは電子と正孔では密度が六桁以上異なるので正孔側だけが利いてきます。


Si 結晶格子の中で B 原子が部分的に置き換えられて、そこに隣のシリコン原子の電子粒子が飛び移ることで正孔が移動する漫画がよく描かれます。このイメージでモデル化して考えれば、金澤さんの理屈が正くなります。

でも実際は電子はアボガドロ数のオーダーの多体系波動関数の重ねあわせです。P 型半導体の正孔は この多体系の電子の位相の重なり具合によって発生する電荷の粗密によって作られます。B 原子の近くは + 側に電荷分布が偏ります。これが正孔になります。でも、正孔のサイズは電子粒子のサイズではなく、何十個のシリコン光子感覚に渡る広さを持ちます。そして正孔のキャリア密度は多体系を構成する電子より六桁少ない数です。この数の違いが利いてきます。

この正孔が電圧勾配によって移動するとき、正孔とは逆方向に電子が動きます。でも一個の正孔に対し六桁多くの電子が動きます。すなわち電子は正孔よりも六桁遅い速度で動きます。

さてホール電圧 V は、掛かっている磁場 B に対し電荷の移動速度 v に比例した大きさとなります。V = e v B です。そして上に述べたように正孔と電子では六桁の差があります。すなわち正孔側のホール電圧が 99.9999 % を占めます。電子の移動によるホール電圧効果は無視できます。

以上の理由により正孔側だけのホール効果が論じられます。


なお私は半導体や物性論の専門家ではありません。上の説明は私の解釈にすぎません。上のような説明を書かれた文献を読んで それを書き移しているわけではありません。私の解釈に誤りがあるときは御指摘願います。

  投稿者:タケオ - 2007/01/31(Wed) 21:30  No.1018 
古典的ではなく量子力学的に扱う必要があると思います。
細かい事は適当に書いていますので、ちゃんとした事が知りたければ固体物理の教科書で自由電子近似とかを勉強してください。
あと、自分でもあまり良く分かっていないので間違っていたらすみません。


まず、前置きです。

一辺Lの箱中の電子状態は、波数ki=(2π/L)*niで指定されます。iはx,y,zを表し、niは整数です。

ここでは、結晶を、一辺Lの箱に、原子核のポテンシャルという摂動が加わったものとして近似します。
すると、波数kiに関し、ある値Gを用いて -G/2≦ki≦G/2 という条件が付きます。
そして、この-G/2≦ki≦G/2の一連の状態が、バンドと呼ばれています。
実際は違いますが、結晶中でも箱中と同じく mVi=hki/2π と考えてもかまいません(イメージしやすいので)。つまり、kが正ならVも正です。

n型はバンドに一つ(又は少数の)だけ電子が入っているもの、p型はバンドに全て電子が詰まっている状態から一つ(又は少数の)電子が抜けたものの事です。


以上が前置きですが、x方向に電場、z方向に磁場(いずれも正)をかけた場合、マイナスy方向に正孔ができるのは以下のような仕組みです。


p型の場合、x方向に電場をかけると、電子は電場と反対方向に加速されます。
しかし、電子はパウリの排他率から同じ状態を占められないので、kx=-G/2、kx=-G/2+2π/L、・・・、kx=G/2-2π/Lの状態を占め、kx=G/2の状態が一つ空く事になります。
(これが、x方向に動く正孔が一つあるという事です)

ここに、z方向に磁場をかけたとします。電子は磁場から力を受けますが、kx=G/2のところしか状態が空いていない為、kx=G/2の近くでのみ(k空間での)電子の運動を考えます。

kx>0では、電子はx方向に動いている為、磁場からはy方向に力を受け、電子はky=G/2の状態から順にky=-G/2+2π/Lの状態までを占め、ky=-G/2の状態だけ空く事になります。

つまり、電子は(kx,ky)=(G/2,-G/2)の状態以外を占めている事になります。

mVi=hki/2π を使ってy方向の電子の速度の和をとると、ΣVy>0、つまり電子は全体としてy方向に動いており、マイナスy方向に電子の無い部分、正孔ができるという事になります。

  投稿者:大学生A - 2007/02/01(Thu) 08:46  No.1023 
>投稿者:小林@那須 投稿日:2007/01/31(Wed)21:00 No.1016

>この正孔が電圧勾配によって移動するとき、正孔とは逆方
>向に電子が動きます。でも一個の正孔に対し六桁多くの電
>子が動きます。すなわち電子は正孔よりも六桁遅い速度で
>動きます。

横から失礼します。ということは、電子が媒質で、正孔が波
というような関係なのでしょうか?
縦波をイメージすると、媒質の運動速度と波の伝播速度は、
一般的に異なるので、その差をp型半導体のホール効果の説
明の根幹としているように読み取れますが?
金澤さんの疑問と重なるかもしれませんが、そもそも、正孔
とは電荷の存在しない「空」の領域ですよね?
その「空」に対してローレンツ力が働くという理論が今一つ
理解できないのですが?
馬鹿な質問ですみません。(^_^;)
無視してくれて結構です。m(_ _)m

  投稿者:EMAN - 2007/02/01(Thu) 20:18  No.1027 
 とりあえず、タケオさんの説明を今確認してみてピンと来ました。 有難うございます。 確認のためと、理解に苦しんでいる他の人のために要約してみます。

 普通、電子は、電場の方向の逆に動くものであると考えがちである。

 しかし伝導帯の電子は電場を掛けた時に、電場に従って動くものと、反対向きに進むものがほぼ同数あり、電場と同じ向きに進む(つまりエネルギーの高い)電子のところに少しの抜けがあるので、全体として、電子は電場の逆の方向に動くように見えているのである。 古典論とも合っている。
 これは、穴が電場と同じ方向に移動しているという解釈も出来る。

 電場の方向に逆らって動く(我々の常識では普通だと思える方の)多数の電子にはローレンツ力が働きそうなものであるが、こいつらは、排他原理によって行き場がないので、電場の直角方向のどちらに進む成分もすでに埋められており、全体として動きは0である。

 一方、電場の方向へ進む、ちょっと非常識な電子の群れの方には少し空席があるのだった。 これらはローレンツ力を受けて、一方に偏るだけの余地がある。 つまり正孔がローレンツ力を受けたように見えるのだ。

 と、こんな理解でいいんでしょうか。

  投稿者:タケオ - 2007/02/01(Thu) 23:45  No.1035 
そうですね。分かりやすくまとめて頂いてありがとうございます。
ただ、一応誤解を避けるために、
>しかし伝導帯の電子は・・・
の前に、p型半導体の場合、と付け加えた方が良いと思います。

なにぶん説明が下手なもので、すみませんでした。

  投稿者:EMAN - 2007/02/02(Fri) 19:55  No.1043 
> なにぶん説明が下手なもので、すみませんでした。

 いえ、とっても分かり易かったですよ。
 私のはタケオさんの説明を踏み台にさせてもらった付け加えみたいなもんで、私の説明だけでは不明なところが多すぎてダメです。


> >しかし伝導帯の電子は・・・
> の前に、p型半導体の場合、と付け加えた方が良いと思います。

 確かにそうですね。 p型だけの特徴です。

  投稿者:金澤 - 2007/02/07(Wed) 11:22  No.1081 
多くの素早いお返事ありがとうございました。なかなか考える時間が取れず自分の返事が遅くなり失礼しました。古典的な電子と電場と磁場 という単純なモデルでは解釈出来ない問題だったのですね、なんだか安心してしまいました。皆さんの説明のおかげで定性的にはイメージが沸いてきました。時間があるときに何処かの段ボールで眠ってるはずのキッテル先生を起こして定量的な部分を調べてみようと思います(キッテル先生死んでないといいけど...)。本当に皆さんありがとうございました。