EMANの物理学 過去ログ No.1000 〜

 ● 揚力について

  投稿者:おざげん - 2007/01/27(Sat) 11:40  No.1000  <Home>
こんにちわ。いつも楽しく拝読しております。
目から鱗が落ちるような話ばかりで、知らずにいたら生きている意味が減っていた気がします。
さて、EMANさんの日記を読ませて頂いているときに目に付いたのですが、
「揚力の発生にベルヌーイの法則以外の理論はトンデモだ」といったニュアンスの話が出ていました。
私はどちらかというと、ベルヌーイの法則による揚力の発生に違和感を覚えていたのですが(よくわかっていないだけかも)、他の論文に、「揚力は、翼によって曲げられた空気からの反作用である」といった記述を見つけました。
私は、こちらのほうがしっくりくると思ったのですが、
EMANさんは、いかがお思いになりますか?

  投稿者:EMAN - 2007/01/29(Mon) 05:38  No.1001 
 お待たせしました。
 これについては少し前に話題になりまして、
そのときに、私の意見をまとめたものを以下のアドレスに
上げさせて頂きました。

http://homepage2.nifty.com/eman/dynamics/fluid.html

 とりあえず、この内容が問いかけに対する答えに
なるのではないかと思います。

  投稿者:MaT - 2007/01/29(Mon) 11:58  No.1003 
ベルヌーイの法則については、次のような記述を見つけて、私は違和感を持っていませんが、これって、おかしなことなのですか?
(揚力については、反作用力+ベルヌーイ力と思っています。)

ベルヌーイの法則
流体のエネルギーは、速度、圧力、ポテンシャル(高度)、温度の4つからなっていて、外部からエネルギーの出入りがなければこの合計は一定である。通常の揚力の計算では温度とポテンシャルの影響は小さいので、速度と圧力エネルギーの和が一定とみてよい。よって速度が大きいと圧力は小さくなる。

ベルヌーイの法則を認めないと、ヨットが風上に進んだり(模型ヨットは何もしないと勝手に風上に進みます)、屋根瓦が風で吹き上げられたり、が説明できないですよね?

  投稿者:EMAN - 2007/01/29(Mon) 19:33  No.1006 
> (揚力については、反作用力+ベルヌーイ力と思っています。)

 流体力学についてはよく知らないので避けようとしていましたが、ちょっと気になり出しました。

 私はベルヌーイの定理による説明は反作用と同じものの別表現であって、ベルヌーイの定理の適用範囲には少々の制限があると認識していますから、となると、瓦が飛ぶ理由を作用反作用で説明しないといけないことになりますね。

 しかしそもそも、瓦が飛ぶ理由の説明にベルヌーイの定理を使っていいものなんでしょうか。

 単純に「風速に応じて圧力が下がる」と考えたのでは、風速20mもあればそこら中の瓦が一斉に簡単に浮き上がるという計算結果になるのではないでしょうか。

 あ、今調べたら、瓦って風速25mで飛ぶものなのか。 うーん。


  投稿者:MaT - 2007/01/30(Tue) 11:55  No.1010 
参考までに、建築の屋根等の風圧力の計算方法は、次のようになっています。
http://www.m-ep.co.jp/mep-j/tech/sheet/tm/06-1-3.htm
このページの6.2 荷重計算 以降を見てください。([NEXT]のページも)
2ページ目の図が小さくて見にくいのですが、屋根面の風力係数は(閉鎖型の建築物の最初の図で)風上側が1.3*sinθ-0.5、風下側が0.5、いずれも上向きが正です。
これは旧基準で、現在はもう少し正負に幅を持たせたものになっていますが、主旨としては、この方がよく分かると思います。
基本的に通常の形状の屋根の風圧力は引き上げになります。実際にも(被害状況から見て)押し下げになることは、まずありません。
現在の屋根がめったに飛ばないのは、この基準に従って強度計算されているからで、施工不良等あれば簡単に飛びます。
もちろん、これは建築基準ですから、壊れなければよいわけで、プラス方向に丸めて簡略化されています。

  投稿者:EMAN - 2007/01/31(Wed) 19:57  No.1012 
 ベルヌーイの定理の意味について。

 MaTさんが示して下さった資料は後で検討に使うとして、とりあえず、ベルヌーイの定理を分子運動で説明できれば、ベルヌーイの定理と作用反作用を別の原因のものと考えなくてもいいではないか、という考えで、まずは、解釈にチャレンジしてみました。

 ベルヌーイの定理とは、

v^2/2g + z + p/ρg = 一定

というもので、定数である ρg を全体に掛ければ、

(1/2)ρv^2 + ρgh + p = 一定

となります。
 ρは密度ですが、もし代わりに質量 m であれば、第1項は運動エネルギー、第2項は位置エネルギーを意味します。 つまり、この式は、流体の単位体積あたりのエネルギー保存則に他ならないというわけです。

 では第3項は何か、というと、ただの圧力ですね。 確かに、圧力に面積を掛けると力になり、さらに長さを掛けると仕事になります。

 しかし、ベルヌーイの定理は非圧縮性流体に適用するものなので、この圧力によって流体の体積が変わることを考えてはいけないという制限があります。
 となると、つまり、単位体積の流体を今ある場所から押し出すことによるエネルギーだと言う解釈しかできません。

 要するに、押したから速度が変わるのであり、その過程でエネルギーは一定ですよ、というだけの意味だということになります。

 つまり、圧力の原因を気体の分子運動に帰着させる利点など全くないほどに単純なニュートン力学の式だと言う事です。

 さて、またしばらく時間を下さい。 考えを整理します。

  投稿者:EMAN - 2007/01/31(Wed) 20:17  No.1013 
 ベルヌーイの定理の適用範囲について。

 この式の意味を考えるに、
ベルヌーイの定理とは、流体が速度や位置を変化させる過程に適用される論理であって、瓦の上の気体と下の気体のように流体が相互に行き来しない状況には適用しようがないということになりそうです。

 例えば、こんなことを考えましょう。

 ドーナツ状に輪になった筒があって、これが薄いビニールで出来ているとします。  この中に空気を詰めて膨らまし、密閉します。 さらにこの中に小型の扇風機を入れて、チューブの中に気体の流れを作り出せるとします。

 さて、この扇風機を回すと、中の圧力が減少して、外気圧によって潰されてしまうという現象は起こるでしょうか。
 私は起こらないと考えます。

  投稿者:MaT - 2007/02/01(Thu) 02:28  No.1022 
>ベルヌーイの定理とは、流体が速度や位置を変化させる過程に適用される論理であって、瓦の上の気体と下の気体のように流体が相互に行き来しない状況には適用しようがないということになりそうです。

ベルヌーイの法則は(というか、流体力学はすべて)連続体について成立する法則なので、「壁で仕切られた世界で流速が違うというのは適用外」と言うのは賛成ですが、
ベルヌーイの法則は「連続した空気の一部だけ流速の速い部分ができると、その部分の気圧は減る」ということで、屋根の近くでは、その上空より速度が速くなって、気圧は1気圧より小さくなります。瓦の下の板(野地板と言います)に、まったく隙間がなければ瓦は飛びませんが、隙間があれば吹き上げる風が発生します。また、運(設計施工)が悪いと野地板ごと吹き飛ばされます。

前に示した資料は、ぜひ見てください。普通の屋根の斜面に風が当たると、力は上向きに発生します。どの部分をとっても下向きにはなりません。これまで、この原理でいくつもの屋根を設計していますが、壊れたものはありません。

それから、前(No.1010)の説明に間違いがあって、
>風上側が1.3*sinθ-0.5、風下側が0.5、いずれも上向きが正です。

風上側が1.3*sinθ-0.5(下向きが正)、風下側が0.5(上向き)。
が正しいです。

  投稿者:MaT - 2007/02/01(Thu) 09:58  No.1024 
EMANさんがNo.1013に書かれた「ドーナツ内の流速」について考えるうちに気がついたのですが、
走っている車の窓を少し開ける(大きく開けると風の流れが変わってしまうので)のと、風洞の中にある車の窓を少し開けるのとでは、車の内外の気圧配置は逆になるのでしょうか?
流体力学って謎な学問ですね。(バタフライ効果なんていう話があるぐらいだから、当然?)

建築基準の風圧力は、他の基準と同様に経験的に(過去の被害を見て)決められているはずです。
作用反作用で説明しようとすると、斜面の風圧力は下向きに働くことになってしまいますよね?

  投稿者:MaT - 2007/02/01(Thu) 11:25  No.1025 
No.1010に紹介した旧建築基準法の風圧力で、もっと見やすいものがないか探したのですが、見つからなかったので自分でスキャンしてみました。
http://homepage1.nifty.com/_mat/i/fuuatu.pdf

  投稿者:EMAN - 2007/02/01(Thu) 19:41  No.1026 
 少し整理がついてきた気がします。

 風が屋根の斜面に当たり、上向きに方向が変えられるとき、これは屋根を押す力となりますが、MaTさんはこれを指して「作用反作用力」と呼んでおられるようです。

 一方、風が周囲の建造物などの条件によって、屋根の上で突如風速を増すとき、気圧低下を計算するのにベルヌーイの定理が使えます。
 実際、風速20メートルの風が、局地的に風速30メートルくらいになれば、瓦が浮く力を説明できるくらいになります。
 ただし、この状況がしばらく続けば、圧力の不均衡は解消されて行きますので、突発的に起こった場合に限られるでしょう。

 MaTさんはこの二つの現象を指して、作用反作用力とベルヌーイ力の合計だと主張されたのだと気付きました。 それならば同意します。

 私は、さらに、MaTさんの言われるベルヌーイ力・・・つまり、(風の体当たりによる作用反作用を除いた、)ベルヌーイの定理によって計算可能な気圧の低下現象の方もミクロな作用反作用で説明できると考えていますので、「作用反作用が全てである」と主張していたわけです。

 よって、私に残された課題は、ミクロな視点でベルヌーイの定理による圧力低下を説明することになります。 前の説明では私はまだ満足できていませんから。


  投稿者:EMAN - 2007/02/01(Thu) 20:31  No.1028 
> 走っている車の窓を少し開ける(大きく開けると風の流れが変わってしまうので)のと、風洞の中にある車の窓を少し開けるのとでは、車の内外の気圧配置は逆になるのでしょうか?

 それはないと思います。 もし車の内外に圧力差があったならば、どちらの状況であっても窓を開けてほんのしばらく待てば、空気の移動があって、やがては圧力の均衡に達します。
 つまり、両者とも、内外のどちらの方が圧力が高いとかは言えない状態にすぐになるでしょう。

  投稿者:MaT - 2007/02/02(Fri) 11:26  No.1038 
>ベルヌーイの定理によって計算可能な気圧の低下現象の方もミクロな作用反作用で説明できると考えていますので

エネルギー保存則で説明されている力学現象は、すべて、運動方程式をコツコツ解くことで(恐ろしく手間がかかりますが)同じ解を得ることができますから、ベルヌーイの法則を別の方法で説明できることについては、疑問を持っていません。
ただ、今の流体力学に、それだけの運動方程式があるのか(知らないだけですが)が、疑問なのですが。

>ただし、この状況がしばらく続けば、圧力の不均衡は解消されて行きますので、突発的に起こった場合に限られるでしょう。

??? 連続して風が吹いている限り、ベルヌーイ力は同じ大きさのまま続くのでは?

>走っている車の窓を少し開ける・・・
については、もっと説明が必要でした。これはベルヌーイの法則のなかのvがどこを基準にした速度を表しているのか不明という話です。
ほかの物理法則なら、vは相対速度で、どこを基準に考えても同じ結果になるのですが、
ベルヌーイの法則では、走っている車と風洞内の車とで、相対速度は同じなのですが、(地面を基準にすると)一方は車の中の空気の速度がvで外はゼロ、もう一方は車の中がゼロで外が−v、法則どおりなら気圧配置が逆にならないといけないわけで・・・

こう考えていくと、ベルヌーイの法則とは、「流体の中に速度の違う部分があると、その間で引き合う力が発生し、その大きさは圧力で表すことができて・・・の式になる」という意味だと解釈しないといけないのかな?
という話です。(べつにどう解釈しても良いのですが)

建築では、瓦の吹き飛びのほかにも、強風時に隙間から水が吸い上げられたり(霧吹きも同じ原理ですね)、ビル風という現象があったり、ベルヌーイの法則は当然の現象として経験しているので、EMANさんが拒絶反応を示されているのが不思議でならないのです。

  投稿者:EMAN - 2007/02/02(Fri) 12:59  No.1039 
> ベルヌーイの法則を別の方法で説明できることについては、疑問を持っていません。

 MaTさんのようなお考えであるなら、問題ないと考えています。 しかし作用反作用による説明をベルヌーイの定理とは別物だと考えていらっしゃる方が意外にも多いので、一度そのような考えにはまり込んでしまった人を納得させられるような説明ができないかと私は考えているのです。

 私はMaTさんが、作用反作用とベルヌーイの定理による圧力とを別々に考えておられるのを、「ベルヌーイの定理の本質は作用反作用なのにおかしなことを言う」と思ってしまったのでした。

 MaTさんは、マクロな作用反作用と、ベルヌーイの圧力によるミクロな作用反作用を分けて言葉を使っていらっしゃっただけなのだと納得できました。


> ??? 連続して風が吹いている限り、ベルヌーイ力は同じ大きさのまま続くのでは?

 瓦が浮き上がるのは、瓦の下面と上面との圧力の差によるのです。 瓦の下面に掛かる圧力は、野地板が瓦を支える抗力ですので、上面の圧力が変化しても、瓦を吹っ飛ばすことはありません。 極端な話、屋根を真空中に持っていったとしても、瓦は吹っ飛びません。
 (完全密閉された住宅を真空中に持っていけば、家ごと吹っ飛びますけれど。)

 瓦を押し上げるとしたら、瓦の下面にある僅かな隙間に入り込んだ空気でしょう。 上面と下面が密閉していたら、上面の圧力低下は下面にある空気からの上向きの力が勝って、浮き上がります。 しかし完全密閉ではない限り、下面の隙間にある空気もすぐに上面と同じくらいまで圧力が低下します。 だから、定常的に速い風が上側にあったとしても、瓦には常に上向きの力が掛かるわけではないのです。

  投稿者:EMAN - 2007/02/02(Fri) 18:38  No.1042 
> ベルヌーイの法則では、走っている車と風洞内の車とで、相対速度は同じなのですが、(地面を基準にすると)一方は車の中の空気の速度がvで外はゼロ、もう一方は車の中がゼロで外が−v、法則どおりなら気圧配置が逆にならないといけないわけで・・・


 気を付けないといけないことがあります。 ベルヌーイの定理は、早く流れる流体の圧力は低くなるというものではありません。 流れている間に速度の増加があると、その分だけ圧力が低くなる(高さ変化は今は除外してます)というものです。


 前のドーナツ型ビニール袋の例の場合、一周する間、ずっと筒の太さが同じなら、流速に変化はありませんので、圧力に変化はありません。 流体をどれだけ速く流しても圧力が低下するわけではありません。 「流れの途中で流速が変化する事」がベルヌーイの定理の要点です。

 車の窓の話に適用するのは無意味だということです。
 相対速度の問題も定理の誤解から生じているものです。


 では、静止している車が徐々に加速して行く時には、車の中の空気の圧力が低くなって行くと言えるでしょうか?
 これもベルヌーイの定理は使えません。
 ベルヌーイの定理はエネルギー保存則ですから。
 この空気の加速には、車がエネルギーを供給しています。
 すると定理は成り立たなくなります。


> EMANさんが拒絶反応を示されているのが不思議でならないのです。

 私はベルヌーイの定理を嫌っていたり、否定していたりはしませんよ。 ただ、この定理を正しく使いこなしているように見えるにも関わらず、その本質については誤解していたりする人が多いので、そういう現状に少々いらだっているだけです。
 かく言う私も今回の議論でようやく分かったことが多かったので、人のことばかりは言えないわけですけど。

  投稿者:MaT - 2007/02/03(Sat) 15:45  No.1048 
>「流れの途中で流速が変化する事」がベルヌーイの定理の要点です
あ、なるほど。ベルヌーイの法則の謎な部分が、だいぶ見えてきた気がします。

すみませんが、もう少し付き合ってください。
>瓦が浮き上がるのは、瓦の下面と上面との圧力の差によるのです。・・・
瓦と野地板の間に隙間がない場合、浮き上がらないのは賛成します。
実際の瓦は隙間だらけ(驚くほど隙間があります)ですから、空気は瓦と野地板の間に入り込みます。というより空気の流れる経路の一部と言ってよいでしょう。間に入った空気は周囲との摩擦のため、瓦上面よりかなり遅くなります。
しかしこの速度低下は摩擦によってエネルギーが失われたためなので、圧力の上昇はない。と考えるべきでしょうか?

余談ですが、建築で考えているかわらの吹き飛びは、野地板より下の空気の圧力と、屋根上の空気の圧力差によるものと考えています。資料に示した風圧力は瓦の設計より、野地板やその下の支え材(母屋)の強度計算に使われるのが普通なので。
瓦が飛ぶのは野地板と野地板の隙間から屋根裏の空気が吹き上げる場合にあたるかと。。。
それから、普通は、瓦は銅針金または銅くぎでしっかり野地板に固定されていて、そうそう瓦は飛びませんから、ご安心を。

  投稿者:EMAN - 2007/02/05(Mon) 19:33  No.1068 
> しかしこの速度低下は摩擦によってエネルギーが失われたためなので、圧力の上昇はない。と考えるべきでしょうか?

 正確なところは分かりませんが、瓦の下にも風が吹き込むのでしたら、瓦の下の圧力は上昇していると考えられる気がします。

 瓦の下にすでに空気が入っていて、そいつが邪魔してそれ以上の空気が吹き込めなくなっているとすれば、流れが止まった時の「上昇した圧力」で押さえ付けられていることになりますので、それくらいの圧力を瓦の下の空気が持っているのではないかと思うのです。

 今後詳しく勉強してみますが、そのような考えでいます。



> 余談ですが、建築で考えているかわらの吹き飛びは、野地板より下の空気の圧力と、屋根上の空気の圧力差によるものと考えています。

 前に瓦の下の密閉空間を考えましたが、屋根裏に話を置き換えれば現実に近い話になるわけですね。 屋根が飛ばないように屋根裏に空気を流すなどの策が取られることはあるのでしょうか?
 ・・・ああ、そんなことしたら、今度は天井が飛んじゃうか。

  投稿者:MaT - 2007/02/06(Tue) 12:44  No.1076 
たびたびありがとうございます。やはり、これ以上はベルヌーイの法則だけで考えるのは、危なそうですね。
エネルギー保存則は、結果の予想ができる場合は便利なのですが、裏付けなく法則を適用すると、とんでもない勘違いを起こすことがあるので・・・その類ですよね。

>屋根が飛ばないように屋根裏に空気を流すなどの策が取られることはあるのでしょうか?
圧力をなくすように、なにかの工夫をしたと言う話は聞いたことがありません。
ただ、建築の風圧は、屋根下が開放されている場合、風上側だけ開放されている場合、など、いろいろな想定の風圧が規定されています。

これも余談ですが、普通の建物は、ほぼ密閉された状態を想定して設計しているため、台風時に1ヵ所ドアを開けたとたんに、すべてのガラスが割れるという事故があるそうです。

今では、ほとんどなくなりましたが、昔は瓦の下には葺き土という粘土質の土を置きました。考えてみれば、これは、瓦の下の隙間をなくすために置いていたのですね。昔の人は賢い。

  投稿者:おざげん - 2007/02/07(Wed) 09:22  No.1080  <Home>
EMANさん、MaTさん、おはようございます。
話しを振っておいておきながら何の反応も示さず申し訳ありません。なんだかお二人の話に圧倒されておりました。
お二人のやりとりを聞いている中で、私も「ベルヌーイの定理」を誤解していたのだなと思いました。ようやくどういったものなのかをつかむことができたように思います。
ふと思ったのですが、船の舵、あれも翼と同じ原理で作用しているはずなのですが、舵の作用については、作用反作用での説明が成されています。やはり水に比べて空気は「力」感が少ないので同じように作用反作用で説明するとピンと来ないものなのでしょうかね?
ちなみに、ヨットが風上に切りあがるのは、Z軸周りの風圧中心と重心とによる偶力によるもので、通常ヨットはそのように設計されているそうです。

  投稿者:MaT - 2007/02/07(Wed) 12:57  No.1083 
こんにちは。お話を横取りして夢中になってしまい、失礼しました。

舵の場合ですが、これは左右対称の断面になっているので、ベルヌーイの力は左右同じ大きさで働き、キャンセルしてしまうのでしょう。
飛行機の翼は上だけが膨らんでいるためベルヌーイの力が効いてきます。

ヨットの話は、風上に向きを変えるまでは偶力で説明できるのですが、風上に進む話になると、風が帆にぶつかるときの反作用力と、キールで海の水をつかむ(?)力だけでは、どうやっても風上方向の力になってこないですよね?。。。あまり深く考えてなかったですが。
(キールについては、ここなどを見てください。http://members.aol.com/Hkitaguchi/amcup.htm それにつけても昔の人は賢い!)

ところで、この話題の元になった発言にあった「板を斜めにしただけでは揚力は発生しない」という教授の話には、なにか前提条件があるような気がします。「非粘性流体の中ではそうなる」みたいな(これが正しいかどうか知りませんが)。

  投稿者:おざげん - 2007/02/14(Wed) 14:27  No.1101  <Home>
MaTさん、こんにちわ。

>ヨットの話は、
そうですね。ただ、ヨット自体は風上に進んでいるわけではなく、帆に働く揚力によって進んでいるわけで、ヨットの場合、帆の裏にも風を受けていないと帆の形が保てないため、風上に進んでいく場合には、風上に切りあがる偶力を受け続けることになるのだと思います。
それにしても、本当に昔の人は賢いですよね、縦帆なんて、思いつかないですよ(^^;

>何か前提条件があるような気が
そうですね、ベルヌーイの定理自体が、非粘性流体を前提にしていたような気がするのですが・・・(弱気)板を斜めにしただけでは揚力は発生しないのであれば、凧はどうやって浮いているのでしょうかね?

  投稿者:MaT - 2007/02/15(Thu) 21:42  No.1105 
おざげん さん、こんばんは。

>風上に進んでいく場合には、風上に切りあがる偶力を受け続けることになるのだと

偶力というのは、向きが逆で、作用点が異なる2つの力のことを言い、普通は物体を回転させる力をさしますが、「風上に切りあがる偶力」とは、どういう力のことなのでしょうか?
偶力だけでは、同じ所でくるくる回るだけで「風上に進んでいく」ことはできないのですが。

>板を斜めにしただけでは揚力は発生しないのであれば、凧はどうやって浮いているのでしょうかね?

ベルヌーイの法則は、粘性/非粘性流体のどちらでも成立するはずですが、
斜めの板に風が当たったときの半作用力は、非粘性流体では発生しないんじゃないかと。(そんな気がするだけですが)
うちわで風が起きるのも同じ原理だと思うのですが、非粘性流体だと、スカッと空を切ってしまい、風にならないような。(繰り返しますが、そんな気がするだけです。)
したがって、非粘性流体の中では、凧も揚がらないような。(しつこいですが、そんな気がするだけです。)

>本当に昔の人は賢いですよね
これ、私が何度も書いていますが、正確には「昔、賢い人がいた」ですね。何千年もの歴史の中で、あるとき、突然、天才が生まれ、突拍子もないことを思いついた。それが伝承されているわけです。「昔できたことが今できない」って言う人がいますが、それは、たまたま、今は天才がいない時期なだけなんですね。

  投稿者:明男 - 2007/02/16(Fri) 22:02  No.1106 
MaTさん、こんにちは。

このスレッドはすんごい長さだったのですね。投稿しようかなと思って開けたら、底の底だったのでちょっと吃驚!

>非粘性流体だと、スカッと空を切ってしまい、風にならないような

粘性0,つまり完全流体では「ダランベールのパラドクス」と呼ばれる原理がありますが、それによると一様な完全流体中の等速(直線)運動には流体からの力は発生しないことが理論的に導かれます。
つまり、MaTさんの直感は、まさに正しいと思われます。
しかし、普通は力が働かないのが直感に反するので、パラドクスと呼ばれるわけですが(^^;)。
勿論、現実には完全流体はありえず、パラドクスは理論上のものであるというのが通説のようです。
すでにご存知だったなら、聞き流してください。

  投稿者:k - 2007/02/17(Sat) 21:41  No.1108 
kutta joukowsky equation
カッタ・ジューコフスキー方程式(ジューコフスキー方程式)

でググると面白い結果が見られるかと。これが飛行原理だと学校では習いました。なんでも物体の周りに渦ができて浮力が生まれるとか。専門ではないのでよくは知りませんが。

  投稿者:TOSHI - 2007/02/18(Sun) 13:36  No.1109 
こんにちは。。。TOSHIです。

>粘性0,つまり完全流体では「ダランベールのパラドクス」と呼ばれる原理がありますが、それによると一様な完全流体中の等速(直線)運動には流体からの力は発生しないことが理論的に導かれます。

 それは「湧き出し」も「吸い込み」もなければ「抗力」が0であるということだけで、もしも「渦=循環」があれば「揚力」は0ではありません。

 等速流体中の物体に対して「ダランベールの背理」が成立するのは、物体が「二重湧き出し=電磁気で言えば双極子」の存在に相当して「総湧き出し」が0になるからです。まあ、通常は非回転あるいは回転していても摩擦のない物体があるだけでは「渦=循環」の存在に相当することもないですから「揚力」も0です。

 流体からの力は「抗力」と「揚力」と両方あります。いずれも「クッタ・ジューコフスキー」など「むずかしい名前の定理」などになっていますが、素朴には「ベルヌーイ」の言い換えに過ぎません。

 要するに「レイノルズ数」の大きい流体では粘性が無視できないのは「境界層内部」だけで大部分の領域では「完全(理想)流体」扱いできます。もっとも「マグヌス効果」などでボールが曲がるのは、表面の境界層の粘性で空気がひきずられて回転するためで、摩擦があるから曲がるわけですけど。。。

                      TOSHI

  投稿者:明男 - 2007/02/18(Sun) 19:17  No.1111 
>TOSHIさん
ああ、「循環がない場合」を入れるのを忘れていました。一番大事な条件なのに。有難う御座います。
いつも疑問に思うのですが、粘性の無い流体中に物体を置いて、渦ができるものでしょうか。通常は〜と書かれているということは、循環ができる場合もあるということですよね。
ついでに御教示頂けると有難いのですが。

  投稿者:TOSHI - 2007/02/19(Mon) 01:50  No.1113 
ども、明男さん、TOSHIです。

>粘性の無い流体中に物体を置いて、渦ができるものでしょうか。通常は〜と書かれているということは、循環ができる場合もあるということですよね。

 いえいえ、「粘性がなければ」そして最初から渦がないならば、「ラグランジュの渦定理」によって連結した流体領域内にはいつまでたっても「渦=循環」は無しです。

 まわりが全部「完全流体」とみなせるとき、もともと渦がなかったという前提では、その中にある物体表面付近だけでも「粘性」があってそれによって不連続になって渦ができる場合を除けば、単に物体表面を通過しても「スカスカ」に滑るだけなら決して渦=循環は生じないはずです。

                   TOSHI

  投稿者:明男 - 2007/02/19(Mon) 03:11  No.1114 
>TOSHIさん、こんばんは。
遅くにわざわざ、有難うございます!
そうですよね、なんかずっと引っ掛っていたものですから。
ヘリウムUは完全流体に近く、決して渦ができない、とどこかで読んだ記憶があり、多孔質の穴も抵抗無くすり抜けるとも書いてあったように思います。MaTさんの疑問にその記憶と「ダランベールのパラドクス」の中途半端な知識が結びついたのですね〜(分析してもしかたないけど)(^^;)。
では、そもそもMaTさんの疑問への答えは何処へ?
>MaTさん、すんません、確信は無くなりました(へへ)。

  投稿者:murak - 2007/02/20(Tue) 01:13  No.1115 
こんばんは。お久しぶりです。

そのうちコメントしようと思っているうちに時間が経ってしまいました。私は航空力学は門外漢ですが、自分なりに問題をまとめてみましたので少し紹介しておきます。

-------------------------------------
このスレッドの最初の問題、つまり飛行機等の翼に働く揚力の問題に関しては、基本的にはEMANさんの考えや、おざげんさん紹介のページにあるような説明、つまり翼が空気を下方に押しやる(と言っていいのかな)力の反作用として浮いているという事でいいのだと私も思います。ただし空気のそのような流れは当然大気の他の部分にも影響を与えますので、その影響が巡りめぐって、定常状態になった際にどのようなバランス関係になっているかが重要で、それが結局ベルヌーイの定理から説明される関係になっている筈です。従って、あとはその「めぐり巡って」の部分を説明すれば良いだけですが、ここに大きな落とし穴が一つ。というのは、それを圧力の関係だけから説明しようとすると上手く行かないだろうという事です。空気の各部分の相互作用を圧力だけで捕らえると言う事は、完全流体を考えると言う事に他なりませんが、明男さんとTOSHIさんが話題にしておられたように完全流体にはダランベールのパラドックスというものがあって、(渦も湧き出しもない)一様流中に置かれた物体には力が働かない事になるからです。言い換えれば、流体が完全にサラサラであれば、その中を一定速度で運動する物体には力が働かないという事です(ただし加速がある場合はこの限りでない)。

後の説明の都合上この点をもう少し詳しく述べておくと、一般に流体中に置かれた物体に働く力は、表面の各部分に働く力を、物体の表面全体で積分したもので、その流れ方向成分が抵抗で垂直成分が揚力です。これを例えば非圧縮完全流体の2次元定常流に対して計算してやると、物体に働く抵抗と揚力は、物体(の存在する領域)から流出する流量(湧き出し)及び物体の周りの循環に夫々等しいことがわかります。これがクッタ・ジューコフスキーの定理ですが、普通物体からの流体の湧き出しは無いと考えられるので抵抗は零、また物体を取り巻く流れに循環(渦)がなければ揚力も零です。従って静止状態にある完全流体(=循環零)中におかれた物体がゆっくり動き始めて一定速度で運動するようになった際には、その物体には抵抗は働かないし、またラグランジュの渦定理から考えれば揚力も働かない事になります。勿論これでは経験に反するし、翼に働く揚力も全く説明できません。

では実際にはどうなっているかというと、現実的な流体には幾ばくかの粘性(あるいは摩擦)があるので、ある速度で流れる流体粒子(流体の各部分)はその周囲の流体粒子をある程度引きずりながら流れるということになります。つまり翼に押されて下方への速度を得た翼の下面の空気はある程度周囲の空気を巻き込みながら下方へと流れ、その影響は翼の上面にも達します。一方翼の上面の極近傍では、これまた流体粒子が翼の表面に引きずられるように動いている筈です(理想的には翼表面における流体粒子の相対速度の接成分は零と考えられる)。その結果翼の周囲、には翼をとりまき、回り込むような流れの成分(循環・渦)が形成される事になる。これが多分おざげんさん紹介の論文の図が示している状況です。この場合、流体が翼に及ぼす圧力を考えると、翼の下面では下向きに加速される流体粒子からの反作用で大きな圧力を受けるであろうし、上面では流体粒子の運動がほぼ翼に平行になるため圧力は小さくなる筈です。よってその合力(積分値)として翼は大きな上向きの力(揚力)を受けるでしょう。あるいはこのことを別の視点から見れば、翼をとりまく循環(渦)によって翼を通過する空気の流れが大量に下方に曲げられ、その運動量の変化分に相当する力を翼は揚力として受け取っている事になります。(この際重要なのは、流れを曲げられるのは翼の下方の空気だけでなく上方の空気も含まれるという事です。おざげん紹介の論文に依れば、バランス関係としてはむしろ上側の流れの方が重要になるようです。)

(つづく)

  投稿者:murak - 2007/02/20(Tue) 03:54  No.1116 
(#1115のつづき)

以上でおそらくEMANさんが目論んでいたであろう説明が完了する筈ですが、では、これと従来の航空力学(工学)による説明の関係はどうなるのでしょうか。あるいはまた、完全流体の仮定とベルヌーイの定理は無力なのでしょうか?
この問題にきちんと答えるには多分定量的な計算(理論計算と数値シミュレーション)をやって両者を比べてみないとわからないと思うのですが、一応定性的な説明を試みます。

まず結論から言えば、完全流体の仮定とベルヌーイの定理からでも翼に働く(ゼロでない)揚力を計算することは出来ます(というか、かつての流体力学の中心課題の一つがそれだった筈)。その秘密は渦の扱い方にあります。先にも述べた様に、完全流体に対してはラグランジュの渦定理というものが成立し、もしある時刻においてある流体粒子が回転していなければ(渦度ゼロ)、その流体粒子はいつまでたっても回転しないままだし、回転があるとその回転はいつまでも保たれる(渦の不生不滅。[注1])のでした。なので例えば静止状態から時間発展していったような場を考える限り、決して物体に回りに渦は生じず、揚力は発生しないわけですが、最初っから物体のまわりに循環(渦)があったのだと考えると話は変ってきます。

少々技巧的な話になりますが、前回説明したクッタ・ジューコフスキーの定理の計算は、物体(例えば円柱)のまわりの2次元非圧縮性完全流体の定常流を複素ポテンシャルを用いて表してやって計算するのですが、その際一様流を表す複素ポテンシャルに回転を表す複素ポテンシャルを加えた複素ポテンシャルを考えると、物体に働く力には揚力が現れます。一方、この複素ポテンシャルがあらわす流れの場を計算してみると、それは物体(円柱)の周辺で一様流がぐっと曲げられて方向を変えるような流れの場に相当していることが解ります。つまり、最初から、物体の周りで流れが曲げられるような流れの場(それは循環をもつ)に対してベルヌーイの定理を適用して圧力を計算してやれば、ちゃんと揚力が出てくるのです。(なので、流れの中に平板を置くと力が働かないという結論も、揚力が働くという結論も、完全流体という仮定の下でどちらでも導き出せる。)

逆に言うと、完全流体という近似(あるいは理想化)は、粘性の働きによって流れの場に渦が生じてゆく過程等を解析するには使えない(場合によっては見当違いの結果を導く)が、そうやって生じた渦が十分に成長してあまり変化しなくなった以降の状態(例えば定常状態)を解析するには有効であるという事です。(ただし、こうやって得た結果が、前回の説明と定量的にちゃんと一致するのかどうか私は知らない。)

[注:1] 厳密に言えば、外力が保存力で、流れがバロトロピックでなければならない。(非バロトロピックな流れでは、完全流体でも渦が生じ得る。)


(あと少し補足説明(ヨットの話とか)を(後日)するかもしれないが、とりあえずは以上。)

  投稿者:murak - 2007/02/24(Sat) 05:33  No.1125 
(1116のつづき)

前回予告しておいたように、ヨットが風上(方向)に向かって走る原理を考えてみます。次の図はネットの検索でたまたま見つけたもので、正確でない部分もありますが、図が見やすいので引用しておきます。

http://www.aquamuse.jp/zukai/genri/suishin/index.html

ここでのポイントは、Matさんの発言にもあったように、キール(この図ではセンターボードと書かれている)という船体から水中に長く突き出た板の存在で、これがヨットの進行方向を決めています。帆が受ける力(図では揚力となっている)bをキールに平行な成分dと垂直な成分cに分解して考えれば、cは船体を(進行方向から)横に押し流そうとする力ですが、これに対してキールは(その形状から)大きな抵抗を与え、一方キール(あるいは船体)方向の力dに対しては殆ど抵抗が働かないため、これが推進力となって、ヨットは風上側に進むことが出来ます。以上がヨットの原理ですが、問題は、帆が受ける力bの正体(あるいはその原因)は何かという事です。図には「揚力」と記載されているのですが、私にはそれは適当でないように思えます。少なくとも帆が浮ける力の原因が風で膨らんだ帆の形状(翼型?)にあるという説明は完全に眉唾でしょう。それらの点について少し説明します。

まず最初に注意しておくべき点は、ヨットが風上側に走れる為には、bは必ずしも揚力である必要はなく、例えば風圧aの帆に対する垂直成分(垂直抗力)でもO.K.だと云うことです(図を描いて考えてみましょう)。勿論これだけでは揚力を否定する理由にはなりませんが、一般にヨットは風上側45度以内の方向に進むのは困難になるという事実があります(なので、真風上に進みたい場合には船体と帆を切り返しながらジグザグ走行を行う)。これを説明するにはbが揚力であると考えるより垂直抗力と考える方が有利です。またヨットの推進力は進行方向に対して真横から風が吹く場合に最も大きなる(その際のキールと帆の確度は45度程度)という事実もあり、翼等に働く揚力は(理論値とは異なり)迎角(翼と風のなす角)が(10度程度より)大きくなると急激に減少するという揚力に関する経験事実とも照らし合わせれば、bを揚力とは考えるのはかなり苦しくなってきます。

次に注意するべき点は、揚力が働くには物体の形状が必ずしも翼型である必要はなく、例えば全くの平板であっても、(完全流体中で)揚力は生じるという点です。(あるいは帆が平らな模型のヨットであっても風上に進む。)
これに関しては稿を改めます。(実は、こっちが本題。)

  投稿者:murak - 2007/02/24(Sat) 15:29  No.1126 
(1125のつづき)

古典的な翼理論等での揚力発生の原理について少し考えてみます。基本は、物体の周りの定常流が与えられるとクッタ・ジューコフスキーの定理から揚力が計算できるというものですが、問題はその定常流をどうやって与えるかという事です。

一般に2次元の非圧縮性流体の渦なしの流れの場には速度ポテンシャルと流線関数が存在して、流れの場自体はそれらの微分として得られますが、この二つの関数は共に(この条件の下で)調和関数になってコーシー・リーマンの関係を満たします。すなわち速度ポテンシャルと流線関数は夫々ある複素解析関数の実数部分と虚数部分であると考えることができるので、流れの解析に複素関数論の知識やテクニックを使うことが出来ます。このように速度場のポテンシャルに相当するものを複素関数のカタチで表したものを複素(速度)ポテンシャルと呼びます。ただし、この考え方では、湧き出し口(吸い込み口)や(渦糸に相当する)回転の中心等の流れの場における特異点は全て物体の存在する領域内部に押し込められていて、物体の外部は全て正則な領域と考えている事に注意する必要がありあます。これらの前提の下で、物体の周り及び無限遠方等での適当な境界条件を満足する複素解析関数を決めてやると流れの場が決まるわけですが、実はここに幾つかの問題点があります。一つは、この方法を用いたとしても全く一般的な形状をした物体の周りの流れの場を決めるのは難しいので、普通は円柱という最も簡単な場合を計算しておいて、後は等角写像という複素関数論上の技法を使ってそれを一般的な形状の領域に写像してやることで流れの場を決めてやります。従って、円柱の場合にこの問題を解くことが基本でになります。しかしここにも問題があります。普通、物体(この場合円柱)の周りの流れは、その物体の側面にそうという境界条件を置きます。しかしこの条件(及び無限上流の条件)だけからは実は物体の周りの複素速度ポテンシャルを一意的に決定することは出来ないのです。実際原点に集中した任意の大きさの循環(渦糸)を与えても、物体(円柱)側面上の流線関数の値は同じにすることが出来ます。このとき物体の外部領域の各点における渦度はゼロのままですが、物体全体を取り囲む任意の閉曲線(二次元的に考えていることに注意)に沿った循環はゼロで無くなり、クッタ・ジューコフスキーの定理に従えば、物体には(その循環の大きさに依存した)揚力が働くことになります。(しかしここまで考えてきた条件だけからはその大きさを一意的に決定することは出来ない。ただし、ある種の形状の物体の場合には、その外部領域に等角写像する段階で物体の周りの流れの状態に関する物理的な考察(クッタの条件)から循環の大きさをそれっぽい値に決めることは出来る。その方法に依れば、例えば流れの中に置かれた平板に働く揚力は、迎角(平板と流れのなす角)の sin に比例するという結果が得られる。)

以上見てきたように、揚力を求める古典的な方法は、(解を求めやすくするための)数学的な仮定を随所に使っています。従って物理学における常識的な判断に従えば、計算が正しいかどうかは得られた結果の妥当性から判断されることになります(用いた仮定の妥当性も同様に判断される)。しかし、ひねくれ者の私としてはこの問題にもう少し別の角度から光を当ててみたいと思います。これまでの説明を見れば、古典的な揚力の計算では運動方程式を積分するというような事は全くやらずに、定常状態を想定し満たされるべきバランス関係を(幾つかの数学的仮定の下に)求めています。そうして得られた結果には(特に円柱の場合)とても恣意的(?)なパラメーターが残って、得られる揚力は結局いかようにでもなり得る(揚力ゼロの場合も含めて!)ということになってしまいました。これって一体どういう事なんでしょうか?不思議に思いません?

(という謎かけを残して一連の書き込みを終了します。)