EMANの物理学 過去ログ No.818 〜

 ● ラリタ・シュウィンガー方程式・他

  投稿者:ワイル - 2006/12/21(Thu) 11:57  No.818 
こんにちは。

「非相対論的にスピンを導く」に関連して。。。

スピン1/2のスピノル(ディラック・スピノル)粒子の振舞いを記述する相対論的方程式は、ディラック方程式なのですが(そして、それの非相対論的方程式が、シュレディンガー方程式ですね)、スピン3/2の粒子の振舞いを記述する相対論的方程式を、ラリタ・シュウィンガー(Rarita-Schwinger)方程式と言うんだそうです。
http://en.wikipedia.org/wiki/Rarita-Schwinger_equation

また、スピン3/2の粒子あるいは、場のことを、それぞれ、ラリタ・シュウィンガー・スピノル粒子あるいは、ラリタ・シュウィンガー場というようです。

通常のディラック方程式に、レヴィ・チビタ(Levi-Civita)記号ε
http://homepage2.nifty.com/eman/quantum/levi-civita.html
と、5-th Gamma Matrixとよばれるγ5が加わっている形です。

電磁場(Maxwell場)やゲージ場(Yang-Mills場)が存在する場合のラリタ・シュウィンガー粒子の振舞いを記述する方程式は、ゲージ理論流には、クライン・ゴルドン方程式やディラック方程式の場合と同様に、
 偏微分∂ を 共変微分D に置き換える
ことで対応できるようです。

また、統計的にはラリタ・シュウィンガー・スピノル粒子は、スピン1/2のディラック・スピノル粒子と同様、フェルミ−ディラック(Fermi-Dirac)統計に従う「フェルミ粒子」でもあります(これらと対になるのが、ボーズ-アインシュタイン(Bose-Einstein)統計に従う「ボーズ粒子」ですね)。

スピン3/2の粒子は、基本粒子では重力子(スピン2)の相棒とよばれるグラヴティーノ(未発見)くらいのようですが、複合粒子では、デルタ粒子(Δ)やオメガ粒子(Ω)などがあるようです(これらの複合粒子は陽子や中性子と同様、3個のクォークから構成されるバリオン粒子の仲間です)。
また、原子核では三重水素(H3)やヘリウム3(He3)の原子核が、スピン3/2のラリタ・シュウィンガー・スピノル粒子です。

結局、場と、それの振舞いを記述する方程式は、

スピン=0 ・・・ スカラー場(クライン・ゴルドン方程式)
スピン=1/2 ・・・ ディラック・スピノル場[あるいは単に、スピノル場](ディラック方程式)
スピン=1 ・・・ ベクトル場(マクスウェル方程式、あるいは、ヤン・ミルズ方程式)
スピン=3/2 ・・・ ラリタ・シュウィンガー・スピノル場[あるいは、ベクトル-スピノル場](ラリタ・シュウィンガー方程式)
スピン=2 ・・・ テンソル場(今のところアインシュタイン方程式とか、せいぜい、それを拡張した感のある、ブランス・ディッケ方程式(*)など)

というように整理できるでしょう。

(*) ブランス・ディッケ(Brans-Dicke)理論 ・・・ ニュートン理論や一般相対論で「定数」とされている重力定数Gが「変化する」という仮定のモデルで一般相対論を拡張した感のある重力場理論です。

http://en.wikipedia.org/wiki/Brans-Dicke_theory

上述にあるように、実際、ブランス・ディッケの重力場方程式は、アインシュタインの重力場方程式を拡張した形になっています。

このように、「ブランス・ディッケ理論」は、あくまでも一般相対論を拡張する理論であって、当然、極限理論として「特殊相対論も含んでいます」し、一部の「相間」たちが言っているような「相対論を否定する理論」というわけではありません(素粒子物理の基本理論である「場の量子論」も「特殊相対論+量子力学」という形で、特殊相対論を含んでいます。それと、最近は化学=分子・原子のレベルでも、特殊相対論+量子力学をベースとした「相対論的量子化学」があり、特に金や白金など、いわゆる第6周期以上の重金属原子の性質を解明し、応用するためには、この「相対論的量子化学」が不可欠のようです)。

あと、重力定数Gが「変化する」ということが(仮に)事実であれば、アインシュタインの一般相対論は、ブランス・ディッケの理論のように「拡張・修正」しなければなりませんでしょう?
また、その極限法則であるニュートンの「万有引力の法則」にも、「拡張・修正」が必要になるでしょう。

しかし、その場合でも、従来のニュートンやアインシュタインの理論が、全く役に立たないわけでなく、重力定数Gが(真の)「定数」でありえる領域(従来の適用範囲)では、従来のニュートンやアインシュタインの理論が再現されるわけで、それを超える領域で、従来のニュートンやアインシュタインの理論を「極限として含むように拡張・修正」すれば良いだけです(「ブランス・ディッケ理論」も、そのような重力理論のひとつです)。

それと同様、GZK限界の話や、一部の量子重力理論(「ループ量子重力理論」など)では、非常に高いエネルギー領域で、従来まで「定数」である「光速cが変化する」可能性を示唆しています。
しかし、それが「事実であったとしても」、
 従来: 光速c=「定数」 −> 修正後: 光速c=「エネルギー値をパラメータとする関数」
と「変更」することで、従来の特殊相対論や、それに基づく法則・理論(電磁気学、ゲージ理論、一般相対論、場の量子論など)も、「拡張・修正」すれば良く、従来の通常の「低エネルギー領域」では、光速cは、いままでどおりの「定数」となって、従来の特殊相対論や、それに基づく理論が「そのまま」再現することが「要求」されると思います。

それは、ちょうど、ニュートン力学では、「定数」であった質量などが、相対論では、速さvをパラメータとする「関数」に変わったような変更・修正です。

また、その一方で、従来の理論・実験・観測で認知できている領域では「定数」とみなすことができた光速cや重力定数Gなどが、これからの未知の領域(たとえば、GZK限界の話であるような超高エネルギー領域とか)では、「変化する」可能性も無いとは、「言い切れない」という広い心は持っておきましょう。

しかし、いわゆる「相間」の人たちは、光速cが「定数」であることについては、いろいろと議論しているが、重力定数Gが「定数」であるということに疑問を持って議論している人たちは、ほとんど「見たことがない」ですね。光速cの変化より、重力定数Gの変化の方が、一般相対論だけでなく、ニュートン理論にも影響があって、面白いと思いますが。。。

以上、ご参考までに。。。
[あまり深いレベルの話でなく、単なる物理方程式のコレクションしているだけなので、あまり突っ込まないでください]

  投稿者:TOSHI - 2006/12/22(Fri) 19:50  No.820 
 こんばんは。。。TOSHIです。

 粒子スピンごとの波動方程式の一般形を求めたいのであれば、「ポアンカレ群」=「ローレンツ群+平行移動群」と方程式の関係を求めれば、まずスピンの値、すなわち「既約表現」ごとに運動量に関する方程式が得られ、それに対応して4次元時空に対する微分形の波動方程式の一般形が求まるはずです。

                   TOSHI

  投稿者:ワイル - 2006/12/23(Sat) 10:41  No.822 
こんにちは、TOSHIさん。。。

>> 粒子スピンごとの波動方程式の一般形を求めたいのであれば、「ポアンカレ群」=「ローレンツ群+平行移動群」と方程式の関係を求めれば、まずスピンの値、すなわち「既約表現」ごとに運動量に関する方程式が得られ、それに対応して4次元時空に対する微分形の波動方程式の一般形が求まるはずです。

具体的に教えてくださると、ありがたいです。
あるいは、なにか文献、サイトに掲載されていますか?

  投稿者:TOSHI - 2006/12/23(Sat) 22:05  No.823 
 こんばんは。。ワイルさん、TOSHIです。

 大貫義郎著「ポアンカレ群と波動方程式」(岩波書店)を一冊お読みください。今は絶版でしょうから古書店か図書館でしょうか?

                     TOSHI

  投稿者:ワイル - 2006/12/25(Mon) 11:29  No.825 
こんにちは、TOSHIさん、どうもありがとうございます。

>> 大貫義郎著「ポアンカレ群と波動方程式」(岩波書店)を一冊お読みください。今は絶版でしょうから古書店か図書館でしょうか?

こういう名著、復活してほしいですね?

神奈川西部のA市の市立図書館で、講談社刊で、W.パウリ著&内山龍雄訳の「相対性理論」を見つけました(ここの市立図書館は、市内に大手自動車メーカーや大手電機メーカーの工場などがあるせいか、科学技術関係の蔵書が、とても充実しています)。

あの量子力学の開祖の一人といえるW.パウリが、相対性理論の教科書&解説書を書いていたことは初めて知りましたが、けっこう分かりやすい感じです(ゲージ理論や素粒子論の話まで記述されていました)。しかも、この書籍を書いた時、W.パウリは、まだ21歳、今でいえば学部生の時代というから、驚き。。。
また、訳者が内山龍雄氏ということで適役、といえましょう。

しかし、この本も絶版のようです。

そういえば、E.シュレディンガーは、その波動方程式を導く際、実際には現在、クライン・ゴルドン方程式と全く同様の特殊相対論を取り込んだ波動方程式を考案していたが、負のエネルギーや負の確率などの問題があったため、結局、時空概念についてはニュートン力学のレベルのままの、現在、E.シュレディンガーの波動方程式とよばれる非相対論的波動方程式に落ち着いた、といわれる。

量子力学のもう一人の開祖であるW.ハイゼンベルクも、当初から自分の行列力学に、特殊相対論が取り込まれていないので、いろいろと不満・限界を感じていたという話がある。
それは、たとえば、水素原子の電子が原子核の周りを周る際の速さが、N.ボーアの原子模型から、光速の1/137(いわゆる、微細構造定数ですね)となり、この位の軽い原子の場合なら、特殊相対論を取り込まない(非相対論的)量子力学でも、ある程度の精度の解析ができるが、量子力学の精度を上げ、より原子番号が大きい原子など(たとえば、原子番号がZである原子の原子核の最内殻を周る電子の速さは光速のZ/137 になります)にも対応できるようにするためには、特殊相対論を取り込まなければならない、ということを感じていた、とのことです(実際現在、化学や物性科学の世界で、ある程度、原子番号の大きい原子や、それらから構成される分子の構造・性質を解明するためには、量子力学とともに、やはり特殊相対論を取り込んだ理論が必要である、ということが分かってきている、ということです)。

それで、P.ディラックが相対論的波動方程式を発表した1928年の翌年、W.ハイゼンベルクはW.パウリとともに、特殊相対論を取り込んだ「場の量子論」の最初の理論を発表した、という話ですね。

W.パウリ、E.シュレディンガー、W.ハイゼンベルクといった、量子力学の開祖ともいえる物理学者たちと相対性理論との関わりを調べると、けっこう面白いし、意外な部分がありそうです。

いわゆる「相間」の人たちが、相対論の対抗馬として量子力学を持ち出すのだが、こうした量子力学の開祖たちの話をみると、それも「的はずれ」な話といえるでしょう。彼らが本格的な量子力学を構築していた1920年代、すでにこと、特殊相対論は物理学者たちの間では「常識」になっていて、その量子力学に、最初から特殊相対論を取り込もうとしていた、ということが明らかなのです。W.パウリ、E.シュレディンガー、W.ハイゼンベルクの3人とも、当初から少なくとも特殊相対論を取り込んだ量子力学でないと、という気持ちはあったようですね。実際、相対論的量子力学や場の量子論をちょっとでも学んでみると、個人的に、アインシュタインの(古典的)相対論にせよ、シュレディンガーたちの(非相対論的)量子力学にせよ、なんか、不完全なイメージを受け、やはり、相対論と量子力学を統合した理論の必要性を感じてきます。
だから、本来の物理学理論の歴史、流れは、

古典力学 -> 古典的相対論(場の古典論)-> 相対論的量子論(場の量子論)

となるはずだったのでしょう。。。


  投稿者:ワイル - 2006/12/25(Mon) 22:54  No.827 
>>それは、たとえば、水素原子の電子が原子核の周りを周る際の速さが、N.ボーアの原子模型から、光速の1/137(いわゆる、微細構造定数ですね)となり、

以下、EMANさんに以前、紹介してもらった

>> 別の証拠として、こんなのはどうでしょう。
>> http://www.amazon.co.jp/gp/product/4000074652

の書籍からの抜粋です。

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ボーアの原子模型から、原子番号Zの原子核の最内殻電子の半古典的速度を求めてみると、真空中の誘電率をε0、原子核の周りを円運動している電子の電荷をe、静止質量をm0、軌道半径をr、その速度をuとすると、

クーロン力 Fe = (Z・e^2)/(4・π・ε0・r^2)
遠心力 Fg = (m0・u^2)/r

ですが、このクーロン力と遠心力とが釣り合っているはずですから、

(Z・e^2)/(4・π・ε0・r^2) = (m0・u^2)/r ・・・ (1)

となります。
一方、ド・ブロイ波の一波長が円軌道の一周の長さと一致するときが軌道半径が最小で、

λ = 2・π・r

で、したがって、ド・ブロイの関係

λ = h / p ( h;プランク定数、p:運動量 )

は、
  
2・π・r = h / ( m0・u ) ・・・ (2)

とすることができる。
したがって、(1)、(2)から電子の軌道半径rを消去し、その速度uを求めると、

u = ( Z・e^2 ) / ( 2・ε0・h ) ・・・ (3)

となり、最内殻の電子の速度uは、原子番号Zに比例することがわかります。

ここで、h = 6.6×10^(-34) ジュール・秒、 e = 1.6×10^(-19) クーロン、ε0 = 8.9×10^(-12) クーロン/ボルト・メートルとすれば、原子番号Z=1(すなわち、水素原子)の場合、

u(Z=1) = 2.17×10^6 m/sec ≒ 0.0073 c ≒ 1/137 c

となります(cは、もちろん、真空中の光速度)ので、原子番号Zの原子の最内殻電子の速度uは、

u = Z/137 c

とすることもできます。

ここで、白金Ptの場合、原子番号Zが78なので、

u(Pt) = u(Z=78) = 78/137 c = 0.57 c

となって、つまり、白金Ptの最内殻電子の速さは、光速の60%近くになります。
このときの電子の質量を、有名な特殊相対論の公式に当てはめて計算すると、

m(Pt) = 1 / √( 1 - (0.57)^2 ) ≒ 1.21 倍

つまり、静止時に比べ、21%も電子の質量が増加していることになり、このくらいになると、特殊相対論の効果が無視できなくなるわけです。

一方、白金Ptと同属元素のニッケルNi(Z=28)やバナジウムPd(Z=46)の場合、その(光速に対する)速度比、静止質量に対する質量比は、

u(Ni) = 0.06 c, m(Ni) = 1.00 倍
u(Pd) = 0.37 c, m(Pd) = 1.08 倍

となります。

それで、実際、金属・共有結合時の最近接原子間距離は、

 Pdの原子間距離 と Niの原子間距離 との差 = 0.26 オングストローム

ですが、

Ptの原子間距離 と Pdの原子間距離 との差 = 0.02 オングストローム

となって、NiとPdとの原子間距離の場合にくらべ、PdとPtの原子間距離は(原子番号の増加に伴う電子数の増加にも関わらず)、その増加が小さくなっていますが、それが速度による質量増大の効果によるものというわけです。


その詳しい結果は、

>> http://www.amazon.co.jp/gp/product/4000074652

の63ページの表3に示されています。

長々と失礼しました!!

  投稿者:EMAN - 2006/12/29(Fri) 12:57  No.835 
> 長々と失礼しました!!

 いや、大丈夫です。
 誰か読んで参考にしてる人がいるだろうし、私も読んでます。

 ワイルさんの書き込みは投稿後にも内容がガンガン増えて行くのと、自己完結していることが多いのとで、返事はしにくいですけど。