EMANの物理学 過去ログ No.798 〜

 ● GZK限界

  投稿者:ワイル - 2006/12/13(Wed) 13:48  No.798 
こんにちは。

>>ワイルさん、新しい話題あったら、上げてくださいね。

スレッドをかえて、物理の話題にします。

>>そう言えば、ちょっと難しい話だけど、KEK(高エネ研)のホームページで、原子核中のφ中間子の質量が減少する実験結果が出ていました。

この話ですね?
http://www.kek.jp/ja/news/press/2006/phi.html

さて、ヒッグス粒子の話とともに、雑誌「Newton」の最新号(2007年1月号)のp.106〜p.111の「相対性理論をゆるがす"スーパー宇宙線"の謎」の話のはいかがでしょうか?

http://www.newtonpress.co.jp/science/newton/index.html

これは、佐藤文隆氏が、以前から提唱しているGZK限界とよばれる、特殊相対論を元に算出したエネルギー上限値(4×10^19・電子ボルト≒10の20乗・電子ボルト)を超える高いエネルギーの宇宙線が地球に来ているかどうか、ということについての、きわめて精密な検証実験が、来年(2007年)、日米の共同チームによって行なわれる、という話です。

そして、もしGZK限界を超える超高エネルギーの宇宙線が検出されれば、光速に近い速さの現象でニュートン力学の限界、破れが検出されるように、10の20乗・電子ボルトを超える超高エネルギー領域において相対性理論(特殊相対論)の限界、やぶれが検出される、という期待もある、ということです。

もちろん、その話は、来年行なわれる検証実験の結果次第なのですが。

私としては、別に「相対論はまちがっている」というわけではないのですが、そろそろ、相対論の限界が検出されるのも、おもしろいかな、とも思いますね。

ニュートン先生も、自分の理論が電磁現象や光速に近いような速さの運動まで正しいとは思っていなかったでしょうが、アインシュタイン先生も、10の20乗を超えるような超高エネルギー領域で相対性理論の限界が検出されても、納得してくれるかな?

超高エネルギー領域で、特殊相対論の限界がみつかれば、電磁気学を含むゲージ理論、相対論的量子力学、場の量子論、一般相対論など、ほとんどの既存の物理理論は、超高エネルギー領域では、正しくない、ということになり、新しい物理理論(量子重力理論とか超ひも理論?)の登場・完成が早くなることに、期待が膨らむ、というものでしょう。

現在の素粒子物理における標準理論(GWS理論と量子色力学)の検証が行われているのも、せいぜい10の11乗・電子ボルト(=100・ギガ電子ボルト)程度らしいのですが、10の20乗・電子ボルトというエネルギー領域は、はるかに先の世界ですね?

でも、その場合でも、大部分の「相対論がまちがっていた」といった人たちが言っているように、物理理論における空間・時間の概念が、私たちの日常の空間・時間の概念に戻る、といったことはないのは、はっきり言えるでしょう。

佐藤文隆氏も、「GZK限界の検証実験により、"相対論の限界"がみつかるかも知れません」とは言っているけど、「"相対論の誤り"がみつかるかも知れません」とは言っていないことに、注意すべきでしょう。

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*以下、ちょっと長くなりますが、「場の量子論」の初歩的知識の確認、ということで。。。(EMANさんに、ゲージ理論や場の量子論をやってほしいな、という希望もあります)


そういえば、電磁理論やゲージ理論の場合、古典論(マクスウェルやワイル、ヤンミルズらの古典理論)を量子論(量子電磁理論、量子ゲージ理論)に移行すると、

(1)電磁場やゲージ場の古典論の方程式 ・・・ マクスウェル方程式やヤンミルズ方程式

(2)電磁場やゲージ場の量子論の方程式
・マクスウェル方程式やヤン・ミルズ方程式を解いて得る電磁場やゲージ場のポテンシャル(C数)を演算子(Q数)とする
・それらのポテンシャルの演算子が作用する粒子(複素スカラーおよび、スピノルで記述される粒子)の振舞いを記述するクライン・ゴードン方程式および、ディラック方程式との連立方程式。
(さらに実際の場の量子論では、電磁場やゲージ場のポテンシャルも、粒子の複素スカラーやスピノルも、消滅演算子と生成演算子の組合せで表現される)

という形ですね?(個人的に、最近、ようやく電磁場やゲージ場における基礎方程式の姿がみえてきました)

さて、電磁場やゲージ場のポテンシャルを定める方程式(マクスウェル方程式やヤン・ミルズ方程式)の形は、ほとんど変わりませんね?

ただし、これらの方程式が有効なのは、現在のところ、せいぜい、いわゆる標準理論の検証レベル(=10の11乗・電子ボルト)くらいまで、というわけです(実際には、線形のマクスウェル方程式に基づくQEDが成立するのは、原子核のスケール、つまり、10の8乗・電子ボルトくらい、までで、それ以上では、GWS理論やQCDといった非線形のヤンミルズ方程式に基づく理論が必要のようです)。

一方、重力理論では、古典論(アインシュタイン方程式)を正準化し、量子化すると、ホイーラー・ドウィット方程式
http://www.a.phys.nagoya-u.ac.jp/~taka/lectures/cosmology/webfiles/cosmology-web/node74.html
という方程式が出てくるらしいですが(まだ、この方程式の意味も不明のようですし、実験や観測で検証されてもいない、ということですが)、これは、元のアインシュタイン方程式とは、大きく形が変わってしまいますね?

この重力の量子論が必要となるのは、従来、標準理論の検証レベルより、遥かに高いプランク・エネルギー=10の28乗・電子ボルトというレベルといわれていますが、GZK限界以上の宇宙線が検出されれば、10の20乗・電子ボルトあたりから、重力の古典論(一般相対論)だけでなく、従来の標準理論(電磁場やゲージ場の量子論)も怪しくなる、というわけでしょう。

このくらいの領域なれば、重力理論も、電磁理論やゲージ理論も、大きく、その形が変わってくるのでしょう。

(以上は、細かい難しい話ではなく、単純に古典論の基礎方程式の形が、量子論で、どう変わって変わっていくか、というレベルの話です。あしからず!!また、超対称性理論や超ひも理論は考慮せず、従来の古典論および量子論のレベルの話に限ります。)

  投稿者:明男 - 2006/12/13(Wed) 23:19  No.799 
こんばんは。

GZK限界を越える高エネルギー宇宙線の話は、勿論存じております。海外でも幾つか観測されて話題になりましたし、そもそもGZK限界の理論的根拠もまだ不確かですが、特異な現象であることは間違いないでしょうね。
相対論や量子力学の限界は或る意味当然のことなのですが、所謂パラダイムの転換期に居合わせることができるとすれば、非常に嬉しいことです。
しかし、現在の技術である標準理論でさえも、実際何かを計算しようとすれば、非常に難解な計算式を何百と計算しなければならず、あまつさえコンピュータの支援なしではとても評価できません。何が起きているのか、どのような仕組みが働いているのか、直観的に理解できる時代は過ぎてしまったのでしょうかねえ。
比喩的にいうなれば、級数を一項ずつ計算して足し上げるまでは、姿さえ見えない物理なんて、理想とはほど遠い感じがします。無限級数の和や特殊関数の母関数のように閉じた形の解が発見され、簡明にして深い理論ができなものかと期待していますが。
物理学はこの世界を記述することが目的である以上、人類の世界観とは切っても切れぬ関係にあります。一般の人々と物理学者、科学者の世界観があまりにも乖離し、学者ひとりが孤高であってよいというのは間違っていると思うのです。
そのためには物理学にどんな立場であれ携わる者が、広く世間に理解を求め、またそれを促す努力を続ける必要があるでしょう。
柄にもなく、ちょっと力が入っちゃいましたが、偽らざる本心でありまーす(どうしても竜頭蛇尾)。

  投稿者:EMAN - 2006/12/15(Fri) 12:55  No.800 
> EMANさんに、ゲージ理論や場の量子論をやってほしいな、という希望もあります

 期待して頂き、ありがとうございます。
 前に下書きとしてはかなり書いたのですが、行き詰まってしまったのでした。 一時退却して策を練っております。
 変分原理を使って電磁気や相対論や量子力学をまとめる作業が必要になりそうです。
 最短ルートを示そうとして、それが行き止まりの道では困りますからね。

  投稿者:ワイル - 2006/12/16(Sat) 17:40  No.806 
こんにちは

>>しかし、現在の技術である標準理論でさえも、実際何かを計算しようとすれば、非常に難解な計算式を何百と計算しなければならず、あまつさえコンピュータの支援なしではとても評価できません

コンピュータを使うにも、数式の展開やプログラミングなど、
面倒だし大変ですよね?
とくに、アインシュタイン方程式やヤンミルズ方程式などは、
方程式の展開自体、かなり骨の折れる作業ですね(マクスウ
ェル方程式やディラック方程式などの展開も、やや骨がおれ
る)。

アインシュタイン方程式の展開は、EMANさんやら、マッド・
サイエンティスト研究所さん
http://homepage3.nifty.com/anoda/oldpage/space/mlab07/mlab07.htm
などが挑戦しておりますが、大変そうです。
私は、SU(2)やSU(3)の場合のヤン・ミルズ方程式の展開に試み
てみましたが、やはり大変です。

物理理論だけでなく、コンピュータも、もうちょっと簡単に使
えるようにならないかな?
昔のSFにあるように、プログラムなんか作らないでも、コンピ
ュータが自動的に計算してくれるとか、ならないかな?

>>変分原理を使って電磁気や相対論や量子力学をまとめる作業が必要になりそうです。
 
微分方程式のレベルでは、古典論と量子論とで違いがあります
が、変分原理(ラグランジェとかハミルトンの形式)のレベル
では、古典論とか量子論といった違いにも関係ない感じで、
綺麗な議論ができますね?

それと、変分原理などを使って導くと、オリジナルの科学者た
ちとは異なる導き方が可能になって、ニュートン力学=ニュー
トン、電磁気学=マクスウェル、相対論=アインシュタインと
いった図式から解放されますね。

「相対論は間違っている」といった人たちの多くも、相対論
=アインシュタイン という図式から抜け出すことができない
ようで、アインシュタインさえ攻撃すれば相対論を崩すことが
できると思っているようですが、実際には、アインシュタイン
の導き方とは異なる相対論の導き方も可能であり、その一つが
変分原理による導き方ですよね?

それによって、アインシュタインだけ攻撃しても、相対論を
崩すことは不可能、ということなんですね。。。

相対論の限らず、ニュートン力学、電磁気学、ゲージ理論、
量子論など、まともな科学理論とは、そういうものです。

さて、コンピュータの世界は、デュアルコアやクォッドコア
の64ビットCPUや数ギガバイトのメモリ、数百ギガバイトの
ディスクなどが安くなってきました。

これらを搭載した数台のPCを1000Mbpsの高速LANでつないで
クラスタリング構成にすれば、個人で格安のスーパーコンピ
ュータみたいなものを持つこともできそうです。
OSも、LinuxやWindows Computer Cluster Server(Windows CCS)
などがあり、使い慣れた操作環境や豊富な開発ツール、アプ
リケーションを利用できます。

これで計算パワー的には、一般相対論や場の量子論の計算も
可能でしょうが、あとは人間側の能力だね。。。
数理科学や計算科学、それに数値解析の勉強が不可欠だね。