EMANの物理学 過去ログ No.355 〜

 ● 場の量子論の理解

  投稿者:あもん - 2006/08/01(Tue) 11:51  No.355 

EMAN さん、はじめまして。

場の量子論の勉強がはかどらないとのことですが、量子力学の記事を読んで思い当たるところがあります。それは、調和振動子の量子論をシュレーディンガー表示で解いている、ということです。場の量子論の理解のためには、調和振動子系の問題をハイゼンベルグ表示で考えてみることが良いステップになるはずです。

ラグランジアン: L = m/2 (dx/dt)^2 - mω^2 /2 x^2

運動方程式: dx/dt = p/m, dp/dt = -mω^2 x

解: x = A ( a exp(-iωt) + a^* exp(iωt) )
p = imωA ( - a exp(-iωt) + a^* exp(iωt) )

同時刻交換関係: [ x, p ] = i hbar

-> [ a, a^* ] = 1, A = sqrt( hbar / 2mω)

ハミルトニアン: H = p^2 /2m + mω^2 /2 x^2
= hbar ω ( a^* a + 1/2 )

これが理解できたら力学変数を複数にして x_i(t) として考えてみるのもよいでしょう。それで場の量子論の教科書を読み直してみると、見え方がかなり変わるように思います。

私も学生時代に頭を悩まし、無駄に時間を費やしたところなのでコメントしてみましたが、的外れだったらごめんなさい。


あもん

  投稿者:murak - 2006/08/01(Tue) 12:40  No.356 
ありゃ? なんか懐かしい名前に遭遇したような??
(ただ、それだけですけど。。。)

  投稿者:あもん - 2006/08/01(Tue) 13:51  No.357 
murak さん、お久しぶり。その節は..。
私はよく覚えております。

  投稿者:murak - 2006/08/01(Tue) 15:59  No.358 
こちらこそ、どうもです(^^;
ここも結構楽しいですよ。またよろしくお願いします。

  投稿者:あもん - 2006/08/02(Wed) 09:29  No.359 
murak さん、どうも。ここは EMAN さんの情熱的な記事に惹かれ、ときどき読んでました。掲示板も見やすくていいですね。

その節は量子力学の数理的局面に関して貴重な意見をいただき、ありがとうございました。

  投稿者:EMAN - 2006/08/02(Wed) 12:22  No.360 
 あもんさん、ありがとうございます。

 私もあもんさんをどこかで見かけた気がするのですが、
本当に初めまして、でしたっけ?
 ヒントを探すためにあちこち検索を掛けてますので、
そのついでに見かけたのかも知れません。

 助言頂いた事について試してみる価値があると思います。
 私はハイゼンベルク形式で論じる事を軽視しているところがありまして、
「それが本当に必要だと分かったら本気で学んでやろう」
という態度でいました。
 未だに、その利点・・・いやそれは表面上は認めているのですが、
それがどれだけ素晴らしいことかを実感できていません。



 独りで考え込んでいても効率が悪そうなので、
そろそろ手の内を見せてしまおうと思います。

 疑問はあれこれありますが、
追いかけているのは、相対論的な場の理論と、
非相対論的な場の理論がどこで繋がるか、ということです。

 物性寄り(だと思う)の教科書では、
量子化された場 ψ(r) を使ってハミルトニアンが、

H = ∫ψ^{†}(r) (p^2/2m) ψ(r) dr
+ (1/2)∫∫ψ^{†}(r)ψ^{†}(r') V(r-r') ψ(r)ψ(r') dr dr'

と表されています。
 これがあまりにもいきなりでありまして、
相対論的な場の理論を調べて行けば、
この式を導く方針が分かるのかと思ったのですが、
抽象の森を抜け出せないでいます。

  投稿者:Φマン - 2006/08/02(Wed) 17:04  No.362 
EMANさんの疑問は物性理論で言う第二量子化法と相対論的な場の理論の関係ですね。まずEMANさんが与えたハミルトニアンは相対論的場の理論の立場では近似的な表式ですから、相対論的場の理論をいじくるだけでは出てきません。かといってこれを導くところを説明するにはある程度の場の理論の知識が必要だと思われます。私も昔第二量子化から場の理論が出てくると言う説明を授業などでうけましたが、分ってしまうとあの説明は効率的だとは思えません。量子力学で古典的な運動方程式との関係から導入が始まるよりも、あっさりと「これは新しい考え方なんだ、こういう理論なんだ」と言ってシュレディンガー方程式やらハイゼンベルグ方程式やらを学んだ後に、それでは古典論とのつながりは?という道筋の方がすっきりしますよね。場の理論を多粒子系量子力学の立場から説明をすると非常にごちゃごちゃします。それはそうで、そういう説明は場の理論の立場から見るといろいろと近似が入っているので逆に場の理論の全体像が見えないし、色々と疑問点が沸いてきます。疑問点を説明しだすと場の理論の言葉が必要になり、結局そういうロジックはあまり効率的ではなく難解だと思います。
普通の人は計算して納得するんでしょうが、物性の人たちは第二量子化の立場からの理解が標準的で、彼らは物理的センスでなされた近似やらなんやらをカバーしているんだと思います。

それでもここをやらないと納得できないというのであれば
Foldy-Wouthuysen-Tani変換が参考になると思います。
あとV(r-r')はクーロンゲージでのゲージポテンシャルA^0の解です。

  投稿者:EMAN - 2006/08/02(Wed) 19:28  No.363 
 Φマンさん、ありがとうございます。

> それでもここをやらないと納得できないというのであれば
> Foldy-Wouthuysen-Tani変換が参考になると思います。

 特に今こだわりませんが、後で役に立ちそうなので覚えておきます。


> 相対論的場の理論をいじくるだけでは出てきません。

 そうでしたか。 道理でどの"入門書"も「少々面倒」などの表現を添えつつ、説明をすっ飛ばしているわけですね。 多体系の量子力学で出て来る式とそっくりな形をしているので、同じロジックを無理やりこじつけて使っているのかなぁ、と考えたりもしたのでした。

 武田暁「場の理論」(裳華房)では、この式を使って説明した後、しばらく進んだところで、これが一次の摂動であることが出ていて、「何だって!? これは近似だったのか?」って感じですが、「このように逐次的に求めて行くやり方を摂動論と呼ぶ」と書いてあるばかりで、そのやり方は載っていない。 2次以降はどうなるのかも書いていないが、2次のダイアグラムなんかは出てくるので、じっくり読めばどこかに書いてあるのだろうか・・・?と、行ったり来たり。

 この本は素粒子っぽい話も出てくるので、「うーん、物性の本なのか? この本の説明はラグランジアンを使うような他の教科書と全く流儀が違うようだが、どこかで繋がるんだろうか」と期待したり、まぁ大変。



> 分ってしまうとあの説明は効率的だとは思えません。

 私もどういう手順で記事を書き進めたらいいものやら、考えがふらふらしてまして、
 初めに、視覚的イメージを描きながら第2量子化から入って、興味ありそうな話題を一通り嘗めた後、やっぱり相対論的に拡張しないとこれ以上はダメだね、ってな具合に素粒子論のページへ橋渡しするか、

 「ごまかしは嫌だから」と量子力学のページに場の理論を入れるのはやめてしまってラグランジアンから入るべきか、とか、色々考えてます。

 (で、行ける!と思うたびに書き始めるものですから、導入部分の原稿だけはすでに複数通りあります。)

 最近は、批判しつつ自分なりのストーリーを立てながら読むのが思考を邪魔しているんじゃないか、と考えて、門前の小僧にならって、全体が自然に繋がるまで、ただ黙々と繰り返し読んでいます。
 本当に、専門家のための技術マニュアルって感じですねー。 そういうものにストーリーを要求しちゃいけないのは分かりますが、独学には非常につらいです。

  投稿者:あもん - 2006/08/03(Thu) 15:37  No.367 

EMANさん、こんにちは。

> 私はハイゼンベルク形式で論じる事を軽視しているところがありまして、
> 「それが本当に必要だと分かったら本気で学んでやろう」
> という態度でいました。

物性論はともかく、素粒子論ではもれなくハイゼンベルグ表示なので、学んでみるべきでしょうね。必要性はある程度かじってみないとわからないでしょう。

> H = ∫ψ^{†}(r) (p^2/2m) ψ(r) dr
> + (1/2)∫∫ψ^{†}(r)ψ^{†}(r') V(r-r') ψ(r)ψ(r') dr dr'

これは「シュレーディンガー場の量子論」と呼ぶべきもので、QED(量子電磁気学) と呼ばれる相対論的場の量子論から非相対論的近似により導くことができます。物性関係の人の教科書では、くどくどと多粒子系から帰納し、第二量子化などと称して理解するのですが、もうそういった泥臭い帰納的なアプローチは、分野に関係なくやめにして欲しいと思っています。被害者は私や EMAN さんにとどまらないでしょう。(^^;

シュレーディンガー場の量子論は、それ自体はとても教育的な場の量子論なのですが、いかんせん、これを扱っている教科書は物性関係の人によるものが多く、泥臭い記述になっています。例えば私がシュレーディンガー場の量子論を書くなら、

£_free = ψ^+ i(d/dt)ψ - (1/2m) ▽ψ^+ ▽ψ
£_int = - q Φψ^+ ψ - (1/2) ▽Φ▽Φ

というラグランジアン密度から出発します。

ところで、多くの大学生が習う量子力学は、実は「波動力学」と呼ばれるものです。EMAN さんの記事もそうなのですが、ブラケットを用いても、結局シュレーディンガー表示で、波動力学なのです。本当の意味での量子力学は、私が調和振動子系について書いたように、「古典論における力学変数を代数(演算子)とみなせ」という量子化によって得られるもので、これは自然にハイゼンベルグ表示になります。

波動力学から場の量子論に進むのは非常に困難です。それは物性における泥臭い道しかないかもしれません。しかし、量子力学から場の量子論に進むのは簡単です。それは連続無限自由度という概念に慣れるだけのことだからです。だからむしろ、波動力学をいったん忘れて、本当の量子力学について学ぶのが早道だと思います。もちろん、量子力学からは簡単に波動力学が得られ、それは「座標表示」と呼ばれるものです。

  投稿者:EMAN - 2006/08/07(Mon) 12:44  No.371 
 あもんさん、ありがとうございます。
 迷いがふっきれた気がします。

 清水明著「量子論の基礎」を読むと、
ほんの少しだけですが場の理論の説明も入っていて、
それが量子力学の導入と並行した論理で進むところがきれいだと思いました。
 近頃、この抽象的なやり方もきれいだなぁと思えるように
なっていたのですが、私がその形式で書く必要はないだろうと思っていたのでした。

 量子力学のページを少し変更してみました。
 第6部として解析力学の論理を借りた量子力学のまとめを
入れようと思います。


 何を迷っていたかというと、
私としては、正統な道を進むだけではなくて、
なぜこの方法を取らないか、なぜこの方法で進むのか、という
試行錯誤する様子も残しておきたいと思っていたわけです。

 「素粒子論」のページで抽象的な話をした後で
物性的な話に再び戻る、というのも流れが悪いなぁと思ったので、
できるなら物性の話を一通りし終えた後で、素粒子に集中したかった
というのもあります。
 相対論的な話をしてからでないと、
物性の話も完全に説明し切れないというのであれば諦めます。


 ところで、相対論的場の理論というのは、
なかなか具体的な現象との対応が付きにくくて、
抽象的な話ばかりが続くように思えるのですが、
何か、目標とすべきポイントみたいなものはあるでしょうか。

 まぁ、ひとまず、量子力学を
まとめ直すことが先ですよね。 やってみます。

  投稿者:EMAN - 2006/08/07(Mon) 12:47  No.372 

 場の理論の記事に取り組むのはまだまだ先になりそうなので、
とりあえず、没になった下書きのストーリーだけ抜き出して、
ここでコアダンプします。
 私の思考パターンでは、以下のような考え方で突き進むことが出来れば理想的だったのに・・・というものです。


**********************************************

 波動関数は自由粒子の組み合わせに分解できる。
 運動量ごとに分けて考えてみる。

→自由粒子の波が一つだけ空間にある状況を想像する。
 しかし一つの波に見えるこの波は、
 無数の各点各点がタイミングを合わせて調和振動していることで
 実現しているのではないか。

→それは各点各点に調和振動子的なポテンシャルがあると
 仮に考えてもいいのではないか?

→そこに量子力学の論理を適用してみると、
 振幅が量子化された状態が表せる。
 少し考えが飛躍するのは承知しているが、仕方なく受け入れてくれ。

→全ての運動量について考えることで、
 「量子化された波動関数」が登場する。
  ψ(x) = Σ a e^{ikx}
  ψ^{†}(x) = Σ a^{†} e^{-ikx}

→「量子化された波動関数」は、
 粒子が x 点に出現、x 点で消滅する確率を表すとも解釈できる。

→素人向けに頻繁に説明される、
 「素粒子というのは、理論上、大きさの無い一点である」というのは、
 この解釈を採用して言っているに過ぎない。

→個人的感想
 (上の解釈は確率なので、うまくごまかしが効く。
 しかし波動関数として考えれば、
 宇宙全体で振幅が一斉に増えたり減ったりするという、
 物理的には受け入れ難い状況が表されているのではないか。
 このまま具体的解釈を続けるのはかなり苦しくて、私も限界に近いぞ)

→量子化された波動関数を使って、普通の量子力学のように
 存在確率を計算してやると、
 ∫ψ^{†}ψ dx = Σ_k n
 となって、粒子数が正の整数であることが自然に出てきて気持ちいい。

→他にも運動量とか自由粒子のハミルトニアンとか、
 普通の量子力学のやり方を当てはめるだけで色々うまく行くので、
 相互作用のある場合にも同様に計算してやればいいのではないか。

→相互作用のある場合にはそんな簡単には当てはまらない。
 しかしこの式を使うといい。
 (前に出た非相対論的ハミルトニアン)
 ちょっと待てよぉー。 なんでそれを使わなくちゃいけないんだ?
 ここまでの流れからは理由がどこにも見出せない。
 ここで行き詰まった。 



  投稿者:あもん - 2006/08/08(Tue) 19:24  No.378 

>近頃、この抽象的なやり方もきれいだなぁと思えるように
>なっていたのですが、私がその形式で書く必要はないだろうと思っていたのでした。

中級者向けで一貫している EMAN さんの教科書においては、確かに抽象的で演繹的
なやり方は、避けれれば避けたいところでしょうね。でも避けた道がひどい畦道な
らどうか、ということもあります。(^^;

>何を迷っていたかというと、
>私としては、正統な道を進むだけではなくて、
>なぜこの方法を取らないか、なぜこの方法で進むのか、という
>試行錯誤する様子も残しておきたいと思っていたわけです。

よくわかります。

>相対論的な話をしてからでないと、
>物性の話も完全に説明し切れないというのであれば諦めます。

そんなことはないです。物性を先にする方がむしろ普通でしょう。物性の話にし
ても、私はハイゼンベルグ表示で抽象的かつ演繹的な方法(正準量子化の方法)
の方がわかりやすく、他は畦道なのではないかと思っています。

ちなみに、シュレーディンガー場、

>ψ(x) = Σ a e^{ikx}

は、ハイゼンベルグ表示では、

ψ(x,t) = Σ a e^{ ikx - i{k^2/2m}t }

です。

>ところで、相対論的場の理論というのは、
>なかなか具体的な現象との対応が付きにくくて、
>抽象的な話ばかりが続くように思えるのですが、
>何か、目標とすべきポイントみたいなものはあるでしょうか。

自由場の量子論についてはエネルギー運動量のスペクトル(粒子描像)が一つ
のゴールで、相互作用系においては散乱断面積をゴールにすればよいかと思い
ます。例えば QED においてはメラー散乱(e+e→e+e)やコンプトン散乱(e+γ→
e+γ)の微分断面積の表式ですね。これらは実験でよく確かめられています。

>私の思考パターンでは、以下のような考え方で突き進むことが出来れば理想的
>だったのに・・・というものです。

興味深いルートだと思います。

>→相互作用のある場合にはそんな簡単には当てはまらない。
>しかしこの式を使うといい。
>(前に出た非相対論的ハミルトニアン)
>ちょっと待てよぉー。 なんでそれを使わなくちゃいけないんだ?
>ここまでの流れからは理由がどこにも見出せない。

V がクーロンポテンシャルであるものは QED から演繹できます。

それ以外の説明法としては、位置 y,z に局在する2粒子状態:

|y,z> = ψ(y)^† ψ(z)^† |0>

が、相互作用ハミルトニアン:

H_int = 1/2 ∫dxdx' V(x-x') ψ(x)^† ψ(x')^† ψ(x) ψ(x')

の、固有値 V(y-z) の固有状態になっているということです。つまり、

 H_int |y,z> = V(y-z) |y,z>.

>まぁ、ひとまず、量子力学をまとめ直すことが先ですよね。

せっかくわかりやすいと評判の教科書なわけですから、追加してゆくのがよい
でしょうね。頑張ってみて下さい。期待しています。

  投稿者:ワイル - 2006/08/11(Fri) 00:44  No.395 
古典力学や古典論の世界は、幾何学的イメージでは、

古典力学 ・・・ 曲線
ゲージ理論(マクスウェル電磁気学、特殊相対論を含む)
 ・・・ 4次元時空内における多様体(曲面など)
一般相対論 ・・・ 4次元リーマン時空(曲がった4次元時空)
統一場理論(=一般相対論+ゲージ理論:未完成だが)
 ・・・ 捩れた4次元時空(?)

と思います。
ただし、いずれも、
 なめらか(=連続かつ微分可能)な多様体
という条件が付いたものだと思います。

量子力学や量子論の世界は、幾何学的にはどうでしょうか?
量子力学や量子論の世界は、最低限の基底を単位にしたデジ
タルの世界になると思うので、連続していないのですね
(そうすると数学的には微分より差分の世界というイメージ
ですが)?

ついで、古典力学や古典論との対応は、

古典力学 => 量子力学
ゲージ理論 => 場の量子論
一般相対論 => 量子重力理論
統一場理論 => Cubic MatrixなどのM理論(?)

また、量子力学や量子論における空間や時間とは何だろう?

こうしたことを含めて、独自で分かりやすい場の量子論や
素粒子論を望みたいですね?
(第二量子化を、わかりやすく)