EMANの物理学 過去ログ No.132 〜

 ● あらわに依存する??

  投稿者:ミスタースポック - 2006/06/25(Sun) 02:55  No.132 
はじめまして、僕は大学院で物理を学んでいる者です。
と言っても全然たいした事ないのですが。。

このサイトは非常に参考になるので、重宝しています。
>EMANさん

えっと、今回一つ質問したい事があって書き込ませて
いただいています。

ハイゼルベルクの運動方程式で
Aが時間にあらわに依存しない時は・・・
などと言う表現があって、その時はAの時間に対する
編微分項が消えているわけですが、「あらわに」依存
するってどういう事なんでしょう??

僕の手元にある教科書では「あらわに」の意味を
説明してくれてる物が見当たらないのですが・・

また、あらわに依存しない時、(時間)
編微分は消えるのに、普通の微分項は消えない
と言うのも、どうも良く分かりません・・・
まあ、「あらわに依存する」
の意味が分かってないのだから分からないのは
当たり前かもしれませんが・・

宜しくお願いします。

  投稿者:とおりすがり - 2006/06/25(Sun) 18:38  No.135 
一般化座標とかを通じて時間に依存する量ならあらわに依存しないといって、
そうでなく、他のパラメータに含められない感じで時間に依存するものをあらわに依存するというのでは?多分だけど。

  投稿者:明男 - 2006/06/25(Sun) 22:51  No.136 
はじめまして、ミスタースポックさん、明男です。

私の理解ですが、説明してみます。
あらわに(explicit)とは、たとえば時間tの関数である、v(t)とかu(t)があって、さらにf=f(u,v)なる関数があったとすると、この「f」は「あらわに」はtに依存しません。このようなばあい、暗に(implicit)依存すると言います。
一方、g=g(w,t)なる関数、たとえば、g=w^2+2wt+t^2のような、関数は「あらわに」時間tを変数に含むことが分かります。
数学的には、偏微分の定義より、上記f,gは
∂f/∂t=0、∂g/∂t=2w+2t
となり、fのt依存性は見えなくなります。
しかし、fの(全)微分は
df/dt=(∂f/∂u)du/dt+(∂f/∂v)dv/dt
のように、u,vのt依存性を通じて、implicitに依存するわけですね。
そうすると、普通の微分項とは、この全微分を示しているものと思われます。

  投稿者:ミスタースポック - 2006/06/27(Tue) 11:16  No.149 
>とおりすがりさん
ご解答ありがとうございます。
う〜ん、ただ僕の勉強不足でおっしゃってる事が
イマイチしっくり理解できません。。申し訳ないです。

>明男さん

ご解答ありがとうございます。

なるほど、実を言うと一度同じような事は考えたの
ですが、どうも僕は(全)微分のほうはしっかり理解
していましたが、編微分の方が、
実はちゃんと理解できていないのかもしれません。

僕の今まで理解では、編微分とは、単に関数が二変数以上
を持つ時、その中のある一つの変数だけで微分し、
他の変数は定数と考えて、部分するもの。
と言う程度の認識でした。

とすると、上記のfの編部分も「あらわに」では
ないにせよ、時間依存性がある事は間違いないのだから
編微分が0になると言うのは間違いである。
と言う理解でした。

と言うよりも、この場合はUとVを介しているにせよ、
結果的に時間Tの依存性しか持たないのだから、結果
一変数関数になって、(UやVで微分するなら)編微分
だけど時間部分なら、そもそも編微分なんて存在
しないと考えていたと言った方が正確かもしれません。

実は、ここで悩んでいたんです。

例えば、f(u,v)に実際にu(t)とv(t)を代入した式を
書いたとしたらそれは、なんらかのg(t)と言う関数に
なって、これは時間に「あらわに」依存する
事になるわけですよね?

でも、数学的には(もちろん物理的にも)
f(u,v)とg(t)はまったく同じ関数のはず・・・
なにに一方の編微分は0で、もう一方は0でないのか??
とすっかり分からなくなってしまいまして。。。




  投稿者:murak - 2006/06/27(Tue) 13:42  No.153 
こんにちは。

なかなか難しい問題だと思います。私自身、その昔、同じ様なことでずいぶん悩んだ記憶があります。

少し、具体的に考えてみましょう。
まずは、物理を度外視して、単に数学の問題として、2つの関数 f(u,v), g(u,v,t) を考えてみます。このとき偏微分については

  ∂f/∂t=0、∂g/∂t≠0

です。一方全微分は

  df = (∂f/∂u )du + (∂f/∂v )dv
  dg = (∂g/∂u )du + (∂g/∂v )dv + (∂g/∂t )dt

となります。ここで、微分する変数を明示的に書かずに、わざとぼかして単に df 等と書いているところがミソです。

次に、f,g の中に入っている変数 u,v,t の事を考えましょう。これらを単に三つの独立変数と思っても良いですが、それらが何か別の変数 s の関数になっているとしても良いでしょう。後者の場合、それらは u(s),v(s),t(s) という関数として与えられるという事です。このとき最初の関数 f,g の s 依存性はどうなるいでしょうか? それには df/ds, dg/ds を考えれば良いですね。計算してみましょう。

  df/ds = (∂f/∂u )(du/ds) + (∂f/∂v )(dv/ds)
  dg/ds = (∂g/∂u )(du/ds) + (∂g/∂v )(dv/ds) + (∂g/∂t )(dt/ds)

つまり s がdsだけ変化したときの f の変化量は fの u,vに関する偏微分係数に u,v の変化量を掛けて足せばよいという事です。dg/dsについても同様です。

では最後に、ここで t=s である特別の場合を考えてみましょう。このとき

  df/dt = (∂f/∂u )(du/dt) + (∂f/∂v )(dv/dt)
  dg/dt = (∂g/∂u )(du/dt) + (∂g/∂v )(dv/dt) + ∂g/∂t

ですね(先程との違いはわかりますか?)。
この最後の式をじっくりよーく考えると、dg/dt と ∂g/∂t の違い、及び、f,gがtに「あらわに」依存するかどうかで df/dt, dg/dt がどう違うがわかると思いますがいかかでしょうか?

(ここまでの数学だけの話で納得できればそれでよし。もし物理の話が必要であれば、また改めて。)


  

  投稿者:ミスタースポック - 2006/06/27(Tue) 20:12  No.155 
murakさん、ご回答ありがとうございます。

なるほど、確かにこう考えると今までに比べて、
だいぶすっきりしてきました。
(深く考えるまた分からなくなってきそうだけど。。w)

最後の式で考えれば、編微分∂g/∂t はg(u,v,t)を
uとvがu(t)、v(t)の様に時間依存性があった
にせよ、定数だとして計算して、他の残りのtだけを
変数として微分した結果と言う事になりますね。

ハイゼルベルグの運動方程式は
dA/dt=∂A/∂t+[H,A]/i2πh
です。

ここで、Aが仮に時間にあらわに依存する、
上記で言えばg(u,v,t)の様な関数、
つまりA(u,v,t)であったとして
これをハイゼルベルグの運動方程式に代入すると


(∂A/∂u )(du/dt) + (∂A/∂v )(dv/dt) + ∂A/∂t
=∂A/∂t+ [H,A]/i2πh

となって、両辺から∂A/∂uを引けば、
(∂A/∂u )(du/dt) + (∂A/∂v )(dv/dt) =[H,A]/i2πh
となりますよね??

ここで分からないのが、
関数A(u,v,t) {u=u(t),v=v(t)}
は変数を置換すれば
A(u,v,t)=B(w,z,t){w=w(t)、z=z(t)}
と書き換える事も可能なはずです。

この時ハイゼルベルグの運動方程式は
同様にして
(∂B/∂w)(du/dt) + (∂B/∂v )(dz/dt) =
[H,B]/i2πh

A=Bなので、右辺はAで計算した時のハイゼルベルグの
運動方程式と変わりありません。
しかし、左辺に関しては、u(t)≠w(t)、
v(t)≠z(t)なのだから違う値になってくる
のではないでしょうか?

長々とすみません。
自分でももう少しじっくり考えてみるつもりです。

本来は考えて見てから返信するのが礼儀なんでしょうが、
そうするとかなり後になってしまいそうだし、結局
今書いた事からなにも進歩せずにお返事を書く結果にも
なるかもしれないと思いましたので、とりあえず
今考えた事を書かせていただきました。

最後に僕の上記の書き込みは一部、編微分が編部分に
なってしまっていましたね。
すいませんでした。
  
物理の話に関しては、興味はありますのでもし
お手間でなければ書いていただけると嬉しいです。


  投稿者:EMAN - 2006/06/27(Tue) 21:21  No.156 
 小さなツッコミ担当に堕しているEMANです。

 ずっと気になっていたのですけど、これを見て、単なる打ち間違いではないと確信しました。

> 最後に僕の上記の書き込みは一部、編微分が編部分になってしまっていましたね。

 「編微分」ではなくて「偏微分」ですよ。 偏愛、偏食などの「偏」です。

  投稿者:ミスタースポック - 2006/06/27(Tue) 22:40  No.157 
すいません、気づいてませんでした。
ふつうに「へんびぶん」と打つと「編」の字が
出てくるもんですから。。

  投稿者:murak - 2006/06/28(Wed) 02:41  No.161 
こんばんは。

先の話の数学的な部分についてもう少し補足しておきます。

先の例で言って、f や g の偏微分や全微分を考える際にはそれらと変数 u, v, t との間の依存関係のみに注目して微分を行います。その際、独立変数 u,v,t の間には本当は関数関係があるのかもしれませんが、そうしたことは全く無視して、これらを全く無関係の(文字通り)独立変数とみて微分操作を行うことが重要です。そうして書き下した全微分の式が

  df = (∂f/∂u )du + (∂f/∂v )dv
  dg = (∂g/∂u )du + (∂g/∂v )dv + (∂g/∂t )dt

なのですが、この全微分の式こそが全てであって、∂f/∂u等の偏微分や u,v が t の関数になっている場合、更には u,v の夫々が二変数 p,q の関数であって、しかも p,q が t の関数であるというようなややこしい場合も含め、あらゆる場合の微分関係をこの公式の特別の場合として書き下すことが出来ます。つまり、 u,v,t を全く独立に変化する(独立)変数と見なして書き下した全微分の公式が最も一般的な状況を表現しており、変数の間に関数関係があるような場合もその中に(ある特別な状況として)含まれてしまっているという事です。(逆に言えば、u,v,t の間に例え関数関係があろうとも、f,g を微分するその瞬間には(先のことは忘れて)f,g とu,v,tの関係だけに注目して微分を計算すればよい。後のことは合成関数の微分公式に従っている限り、数学が自動的に正しい答えに導いてくれる。)

このことは先の例で、f(u,v),g(u,v,t) の具体的なカタチと、u(t),v(t) の具体的なカタチを自分で適当に決めて実際に色々計算してみると納得できるでしょう。更に時間に依存する p(t),q(t) を用いて u,v が u(p,q),v(p,q) と懸かれている場合の df/dt や dg/dt を計算してみれば、No.155でのミスタースポックさんの不安も解消する筈です。

以上が、数学としての話ですが、ここで例えば上の p(t),q(t) があるタイプの常微分方程式(運動方程式)の解になっているという特別な場合を考えると、それが物理(力学)の話になります。ただしハイゼンベルグの運動方程式というのは、古典力学のポアッソン形式における運動方程式を量子力学に置き換えたものなので、上の議論を直接当てはめるわけにはいきませんが、古典論的対応物であるポアッソン方程式に関してはその関係を(数学的に)正しく示すことが出来ます。つまりある相空間{(q,p)}上のハミルトンベクトル場 X_H の積分曲線(解曲線) x(t)=(q(t),p(t)) 上でみた任意関数 A(x,t)=A(q,p,t) (これが観測可能物理量に対応する)に対し

  dA/dt = ∂A/∂t + {H,A}

がいえるという事になります。(ただし{,}はポアッソン括弧なので、話は上に述べたものよりもうちょっと複雑になりますが。)

  投稿者:通りすがり - 2006/06/28(Wed) 06:55  No.163 
卑近な例を考えるとわかりやすいと思います。例えば
f(t)=t^2+t
を考えたとき偏微分は
∂f/∂t=2t+1
ですが、u=t^2 なる関係があるときでも
g(u,t)=u+t

∂g/∂t=1
gを
h(u)=u+√u
とかいたら
∂h/∂t=0
ということですね。偏微分をするときf,g,hは別物です。

  投稿者:murak - 2006/06/28(Wed) 13:34  No.164 
昨晩は、途中で眠くなって中途半端になったので、物理の部分についてもう少し補足しておきます。

u,v,tを変数とする関数 f,g 等があって、その独立変数を p,q,t に変換する事を考える(ただし t は共通パラメータとする)際、数学的には、(u,v)<-->(p,q) の変換は(その関係が潰れていなければ)一般にどんなものでもかまわなくて、その際、合成関数の微分規則に正しく従う限り全微分の関係式自体は正しく変換されます。しかし、物理的な内容を伴う場合には多少の注意が必要になってきます。

まず、そもそもの話として、No.161に書いたポアッソン形式の運動方程式が成立するためには p,q はある関係を満たさねばなりません(別の言い方をすると、相空間{(q,p)}はある構造を持たねばならない)。そして、変数(p,q)を新しい変数(u,v)に置き換えても同様の運動方程式が成立するためには、変換(p,q)<-->(u,v)がある特別の関係式を満たさねばならない(別の言い方をすると、その変換は相空間上の「ある構造」を保たねばならない)。このような仕組みになっているときに始めて方程式

  dA/dt = ∂A/∂t + {H,A}

が意味を持つことになります。では、どのような場合にこうした議論が成り立つのかと言う問に答えるのが解析力学の正準形式の理論です。(その際の相空間が持つべき構造を、数学用語ではシンプレクティク構造と呼び、それを扱う理論をシンプレクティック幾何と云う。)

つまり、数学の一般論としては単に全微分の式の変換というとても単純な話で終わってしまうところを、非常に特別な場合に話を特化させて、かつ又、非常に狭い範囲の変換関数の間で議論を展開するのが解析力学の正準形式の理論です。(だからここそ逆に、実りある結果が得られれ、かつ又様々な凝った手法が使える難しい分野でもあるわけです。)

何が言いたかったかというと、解析力学では一般化座標とか一般座標変換、あるいは正準変換等の名前がついているので、あたかも非常に広範なものを考えているかのような誤解を招く場合がありますが、実際には上で見たようにかなり限られた範囲の座標とその変換しか考えていないという事です(それでも具体的な力学の問題を考える上では十分に広い)。そして、様々な虚飾(?)を取り払って、関係式を丸裸にしてしまえば、実はそれは単なる全微分の関係式に過ぎなかったりします。このことに気付くことが解析力学の一つの極意かもしれません。(などと偉そうなことを言ってみる。)ちなみに数学では「一般論は常に各論より易しい」という格言(?)があります。(あまり真に受けないように。)


  投稿者:ミスタースポック - 2006/06/29(Thu) 23:28  No.201 
murakさん、通りすがりさん改めてご解答いただき
ありがとうございます。

正直、「あらわに依存するとは何か?」の質問が
これだけの議論に発展するは思ってもみませんでした。

面白い物ですね。

為になりました。